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報道官会見要旨 (平成10年5月29日(金)17:00~ 於 会見室)(報道官)26日(火)の記者会見でミャンマーの食糧増産計画の問題について質問があったが、その後、与党政策調整会議において自民党からはご了解をいただき、社民党、さきがけからは引き続き意見、質問が出されたが、最終的には28日、政府の判断で対応を決定するようにという形で取りまとめられた。この与党政策調整会議の結果を受け、所用の手続きを経て可能な限り早急にこの援助を実施に移したいと考えている。この食糧増産援助は、世界のアヘン生産量の約半分がミャンマーで生産されている状況に鑑みて、国連薬物統制計画(UNDCP)との連携を図りつつ、食糧増産を通じて国境地域の少数民族の生活改善を図るとともに、併せて麻薬の原料であるケシ栽培から代替作物の転作努力に貢献しようとするものであり、その意味で民衆に直接役立つ基礎生活分野、「ベーシック・ヒューマン・ニーズ」の分野の案件という観点から取り上げていきたいということである。ミャンマーの経済協力については、民主化および人権状況の改善を見守りつつ、既往継続案件やいま申し上げたような民衆に直接役立つ基礎生活分野での案件をケースバイケースで検討の上実施する方針を取ってきたが、今回の援助もそのような方針に沿うものと考えている次第である。
同時に、ミャンマー政府に対しては同国の民主化の進展および人権状況の改善が必要であるという基本的認識の下に、あらゆる機会にミャンマー政府に対してそのような方向でミャンマー政府が努力するように粘り強く働きかけていく次第である。その一環として、原口外務審議官がバーミンガム・サミットの結果報告のためミャンマー、タイ、シンガポールを訪問途次にあるが、今月26日にオン・ジョー外務大臣に会い、27日にはキン・ニュン第1書記と会談し、橋本総理よりタン・シュエ首相あての親書を手交した。橋本総理の親書の中には、ヤンゴン国際空港の案件で円借款の一部を再開したとのわが国政府の決断に応えてミャンマー政府の民主化、人権面での前向きな対応を要請するとのメッセージが入っている。具体的にはアウン・サン・スー・チー女史をはじめとするNLDと意味のある対話を行うことが重要であり、また適正な法執行手続きの確立や政党活動の自由の拡大等、可能な分野から前向きな措置を取ることを申し出るとの趣旨のメッセージも入っている。また、原口外務審議官が現地滞在中、NLDの集会が27、28日に予定されている関係で、ミャンマー当局がこの集会を許可しないのではないか、集会の関係者に対して足止めを掛けているのではないかとのうわさ、報道があったが、集会自体は結果的に開催を認められ、アウン・サン・スー・チー女史もこの集会における演説の中で、「集会を開かせる決断をした当局に感謝し敬意を表する」と述べた経緯がある。
以上のような次第で、食糧増産援助については、所用の手続きを経て可能な限り早急に実施に移したいと考えている。(問)パキスタンの核実験については英国が提案している国際会議で日本としてはどの様な役割を果たしたいと考えるか。
(報道官)官房長官の今朝の談話の中でも、わが国はパキスタンに核実験、核開発の即時停止を求める、また、インドおよびパキスタンに対し危険な核軍拡競争を開始しないよう、そして核拡散防止条約(NPT)、核実験全面禁止条約(CTBT)を無条件に締結するよう改めて求めるとともに、わが国はさらに国連安保理や国際的な場で核不拡散体制の堅持、南アジアの平和維持の問題に積極的に取り組むことが表明されている。そのような観点から、日本としても国連安保理をはじめとして国際的な場で本問題については関係国と積極的に話し合っていきたいと考えている。いま伝えられている国際会議の構想では、G8とP5で合計9カ国の外相が集まって話し合ったらどうかというアイデアで浮上しているようであり、先ほどらい申し上げている我々の立場から見ても、時宜を得たものであると考える。但し、この会議自体については関係国間で連絡を取り合いながら調整をしているところであり、今の段階でそれ以上具体的に申し上げることは差し控えたい。
(問)パキスタンの核実験に対して日本としていろいろな措置を取ったわけだが、さらにまた核実験をするのではないかとの推測を含めた報道があるが、その場合日本としてはどのように対応するのか。
(報道官)また実験があるかどうかはなかなか分からないところである。今朝発表した措置自体かなりの中身を含んでいるわけで、もとよりこの措置により日本の立場は明確に伝わることを期待している。それ以上にもしまた核実験があった場合にさらなる措置が考え得るのか否かは、いまのこの段階で申し上げるのはまだ早いかと思う。
(問)カシミールで印パ両軍の対峙、小衝突が伝えられているようだが、現地の状況、パキスタンの非常事態宣言の模様などについては如何。
(報道官)今のこの時点でカシミールの具体的な状況がどうなっているかは、必ずしも詳細を把握していないが、非常事態宣言については昨日パキスタン全土に出されたようである。ただ、非常事態宣言といってもいわゆる戒厳令に至るものではないと聞いており、いままでのところ国内には特段の混乱は見られず、比較的に平静を保っていると聞いている。
(問)印パ両軍がアラート(警戒態勢)を上げるといった状況でもないようか。
(報道官)アラート状態というような詳細なことは承知していない。
報道官会見要旨 (平成10年5月26日(火)17:00~ 於 会見室)(問)自衛隊機、巡視船の撤収は決まったのか。
(報道官)先ほど官房長官の記者会見で発表があったと思うが、本日午後外務省から現地情勢に特段の変化がない旨連絡し、外務大臣から運輸大臣、防衛庁長官にそれぞれ自衛隊輸送機及び海上保安庁巡視船の撤収につき依頼文書を発出した。
この決定を受け所要の準備が整い次第、シンガポールを発ち日本に向かうことになる。(問)巡視船の場合、一度帰還すると何かまた緊急事態があれば大変だが、日本に帰るのかそれとも事態に備えてどこかで待機するのか。
(報道官)日本に向かって航海を始めるものと理解している。もし状況が変わったらということは有り得るかもしれないが、撤収してもいいだろうと判断するに至ったからである。端的に言って、緊急事態発生で邦人の安全を期すため自衛隊機と巡視船を待機させていたが、緊急事態とは分かりやすく言えば退避勧告が出る危険度5の事態である。その後の状況を見ると、そうした事態に備えるということは、必要なくなってきただろうということである。そこで自衛隊機、巡視船は戻すことに決定した次第である。
(問)巡視船の派遣については、自衛隊法を根拠にした自衛隊機派遣と異なり、そもそも邦人救出の任務は想定されていないことである。こうした場合に巡視船を派遣するのは少し解釈に無理があるのではないか。
(報道官)海上保安庁とも相談していることだが、法的根拠ということで申し上げれば、海外における邦人の生命、身体および財産の保護に関する事務は一義的には外務省の所掌事務となる。海上保安庁が今回可能性を検討していた邦人の輸送については、外務省から海上保安庁への事前の協力要請があることを前提として、あくまで外務省が行う邦人の保護に必要な輸送手段の一つとして、海上保安庁が保有する船舶を活用、協力する観点から、海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度においてその事務を実施するものである。法的には海上保安庁法5条17号の「関係行政庁との間における協力に関すること」の定めに基づいている。海上保安庁法第2条にある「海上保安庁は法令の海上における励行、海難救助等海上の安全確保に関する事務並びにこれらに関する事務を司ることを任務とする」との規定の範囲内で行うものである。法律的に見ても海上保安庁法の規定を根拠に可能であると考えている。
(問)昨年のカンボジアの自衛隊機の派遣も法律上は今回と変わっていないと思うが、昨年の派遣の際法的手続に於いて混乱があったため、事態の収束後、マニュアルを作成したと聞いている。今回の事態に関しても、教訓として海上保安庁ないし防衛庁の対応について、現時点で改善されていく点があるのか。
(報道官)確かに自衛隊機派遣ではカンボジアの時の経験を踏まえてその後の国内的な手続きを整備した。国内における準備行為、外国に派遣することについての準備行為、その後の実際の派遣といったプロセスに分けて考えるに至ったことは事実である。今回の経験を踏まえて今後何か考えるべき点があるかどうかは、今の時点では手続き的な問題で何を直す必要があるといった問題提起があるとは承知していない。まだ全体が終わってもいないし、全体のプロセスが終わったときにどうだったかを考えることは有り得る。
(問)現時点では全体のプロセスはスムーズにいったという評価か。
(報道官)スムーズにいっていると考えている。
(問)撤収が始まると外務省に設置してある緊急対策本部の扱いはどうなるのか。
(報道官)この記者会見に来る前にまだ盛んに活動しており、自分(報道官)はオペレーション・ルームでブリーフを受けていた。まだ撤収ムードにはない。何月何日何時に体制を解くという具体的な話があるとは自分(報道官)は承知していない。
(問)海外危険情報の引き下げについての今後の見通し如何。
