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事務次官会見記録(平成11年11月)


INDEX


・ 事務次官会見記録(11月29日付)
  ・ 東アジア諸国連合+日中韓(ASEAN+3)首脳会議(冒頭発言)
  ・ 世界貿易機関(WTO)シアトル会合(冒頭発言)
  ・ 東アジア諸国連合+日中韓(ASEAN+3)首脳会議
  ・ 国際通貨基金(IMF)専務理事選
  ・ 西暦2000年(Y2K)問題
  ・ エリツィン大統領訪日問題


・ 事務次官会見記録(11月22日付)
  ・ 普天間移設問題(冒頭発言)


・ 事務次官会見記録(11月15日付)
  ・ 米中WTO交渉妥結
  ・ トルコ地震
  ・ 米朝協議
  ・ 外務大臣のWTO出席
  ・ 石原都知事訪台
  ・ 橋本前総理の訪露


・ 事務次官会見記録(11月8日付)
  ・ ARF会期間会合(冒頭発言)
  ・ COP5への評価(冒頭発言)
  ・ ベルリンの壁崩壊10周年(冒頭発言)
  ・ ARF関連
  ・ ABM条約関連
  ・ アナン事務総長来日関係


・ 事務次官会見記録(11月1日付)
  ・ インドネシア新内閣発足(冒頭発言)
  ・ 山本政務次官の印パ訪問(冒頭発言)
  ・ インドネシア関連
  ・ キルギス邦人拉致事件
  ・ 印パ訪問関連
  ・ ロシア・チェチェン情勢
  ・大臣のWTO出席




事務次官会見記録 (平成11年11月29日(月)17:00~ 於会見室)

・ 東南アジア諸国連合+日中韓(ASEAN+3)首脳会議(冒頭発言)

(事務次官)今年後半の首脳外交の大きなイベント、目玉であった東南アジア諸国連合+日中韓(ASEAN+3)首脳会議が、ご承知の通り大変意味のある形で無事終了し、結構なことであったと思っている。東アジア自体、過去2年間経済危機で域内全体に相当危機感があったわけであるが、ようやく経済回復がだんだん定着している時期での会合だったということで、この回復をいかに域内協力を通じて定着させていくかという方向付けができたという意味があったと思う。
 この間ご承知の通り、日本は東アジアの経済危機回復のためにいろいろな支援策を講じたが、これに対する心からなる域内諸国の感謝の念、雰囲気があった中での会議だったと言えるかと思う。
 インドネシアがこれからどうなるかは域内各国とも当然大変関心のあるところであり、「インドネシアの統一支持」という一致した意向表明があった。総理がASEAN+3首脳会議に先だって短時間ながらインドネシアを訪問し、多くの指導者と会われたことは、今後インドネシアの新政権がいろいろ仕事をしていく上での日本の支援を考える上でも非常に意味のある訪問であったと思っている次第である。
 日中韓3者の朝食会は総理のイニシアチブであり、初めてのことで、よかったという気がしている。
 ちなみに、金泳三大統領のころに日中韓の首脳会議をやろうとしたことがある。金大統領は「3カン」(漢字、漢方、環境)をやろうと言っていたが、その当時は熟さず、あまりうまくいかなかったということがあった。やはり、歴史的、文化的に共通する3国が集うのは大変意味があるのであろうと、その前の経緯から思った次第である。

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・ 世界貿易機関(WTO)シアトル会合(冒頭発言)

(事務次官)今度は世界貿易機関(WTO)シアトル会合がいよいよ30日キックオフとなる。なんでも5万人のNGOが集まっているという話はご承知の通りであるが、中には「WTOは人殺しだから、WTOを殺せ」とかいう主張の反グローバリゼーション・タイプのNGOの方たちとか、相当騒然とした中での会議開催ということのようである。ちなみに、前回のラウンドであるガットのウルグアイ・ラウンドはまさにウルグアイという南米の国で喧噪が一切ない中でスタートしたラウンドであった。
 10何年間の中で作業の内容もはるかに多岐にわたり、貿易等のルールに対する受け止め方もはるかに変わってきたという背景の中での会合である。「まだ回答が見えない多元連立方程式」みたいな話で、それぞれの難しいアイテムをどうやってまとめ上げていって、来世紀最初のラウンドのキックオフにつなげるか、なかなかこれから大変な作業が控えているというのが実感である。

