外務大臣会見記録(ぶら下がり) (平成17年1月28日(金)8:49~ 於:院内大臣室前)
閣議(人事関連)
ライス新米国務長官との電話会談
(外務大臣)閣議では、外務省関係の人事の話がありました。藤崎大使や北島大使の発令がありました。政策関係は外務省関連は特にありませんでしたが、雇用情勢がだいぶよくなっているとのことでした。その後、総理と残り、今朝7時過ぎにライス新米国務長官と電話で話したことを報告しました。ライス長官には、就任のお祝いを述べ、引き続き一緒に仕事ができることをお互い楽しみにしているということと、順不同ですが次のようなテーマがあるということ、イラク、中東和平、北朝鮮、トランスフォーメーション、国連改革。いずれも大きな政策課題としてお互い一緒に取り組んでいこうということで、お互いの認識が一致したということです。また、出来るだけ早く「2プラス2」を実施しようということ、私が単独で米国に行くことも考えているということ、そして、新長官にも日本に出来るだけ早くお越しいただけるようにと伝え、お互いにその調整をしようということで合意しました。特に、先般、私がイスラエル、パレスチナに行ったことを既に聞いておられたようで、中東和平に向けて、特にパレスチナに対して、日本がいろいろな協力をしたり、働きかけをしてくれることに感謝をしているというコメントがありました。また、イラクの選挙が正常に行われるように期待をしていること、イラクに対する自衛隊の派遣を始め、日本の協力に感謝をしているというコメントもありました。その他に、これはもう報道されていますが、英国が数百人をイラクに派遣するということを総理に報告しました。オランダ軍との数のギャップは確かにありますが、それは治安が総じていいということに加えて、オランダが一生懸命訓練に協力をするなどして、国内のイラク人による、イラク人の警察能力、あるいは軍隊を含めての治安維持能力が向上しているというオランダ軍の撤退理由を足し合わせて考えれば、引き続きムサンナー県、あるいはサマーワの治安は維持できるであろうという判断であるということです。
(問)大臣の報告に対して、総理からは何かお話はありましたか。
(外務大臣)会話はありましたが、特に指示はありません。
(問)指示以外ではどのような。
(外務大臣)まあ、それはいいでしょう。
(問)ライス米長官とは北朝鮮についてお話されたということですが、この中身は。
(外務大臣)個々の中身を全部いちいち話をする時間もありませんでしたから、テーマがあるということの確認です。
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サマーワ情勢
(問)サマーワの治安確保について、今後大臣としては英国側とはどのような協力をすることになるのでしょうか。
(外務大臣)これは既に現地大使館ベース、あるいは在京英国大使館と外務本省との間で、連絡あるいは相談が極めて緻密にできていますので、今後更にどのような役割分担、どのような体制で彼らが臨んでくるのかということ、オランダ軍との引き継ぎがどうなるのかということ、その辺についてはよく情報を交換し、これからもお願いするところはお願いし、相談は実施してきていますが、これからも実施していこうと思っています。
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対中円借款
(問)対中円借款について、新規の円借款は2008年には停止されるとの報道がありますが。
(外務大臣)まだ特に具体的に決めていません。一部報道が出ていましたが、まだ、そういう議論を省内で煮詰めていません。どうしてあのような記事が出るのか私にはわかりません。
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外務大臣会見記録(ぶら下がり) (平成17年1月25日(火)9:47~ 於:院内大臣室前)
閣議(国連世界防災会議の報告)
(外務大臣)閣議では、外務省に関係することとして村田防災大臣から神戸での国連世界防災会議の報告があり、村田大臣がこれを大変うまく、見事にとりまとめられたので、私から感謝の意を伝えました。直接私共に関係するのはそれだけです。後は、花粉症の話、健康診断の話などいろいろ出ましたが、それは別にします。
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日朝関係
(問)昨日、朝鮮中央通信が横田めぐみさんの遺骨とされた骨について、公表しないという約束を日本が破ったと非難していますが、これについてどう思われますか。