(報道官)巡視船と輸送機は緊急事態に備える危険度5のような事態になるといけないので待機したが、今度は危険度4を危険度3にするかどうかは、現にインドネシアから1万人ぐらいが日本に帰っており、そういう方々がまた戻って行けるかどうかという話になるので、関係者の人数が多いこともあり、もう少し状況を見きわめつつ検討していきたいと考えている。
(問)邦人避難について外務省は今回の一連の対応をどう自己評価しているか。
(報道官)先ほど自衛隊機、巡視船について全体にスムーズに運んできていると思うと申し上げた。インドネシアに住んでおられる1万数千人のうち、残った人が3700人までに減って、本日現在では4300人と、かなりの人数の移動が伴った。その間さまざまの状況をお知らせし、かつ輸送手段をアレンジするといった努力をし、いままでのところ比較的スムーズに行うことができたと思っている。
(問)自衛隊機の場合は、法的には安全が保障される場合に限ってそのような活動ができるとされる。他方、海上保安庁の巡視船の場合は、法的にはあいまいな規定に基づいているので、安全が確保されていない場合でも、依頼があって命令されれば行けるという状況にあるのだと思うが、現時点ではその辺に問題があるという認識はあるのか。
(報道官)危険な状況が分かっているときに覚悟の上で巡視船を派遣するかどうかの政策判断の問題は全く別だと考える。
(問)もともとそうした事態を想定していないから、やはり無理があるのではないか。
(報道官)多数の邦人の救出のために万全の措置を取らなければならない。そのためにいかなる手段があり得るかと考えた場合に、民間機の定期便や、臨時便、チャーター機等のすべての手段を尽くしてもまだ邦人救出ができない場合、他にどういった手段があるかを考え、その意味で万全の措置を尽くすという必要性もある。法律上の問題は別途あるかも知れないが、いろいろな要素を勘案して緊急事態が有り得るということであれば、それに即して万全の措置を取るのも政府としてやるべきことではないかと考える。
(問)自衛隊法の改正と絡んで、巡視船派遣は自衛隊法の改正が必要とアピールするための露払い役になったとの見方があるがどうか。
(報道官)自分(報道官)は必ずしもそうは考えない。先程来申し上げているように、急激に情勢が変わって緊急の必要が生じたときに万全を尽くす観点からいかなる手段があり得るかを考え、自衛隊法の改正がたまたま国会に上程されている中で、利用可能な手段の一つとして巡視船派遣に至ったと理解している。
(問)民間船のチャーターを考えたり、またその努力はされたのか。
(報道官)船のチャーターという案が俎上に上ったとか、或いは検討が加えられたかについては承知していない。
(問)飛行機の場合は民間を動員しているが船は最初から巡視船が出てきたのはちょっと扱いが違う感じがするが如何。
(報道官)その辺どういう判断があったのかは関係当局の意見を確かめた方がよいが、一つにはやはりスピードの問題があると思う。飛行機の方がはるかに早く行けるし、船の動員も短い距離であれば行ったり来たりしてかなりの人数を近くの国まで運べるが、緊急にたくさんの方を運ぶ場合には飛行機が一番効果的な手段であるということから、民間機の臨時便、チャーターの手段を取ったと理解している。民間の船という場合に技術的な問題が別途有り得るかと思うが、具体的に、この場ではこういった問題が有り得ると詳しく申し上げるほどの知識は有していない。
(問)民間の業界は要請があればその用意ありと表明していたが、ご存知だったか。
(報道官)もしそうであるとすれば、やはりスピードの問題、輸送能力の問題がかなり大きいのではないかと思う。
(問)本日の自民党の部会でミャンマーに対する無償資金協力につき説明を求められたが、ミャンマー政権に対する日本政府の無償援助に関するスタンス如何。
(報道官)先般、ヤンゴン空港の際の話もあったが、その際は円借款の既存のプロジェクトについて空港の安全性という観点から、一部について凍結を解除したという経緯があった。今回の食糧増産援助、無償援助はそもそもミャンマーが抱えている非常に難しい問題の一つである麻薬問題を解決するための代替作物の栽培を助けるという観点からの援助であって、ミャンマー国民の福祉にも大きく役立つものであるという観点から食糧増産援助をすることを考えているという状況だと思う。本日の党との話し合いで若干ペンディングになっているようなことも聞いたが、細部につき自分(報道官)はまだ知らない。
(問)与党政調の方では差し戻しになっているようだが、事実関係如何。
(報道官)先程本件は、もう少し時間をかけて検討されるというようなことであるということを、少し耳にした限りでは聞いている。
(問)先程のミャンマーの件だが、昨日ミャンマー政府が野党の拘束を始めたという情報が流れているが、右事実関係については外務省ではどの程度把握しているか。
(報道官)担当の部局は把握しているかも知れないが、申し訳ないが自分(報道官)は今細かい状況は把握していない。
(問)党におけるミャンマーに対する食糧援助の決定が遅れたことにつき、報道官の見解如何。
(報道官)ある政党の方からももう少し時間を与えて検討させろという話であったという風に聞いている。
(問)外務省が本日午後の時点でミャンマーに対する援助を実施すべきとしている理由如何。
(報道官)先程から申し上げているように、ミャンマーの黄金の三角地帯というか、麻薬栽培の問題ということが非常に大きな問題になっており、ミャンマー政府がそれに対していろいろな努力を行っている。この場合、四月だったか五月だったかミャンマーにおいて麻薬の代替作物栽培についてのシンポジウムを日本も協力して開催したという経緯もあるが、国際社会全体として重要な問題であるこの分野において、あの地域の人々が麻薬の原料を作ることに頼らずに他の代替作物を栽培していく道を作るということはミャンマーの国民生活にとっても非常に大事なことだという判断である。また、以前にも行ってきている援助であるから、継続してそういった援助を出すのは適当という判断に立ったものと承知している。
(問)今日の時点でまだ野党の大量拘束が始まったという情報は入っていなかったのか。
(報道官)申し訳ないが野党の大量拘束が始まった云々ということについての話と、今のミャンマーの無償援助は、無償援助として各国に対するいろいろなものがあり、その一つの項目として挙がっているものであるが、それとの関連が具体的にどうなっていたかということについては、自分(報道官)は特に問題として指摘して関係局の意見を聞いたわけではなく、そこの点を今自分(報道官)が推測で話すのはやめた方がいいと思う。
(問)ミャンマー政府については民主化及び人権の問題でまだまだ足りないところがあるという風に理解されていたと思う。そのために円借款の本格的な再開もストップしているわけだが、今回の麻薬代替作物のための無償援助、これはいわば人道的な援助として位置づけているのか。
(報道官)人道的色彩が濃いと考えていただいていいと思う。また先般申し上げたヤンゴンの空港プロジェクトについても、あの援助の一部凍結解除をした際にも、高村政務次官がこちらに在京のミャンマー大使を呼ばれて、人権問題および民主化等についての我が方の関心を改めて伝えて、そういう面での改善を強く期待しているということを申しているわけであるから、その面での我々の関心は依然としてあるし、そのことはミャンマー側に伝えてきている。
(問)ミャンマー食糧援助の問題が、相手国の政治情勢によって左右される可能性如何。
(報道官)ミャンマーの政治状況が非常に大きく変わるというようなことがあれば別かもしれないが、今の状況においては我々は先般申し上げたような理由でこの食糧増産援助というものは供与すべきだと考えているものと承知している。
(問)最近、「周辺事態」をめぐる日本政府、外務省高官の発言で中国が若干反応しているが、今日も中国外務省のスポークスマンが日本外務省に説明を求めたいという発言をしたということが伝わっているが、それについて聞いているか、また、今後外務省としての中国側への対応如何。
(報道官)ガイドラインに基づく法案の件については、かねてより中国他近隣諸国に様々な機会をいただいて説明してきている。今回伝えられている国会答弁のことを言っているものと思うが、これについても中国側から関心の表明があるということであればまた改めて適当な機会に我が方の立場を説明するということになると思うが、いずれにしても周辺事態についての我が国の考え方には何ら変更はない。即ち、周辺事態というのは地理的な概念ではなく、事態の性質に着目した概念であり、ある事態が周辺事態に該当するか否かはその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することになる。従ってこのような事態が生じる地域をあらかじめ特定し、あるいは地理的に一概に画することはできない。
