第2章 地域別に見た外交


(ロ)北朝鮮による核実験の実施と日本の対応

 弾道ミサイル発射に対する国際社会の非難が続く中、10月3日、北朝鮮は「核実験を行うこととなる」との「外務省」声明を発表した。日本は、国連安保理において直ちにこれをとりあげ、6日(現地時間)には、北朝鮮の核実験実施声明に対する懸念を表明し、北朝鮮に対し自制を強く要請すること等を内容とする議長声明が採択された。

 しかし、このような国際社会の警告にもかかわらず、10月9日、北朝鮮は核実験を実施したと発表した。北朝鮮による核実験は、日本のみならず東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、核兵器不拡散条約(NPT)体制に対する重大な挑戦であるとともに、日朝平壌宣言、六者会合の共同声明、安保理決議第1695号等に違反する行為であり、断じて容認できない。日本は、ただちに官房長官声明を発出してこのような立場を明確にするとともに、11日には、北朝鮮が拉致問題に対しても何ら誠意ある対応を見せていないことを含めた諸般の情勢を総合的に勘案し、すべての北朝鮮籍船の入港禁止や北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止を含む一連の厳格な措置の実施を決定した。

 国際社会との連携については、核実験実施発表当日の日韓首脳会談を皮切りに、米国、中国をはじめとする関係国と緊密な協議を行い、北朝鮮の行為に対する国際社会の断固とした対応を示すべく外交努力を重ねた。特に、国連安保理では、日本は議長国として、他の理事国と緊密に連携しつつ、国際社会の総意の形成に向け努力を重ねた。その結果、14日(現地時間)、北朝鮮の行為を非難し、国連憲章第7章の下で北朝鮮及び国連加盟国がとるべき措置を定めるなど、北朝鮮に対して厳しい内容を含む安保理決議第1718号が全会一致で採択された (注6)

 日本は、厳格な輸出管理等、安保理決議第1718号の求める措置の多くを従来実施してきていたが、この決議の採択を受け、11月14日、北朝鮮への奢侈品 (注7) の輸出禁止等の措置を実施した。また、安保理決議第1718号に基づき設置された制裁委員会に対し、日本による安保理決議第1718号の実施状況についての報告書を提出した。

▼北朝鮮による核実験に係る我が国の当面の対応について
(10月11日官房長官声明)

 21時から約20分間、安保会議を開催をいたしました。その結果、北朝鮮による核実験に係る我が国の当面の対応について、発表させていただきたいと思います。

 北朝鮮による核実験については、既に、9日、官房長官声明によって、我が国としての立場を明らかにしたところである。

 その後政府としては、我が国としての対応を検討してきたところ、北朝鮮自身が核実験を実施した旨既に発表したこと、気象庁が通常の自然地震の波形とは異なる地震波を探知したこと、北朝鮮のミサイル開発とあわせ、我が国安全保障に対する脅威が倍加したものと認識されること、北朝鮮が拉致問題に対しても何ら誠意ある対応を見せていないこと及び国連安保理において、国際社会全体として厳しい対応をとるべく議論が進められていること等諸般の情勢を総合的に勘案し、関係閣僚の意見も踏まえ総理の指示を得て、我が国として以下のとおり北朝鮮に対し厳格な措置をとることを決定し、早急にその実施のための所要の手続きをとることとし、13日の閣議で決定をすることとした。

1.対北朝鮮措置

 1.すべての北朝鮮籍船の入港を禁止する。

 2.北朝鮮からのすべての品目の輸入を禁止する。

 3.北朝鮮籍を有する者の入国は、特別の事情がない限り認めない。ただし、在日の北朝鮮当局の職員以外の者の再入国は、この限りではない。

 4.今後の北朝鮮の対応・国際社会の動向等を考慮しつつ、更なる対応について検討する。

2.国際社会における連携

 1.日米間のあらゆるレベルで調整・情報交換など緊密な連携をとる。

 2.国連安全保障理事会等において、厳しい対応がなされるよう必要な働きかけを行う。

 3.六者会合関係国、G8首脳等とのあらゆる接触の機会を活用して、調整・情報交換の上、連携・協力を行う。

3.引き続き、北朝鮮に対しては、国連安保理決議1695号の義務の誠実な履行、すべての核兵器及び既存の核計画の放棄並びに核兵器不拡散条約(NPT)及びIAEA保障措置への早期復帰を約束した六者会合の共同声明の完全な実施を改めて強く求める。

4.なお、今回の措置のうち特に輸入禁止等に伴って影響を受ける方々があると考えるが、我が国の安全保障のために是非御理解と御協力をお願いしたい。政府としては、このような方々に対し、実情に応じきめ細かく支援を図ってまいりたい。このため、対北朝鮮輸入禁止等に関する緊急対策会議を立ち上げ、関係省庁に具体策の検討を指示したところである。




<< 前の項目に戻る 次の項目に進む >>