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・ 東アジア諸国連合+日中韓(ASEAN+3)首脳会議

(問)中国は伝えられるところによると、安全保障問題について触れたがらなかったとか、来年以降毎年開くことについても(態度が)あまりはっきりしていないが、この枠組みを今後どう議題や定例化の面で進めていくべきだとお考えか。

(事務次官)1回できたことに意味があるし、これを踏まえて今から「来年はどうしようか」と決める話ではないと思うし、大事にしていくということだろうと思う。中国側にしてみれば、安全保障問題については取り上げるのにややためらいがあるというような分析もあるが、要はまずは経済問題でスタートしたわけで、3カ国にとってどういうことがあり得るのかはこれからゆっくり時間をかけて連絡を取り合って考えていけばいいことである。「来年はこうする、こうしません」という話ではないと思う。

(問)今回米国が入っていないが、米国が入っていないアジアの3つの国で枠組みを作ったことの日本外交にとっての意味はどうか。幅を広げたという戦略的な意味があるのか。

(事務次官)これはまさにアジアの域内諸国が集まったわけで、それ自体に意味があるし、歴史的には非常にご縁の深い国で、日中韓は納得できる一つの塊という気はする。文化で言えばあとベトナムが入るのかという気がするが、近世史、現代史だとやはり日中韓のご縁はいろいろ深いわけである。しかし、そういう歴史だけの話だけではなく、当然経済的にも分かち合う利益が広がっている。他方、米国が入っていないというのは域内諸国だけで集まったということである。別にそれをもって、「これからは東アジアだってアジアの話は米国を排除してやるんだ」とか、そういう話でないことはもとよりだろうと思う。米国は当然域外であるが、例えば東アジアの各国が経済回復しているのは何故かと言えば、米国への輸出が伸びているからであるし、そういう意味ですべての東アジアのアジェンダが域内で全部仕切れるということでないことは申すまでもないことだろうと思う。安全保障にしても然りである。

(問)やはり米国は域外とはいえ排除できない存在であり、米国にとってASEAN+3がどう映るかということだが。

(事務次官)米国にとってどう映るかを言えばこれまた昔語りになるが、一時アジア太平洋経済協力会議(APEC)が始まったころに「東アジア経済会議(EAEC)」という話があった。結果的には同じ構成だった。米国の中には「せっかくAPECというアジア太平洋全体の枠組みを作ったときに、その中で太平洋の真ん中で線を引いてアジアだけで集まるのはいかがなものか」という話があったのが5、6年前だった。ただそうは言っても、こういうのがスタートしていてそれはそれでもちろん域内共通の話はいろいろあるわけであり、問題意識もあり、米国が域内にあるのに排除しているなら排除だが、域内で集まるのに域外国が入っていないのはそれは別に排除ということではないだろうと思う。どこの国もこれからは米国との関係は重要ではないとか、米国との付き合いは重要でないとか、そういうことを別に言っているわけではない。

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・ 国際通貨基金(IMF)専務理事選

(問)国際通貨基金(IMF)専務理事の件で榊原さんの名前が出ているが、現時点で政府の取り組み、外務省としての働きかけは如何。

(事務次官)まだ様子を見ながらということで、すべてはこれからどういうふうにしようかという段階とご理解いただければいいと思う。

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・ 西暦2000年(Y2K)問題

(問)西暦2000年(Y2K)問題で他の省庁は大臣が出てくるとかいろいろ対応が取られるやに聞いているが、外務省としてはどういう対応を取られるのか。それをいずれ発表するのかどうか。