また台湾をめぐる問題についての我が国の立場は日中共同声明において表明しているとおり、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものである。我が国としては、中国政府が台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知している。いずれにせよ我が国としてはこのような基本的な立場を堅持した上で台湾をめぐる問題が関係当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望している。このような我が国の従来よりの立場というものを改めて中国側に何らかの形で説明することになると思う。(問)今のところそうした説明の機会というものが想定されている場はあるのか。
(報道官)中国政府との間で今この時点でどうなっているかということについては自分(報道官)は特に承知していない。
(問)今日中国側から申し入れがあったと聞いているが、事実関係如何。
(報道官)北京でそういうことがあったのかも知れないが、自分(報道官)はまだそのことは確認するには至っていない。
報道官会見要旨 (平成10年5月22日(火)17:50~ 於 会見室)(報道官)5月3日付英国インディペンデント・オン・サンデー紙に「彼らを許せますか」と題する記事が掲載され、そこで天皇陛下の写真が3人の英国犯罪者の写真と並んで掲載された。天皇陛下の写真がこのような形で使用されることは不適当極まりない扱いであり、日本政府としてはこれに強く抗議する次第である。従って、在英日本大使館を通じてインディペンデント・オン・サンデー紙に抗議を行ったところ、21日同紙編集長より林駐英大使に対し、「同紙としては天皇陛下を犯罪者と同列に並べる意図を持っていたわけではなく、日本の人々がわれわれ(同紙)の意図していなかった意味合いを読み取られたことに狼狽している。このような誤解を引き起こしたことは申し訳ない。」という趣旨の書簡を送ってきたので、本件を確認しておきたい。
同時に、この問題に関する日本政府の考えを英国政府に伝えたところ、英国政府は次のような立場を取っているとの説明があった。第1に、英国では報道の自由が確保されているが、インディペンデント・オン・サンデー紙の記事は英国政府として支持しない。第2に、「天皇陛下が女王陛下の賓客として礼譲と威厳をもって歓迎されるよう最大限の努力を払う所存である。」とのことであった。
今回の天皇陛下のご訪英は全体として極めて良好な日英関係を象徴するものであり、わが国政府としては英国政府と引き続き緊密に連携し、その成功のために一層の努力をする方針である。(問)抗議をしたのはいつか。
(報道官)抗議をしたのは5月19日である。3日に出た記事に対して抗議したのが19日では「遅いではないか」とのご指摘かと思うが、遅くなったのは記事の存在に気づくのが遅かったということである。このように遅れたことは私どもは遺憾に思っているし、今後このようなことが起きないようにしたいと思っている。
(問)同列に並べられたという3人はどういう種類の犯罪者だったのか。
(報道官)その質問に答える前に、一点だけ申し上げたい。この記事全体は今日の英国社会の風潮についての記事であった。今日の英国社会が「許す(forgive)」ことをしない社会になっていると言いつつ、その関連で、例えば、1993年に当時2歳の幼児を殺害して懲役に服している2人の少年の写真と一緒に(天皇陛下の写真を)掲げている。ただ記事は「許すことを忘れた」ことを批判しているが、その中で日本への言及としては、「過去に戦争があったことについて、許すことを本来忘れるべきでない」という立場から書いている。しかし、いかんせん写真の使い方が写真でみる限り、犯罪者と同列のように見えるということが不適当極まりないと思い、強く抗議した次第である。
(報道官)本日、日本時間12時半過ぎにインドネシア・ハビビ新大統領が新内閣の閣僚名簿を発表した。いくつか注目される点を申し上げると、一つはこの内閣が「改革・開発内閣」と呼ばれており、調整大臣の4人、すなわちギナンジャール経済調整大臣、フェイサル・タンジュン政治担当調整大臣、ハルタント国家機関監査担当調整大臣、ハリヨノ・スヨノ国民福祉担当調整大臣がいずれも留任した。特に国際通貨基金(IMF)との交渉に当たっていたギナンジャール大臣が留任したことは、経済面を中心とした実務型の内閣と言えると思う。また、国防治安大臣にウィラント国軍司令官が留任した。すなわち国防治安大臣と国軍司令官を兼務するという形を取り、国軍が一致してハビビ新大統領を支持していることを示すものと考えられる。それから大蔵大臣、商工大臣はそれぞれバンバン・スビヤント氏(前大蔵省金融機関総局長)、ラメラン氏(前研究技術担当国務大臣)が就任したが、二人とも若手テクノクラートである。アラタス外務大臣も留任し、外交面での継続性が保たれた。それから各分野の専門家を登用したほか、内閣の基盤、ベースを広げていることが注目される。例えば、労働大臣にゴルカルの副幹事長ファハミ・イドリス氏を起用し、投資担当大臣には野党の国会開発連合党会派代表のハムザ・ハズ氏を、また環境大臣にはもう一つの野党である国会民主党会派代表のパナギアン・シデガルを起用する等、野党からも人材を集めていることが注目される。
さらに言えば、いわゆるスハルト・ファミリーといわれていた人々、ファド・バワジール前大蔵大臣、ボブ・ハッサン前商工大臣、スハルト前大統領の長女であるトットット前社会相、スビヤクト前協同組合大臣らがいずれも閣外に去ったことも注目される。
このような構成の「改革・開発内閣」が発足したが、わが国としては新内閣の下で改革が着実に実施されていくことを期待している次第である。(問)新内閣ではスハルト・ファミリーが去ったことでスハルトの影響力は排除できたということか。
(報道官)スハルト・ファミリーが閣外に去ったこと、経済を中心に改革を進めていく省に当たっていた4人の調整大臣、特にギナンジャール大臣が留任したこと、さらに経済面では大蔵、商工両大臣が若手のテクノクラートに代わったこと、また国軍の一体性、国軍が新大統領を支持している態勢が見られること等を勘案すればかなりスハルト体制といわれていたものから距離を置こうという姿勢がみられると思う。
(問)今回の新内閣発足で今後事態は沈静化が期待できるという見通しか。
(報道官)新内閣の顔ぶれに関する限り、先ほどから申し上げているような要素に注目すると、今後改革が着実に実施されていくことを期待して良いのではないかと思う。まだ閣僚が指名されたばかりで、こんごどの様な政策を取っていくかはもとより注目する必要があるが、全体的にはある程度評価できる内閣になっていると申し上げて良いかと思う。
(問)スハルト・ファミリーが閣外に去ったことをどの様な観点から関心を持っているのか。
(報道官)一つにはインドネシアの国民の意向、特にこの数日来かなり不安定な状況があったわけだが、その中で一つの大きな要因が、学生らの間でスハルト大統領に対し、あまりに長い間大統領の座に留まり過ぎたとの批判であった。こうした学生の声に表れているような国民の要望に新政権が応えようとしている努力がみられるという意味で注目している。
(問)不安定な状況が改善に向かっているとすれば、いまのレベル4の危険情報を状況を見て緩めるようなことになるのか。
(報道官)現地の情勢はインドネシア全体としてみれば1、2日前の緊張が高まっていた状態は緩みつつあると言えると思う。また治安当局、国軍による警戒、警備体制も徐々に緩んできているようである。よってインドネシア全体としてみれば衝突事件も生じていないが、新内閣が発足したばかりであり、国民のこれに対する反応もしばらく見ていく必要があると思うので、現在4となっている危険度の見直しについては、今後とも事態の推移を注意深く見守りながら検討して行きたいと思っている。今朝の大臣の会見でも、治安も含め沈静化していって政権がスムーズにスタートでき、かつジャカルタのみならず全国的に安定度が増してくるかどうかを考えていく必要があると言われたが、今後とも事態の推移を注意深く見守りながら検討していきたい。
(問)ウィラント国防大臣との対立が伝えられていたスハルト大統領の女婿であるプラボウォ首都防衛司令官はどうなったか。
(報道官)今のところプラボウォ将軍の人事について特に変化があるとは聞いていない。ウィラント国防治安大臣兼国軍司令官が留任したことは、留任という事実で見る限り国軍が一致してハビビ新大統領を支持していることを示すものと思われるが、それ以上に国軍の中でどの様な動きがあると推測する段階にはないと思う。
報道官会見要旨 (平成10年5月19日(火)17:00~ 於 会見室)(報道官)日本時間本日午後1時半にインドネシアのスハルト大統領が「当面大統領職にとどまり、内閣改造を行った後可能な限り早期に総選挙を実施し、その後国民評議会で新しい正副大統領を選出する。スハルト大統領自身は立候補しない」と発表した。今回の発表により選挙を通じた新しい正副大統領の選出に向けたプロセスが開始されることとなるが、引き続き事態の推移を見守っていきたいと考えている。わが国としては現在のインドネシアの政治的社会的混乱が一刻も早く克服され、国民経済の回復と民政の安定が実現されるよう心から期待している。また、我が方としては引き続き必要な情報収拾に努め、特に在留邦人の方々の安全の確保と退避される邦人の安全な出国のために最大限の努力を払っていく方針である。
(問)スハルト大統領が表明したプロセス自体に対する日本政府の評価如何。
