第2章 地域別に見た外交 |
【各 論】 (1)安全保障に関する問題 (イ)北朝鮮による弾道ミサイル発射と日本の対応 2005年11月の第5回六者会合第1セッション以来、北朝鮮は、米国がマカオ所在の銀行に対してとった資金洗浄対策措置を理由に六者会合への出席を拒み続け、2006年に入ってからも六者会合の再開へ向けた見通しが立たない状態が続いた。 4月に民間団体主催の国際会議(北東アジア協力対話(NEACD))が東京で行われた際、ロシア以外から六者会合の首席代表が来日し、六者会合再開へ向けた協議が行われたが、具体的進展は得られなかった。 5月中旬に入り、北朝鮮によるミサイル関連活動が取りざたされるようになったのを受け、日本は米国、韓国をはじめとする関係国と緊密に連携し、情報交換及び今後の対応につき協議を重ねるとともに、北朝鮮に対し、6月16日、北京の外交ルートを通じてミサイル発射を自制するよう警告した。 しかし、日本を含む国際社会の事前の警告にもかかわらず、7月5日、北朝鮮はテポドン2を含む7発の弾道ミサイル発射を強行した。これは、日本の安全保障や国際社会の平和と安定、さらには大量破壊兵器の不拡散という観点から重大な問題であり、日朝平壌宣言にあるミサイル発射モラトリアムにも違反する。また、六者会合の共同声明とも相容れないものである。 この弾道ミサイル発射を受け、また、拉致問題の解決に向けて誠意ある対応をとってこなかったことも総合的に勘案した上で、同日、日本は、官房長官発表により、万景峰92号の入港禁止や北朝鮮からの入国審査の厳格化等の一連の措置を発表した。また、関係各国と首脳及び外相レベルで電話会談を行い、国際社会と緊密に連携して対応した。 国連安保理では、日本などの要請に基づき、5日午前(現地時間)に安保理会合が開催された。日本は直ちに決議案を提示し、国際社会全体として断固たるメッセージを出すべく、関係国と協議を重ねた。その結果、7月15日(現地時間)、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難し、北朝鮮及び国連加盟国に具体的な措置の実施を求める安保理決議第1695号が全会一致で採択された (注3) 。 ![]() ▲決議案(第1695号)採択の際に賛成の挙手を行う伊藤外務大臣政務官(7月15日、安保理議場にて 写真提供:読売新聞社) 7月28日には、クアラルンプールでのARFの際に、北朝鮮問題に関する10か国外相会合 (注4) が行われた。この会合では、参加国の多くが北朝鮮のミサイル発射に懸念と非難の意を表明するとともに、安保理決議第1695号の履行の重要性、特に、北朝鮮が六者会合へ早期に復帰することの重要性が確認された。 9月19日、日本は、安保理決議第1695号の着実な実施の一環として、既存の厳格な輸出管理措置に加え、北朝鮮のミサイル・大量破壊兵器開発計画に関連する15団体・1個人を指定し、資金移転防止措置を実施した。 9月21日には、ニューヨークでの国連総会の際に、米国の呼びかけにより北朝鮮問題についての関係国外相会議が開催され(8か国が参加)(注5) 、安保理決議に基づく措置の実施の重要性と、六者会合の共同声明に基づく問題の平和的解決の重要性が確認された。 ▼北朝鮮による弾道ミサイルの発射事案に係る我が国の当面の対応について
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