(事務次官)危機感は我々としても持っており、今年の初めあるいはもっと前からいろいろ作業をやっている。具体的にこの年末年始をどうするかは今検討している。ただ、日本の中でどうするかだと大晦日から元旦だが、世界中でどうなっているかは見ていなければならない時間帯が長いわけで、政府部内で万が一に備えて体制作りをやっている中で、外務省の場合は国外で何が起きるかということと、外務省自身のこの建物の中等で何があるか、それを両方考えなければならないのかも知れない。私の記憶では、飛行機が飛ぶ、鉄道が動くということとは仕事の内容が違うので、外務省自身の機器、機械では他に比べて心配はそんなに大きなものではなかったのではないかと思う。いずれにしても、何か起きたらいけないのでいろいろ考えているとご理解いただければと思う。

(問)日本は比較的体制が整備されていると思うが、中にはいろんな危惧のある国もあり、邦人保護という観点に特に絞られてくるということか。

(事務次官)結局、何が、どういう問題が起きるかというと、「何かの事故がどこかで起きてしまったときにどうするか」ということだから、その意味ではそうであり、2000年になるのは次から次へと1時間ごとに新たな国になっていくわけだから、体制としても日本の中でいえば大晦日から元旦になって良かった良かっただが、ちょっとオペレーションが長くなるのかもしれないという気がしている。

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・ エリツィン大統領訪日問題

(問)先週26日の閣議後の会見で、外相と官房長官の方からイスタンブールでエリツィン大統領が有馬代表に「来年3月か4月ごろ訪日する」と言った旨明らかにされたが、次官の受け止め方は如何。

(事務次官)「年内訪日」ということでずっとやってきたが、そうこうするうちに年末も迫ってきている中で、だんだん難しくなってきたかなあという感じはあった。そういう背景の下で11月後半にそういう話があったのを受けて、ロシア側と今後の持っていき方等についてやり取りをしなければならないだろうというのが現状である。

(問)本当に3月か4月に来るのかをロシア外務省に確認作業中ということか。

(事務次官)ロシア側にしても当初「年内」だったわけであるし、エリツィン大統領の任期は夏で終わってしまうわけであるから、どういうタイミングで意味のある形で進展を図るかがこれからの日本政府にとってもロシア側にとっても詰めていかなければならないことだろう。そういう中でのイスタンブール発言があったのを受けて、具体的にどうやっていくか、いろいろやり取りをやらねばならないと思っている。

(問)その前日に橋本前首相と23分間電話で会談されているが、そのときには訪日に一切触れず、翌日イスタンブールでそんなに親しくないと思われる有馬代表に話していったということはどう解釈したらよいか。

(事務次官)「なぜでしょうね」とその辺の話をするよりも、要は今年が終わって来年にかけて、来年のなるべく早い時期をにらんでどう動かしていくか、どう立ち上げていくかがこれからの日露当局間で詰めていくということでご理解いただきたい。

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事務次官会見記録 (平成11年11月22日(月)17:00~ 於会見室)

・ 普天間移設問題(冒頭発言)

(事務次官)沖縄の普天間基地移設問題について申し上げる。普天間飛行場の問題はご承知の通り日米沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)のプロセスの中でも取り組むべき最重要課題としてあったわけであるが、今般、稲嶺知事が移転先候補地について見解を表明された。知事はこの間、非常に努力をなさっていたことをわれわれとしては承知しているわけであり、こういう表明について、まずは衷心より敬意を表したいと思っている。
 政府としても、基本的にはこの件のこの提案を尊重するということだと思うが、まずは地元の名護市のご理解とご協力をいただく必要があるので、県と地元名護市の話し合いを見守っていくというのがこれからの話だと思う。いずれにしても、外務省としてもこれまで普天間の問題については全力を上げてきているが、知事による解決策の表明があったのを受けて、この問題の一日も早い解決に向けて全力を上げたいと考えている。

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・ 質疑応答

(問)知事の表明の中で、施設の使用は「15年の期限を設けることが必要」ということだが、次官は日米関係を踏まえてこの点をどのようにご覧になるか。

(事務次官)知事の表明された中にはいろいろなポイントが含まれており、その辺は知事のお考えを更に伺った上でということで、今の段階で「これはこう」というコメントは、まだちょっと先にしたいと思っている。