(報道官)インドネシア国内でいろいろな声があることを大統領自身が考えた上でこういう道を選んだわけである。それに対する国内の反応がどうなるかということもあり、いまのところは引き続き事態の推移を見守っていきたいと思っている。
(問)これで事態が沈静化に向かっていくかどうかはまだ推測できないということか。
(報道官)先ほど申し上げたとおり、現在のインドネシアの政治的社会的混乱が一刻も早く克服されて国民経済の回復と民政の安定が実現されることを心から期待している。その期待の下に今後のプロセスの推移を見守っていきたい。
(問)今回の表明によってスハルト大統領はこれで辞任すると外務省は見ているのか。
(報道官)これから選挙を通じ、国民評議会で新しい正副大統領の選出があり、その選出にスハルト大統領自身は立候補しないと言われているわけであるから、大統領自身のかなりはっきりした意思を表明したものと受け取っている。
(問)日本政府の今述べられたような見解はインドネシア政府に何らかの形で伝達するのか。
(報道官)インドネシア政府に伝えることになると思うが、まだ(演説は)数時間前のことなので、いま具体的にどういう形でとはつまびからかでない。
(問)スハルト大統領の今回の意図表明により事態が沈静化するとの考えか。
(報道官)沈静化することを希望している。そのための重要な一つのステップになるのではないかと思うが、インドネシア国内のいろいろな反応もあり得るかと思うので、いまの時点で断定的なことを言うより引き続き推移を見守っていきたい。
(問)世銀融資の延期などの動きがあるが、対インドネシア経済協力政策については如何。
(報道官)基本的にはインドネシアの経済困難から問題が生じているし、日本としてはこれまでも経済困難克服の努力を支援するため、例えば医薬品等の援助など社会的弱者に対する支援を出来る限り行ってきた。いまの状況で弱者への支援はますます重要となっており、今後とも各国と協力してできる限りの支援を行っていきたいと考えている。世銀の支援についてだが、大統領演説の前に出た世銀のプレス・リリースでは、混乱の中で通常の仕事を続けていくのは難しい状況下で、現在仕事を止めるけれども、事態が許す限り世銀の計画をなるべく早く再開したいと述べている。
日本については、今後のインドネシアに対する我が国の支援、すなわち円借款、無償援助などを含めた支援を今後どうするか話し合うミッションが行っているが、インドネシア政府と協議をしているときにジャカルタ市内の状況から交通が難しくなり、インドネシア側のカウンターパートが会議に来られない状況があったのでいったん中断した。一時的なことですぐには仕事が続けられない状況にはあるが、基本的な方針は変わらないと理解してよいと思う。(問)邦人の出国について如何。
(報道官)いまのところ既定の方針通り最大限の努力を続けている。
(問)出国準備は一応整ったと理解してよいか。
(報道官)まだかなりの数の方がインドネシアを出国するという事態を想定して、十分かつできるだけの輸送手段を確保する観点から、定期便のほかに臨時便、チャーター便を手配している。最大限のキャパシティーを確保するとの観点から最大限輸送手段を確保し、引き続き出国されたい方が出国できるように努力していると理解されたい。
(問)いま手配済みの他に加えて新たに便を手配するのか。
(報道官)本日も若干増やしたが、これで相当のキャパシティーが確保されていると思う。いまのところはそれらを利用して出国希望者が出て行かれるようにしている。
(問)いまインドネシアに留まっている邦人数はどれくらいか。
(報道官)計算が難しい点もあるが、今朝現在でジャカルタの大使館、スラバヤ、ウジュンパンダン、メダンの総領事館、バリ島デンパサール事務所の各公館からの報告を積み上げた推定は7,490人。ちなみに今月6日以降19日未明までの出国者は累計1万520人と推定している。
(問)今夜から出国する邦人も合わせるとどのくらいか。
(報道官)キャパシティーの問題と実際にどれだけ乗られるかの問題があるが、キャパシティーすなわち座席数総計では、19日から20日未明までで5010名分となる。
(問)サミットでインドネシアに関する特別声明が発出され、その内容は経済改革のみならず政治改革をも求めているが、スハルト大統領の表明はこれに応えているとの考えか。
(報道官)バーミンガム・サミットにおいて経済改革と政治改革の両方が必要であるとの認識が示された。日本、各国の立場が表明され、声明では政治改革について「現在危機を解決するためには政治的および経済的改革が必要である。インドネシアでは政治改革の必要性は広く認識されている。われわれは当局に対しインドネシアの民衆の願望に応える対話を開始し、必要な改革を行うことにより迅速に対応するよう慫慂する」とある。その改革の中身がどうかはインドネシア国民、政府の判断にゆだねられることであるから、その意味でスハルト大統領が表明されたことはバーミンガム・サミットの文書で言及している政治改革に応えているのではないかと考える。
(問)旅行者の数について如何。
(報道官)短期滞在者の数はだいぶ減っていると思う。7,490人のうち在留邦人が6,970人に対し、短期滞在者は520人である。
(問)チャーター便の費用如何。
(報道官)費用は行き先で違うが、ならして言えば1機1回で1,000万円と理解している。遠近があるのでならせばということである。一番遠いのは成田まで来ることだろうし、マレーシア航空のチャーター便ならクアラルンプールまでだからもっと少なくてすむことになる。下は800万円から上は3,000万円超である。
(問)今朝、運輸大臣が臨時便について費用負担を政府が肩代わりすることを検討する旨言及した由であるが如何。
(報道官)自分(報道官)は承知していない。
(問)インドネシアの社会的弱者に対しては新たに経済支援は考えているか。
(報道官)いまの時点で答えるのは難しい。いろいろな状況がでてきているのでそれを見て何をしていったらよいか考える必要はあろうが、現時点でどうかというのは尚早かと思う。
(問)インドネシア経済は邦人脱出などでさらに大きなダメージを受けるであろうが、これを手当するために日本として経済協力を強化するということか。
(報道官)インドネシアが経済困難に直面しており、社会的弱者の問題も出ている状況でわが国として支援していく方針に変わりがないということである。それ以上に最近の状況を踏まえてどうするかは今後考えていく問題である。
(問)対外債務の返済能力は低下していると思うが、インドネシアに対する円借款、ローンの債権回収について如何。
(報道官)現在それについてどうこうと言う立場にはない。例えば輸銀のローンにしても実際に実施に移す手続きを進めていたわけで、それは今後も続けていくと思うが、実際状況からして仕事をこれまでのペースで進めるのは難しく滞っていることはあるが、そこから先の問題をコメントするのはまだ早い。
(問)IMFのコンディショナリティに関し、インドネシアの痛みを和らげるために日本からIMFに働きかけるようなことはあるか。
(報道官)一般論としてIMFのコンディショナリティーを適応していく場合にその国々の事情を勘案していく必要があるし、或いは社会的弱者の問題も勘案する必要があるというようなことは日本の考えの中にある。具体的にどのようにIMFの中に反映させるかは今後の検討課題になると思う。
(問)自衛隊機が待機状態に入っている現在、邦人救出への使用の判断は外務省にゆだねられているが、実際に使用する場合のケースについて整理してほしい。例えば、空港機能が麻痺した場合は難しいが、空港が機能できる場合で短時間に多人数の輸送が求められているようなケースでは民間機と合わせて自衛隊機を使用できるのか。
(報道官)あり得る事態を想定してこういう場合にはと言うのは難しいが、基本的には緊急事態に際して生命または身体の保護を要する邦人などを輸送する必要が生じているかどうか、自衛隊法100条の8の規定のもとでその必要性が生じているか、また民間、チャーター機等の手段では適時適切に対応することが困難であるかなどの点が判断の基本的な基準になると思う。具体的にどういう状況かは今の時点から申し上げるのはなかなか難しい。
(問)先ほどの話では邦人が7,490人いて今夜からの座席数が5,010人だとすればまだ2,000人ぐらいの邦人は帰りたくとも帰れないことになるのか。
(報道官)19日から20日までのことを申し上げたわけで、C130輸送機が待機していることもあり、他方、今までの状況を見ると、自分で第3国に出ているケースもある。そこでキャパシティーと実際に乗る人の案配がどうなるかはなかなか難しい。もう一つは出国を希望する人が出るということであり、その辺がどうなるかも不確定要素である。
(問)きょう現在出国を希望していない人はどれくらいいるのか。
(報道官)「私は残る」と宣言されているわけではないので分からない。
(問)大統領の表明したプロセスで大統領が選出されるのはいつごろになるか。
(報道官)きちっとしたタイムフレームをいま言うのは難しく、インドネシアの国内で更に情報収集する必要があろうが、この会見を始める前に私が聴取したところでは、それほど長い期間ではないのではないかという感じで受けとめている人がかなりいる。しかし、大統領の演説が終わって数時間後なので、それ以上の言及は控えた方がよいと思う。
