第2章 地域別に見た外交 |
1 ロシア
【日露関係】
<北方領土問題と平和条約交渉>
日露間の最大の懸案は平和条約締結問題であり、日本政府は我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した方針の下、粘り強く交渉を続けてきている。
2004年6月のシーアイランド・サミットの際に行われた日露首脳会談においては、プーチン大統領による2005年初めの訪日が合意されたほか、小泉純一郎総理大臣が、日露修好150周年(注4)にあたる2005年という歴史的に重要な節目の年に向けて平和条約交渉を前進させることが両首脳の使命である旨強調し、これに対し、プーチン大統領も領土問題を解決し平和条約を締結することが必要であることを確認した。
小泉総理大臣はその後、9月に現職の総理大臣としては初めて洋上からの北方四島の視察を行い、領土問題が国民全体に関わる重要な問題であること及び平和条約締結は日露双方の利益となることを強調した。一方、ロシア側は、11月にラヴロフ外相がロシアのテレビ番組の中で、対日関係の重要性、領土問題の解決による平和条約締結の必要性を強調しつつ、1956年の日ソ共同宣言(注5)がロシアにとり義務的なものであるとする一方、同宣言は二島の日本への引渡しにより終止符を打つことを規定していると発言し、翌日プーチン大統領が上記の発言を支持(注6)した。
町村孝外務大臣は、11月、チリでのAPEC閣僚会議の際に行われた日露外相会談において、東京宣言(注7)に従って領土問題を解決し平和条約を締結することが重要であることを改めて指摘した。また、APEC首脳会議の際に行われた日露首脳会談において、プーチン大統領の訪日に向けて、外相の相互訪問をはじめ、あらゆるレベルで引き続き精力的に協議していくことで一致した。これを受け、2005年1月、町村外務大臣が訪露して行われた日露外相会談において、両大臣は領土問題については両国の立場に隔たりはあるが、真剣な話し合いを続けていくことで双方の立場に「架け橋」をつくり、隔たりを埋める努力を続けていくことや、大統領の訪日に向けて、引き続き、領土問題について精力的に交渉を進めていくことで意見の一致を見た。
▲APEC首脳会議に際し、プーチン大統領との会談に臨む小泉総理大臣(11月 提供:内閣広報室)
<日露経済関係>
日露の経済関係は、好調なロシア経済及び日本の民間企業の対露ビジネスへの関心の増大等を背景に引き続き拡大している。2004年の日露間の貿易高はドル建てで対前年比5割増の大幅増となり、約90億ドルの水準に達し、ソ連からロシア時代を通じて過去最高額を記録した。
政府としても、民間企業の対露ビジネス上の問題点の是正を種々の政府間協議の場でロシアに対し働きかけてきたほか、2004年6月、日露貿易投資促進機構の日本側機構の活動を正式に開始し、企業やビジネス慣行に関する情報の提供などを通じたビジネス支援活動を行っている。また、ロシア国内に7つある日本センターを通じて、経済改革支援として、経営関連講座、訪日研修、日本語講座、経済交流促進支援としてビジネス・マッチング、日本語講座等を行った。 民間レベルでも引き続き活発な交流が行われている(注8)。
エネルギー分野では、日本企業が参加する石油・天然ガス開発プロジェクトであるサハリン1・2プロジェクトが進展しており、サハリン1では2005年の石油生産開始(天然ガスは需要者開拓中)、サハリン2では2006年の原油の通年の生産開始(現在は夏季のみの限定生産)及び2007年の天然ガス生産開始に向けた工事が進んでいる。太平洋パイプライン・プロジェクトについては、2004年末に東シベリアのタイシェットから太平洋岸のペレヴォズナヤまでの石油パイプラインの建設に関するロシア政府命令が発出された。今後、日露の専門家の間で協力のあり方について具体的な検討が行われる予定である。
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<様々な分野における日露間の協力>
2004年も「日露行動計画」(注9)に基づき、幅広い分野での協力が進められた。政治対話の分野では、延べ70名近くの日本の国会議員が訪露し、ロシアからは、与党「統一ロシア」代表団等(注10)が訪日した。また、4月に開催された日露賢人会議では、安全保障、経済、人的交流等の分野における日露協力の潜在的可能性について議論された。
防衛・治安分野ではロシア海軍艦艇の広島県呉港訪問及び捜索・救難共同訓練(9月)、陸上自衛隊北部方面総監の訪露(11月)などが行われた。
非核化協力分野においては、ロシア退役原潜解体協力事業「希望の星」の第一号プロジェクトであるヴィクターIII級原潜の解体協力事業が12月に完了した。
テロ協力分野では、12月に第3回日露テロ協議が行われたほか、9月の北オセチア共和国における学校占拠事件に関し、国際赤十字社・赤新月社連盟(IFRC)を通じて10万ドルの緊急無償資金協力が行われた。
文化・国民間交流の分野では、10月に金沢で第4回日露フォーラムが開催されたほか、日露青年交流事業(注11)として、2004年には155名にのぼる招聘・派遣が実施されるなど、日露間の交流の裾野の拡大に大きく貢献している。また、2005年1月より日露双方において日露修好150周年関連の各種記念事業が企画されている。
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