(問)そうすると、いずれ知事と外務省で何らかの話し合いを持たれるお考えか。

(事務次官)当然のことながら、先ずは県と地元の話があって、その上で政府として移転先の振興策や土地利用等色々な話を政府全体として知事のお考えを伺って、フォローアップし、動かしていくプロセスがこれからあるわけで、そういう中で政府の一翼をなす外務省としても色々なことを参画してやっていくということである。

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事務次官会見記録 (平成11年11月15日(月)17:00~ 於会見室)

・ 米中WTO交渉妥結

(事務次官)先週から北京で行われてきた中国の世界貿易機関(WTO)加盟に関する米中2国間交渉が実質的に妥結し、近く署名式が予定されていると聞いている。まずは非常に歓迎したいと考えている。申すまでもなく、WTOに中国が加盟するということは、WTOの体制強化という観点からも非常に重要であり、ご承知の通り、従来から中国の早期加盟を支持してきた次第である。
 4月の時点で、米中合意が出来上がらなかったため心配していた。今次交渉で流れてしまうとどういうことになるか心配していたが、妥結にこぎ着けたということのようで喜んでいる。もちろん、これで中国のWTO加盟の手続きが全部終わるというわけでなく、欧州連合(EU)などとのほかの交渉が残っているが、中国のWTO早期加盟へのモメンタムが付くことは間違いないわけで、日本としても協力していきたいという考えである。最後で潰れないように期待している。

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・ トルコ地震

(事務次官)わが国の対応について、既に緊急援助隊の先遣隊を派遣した次第であるが、目下、本日中に医療チーム19名の派遣を行うべく調整を行っている。緊急援助物資として毛布、スリーピングマット等の供与とか、無償協力の供与についても検討を進めているところである。(次官就任以来)2カ月半ちょっとで地震の話は3回目であり、この種の話は起こるたびに大変犠牲者をお気の毒に思う次第であるが、ちょっと量が多すぎるという気がしている。とにかく対応に遺漏無きを期したいと思っている。

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・ 米朝協議

(事務次官)本15日からベルリンで米朝協議が始まる。米代表がカートマン朝鮮半島問題担当特使、北朝鮮が金桂寛外務副相ということである。この米朝協議のプロセスでうまく動いて、朝鮮半島の緊張緩和と北朝鮮をめぐる諸問題の解決に向けて物事が動き出すことになれば、非常に結構なことだと思っている。まずはこの協議の帰趨を見守りたいと思っている。もとより、そう簡単に物事が単線的に前に動くほど簡単なことではないと思うが、やはりペリー報告以来、日米韓3国が連携していたが、朝鮮半島の緊張緩和を実現することはこの地域のどの国にとっても大変重要なピークになる話であり、日本としてもいろいろ対応を考えていきたいと思っている。

(問)米朝協議で「日本としても対応を考えていきたい」とおっしゃったが、これはさらなる制裁緩和を意味するのか。

(事務次官)そうではない。まずは米朝協議自体がどう動くか、半島の緊張緩和という観点からどういう対話になって、それは日米間にとってどういう意味合いを持つかということとか、その中で日本として今後日朝関係は日朝関係でいろいろやらなければならないことがあり、どう考えるかということで、一体感をもって眺めるということに尽きると思う。

(問)前回の協議では一応ミサイル発射を凍結する形でこの問題については決着が付いたような印象を受けているが、今回の米朝協議でお互いに詰めるべきポイントはどういうことになるのか。

(事務次官)ミサイル発射はとりあえず当面凍結とはいえ、ミサイルの問題はそれで全部終わるわけではない。ミサイルの問題だけでもいろいろなことがあるし、それで緊張が緩和されたわけでもない。長い道のりだと思う。他方、米朝関係をどこまで動かせるのか、動かせないのか。そのようにいろいろあると思う。

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・ 外務大臣のWTO出席

(問)外務大臣はWTOに行けそうか、あるいは行きたいと思っているのか。

(事務次官)国会日程にかかる話であり、私の方から確たることは表に申せない状況がしばらく続くだろうと思う。もちろん、国会日程が許す限り、大変重要な会合なので、行きたくないという話はないと思う。