(問)昨年の通貨危機から今日までのスハルト政権の経済改革の実績、成果に対する評価如何。
(報道官)インドネシア経済そのもののファンダメンタルズが非常に悪いということではなく、短期的な問題で運営に問題があったということかと思う。それを乗り切るためにはIMFの下での改革を推進することが必要であり、そのような改革の必要性をインドネシア政府の指導者に理解してもらうため、橋本総理自身ジャカルタに行かれて努力してきた次第である。その結果IMFとの合意ができ、それに基づいて改革が進められようとしてきた。いろいろ紆余曲折はあったが、インドネシア政府としての真剣な努力は始まりつつあったと言えるかと思う。それ以上に自分(報道官)がここでスハルト大統領の経済政策が正しかったとか間違っていたとか言うのは適当でない。
(問)自衛隊機が動く場合、邦人にはそのことをどう伝えるのか。
(報道官)連絡網にはいろいろな手段がある。通常の電話網、大使館のインターネット、ラジオジャパンを通じての放送、テレビのテロップとかがあり、そのようのものを通じて連絡するように努めている。今後の推移を見て判断し、その過程で逐一必要な連絡をしていく。
(問)原口外務審議官がサミット後訪中しているが目的如何。
(報道官)中国側にサミットでどういう議論があったかをブリーフしに行っていると理解している。
報道官会見要旨 (平成10年5月12日(火)17:00~ 於 会見室)(報道官)3月21日にソウルで行われた小渕外務大臣と朴定洙(パク・チョンス)外交通商部長官との会談を受けて、両国政府間で調整を進めた結果、朴長官が5月21日(木)から23日(土)までの間日本を訪問し、小渕外務大臣との間で外相会談を行うことになった。わが方としては、今回の外相会談において今年秋に予定されている金大中大統領の訪日を視野に入れつつ、2国間関係、朝鮮半島情勢等について幅広く意見交換を行い、またこれを通じて日韓の両外相間に一層緊密な相互信頼関係が構築されることを期待している。
(報道官)米国が5月11日にネタニヤフ・イスラエル首相、アラファトPA議長をワシントンに招き、和平会談を行うことを検討していたが、この会談が延期されたことは残念であると考えている。わが国はさる5月4、5日のロンドンにおける会談において提示された米国提案を歓迎するとともに、和平プロセスの停滞の打開に向けたこれまでの米国の努力を高く評価している。わが国としてはパレスチナ側がこの提案を受け入れる意向を表明していることに勇気づけられており、イスラエル政府においても、和平プロセスを前進させるために米国の提案に対し大局的見地から前向きに対応することを強く希望するものである。
日・ASEAN開発ラウンド・テーブル会合と南南協力支援会合について
(報道官)南南協力支援会合は5月20日、21日の両日、外務省および国際協力事業団(JICA)の共催により、沖縄県名護市のザ・ブセナテラス・ホテルにおいて開催される。また、日・ASEAN開発ラウンドテーブルが22日に外務省の主催によって同じく名護市の同じホテルで開催される。
まず日・ASEAN開発ラウンドテーブルは、昨年12月の日・ASEAN非公式首脳会議における橋本総理の提案によって、東南アジア諸国連合(ASEAN)共通の開発に関する課題について政策対話を行う場として新設することとなったものである。背景を申し上げれば、日本とASEANの間でいろいろな政策協議をする場として高級事務レベルでの協議を行う日・ASEANフォーラムがあるが、わが方が外務審議官(経済担当)、ASEAN側は次官レベルをヘッドとしている。このフォーラム自体は政治、経済、開発、文化等を包括的に議論する場であり、開発に焦点を絞ったものではない。また、個々のASEAN諸国との間では経済協力を中心とした開発問題について2国間での政策対話が緊密に実施されてきた。しかしながら、最近ASEANではいろいろな地域全体の問題が出てきており、例えばメコン河流域開発や成長の三角地帯など広域開発の動き、インフラ整備における民間活力を活用した動き、域内域外の南南協力等が盛んになってきている。また、森林火災やそれに伴う煙害の問題等ASEAN全体で解決策を討議しなければならない問題も出てきている。こうした状況の下で、開発問題について2国間ベースの政策対話に加えて、ASEAN全体との政策対話を行う必要性が生じてきた。これらが背景となっている。そこで今回、日・ASEAN開発ラウンドテーブルの第1回会合が行われるわけである。これにはわが国から大島外務省経済協力局長をはじめJICA,海外経済協力基金(OECF)の関係者、ASEAN各国からは開発協力担当の次官レベルが参加する。今回取り上げるトピックとしては、最近の東アジア通貨危機のASEANの開発政策に与える影響、昨年12月の日・ASEAN非公式首脳会議で橋本総理が提案した「日・ASEAN総合人材育成プログラム」および「日・ASEAN南南協力プログラム」あるいはASEAN基金、森林火災および煙害の問題、メコン河流域開発等の広域開発の動き、あるいは民間活力の活用問題、環境等のプログラム等ASEAN全体に関わる幅広いトピックを取り上げることを要請しており、この会議の概要については6月下旬に開催予定の日・ASEANフォーラムの場に報告する予定である。
日・ASEANラウンドテーブルにおいても南南協力を取り上げると申し上げたが、南南協力についてASEANのみならず東アジア、中近東、アフリカ、中南米の新興援助国の関係者を集めて行われる会合が南南協力支援会合である。これには合計15カ国(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、韓国、中国、トルコ、エジプト、チュニジア、ケニア、メキシコ、ブラジル、チリ、アルゼンチン)の援助関係者が出席する予定である。南南協力支援会合は援助国あるいは援助機関および途上国の双方において南南協力の重要性に対する認識が高まっている今日、今後の日本と新興援助国との中長期的な協力基盤の構築を見据えたパートナーシップのあり方を議論するために開催するものである。南南協力の実態というのはある程度あるわけだが、南南協力を進めていくに当たって特に新興援助国の南南協力にかかるオーナーシップというか、主体的な取り組みを奨励する観点からそのためのいろいろな施策、制度の整備をどう教えたらいいかといったようなことを話し合うこととなっている。(報道官)グアテマラ・カトリック教会の中心人物として長年同国の人権状況改善のために積極的な活動を行ってきたフアン・ホセ・ヘラルディ・コネデラ司教が4月26日に殺害される事件があった。グアテマラでは1960年に内戦が勃発し、96年12月29日の政府・ゲリラ双方による和平合意達成により36年にわたる内戦が終結した。この内戦中に軍、ゲリラによる多くの人権侵害事件が発生したが、94年6月に政府・ゲリラ間で人権侵害事件真相究明委員会設置協定が締結され、96年12月の和平合意でもこの協定が確認されている。この協定に基づいて97年7月には人権侵害真相究明委員会が設置され、現在その委員会が過去の人権侵害事件の真相究明活動を行っている。グアテマラではこの委員会とともに、カトリック系のNGOであるグアテマラ大司教人権擁護事務局(ODHA)が和平合意の時点から人権状況の監視、過去の人権侵害事件の真相究明を行ってきており、ODHAは人権の分野で中心的な役割を担っていた。殺害されたヘラルディ司教は88年にこのODHAの創設にかかわり、その後も人権侵害事件の徹底的な真相究明活動を行い、グアテマラにおける和平の進捗に大きな役割を果たしてきた人である。
以上が背景であるが、わが国政府としては、ヘラルディ司教が殺害されたことに対し、グアテマラ国民に哀悼の意を表するものである。同時にグアテマラ政府、国民が96年12月の和平合意後国民和解を実現し、和平を確固たるものとするために内戦中に行った人権侵害事件の真相究明活動を行っているが、今般のヘラルディ司教殺害事件はこうした和平の進展に悪影響を及ぼしかねない重大な事件であり、わが国として憂慮の念を表明するわけである。わが国としては今般の殺害事件のグアテマラ社会全体に及ぼす影響の大きさにかんがみて、本件事件の真相が公正かつ迅速に究明されることを希望するとともに、和平を確固たるものとするためにグアテマラ政府が引き続き和平関連諸協定を着実に履行することを強く期待し、確信するものである。
(問)インドの核実験に関し、大臣は今朝の会見で対抗措置を検討すると述べたが、対抗措置の検討状況は如何。
(報道官)現在鋭意検討中である。本日大臣が在京インド大使に対し申し入れを行ったが、わが国がこの事態を極めて憂慮していると伝えるとともに、「わが国としても経済協力等において何らかの措置を検討せざるを得ない」ということを伝えたが、具体的にどの様な措置をとるかはいま政府部内で鋭意検討中であり、近日中に結論を得たいと考えている。
(問)近日中とは、例えば2、3日中といった目安は出てくるのか。
(報道官)近日中は近日中ということでご理解願いたい。
(問)この場合の発動の要件は、例えばインドが核開発を停止するとか、今後モラトリアムに入るとか約束しない限り発動するという形になるのか。