(外務大臣)公表する、しないという議論はあったようですが、最終的に我が方からは、家族の了解が取れた場合には公表することもあり得ると先方に伝え、先方ではそれに対して異議を申し述べなかったということです。
(問)改めてあの鑑定結果はねつ造であるという主張を繰り返しているわけですが。
(外務大臣)言いたいなら、直接言ってきなさいということです。そういう報道機関を通じるのではなくて。我が方は直接先方に意見を渡したのですから、直接、彼らが日本政府に伝える義務を負っていると私はそう思っています。
(問)一ヶ月近く経ちますが、未だに回答がないという状況についてはどのようにお感じになられていますか。
(外務大臣)誠に残念なことであり、早く正式に彼らから誠意ある回答を求めたいという姿勢に変わりはありません。
(問)暫くは回答を待つ時間であるということですか。
(外務大臣)早く回答を出すように働きかけはしています。
(問)藪中氏が遺骨を公表しないという部分ですが、北朝鮮は文書で署名してもらったと言っていますが、その文書は存在するのですか。
(外務大臣)文書があったかどうかは私はよく聞いていません。ただやりとりの中で、公表しないでくれといった話があったらしいのですが、最終的にそれについて合意をしたわけではありません。ただ、家族が公表しないでくれと言われた場合は、公表しないこともあるということは、当然話してあると思います。それは社会常識、人間の常識として、ご家族がいやだというものは出すわけにはいかないだろうと思います。
(問)そのやり取りというのは、日本政府としてのやり取りなのか、藪中氏個人のご判断なのか。
(外務大臣)個人ということはあり得ないでしょう。政府を代表して行っているのですから。
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外務大臣会見記録 (平成17年1月21日(金)10:15~ 於:本省会見室)
閣議
閣僚懇談会
小泉総理への日露外相会談の報告
インドに対する支援
(外務大臣)本日の閣議ですが、外務省関係では、外交演説案について、昨日、検討会があったわけですが、了承されました。また、「児童の売買、児童売春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」の批准についての案件が決定されました。これは既に昨年春の通常国会で承認をいただいたもので、それを国内で措置するための児童福祉法の一部改正等の法案が、昨年春及び秋の国会でそれぞれ成立していますので、これに基づいて今回議定書の批准を決定し、具体的には来週月曜日にもニューヨークの国連代表部を通じて国連に寄託する予定です。一ヶ月後の2月24日に効力を発生するということです。この趣旨は、先般の津波関連でも報道されているように、世界中の多くの子供達が児童売買、児童売春、児童ポルノにより被害を受けているので、こうした状況を改めるために必要なものということです。また、私のロシア、イスラエル、パレスチナ自治区訪問の報告を行いました。内容は省略します。
次に、閣僚懇談会において地震及び津波に関する中間的な報告を行いました。被災状況は既にご承知の通りですが、インドネシアだけの発表でも16万6000人以上の方が亡くなり、一部報道では世界全体で21万人を越えるという話もあります。日本では現時点で、死亡の確認された邦人が25名、依然として35名の行方不明の方がおられます。事件が起きた当初は3000人以上の安否照会等があったわけですが、その後行方不明の方が、ある時期600人台までに減り、現在は35名まで減ってきましたが、依然としてこの確認作業は続けていくことにしています。この関連では、関係閣僚に御礼を申し上げておきました。無償の緊急支援、あるいは債務の支払い猶予については財務省の大変なご協力をいただきました。また自衛隊による国際緊急援助活動等については防衛庁のご協力をいただきました。また津波の早期警戒メカニズムについては国土交通省のご協力もいただいています。また、今、村田防災担当大臣は国連防災世界会議の場での議長として活動をしておられ、まだ会議が開かれていますので神戸におられるようですが、大変なご協力をいただいたことに御礼を申し上げました。なお、自衛隊が来週の前半にはインドネシアのバンダ・アチェにおいて本隊が活動を始めます。既に一部先遣隊が医療活動を始めていますが、本隊も到着することから、外務省としてもバンダ・アチェに臨時事務所を設置することを決めました。