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・ 石原都知事の訪台

(問)東京都の石原知事が台湾を訪問し、台湾を「国家」と表現し発言しているようだが、これについてどういう考えをお持ちか。

(事務次官)台湾にはいままでもいろいろな地方自治体の長が訪問されている。そういう地方公共団体の長による台湾訪問というものが、日本政府の外交上の立場を代表するものではもとよりないわけである。台湾に関する政府の基本的立場は、日中共同声明にある通り、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国の立場を十分理解し尊重する」というものであり、そういう立場というものには何ら変更がない。

(問)石原都知事は地方自治体の長であるが、中でも東京都の長ということで発言も影響が大きいというか、言論界でもいろいろ発言してきた人であり、その辺の重みを勘案するとどんなものか。

(事務次官)ほかの県だと軽いからよくて、東京都だと、というような話ではなく、自治体の長という立場においては従来からも台湾を訪問している知事はいろいろおられるし、他方、国家との関係において言えば、日本政府の立場はいま申し上げたことに尽きるということである。そこにおいて重いか軽いかということではなく、どこの県ならよくて、都だとより問題が大きかろうという話ではない。

(問)この件で中国から何らかの問い合わせなどはあったか。

(事務次官)12日の夕刻、在京中国大使館の程遠華公使から河野アジア局参事官に申し入れがあった。中国側からは「地方自治体の長であっても東京都の長である。国を代表する顔を有しているので重大視している」とあり、これに対して当方からは「都知事はあくまでも地方公共団体の長であり、知事の訪問は問題ないと思う」と述べた。

(問)この申し入れはどこで行われたのか。

(事務次官)外務省である。

(問)外務省としては、首都の知事であるということは関係ないということか。

(事務次官)地方公共団体の長であるという点においては、どこの知事ならよくて、どこの知事なら駄目だという話ではない。要するに、国とは関係がないということにおいては同じだろう。

(問)申し入れというのは、「日本政府は慎重に対応してほしい」ということか。

(事務次官)「重大視している」旨述べた。

(問)向こうはただそう述べたということだが、こちらからは。。

(事務次官)こちらからは私が言ったような立場を言ったということである。繰り返すと、「都知事はあくまで地方公共団体の長であり、都知事の訪問は問題ではないと考える」ということである。

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・ 橋本前総理の訪露

(問)橋本前総理のロシア訪問については如何。

(事務次官)橋本前総理は剣道の大会にいらっしゃるということで、先ほど出発された。そういう中で、せっかくモスクワに赴かれるわけなので、どういうような出会いがあるかというような話はいまのところまだ姿が見えていない。今後のロシア側の対応をまずは眺めるということだと思う。

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事務次官会見記録 (平成11年11月8日(月)17:00~ 於会見室)

・ ARF会期間会合(冒頭発言)

(事務次官)幾つかご披露する事項がある。一つは、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の会期間における事務的な会合、インターセッショナル支援グループが今月13、14の両日東京で開催される。インターセッショナル支援グループは、閣僚会議が年1回あり、その間の1年間に実務レベルでいろいろな作業を積み上げるのがこれまでのプラクティスだったが、今度の会合は来年夏に開催される次の閣僚会合までに2回開催が予定されている会合の第1回目である。日本とシンガポールが共同議長を務める。
 ARF参加国21カ国および欧州連合(EU)から外交・防衛当局者、審議官、課長級が出席し、わが国からは田中信明総合外交政策局審議官ほかが出席する。
 今次会合ではARFのプロセスにおける信頼醸成措置を包括的に検討する。地域安全保障情勢、ARFの将来の方向性等についても議論する予定である。

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・ COP5への評価(冒頭発言)