(報道官)実際問題として、インド自身が核実験を実施したと表明しているわけで、国際社会がこの事態について非常に憂慮している状況がいま存在するわけであり、その状況の下で我々ないし国際社会としてのメッセージを伝える必要がある。そのために経済協力の分野についても具体的な措置をとる必要があろうということで、近日中に結論を出すべく検討を行っている状況である。
(問)「措置」とは2国間の経済協力だけなのか。例えばアジア開発銀行、世界銀行、国際通貨基金(IMF)など国際機関の融資に関してのスポンサーとして日本政府が何らかの意志表示をすることにもなるのか。
(報道官)現在の状況で鋭意検討しているのは、主に2国間の援助問題だと考えるが、ご指摘のような多国間の場において何らかの措置があり得るかどうかについても、何らかの形で検討が加えられるものと思う。
(問)ニューヨークの国連の場でとかワシントン等で米国と何か話し合っているのか。
(報道官)この事態についてどういう反応をするかは情報収集も含めていろいろ連絡は取り合っていると思う。また、バーミンガム・サミットが数日後に控えており、サミットの参加国もこの問題についての重大性の意識を共有していると思うので、どういう話し合いをするか、どうとらえるべきかについては、議長国の英国を中心に相談していくこととなる思う。わが国としてもサミットの場で本件について十分な議論を行い、インドおよび国際社会に対して明確なメッセージを伝達すべきであると考えているので、早速そのような相談に入りたいと思っている。
(問)インドからの情報として、この実験により包括的核実験禁止条約(CTBT)に加わる道が開かれたのではないか、そうした可能性があるといった情報が伝えられているようだが、そのような見通しはあるのか。
(報道官)かかる見通しをつけることはなかなか難しいのではないかと思う。インドの声明の中にCTBTに対する言及があったようだが、これまでインドは加わっておらず、このこと自体について日本としても従来よりCTBTが普遍性をもって発効するためにインドの加盟が望ましいことは言ってきたところであり、実験を行ったこと自体、CTBTの流れに反するものであり、その辺をインド自身がどう考えているのかは今一つはっきりしないところがあると思う。
(問)広島市長がインタビューにこたえ、インドの行動にはもちろん激しく抗議するが、その背景として米国が未臨界核実験を続けるなど核大国の廃絶の動きが進まないことに一つの原因があると言っているが、外務省の見解は広島市長と異なるのか。
(報道官)必ずしも見解が同じというわけにはいかないと思う。いま未臨界核実験についての話があったが、未臨界核実験自体は既存の核兵器の安全性を確保するため実施するものとされている。また、CTBTにおいても未臨界核実験は禁止されていないというのが国際的な認識と考えられている。他方、インドが今回行った核実験はまさにインド自身が核兵器開発のためのものであると認めているわけで、これは世界の核軍縮、不拡散の流れに逆行するものであり、そのような意味で正当化できるものではないと考えている。
(問)経済関係以外に例えば人的交流と言った点での制裁措置を考えているか。
(報道官)どういうことがあり得るかは今後さらに検討していく。いまの検討の中心は経済協力に向いていると思うが、それ以外にどういうことがあり得るかは検討課題である。
(問)政府としては今回の経済協力に関する検討はインドの核実験に対する「制裁措置」という理解でよろしいか。
(報道官)先ほど申し上げたように、国際社会の流れ、世界的な核実験の禁止という流れに逆行した行為であるということで、それは正当化できないという認識を私どもは持っているので、そのような認識を明らかにするために何らかの措置を取る必要があると考えている。言葉の問題として「制裁措置」というかどうかは議論が有り得るかと思うが、一つの行為に対するメッセージを与える措置と理解していただいたらよいと思う。
(問)インドがこの時期を選んで核実験をした背景はどの様に考えているか。
(報道官)これはなかなか難しい問題である。インド自身がどういう考慮をもって今回の核実験の措置に出たかは私どもの立場から推測するのは難しい。本日小渕外相からインド大使へ申し入れをした際に、インド側がこのような行動に出ざるを得なかった理由を説明している。その説明は「インドが最近厳しい安全保障環境に置かれており、インドを取りまく環境は悪化し、北の国、西の国(パキスタン)の武器能力が向上している。インド自身は核廃絶を訴えてきたが、そのような努力にもかかわらず核保有国は核廃絶の意志を明確に示していない。このような状況の下で安全保障の観点から今回の措置は最低限取らざるを得ないものである」というものだった。これといま言われたタイミングとの点がどう連関するするのかについて、これ以上推測するのはあまり適当ではないかと思う。
(問)パキスタンに対し、政府は一言で言えばどういう対応をするのか。
(報道官)パキスタンに対して本日午後、阿部軍備管理科学審議官が在京のクレッシー臨時代理大使を呼んで、「けさ小渕外相がインド大使を招致の上、インドが世界的な核実験禁止の流れに逆行して核実験を実施したことは極めて遺憾である旨伝え、早急に核開発を停止するよう強く求めた」と伝え、同時にわが国としてはかねがねインドの核政策の動きあるいはパキスタンのミサイル発射実験等を契機として印パ両国で軍備競争が加熱し、南アジア地域の安定が損なわれかねない状況となることを深く憂慮していると述べ、パキスタンに対しても核兵器等の大量破壊兵器、ミサイル等の開発に関し最大限の自制を働かせるよう強く求めた。また、改めてパキスタンに対し、新たな軍拡の一歩を踏み出すのではなく国際社会と協調して行動するよう強く希望するとし、自制を求めた。その際に、インドに対して私どもの憂慮を伝えるとともに、先程来申し上げたように、小渕外相が在京インド大使に対し経済協力について何らかの措置を取らざるを得ないと述べたように、そういうことを考えていると伝えたわけである。
(問)パキスタンが今後核実験などを行った場合には、日本として同じように対抗措置を取ると言ったわけか。
(報道官)取るということを言ったというより、そういう事態にはしたくないとの気持ちを伝えたと考えていただきたい。
(問)昨日の次官会見でも質問したことだが、戦犯として処刑された東条英機の映画が昨日試写会があったと承知しており、中国がこれに批判的な発言をしている。次官は、同映画は民間、私人が作ったもので政府の考えは反映されていないと述べた。その通りかもしれないが、明かな事実誤認があればともかく、こういうものが作られるのはけしからんといったことが(中国)政府のスポークスマンの発言として出てくるのは異様と自分は感じるのだが、見解如何。
(報道官)まず、昨日の時間の会見での答えはいま言われた通りで、このような過去の歴史の問題についての政府としての考え方は、平成7年の村山総理大臣談話を基本としている。それは「わが国が過去の一時期に植民地支配と侵略により多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、これに対する深い反省とおわびの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていく」というものである。この映画の内容が伝えられるものであるとすれば、民間人の作った映画に政府としてコメントする立場にはないが、その映画の内容が政府の考え方を反映したものでないものとして受けとめている。いまの一般論としての質問だが、仮にどこかの国で非常に日本について曲げたような内容の映画が出た場合に、私ども政府として全く何も言わず黙っているかどうかということは、なかなかそこは難しい問題ではないかとお答えしたらよいかと思う。
報道官会見要旨 (平成10年5月8日(金)17:00~ 於 会見室)(報道官)5月7日8日の両日ブリュッセルでボスニア・ヘルツェゴビナの復旧・復興に関する支援国会合が開催されているが、本日の会合でわが国政府はボスニア・ヘルツエゴビナ政府に対して1998年分として有償資金および無償資金合わせて1億2000万ドルまでの復旧・復興支援を供与する用意がある旨意図表明を行った。小渕外相がボスニアを4月4日に訪問した際、かつてわが国が表明した4年間で5億ドルの枠内でボスニア・ヘルツェゴビナに対する支援を継続すると言われたが、それを具体化する意図表明である。ボスニア・ヘルツェゴビナの復旧・復興支援については、1996年からの4年間で全体で51億ドルが必要とされる。わが国は1996年分の支援として少なくとも1億3000万ドル、97年分の支援として最大1億3000万ドルの貢献を行う旨表明しており、今回98年分1億2000万ドルということで、96年からの4年間の支援の合計は5億ドル程度となる見込みである。
わが国はボスニア問題は国際社会が一致して取り組むべき問題であるとの認識の下に、積極的な貢献を行っている。今後とも和平履行評議会運営委員会の一員としてボスニア・ヘルツェゴビナの和平履行に貢献していくほか、復旧・復興支援、地雷関連支援、難民帰還支援、選挙関連支援等、積極的に人的財政的貢献を行っていく所存である。