既に何名かが入れ替わり立ち替わり長期出張という形で行っているわけですが、自衛隊が到着するということもありますので、自衛隊の受け入れに万全を期すること、併せてインドネシア政府の現地対策本部との調整、あるいは国際機関との調整などを行うために、概ね5名程度の要員を現地に駐在させることにより、スムーズな緊急支援、そしてその後の中・長期の復興支援にも当たれるようにということで、臨時事務所を作るものです。また、先般も言及したことについて、「津波被災子供支援プラン」と称することにしましたが、概ね8600万ドル規模を想定して、先般ユニセフ(UNICEF)を始めとする国際機関、日本のNGO、あるいは海外のNGO日本支部の方々とも、私がモスクワに出発する前に会合し、どういう活動が子供のためにできるだろうかということについて、その後いろいろ個別な詰めも行い、主としてユニセフ(UNICEF)等の国際機関を通じて、一つは人身取引の防止、他の一つは感染症対策という2本を柱にして、子供のための活動を積極的に日本としても行っていこうということを決めました。既に一部ユニセフ(UNICEF)等では現地での活動が開始されているわけですが、そうした活動に日本も積極的に支援していくことを、本日の閣僚懇談会で述べました。更に、物資の輸送ですが、民間の企業あるいは自治体等から、自分たちの手持ちの物資、あるいはそれぞれの会社が生産しているものなどを、無償で現地に支援物資として提供したいという有り難い申し出もいただいています。これについては関係省庁や民間の航空会社、JALもANAからも無償で輸送するという申し出をいただいています。また自衛隊や国際機関の協力も得て、現地に運び、主としてインドネシアの被災民に配布を行うべく、文字通り官民一体になってこうした物資の輸送そして配布を、これから着々と進めていくことにしています。あまり前例のないことでもありますが、出来る限りこうした各界の御厚意が現地に届くように、外務省としても出来る限りの支援をしていこうと考えているところです。
閣僚懇談会の後ですが、総理にモスクワでの日露外相会談の報告を行いました。更に、谷垣大臣、中川大臣もそれぞれインドを訪問されたので、インド政府との災害支援についてのやり取り、緊急的なものについてはインド政府が自ら行うが、やはり中・長期的な復交支援については日本の支援を求めたいというのがむしろ本音であるということだったので、どういう形でこれに応えていくのかという相談をし、今後現地の大使館を中心に、あるいは日本から派遣する調査団の調査結果などを待って、日本として的確にインドにも支援の手を差し伸べていこうということを、三大臣で相談し、方針として決めたところです。
(問)津波の「子供支援プラン」について、当面の財政支援として8600万ドルということでしょうか。
(外務大臣)既にユニセフ等国際機関に2億5千万ドルの無償資金を出すことを決め、その機関毎の割り振りも既に発表しています。その中でユニセフに拠出している分、あるいはその他の国際機関に拠出している分を相談しながら活用していこうということです。
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第二期ブッシュ政権と日米関係
(問)米国でブッシュ大統領の二期目の就任式がありましたが、二期目のブッシュ政権、外交チームも大分メンバーが替わりますが、今後の日米関係についてどのようにお考えですか。
(外務大臣)国務長官以下、確かにメンバーは替わりましたが、ブッシュ大統領自身は変わらないわけで、基本的な日米関係は現在極めて良好な状態にあります。従って、日米関係が、第二期政権の下で今まで以上に引き続き良好な関係を保ちながら、「世界の中の日米同盟」という考え方で、今後様々な局面で協力していくという方針に変わりはないものと思っています。おそらく、来週、上院でライス長官の人事も承認を受けるであろうと思われるので、まだ具体的な日程調整に入ったわけではありませんが、出来るだけ早い機会にライス長官とも会い、そうした基本的な方向性について確認しながら、当面の緊急課題であるいくつかの点について具体的な話をしていきたいと思っています。第2期ブッシュ政権は、自由、民主主義を世界により一層推進していくという考え方ですから、私ども自由民主党の政権としてはまことに結構な考え方だと受け止めています。
(問)ライス長官との会談とは、昨年来の2+2とは切り離してお考えですか。