(事務次官)もう一つは、気候変動枠組み条約第5回締約国会合(COP5)は10月25日から11月5日までボンで開催され、閣僚級会合(11月2~4日)に日本から清水環境庁長官および山本外務政務次官が出席した。今回の会合は来年11月に開催されるCOP6(ハーグ)においての主要論点について決議を行うという「ブエノスアイレス行動計画」(COP4で採択)に沿った作業の着実な進展を図ることが目的であった。
 COP6を11月にオランダ・ハーグで開催し、それまでに2回の準備会合などワークショップを開催する等、COP6に向けた交渉の段取りを確定した。第2に、京都会議で出された論点(排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム等)について交渉用テキストを作成することに合意した。それから閣僚級会合をはじめとしていろいろな機会に日本として、多くの国もそうだが、交渉の進展を強く訴えてかなりCOP6に向けて流れを作ることができた。その意味において、日本が当初狙っていた成果がおおむね得られたと考えている。
 閣僚会合では、今後の交渉を加速するために、日本から「特別調整官(スペシャル・ファシリテーター)」を設けるという提案を行って、議論をリードした結果、今後の交渉プロセスの強化が確認された。

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・ ベルリンの壁崩壊10周年(冒頭発言)

(事務次官)それから、明日でベルリンの壁が開いてちょうど10年ということである。壁が開いたという機械的な事件というより、第1次大戦から始まってロシア革命、第2次大戦、冷戦という好むと好まざるとに関わらず20世紀の一番大きな流れが終わったという意味において、あの当時も非常に感慨があった。当時はそれに先だってだれも冷戦が終わるとは思っていなかった状況をいま思い起こすと、「それから10年たったか」という気がする。いろいろなレッスンがあるが、その後の10年の国際情勢はある意味で冷戦の時よりもはるかに変化が多様化し、変化のスピードが早くなったというのが実感である。その中で、あの時もつくづく感じたが、国際情勢は時には予想をはるかに超えるスピードで全くいままで想定したのとは違う方向に流れが動きだすということを目の当たりにしたわけで、そういうことを10年たって思うと、それでは国際情勢をどう眺めそれに対応していくかはこれまたいろいろ課題はあるが、この10年を改めて思って、当時いろいろなことに対応した者として感慨が深い。

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・ ARF関連

(問)ARFの中で、「信頼醸成措置を包括的に検討する」とあるが、もう少し具体的に分からないか。

(事務次官)ARFが作業を始めた頃から「信頼醸成措置」が一つの雄大なアジェンダだという認識は皆にあったが、なかなか関係国などで必ずしも方向性とか思惑とかが収れんしにくいところでもあった。まずはその辺の何を排除するとか、何に絞り込むとかいうことではなく、その意味で「包括的」という言葉になっているのだろうと思う。いまの段階で「ここを中心に」とかいう話にはなかなかなっておらず、むしろキックオフみたいなものとして受けとめていただければいいのではないかと思う。だんだん話している中で「信頼醸成措置」の具体的なものがもう少し浮かんでくるのだろうと思う。欧州でご承知の通り「信頼醸成措置」が相当程度積み上げ、具体的な成果があるが、アジア・サイドの場合そこまであまりやったことがないし、欧州の経験をそのまま持ってこられるのかどうかもまだよく見えないところがある中での作業開始、というふうに考えていただければと思う。

(問)日本は何か提案するのか。

(事務次官)日本は議長だから。議論を生産的に前に動かせればそれが一番いいのではないかと思っている。

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・ ABM条約関連

(問)国連第1委員会でABM条約順守を賛成多数で可決したが、この件について如何。

(事務次官)賛成多数だが棄権も多数で、賛成50、棄権73で、日本も棄権した。先ほど冷戦について触れたが、これも米ソの時代、その後米露になったが、核兵器国の間の戦略バランスはすぐれて両国間、当事者間の交渉で動かしてきたわけで、それなりにSALTからSTARTへと動いているわけである。そういう過程でいろいろ進展が図られたのを急に国連の総会の場でやり取りすることによって、実質の軍縮が動くのかという感じを持った国が多かったので、非常に多くの国が棄権に回ったのではないかと思う。われわれもまずはこういうのは昔で言えば「両核超大国」が戦略バランスを踏まえてどう整理するかであって、そこを百何カ国の決議で「右せんか左せんか」というのにはちょっとなじまないのではないか、というのが日本を含めた多くの国の感じなのだと思う。