これまでの復旧・復興支援の対象について触れると、ボスニア・ヘルツェゴビナの2つのエンティティにまたがる送電線の復旧を英国、カナダとの協調で行い、また小渕外相が4月に現地で大型バス50台の供与式を行った。(問)沖縄の米空軍第18戦術戦闘航空団が中東に派遣される旨沖縄の米軍が明らかにしたとされるが、これについて外務省は何か情報を持っているか。
(報道官)報道は承知している。特にこういう動きについて米軍からわが方に通報するという話でもないので、報道は承知していると言うにとどまると思う。
(問)こういうことで派遣するといった説明等もないのか。
(報道官)通報がないのでそれはない。
(問)では通常の米軍の兵力展開と理解してよろしいか。
(報道官)そう理解してよいと思う。
(問)「女性のためのアジア平和友好基金」(アジア女性基金)はスタート時点で韓国側の了解を得て始めたのではなかったか。
(報道官)韓国側にはこうこうこういうことで始めるということは説明した上で始めたものと思う。
(問)だとすれば、韓国側が今回国内措置を取るに当たって、アジア女性基金からの支給問題について条件をつけるというのは約束と違うのではないか。
(報道官)以前にも申し上げたが、韓国の国務会議の決定が出され、韓国政府が4月21日に生活支援金を支給すると決定し、今回その支給を開始したということだが、当方としては今回の生活支援金の支給は韓国政府が元慰安婦の方々の福利厚生のために鋭意努力の上、実施に移したものと理解している。この措置がその趣旨に即した形で実施され、すべての元慰安婦の方々の生活状況の改善につながることを期待している。アジア女性基金との関係だが、基金の声明が昨日出たわけだが、アジア女性基金は韓国政府の支援金支給とアジア女性基金の事業実施とは矛盾するものではなく、平行して行えるものであると指摘した上で、ハルモニ(元慰安婦)ご本人の意思を尊重するという原則に立って、韓国政府の配慮と日本国民の償いの意思をともに活かす道を見いだすよう、アジア女性基金としては求めているものと承知している。このために、当方としては日韓双方の当事者間において話し合いがなされることを期待している次第である。
(問)その場合の「当事者」とはアジア女性基金と韓国側のどこか。
(報道官)韓国の関係団体である。
(問)アジア女性基金ができたいきさつでは外務省が非常にかんでおり、韓国側とも話し合いをしたもので、女性基金からもらった人は(韓国政府の支援金は)出さないということになると、約束とは違うことになると思うが、日本政府はそのようには受け取っていないのか。あれはもう日本政府とは関係なく本人同士でやりなさいということにしてしまっているのか。
(報道官)繰り返しになるが、アジア女性基金は日本国民および日本政府がこの問題に真剣に取り組んでいこうという真摯な気持ちの表れである。こういう気持ちについて韓国の関係者の方々の理解を得られるよう種々努力していきたいと考えているし、アジア女性基金の立場は先ほど申し上げた通りだが、そういうことにも照らして、日韓双方の当事者間において話し合いがなされることを期待しているものである。
(問)昨日のアジア女性基金の会見では、日本政府として韓国側にきちんとプロテストしてほしい、日本政府として抗議するよう求めているが如何。
(報道官)政府としての立場は先ほどから申し上げているように、今回の韓国側の生活支援金の支給が元慰安婦の方々の福利厚生のためにどうしたらよいかをいろいろ考えた上で実施に移したと理解しているので、その趣旨に沿ってすべての元慰安婦の方々の生活状況の改善につながることを期待している、ということがある。アジア女性基金の立場は昨日の声明に出ているわけで、アジア女性基金としては韓国政府の支援金支給とアジア女性基金の事業実施とは平行して行えると言っている通り、この点については、日韓の関係団体の間において話し合いがなされ、理解が深まっていくことを期待している。
(問)政府としては特にアジア女性基金の求めるような抗議を行う意思はないということか。
(報道官)日韓双方の当事者間において話し合いがなされることを期待している。と同時に、アジア女性基金に現れているような日本国民および日本政府のこの問題についての真摯な気持ちを韓国の関係者の理解を得られるよう種々努力していきたいと考えている。
(問)アジア女性基金は政府もいわば旗を振ってできたものだが、アジア女性基金の声明にあることは日本政府としても同じではないのか。その方向で韓国にも働きかけをするべきではないのか。
(報道官)アジア女性基金が発足するに当たって政府としてもいろいろ考え相談してきたことはあるが、実際問題としてアジア女性基金が行っていることと、いま現在のわが国政府が完全に一体であるかというと必ずしもそうとはいえないのではないか。アジア女性基金の立場は先ほど来申し上げているようにその立場は立場としてあるわけで、韓国政府の措置というものがあり、韓国側の団体の立場もあるわけだから、それぞれの立場の間で話し合いがなされることを私どもとしては期待しているわけである。
(問)アジア女性基金が発足する時は外務省としては関係諸国と公式に外交交渉をしていたわけだが、あれは何だったのか。無駄なことだったのか。あのときフィリピンともインドネシアともやった、韓国とは最も長くやっていたがそれらは全然意味がなかったということになるのか。
(報道官)全然意味がなかったということではないと思う。ただこの問題は非常に複雑だし、それぞれの国の立場それぞれの関係団体の立場があるわけで、完全に、発足する段階から一分の隙もなく理解が得られていたかというと必ずしもそうでは ないと思う。
(問)しかし今回の場合、日本の場合はアジア女性基金といういわば第3セクターでやっているわけだが、韓国の場合は政府からの支援金だ。政府の意思が働いている。そこでアジア女性基金からのお金は受け取らないということを条件にということであれば、これは政府間対話の材料になるのではないか。
(報道官)一つは受け取らないことを条件にというか、韓国政府が本当にそういうことを強制しているのかどうかも問題としてあると思うが、アジア女性基金の発足の経緯は先ほど申し上げたが、アジア女性基金という形で日本国民および日本政府の気持ちを表しているということがあり、それに対して韓国側が今回取られた措置があるわけで、私どものそういう気持ちについては韓国の関係者の方々の理解が得られるよう引き続き努力していきたいということに尽きると思う。
(問)韓国政府に対して事実関係として、受け取らないことを条件とするのかどうか問い合わせているのか。
(報道官)自分(報道官)が理解しているところでは、今問い合わせているということはない。
(問)これから問い合わせを行うことは。
(報道官)先ほど申し上げたように、日韓双方の当事者間で話し合いがなされることを期待し、それからアジア女性基金に表れているような日本の関係者の真摯な気持ちについて韓国の関係者の方々の理解が得られるよう種々努力していきたいということである。
(問)事実関係の問い合わせは行うべきではないか。
(報道官)それは一つのご意見としてうかがう。
(問)では現在のところ特に問い合わせる予定はないということか
(報道官)自分(報道官)はそういう問い合わせを行う予定があるとは承知していない。
(問)インドネシアで暴動が頻発、部隊が出てかなり激しい押さえ方もしているようだが現状をどう見るか。またインドネシアとは深い関係もあり支援もしているが、何らかの働きかけをする予定はあるか。
(報道官)インドネシアで学生の抗議デモが継続し、それ以外に燃料価格の値上げを契機として例えばメダンで一般住民の一部が暴徒化している状況があることも事実である。学生デモについてインドネシア政府は対話を通じた解決をめざすとの姿勢を取っている。例えば国軍司令官が学生の改革要求について、国会の場で議論しようとも言っているようだ。こういうことも私どもは注目している。他方インドネシア政府は改革の必要性を認めつつも治安、秩序を乱す形でのデモに対しては厳しく対応するとの立場を取っている。当方としてはこのような状況ならびにそれに対するインドネシア政府の対応ぶりについては今後とも注視していく必要があると認識している。他方、このインドネシアの問題は現下の厳しい経済情勢の下で社会的弱者の問題が背景としてあるわけだから、無償援助、この前決めたコメの援助の実施などの努力を通じて事態が安定の方向に向かっていくことを期待している。
(問)当面は注視し続けるという態度に留まるわけか。
(報道官)当面は注視していく必要があると認識している。
報道官会見要旨 (平成10年5月1日(金)17:00~ 於 会見室)(報道官)昨4月30日に出入国管理及び難民認定法の一部改正が衆議院本会議で可決・成立した。この法律は法務省の所管であるが、我が国の台湾に関する立場にも関連するので、改めて政府の立場を説明したい。
本法の改正は、入管行政の効率化を目的とする技術的な措置であり、当面、対象地域として台湾を予定しているが、日中共同声明に示された台湾に関する我が国の立場は不変である。本法改正により台湾を「国家」や「政府」として認めるといったものではないことは、法文上も明らかであるが、そうした立場を明確にする意味でも、いわゆる台湾護照への査証押印に当たっては、入管法上、従来認められていた旅券等とは異なる旅行文書であることが明らかになるようにする予定である。
日伯関係(伯サンパウロ州日系地方行政リーダー一行の来日について)