(外務大臣)現状では、まだ先方の国務長官、国防長官の日程が確認できる状態ではありませんので、はっきり日程的なことを今申し上げるのは、時期尚早かと思われます。出来るだけ早い機会に会えればと思いますが、国会、予算委員会が開会中ということもあり、なかなか日程的には調整するのは難しいこともあります。しかし、出来るだけ早く調整して基本的は話し合いはしておきたいと思います。2+2も同様です。
(問)早ければ今月中にもあり得るということですか。
(外務大臣)先方の都合、まだ承認もされていない方の日程をどうだと今から聞くわけにもいきません。
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外務大臣会見記録 (平成17年1月11日(火)10:42~ 於:本省会見室)
閣議(インドネシア・タイ訪問)
(外務大臣)今日の閣議の報告ですが、通常国会は1月21日召集ということです。14日の閣議は取りやめ、18日の閣議は17日に繰り上げて行うということです。私は13日から19日まで海外に行きますので欠席します。
関係大臣から海外出張について報告があり、私からもインドネシア及びタイ訪問の報告を行いました。「TSUNAMIサミット」と言うそうですが、ASEAN主催の緊急首脳会議に総理と供に出席しましたが、内容はご承知のとおりです。その後残って、インドネシアの外務大臣、タイの外務大臣等々、たまたまタイ訪問中のドイツの外務大臣とも会う機会がありましたが、その他にもインド、スリランカ、モルジブの外務大臣等とも個別の会談を行いました。いずれの国からも、日本の貢献を多とする、また今後ともよろしくという話がありました。特に、12月30日の夜8時頃、私がインドネシアのハッサン外務大臣から電話を受けて、間髪を入れず、と言っても1,2時間後だと思いますが総理及び私が出席をするという回答をし、更に1月1日に5億ドルという決定をしたということに対して大変なインパクトがあったこと、これで大体各国の出席者のレベルであるとか、あるいは支援の規模というものが決まってきたということで、大変国際的な良いインパクトがありましたので感謝いたしますということを、ハッサン外務大臣は再三述べていました。そういう意味では出だしは大変スムーズな対応ができたのではないかと思っています。また、インドネシアには自衛隊が緊急援助に向かっているところですが、これも大変タイミングがいいのではないかと思っています。今日の閣議でそういう報告をした後、閣僚懇でも若干そういう話をしました。1月18日の国連防災会議はたまたま阪神・淡路大震災10周年ということで計画していたものですが、これに対する国際的な関心が大変高くなっています。津波が起きた後から中国も津波の会議をやります、タイもやりますと次々手を挙げていますが、中身がまだはっきりしていません。それに比べて我が方の会議は従前から十分な準備をしていますから、その中で特別セッションを設けてこの津波に関する国際的な対応をしようということで、大変タイムリーであると思います。これに対して総理からも各省協力して、特に早期警戒システムの構築についてきちんとした提案をするようにという指示があり、私からもそういうお願いをしたところです。短期的な対応としては既に発表している資金協力、医療協力、自衛隊の協力、物資輸送の協力などがあるわけですが、特に私は「子供」に注目をする必要があるのではないかと思っています。大人も大変ですが、たまたま、日本の杉本君が両親を一度に亡くし、その後、気丈にも遺体を子供一人で探しあてたという話もあります。またどこまで事実か必ずしもわかりませんが、既にインドネシア辺りでは孤児と思しき子供達の人身売買が始まってしまっているという実態を見るにつけても、これは放置できないという思いを強くしています。今後具体的にどういう対応が日本としてできるか、早急にユニセフ(UNICEF)とか、あるいはこれに関連するNGOの皆様方もいると思いますので、そういう方々と早急に日本としてできることはないだろうかということを相談していきたいと思っています。南野大臣ともそういう話をすると、「日本子供ハウス」といったようなものを作ったらどうかということでした。イメージはよくわかりませんが、戦後は日本にも孤児院というものがありました。今は孤児院とは言いませんが、今でも両親が亡くなってしまった、あるいは家庭内暴力で家にいられなくなった子供達が、施設で生活しているということも日本国内でもたくさんあるわけです。また一段と違った状況の中で、特にインドネシアの子供達のためにできることはないだろうかということを早急に考え、できることから実行に移していきたいと、今後早急に関係者と話し合いをして、中身を詰めていきたいと思っています。また、中長期的な復興支援も大切だということで、関係省庁のご協力をお願いしたところです。閣僚懇での関連する話としては以上です。
