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省員近思録

外交の現場から
~省員エッセイ~


外交馬鹿と呼ばれたい

経済局総務参事官室 小林龍一郎


 外務省を内側から改革していこうと、省内の有志が集まって作った会、「変えよう!変わろう!外務省」。この会では、外交に危機意識を抱く省員により甲論乙駁の議論が展開されました。その中で生れたのが「外務省員による小学校訪問」事業です。これは、都内小学校の子供たちに対して、日本にある各国の大使館員と一緒に外国を紹介するとともに外交の現場や国際社会の現実について分かりやすく説明し、外務省と外交に対する子供たちの理解の芽を育てる活動です。外務省にとっては、不祥事続きで失墜した国民の皆様からの信頼を回復し、疲弊した組織としての基礎体力を回復させるための作業と位置づけられるでしょう。今回は、その第一弾として、在京フランス大使館のフィエスキ1等書記官と私が、新宿区立西新宿小学校を訪問して、私が95年から97年にかけて在外研修で赴任していたフランスや西欧第1課勤務中に感じた日仏関係の実態について紹介を行った際の模様を紹介します。

 西新宿小学校に到着後、校長先生、教頭先生としばし懇談。校長先生より、外務省批判が喧しい中、これにめげず若い方々が改革に積極的に取組む姿を見て安心した、小学校訪問という計画については大いに賛同するのでこれからも積極的に地域社会との交流に励んで欲しい旨の言葉を頂戴しました。校長先生はこれまで、児童・生徒レベルでの国際交流を推進しており、西新宿小学校の姉妹校も世界に10校以上あり、毎年国際交流事業を行っているということでした。かつて同校の国際交流事業に関し外務省にささやかな要請を行ったことがあるが、冷たい対応に些か失望したということで、その意味もあり今次訪問には大変喜んでおられる様子でした。

 体育館へ案内されたところ、子供たちの大きな拍手で迎えられました。事前に担任の先生に集めていただいた生徒からの質問表を基に、フランスを紹介していきました。フランス文化を代表するものは何かとの質問には、映画、小説、絵画、料理等例を挙げつつ説明、さらに自然との距離感、美に対する執着(何が正しいかということを考えるのと同様に何が美しいかということを考えること)、楽しく生きることへのこだわり、母国語(フランス語)に対する愛情等、フランス文化の根底にあるものを分かりやすく解説しました。小学校5、6年生であるので、抽象的な話は少し難解な様子でしたが、真剣な顔で話しを聞く生徒が少なくなかったことが印象的でした。また、フランスの小学生の生活(休み時間の遊び、放課後・週末の生活、勉強内容)については、フィエスキ書記官から流暢な日本語で豊富な具体例をもって説明がなされ、子供達も目をかがやかせて聞いていました。中にはフランスの植民地制度や何故フランスにはたくさんの人種がいるのかといった質問をする生徒もおり、フィエスキ書記官もしきりに感心していました。フランスの第一印象は何かというフィエスキ書記官の質問に対して、一人の生徒が挙手をし、「大国であること」と答えたのには、大変驚かされました。外国の子供にさえ自国を大国と思わせるフランスの対外広報戦略あるいは国際社会における存在感の演出の凄さ。「日本の印象は何か?」と外国の小学生に尋ねた場合、どのような答が返ってくるか、笑顔で受け答えするフィエスキ書記官を横目に深く考えさせられました。

 外交と外交官の仕事についての説明については、町内会におけるゴミ出しの問題を喩え話しにして、隣家とのいざこざを解決したり、ゴミの散乱がやがて町内全体に悪影響を与えたり、そして、町内会が上手く働くことが一軒一軒の家にとってプラスになるといった例を引き合いに出しつつ、外交官の役割、外交の意味、相互依存社会における日本の国益の追求といった点について、子供たちの関心を引き出すよう努めました。

 最後に、21世紀の主役となる子供たちに、しっかりと考えて、正しいと思うことを堂々と発言し、そして行動できる大人になろうと強くエールを送り1時間弱の話を締めくくりました。彼らの中の数人でもいいので、今日のこの話を何年か先に思い出して、そして日本外交を支える声の一つになってもらえればと心から祈りました。

 ここで紹介した私の小学校訪問を皮切りに、外務省職員有志によるボランティアでの小学校訪問は現在も続いています。



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