(報道官)5月3日(日)から10日(日)まで、ノムラ・ジョーゴ・サンパウロ州知事特別補佐官(前伯連邦下院議員、元伯連邦下院外交委員長)を団長とする伯サンパウロ州の日系地方行政リーダー一行23名(報道官注:地方行政リーダーとは、サンパウロ州の色々なところで市長を務めている日系人が16名、副市長3名、随行等4名の合計23名)が、伯への日本人移住90周年記念事業の一環として来日する。
一行は、5月6日(水)及び7日(木)に開催される第39回海外日系人大会に出席するほか、本邦在留伯人が多い名古屋、浜松等を視察し、その他JICAやJETROを訪問する予定である。
この一行のメンバーは、非日系人が中心の都市において市長或いは副市長に選出された日系三世が主であり、将来、伯社会のリーダーとして活躍されることが期待されている人々である。
今回のこういう方々が訪日されるということは、ここ数年日伯関係に色々な行事が行われたことが背景にある。即ち、1995年に修好100周年を迎え、祝賀行事が日伯両国で行われた次第であるが、96年3月にはカルドーゾ大統領の訪日、また96年8月には橋本総理が訪伯された。更に、昨年の5月から6月にかけて、天皇皇后両陛下が両陛下として初めて御訪伯された次第であるが、こういう日伯関係で色々な活動があったことを背景として、先程も申し上げた通り、日系人の多い地方だけではなく、非日系人が多い都市においても色々活躍されている日系人の市長とか副市長とかいった方々の横の連絡も段々出てきており、日本人移住90周年の記念事業として、日本を訪問しようという運びになったと理解している。
また、伯においてはサンパウロ州、パラナ州ほかにおいて、移民90年祭委員会が発足しており、6月20日にはパラナ州ロランジア市、21日にはサンパウロ市においてそれぞれ記念式典が開催されるほか、年間を通じて様々な記念行事が実施されることとなっている。(問)尖閣諸島周辺において中国の調査船が調査活動を行っている問題であるが、その調査の実態と日本政府の対応について伺いたい。
(報道官)4月28日に我が国の排他的経済水域内において中国の海洋調査船「奮闘7号」が視認された訳であるが、30日には3回にわたり尖閣諸島の我が国領海内にも入ったと承知している。
この(調査船が)行っていた活動は、海洋調査と見られる活動であった訳であるが、28日中に即座に中国側に対して、外交ルートを通じて、我が国の同意なく我が国の排他的経済水域内において海洋調査を行うことは認められない旨申し入れた。その後30日にも、改めて、海洋調査活動を直ちに中止するよう申し入れた次第である。
その後本日午前9時20分頃、(「奮闘7号」は)我が国の排他的経済水域から出て、日中中間線の中国側水域を航行していると承知している。なお、巡視船からこの船舶に対して作業内容等を質問した際には、「音波測量中である」との回答があったと聞いている。(問)韓国の金大中大統領が我が国マスコミ政治部長訪韓団と会見して、独を引き合いに出し「独はちゃんと謝罪をしたので日本も謝罪をしてほしい」との趣旨の発言をしたと報道されているが、これについて外務省はどう受け止めているか。
(報道官)金大中大統領が日本の報道各社の政治部長の方々との会見(4月29日)で言われたことについては、その内容において我々が理解しているところでは、「日本としても関係諸国から真の信頼と友好を得るために、過去に対する明確な清算が必要と思っている」と述べた上で、「韓国国民は過去に対して批判だけするのではなく、日本が戦後肯定的に発展したことを認めなければならない」というように述べたと聞いている。
過去の問題についての日本政府の考え方は、1995年8月15日の村山総理談話を基本とするものであり、「我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により多くの国々とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめて、これらに対する深い反省とおわびの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かって力を尽くしていく」というものである。このような我が国政府の立場は累次の機会に韓国側にも伝えてきているし、今後とも今申し上げたような認識をしっかりと踏まえて、韓国とは21世紀に向けたパートナー・シップの構築に取り組んでいく所存である。(問)パートナー・シップの構築のためにも、それから相互理解のためにもということで期待されていたものとして、両国政府が力を入れようとしていたものに日韓共同の歴史研究があったと思うが、右の現状及びどういった展開をしているのか。
(報道官)今細かい事実関係を手元に持ち合わせていないが、歴史研究の進め方について、両国間の打ち合わせ及び歴史研究の組織が進んでいるものと承知している。
(問)かなりの前進がみられているということか。
(報道官)然り。
(問)昨日(4月30日)橋本総理が衆議院本会議において、北朝鮮の拉致問題について、(解決について)北朝鮮側の最高指導者に呼びかける趣旨の発言をしたが、今後どのように北朝鮮側に本件を伝えるのか、また、北朝鮮側から何らかの(今回の総理発言について)サウンドのようなものはあったのか。
(報道官)昨日の衆院本会議でいわゆる拉致問題についての質問に対して、総理の方から「この問題が我が国国民の生命の安全にかかわる重要な問題であるとの認識に立って、従来から外交的にも働きかけてきているわけであるが、今後とも北朝鮮側の真剣な対応を粘り強く求め、問題の解決に向け最大限の努力を払う決意である」ということを言われた。
更に総理から付け加えられて、「この場を借りて北朝鮮側、とりわけ最高指導者に対し、改めて問題解決に向けての真剣な対応を呼びかける次第である」との呼びかけが行われたということである。我々としては、このような総理の呼びかけに対する北朝鮮側の真剣な対応を期待している次第であるが、今までのところ、これに応えて北朝鮮側から特に反応があったとは承知していない。国会の場で総理の答弁という場を使って、総理ご自身北朝鮮側の真剣な対応を呼びかけられたということであると理解している。(問)総理の答弁を使って(北朝鮮に)呼びかけたということだが、答弁は日本の国会での答弁であり、北朝鮮に伝わったかどうかは分からないわけであるので、本件を外交ルートを通じて正式に伝達するということは行われるのか。
(報道官)伝わっているか否か解らないということはあるかもしれないが、国会での質疑ということであれば相当の関心を集めることでもあるので、そういう意味で総理が呼びかけをされたということであると思われる。
「外交ルート」といっても(北朝鮮との関係では)何をもって「外交ルート」というかという問題があるが、何れにせよ何らかの手段で総理の呼びかけを改めて伝えるといったことが行われているとは承知していない。(問)昨日の時点でああいった(総理の呼びかけ)ことを行ったのは、確か初めてだと思うが、どういうきっかけで行われたのか、その背景如何。
(報道官)この拉致の問題についての国内の関心は非常に高いわけであり、北朝鮮との色々な話し合いを進めていこうとするに当たっても、この問題が一つの障害となっているということもあるので、この問題について、まさに我が方の強い関心にも鑑みて、北朝鮮側の真剣な対応を求めたいということから、国会の場で呼びかけが行われたということである。
(問)世界保健機関(WHO)の中島氏が今度退任されるわけであるが、次期事務次長に日本の職員の方を推すことは検討されているのか。
(報道官)今答える情報を有していない。
(問)米国が国連安保理でポル・ポト派に対する国際法廷の設置を非公式に提案したとの報道があるが、我が国の立場如何。
(報道官)カンボディア国際政治裁判所設立決議案というものが、安保理非公式協議で出されたということであるが、右についての議論はまだ色々検討すべき点があり、今後更に技術的な問題を含め検討が行われるという状況であると理解している。
我が国の立場は、先般この会見の場で述べた次第であるが、KRの幹部を裁判にかけるという考え方自体には反対するわけではないが、法律的、技術的には色々考えるべき問題があるのではないかという感じがしている。そういう意味で慎重に対応する必要があると考えている。「法律的、技術的には」というものは、例えば司法の場というものは色々あり得るわけであるが、どの場を利用するかとか、どのような法律を適用するかとか、何が国際慣習法であるかとか、そのような問題についても色々専門的な見地から慎重に検討していく必要があると考えている。(問)韓国の新聞によると、日本輸出入銀行が10億ドルの借款を供与するとのことであるが、右は事実か。また、日韓首脳会談の際、金大中大統領が話題にした日本、米国等が行うという第2線支援の実行状況は現段階でどうなっているか。
(報道官)輸銀借款については、それが事実か否か調べてみないと分からないが、第2線支援を実際に支払うのが、主に米国との法律・技術的な問題で延びているということだったと思うが、その現状が今どうなっているかは承知していないので、次の機会にでも答えたいと思う。
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