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・ アナン事務総長来日関連

(問)アナン国連事務総長が来日するが、日本の東チモールでのPKOについてどういう参加をするかというようなことで何か具体的な話しが進むのか。

(事務次官)PKOの話しを具体的に国連のコマンドの下に切り替えて、平和維持をどうするかという話しにまではまだちょっと熟していないのではないかという印象があり、まずいまの段階では、東チモール暫定行政機構(UNTAET)の組織を立ち上げて、幹部人事などがスタートではなかろうかという気がしている。

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事務次官会見記録 (平成11年11月1日(月)17:00~ 於会見室)

・ インドネシア新内閣発足(冒頭発言)

(事務次官)先週を振り返ってみると、10月29日にインドネシアで新閣僚の就任式が行われたが、ワヒド大統領の指導力の下に、思ったより非常に速やかに新内閣がインドネシア国民の幅広い支持を得た形で発足したことは大変良かったという気がしている。
 日本政府としては、ワヒド大統領が率いる新内閣の下で改革努力が進むことを期待している。いろんな分野での改革というものはインドネシア自身にとって非常に重要であろうと考えるわけである。政府としてはそういう改革努力に協力と支援を惜しまない姿勢で臨みたいと思っている。
 新体制が成立したわけで、これから人的お付き合いというか、いろいろなレベルでともに働く関係というか、そういうものを作っていくことにわれわれとして意を用いていかなければならないと思っている。

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・ 山本政務次官の印パ訪問(冒頭発言)

(事務次官)山本外務政務次官にインドとパキスタンに行っていただいた。インドの方は民主的なプロセスでちょうど新たな政権が成立した直後で、パキスタンは必ずしも民主的ではない、むしろ成立のプロセスが全然違うわけであるが、新体制が成立したという状況で、両方の政権担当者と意見交換していただいたのは、自画自賛になるかもしれないが、非常にタイムリーだったと思っている。
 インド、パキスタン両国を見ていると、政治の節目ごとにあの地域で両国間の緊張が高まるのは何より心配なわけである。いままで見ていると、そういう非常な緊張の高まりというようなことはないし、日本にとって非常に重大な関心事であるところの両国の包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名も、両政権ともそれぞれ言い方は違うが、「何とか努力してみたい」という雰囲気はあるわけで、その意味ではそういう流れが進んでいくことを期待したいという気がしている。

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・ インドネシア関連

(問)日本はワヒド政権にどの程度人脈と言えるものがあるのか。

(事務次官)大使館とかこれまでのインドネシア語の人たちが、「どのくらい個々の誰さんをどう知っているか」というようなことは、私としては知らないが、結構幅広くいろんな付き合いをしていたので、それはそれなりにいろんなコンタクトがあったと承知している。その意味で、全く知らない人たちが急に選ばれたということではないのではないかと思う。ただ、やっぱり閣僚構成を見ていると、さすがに大きな国でいろんな切り口というか、いろいろなグループというか、諸階層、諸地域がある中でそのバランスを非常に考えた内閣構成だという気がしている。

(問)「インドネシアの改革に協力と支援を惜しまない」ということだが、さし当たり具体的にどういう所に一番重点を置かれるか。

(事務次官)インドネシアは東アジアの経済危機の大波が来たときに非常に大きく打撃を被った。そこには「構造的な問題があるのではないか」と指摘する向きもあった。インドネシア当局にしてもいろいろ取り組みたいところがあるのだと思う。そういう中で、国際金融筋などいろいろな面での信認を回復するのが非常に重要だろうし、いままでの経済の中でそれなりに問題だと言われていた話を清算していくことが重要だと思う。例えば、いろいろな分析を見ても、ファミリービジネスといったものは非常に経済の資源配分をおかしくしたのではないかと言う人もいるし、金融システムがいろんな意味で体質的に弱いのだろうと思う。その辺をどうしていくか。新政権ができて、ある意味で人身一新のようなところがあるのだろうと思うし、大いに期待するところだと思う。

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・ キルギス邦人拉致事件

(問)キルギスの邦人拉致事件だが、身代金を支払ったのではないかという報道が多々あるが、この件については改めて如何。

(事務次官)そういう憶測が出るだろうとは思っていたが、これはやっていない。帰ってきた4人の方などから話を聞くと、武装集団の実態とか、なかなかわれわれとしては仕事をやっている間あまり見えなかった話が出てきたりして、私も何回も言ったかと思うが、これはローカルなゲリラ戦闘の中に巻き込まれた事件で、「誘拐」とかそういう感じで見ると間違えるだろうと思っていたが、やはり「風の如く来たりて去る」戦闘集団みたいな状況というのはなかなか大変なものがあるし、キルギス政府と、協力したタジキスタン政府が解決してくれて良かったというのが実感である。特に、私も金曜日に官邸に4人の方がいらっしゃった時に陪席していて、やはり活字でそういう人の名前を知ってフォローするのと、実際生身の人間にお目にかかるのとでは全然違って、非常に良かったなと感動した次第である。

(問)事件を踏まえて情報収集面の強化を検討していると思うが、具体的にはどうのようなことをしているか。

(事務次官)まずは、大使館のない国にどう対応するか、もう一度いろいろ考え直さなければならないと思っている。それから情報のネットワークを結び直すとか、大使館のないところで起きたからといって大使館のないところに全部大使館を開くわけにはいかないので、そういう中でどうやって安全なアセスメントを事前により効果的にやるか等、いろいろな事を目下、考えている次第である。こんなことがまた起こったらたまらないから。

(問)身代金は払っていなくて、逆に武装勢力の捕虜を解放したから(邦人が)解放されたんだという報道も一部にあるが。

(事務次官)われわれは当事者でなくあくまでキルギス政府が当事者でやってもらうという基本姿勢できているし、その中でどれが決め手になったのか、私どもも全部知っているとは思わない。そもそも一時期非常に戦闘を激化させたが、それだって一つのカードだったのだと思う。

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・ 印パ訪問関連

(問)山本次官のインド、パキスタン訪問に関連して、川島次官は「タイムリーだった」「CTBT問題で何とか努力してみたいという空気がある」とおっしゃったが、もう少し具体的な感触は如何。以前はどちらの国も割と前向きな事を言っていたと思うが、米国が拒否したので若干後退したりすると良くないと思うがどうか。

(事務次官)まさに米国でああいうことになった結果、CTBTへの流れが壊れたら大変だと思っていたのが問題意識であるが、インドにしても「国会が始まったばかりで、コンセンサスを得られるまでちょっと時間をもらいたいと思うが、可能な限りコンセンサスを得るよう努力する」というような話をして、パキスタンにしてもCTBTへの流れというものを日本が非常に重視していて、そこさえクリアーすれば日本との関係で日本は前向きに動かせるということは分かっている、そういうやり取りだと思う。どちらにしてもお互いに相手がどうやるかを見ている。それがスパッとした形ですぐ出るかは別だが。

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・ ロシア・チェチェン情勢

(問)ロシア軍の攻撃が激しさを増しているとの現地からの報道があるが、日本政府は現在、このロシア政府の行動を支持しているという理解でよろしいか。

(事務次官)いまのポジションがどうか、ちょっとよく記憶していないが、あのような内戦が速やかに終わり、殺傷が終わることを非常に期待するが、基本的に「お前けしからんじゃないか」というようなやり取りをやっているとは・・・。ちょっと自信をもってそれ以上のいまの見方は・・・。後でお話する。

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・ 大臣のWTO出席

(問)キルギスも終わり、北朝鮮も一応・・・

(事務次官)終わり?

(問)ということで、今年もあと2カ月だが、国会会期中の大臣日程でWTOシアトル会議に大臣自身が行けるかどうかが焦点になってくると思う。今の段階でどうなっているか。

(事務次官)国会がちょうど始まったばかりで、こればかりは国会の全般的な状況を見ないと私どもで「こうあるべきだ」とか「これができるでしょう」とか言える状況ではない。

(問)外務省としてはやはりぜひ行っていただきたいということか。

(事務次官)それは一つの重要な会議であり、あれで物事を立ち上げるわけだから(行っていただきたい)。あと2カ月しかないと言えば2カ月しかないが、2カ月は結構長いからいろいろなことがまだあろうかと思うが。                        

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