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中東和平問題
(問)中東の関係ですが、パレスチナ自治政府でアッバス氏が当選しましたが、中東和平の推進という意味においてアッバス氏当選をどう位置づけておられるか、中東訪問で実際にお会いになると思うが、中東和平推進についてどうお話しされるのですか。
(外務大臣)アッバス氏当選については、総理及び私から先方に対し祝意の電報も打っていますが、直接会う機会も16、17日頃にあるのではないかと思っています。6割以上の支持を受けたということは大変大きな意味があると思います。一部にはこれをボイコットするとのパレスチナ住民の動きもあったようですが、6割以上の支持を得た、しかも話し合い路線、穏健路線を標榜している方ですから、それに対応してイスラエル側も当然話し合いの路線に乗ってくるのではなかろうかという期待もあります。そういう意味で中東和平の大きな転機になる可能性がある、難しい問題だけにそれほど楽観できる話ではありませんが、明るい光が見える可能性が出てきたという意味で、我々は今回の選挙結果を歓迎し、またその後の話し合いがうまくいくように期待しています。日本も傍観者的に見るだけでなく、可能な限りのことを行っていきたい。今回の選挙支援についても、資金的な協力のみならず、選挙監視団も出しました。河井政務官を団長とした選挙監視団を出したわけですが、概ねきちんとした選挙だったという評価だったようです。そこから始まり、パレスチナ自治政府に対する支援もやってきております。これについても今回の選挙結果を経て、更に一層強化・拡充することも考えなければなりません。
また、昨年、一昨年とイスラエルあるいはパレスチナの政府関係者・有識者を日本に呼んで信頼醸成のための会議も行って来ています。今年も実施したいと思いますし、日本だけでなく、中近東のどこかで実施してもいいのではないかとも考えています。いずれにしても、日本としてどこまで出来るか分かりませんが、国際社会の一員として、中東和平に向けて出来る限りの責任ある行動をとっていきたい、その意向を伝えるとともに、具体的にどういうことをやったらいいのか、その辺を見極めるためにも今回パレスチナ、イスラエル双方の関係者と会えることを期待しています。
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外務大臣会見記録 (平成17年1月4日(火)10:56~ 於:本省会見室)
新年の抱負
(外務大臣)皆様、明けましておめでとうございます。昨日、緊急対策本部を開いており、お目にかかっておりますが、改めてこの場で新年の挨拶を申し上げます。昨年は大変いろいろとお世話になり、ありがとうございました。また今年もいろいろな面でお世話になりますのでよろしくお願いいたします。
新年とはいえ我が省員は元旦から数多く出勤し、今般の津波・地震の被害対策で活動を開始しています。波乱の一年の幕開けとの予感もするわけですが、当面この緊急課題に対し一生懸命、日本政府としてやれることをしっかりやっていきたいと思っています。明日から小泉総理と供にインドネシアに向かう予定です。インドネシアでは総理とユドヨノ・インドネシア大統領との会談も行われるということであり、私も先方でハッサン外務大臣等とも会談し、当面の被害対策、そして更に二国間関係について話し合いをしていきたいと思っています。その後、タイに移動して、恐らく8日(土)にプーケットを訪れ、被災状況をこの目で見てきたいと思っています。更に、まだ明確な時間設定はできていませんが、首相あるいは外務大臣との会談ができればと思っていますが、先方も大変取り込んでいる状態であり、うまく段取りができるかどうか現時点ではまだ分かっていません。いずれにしても、まだまだ行方不明の方々も多数いらっしゃるという状況であり、その安否確認に全力を尽くしていきたいと考えています。なお、日本国政府としては安否確認を行うことは最優先でありますが、1月6日のASEAN主催の首脳会議で、昨日もお話しましたが、5億ドルの支援を行うこと、更には津波のインド洋における国際的な警報システムの開発についても日本のこれまでの知見を大いに活用する対策を講じていく、若干時間がかかるかもしれませんが、システム開発を行っていく提案をしようかと思っています。更に、人的貢献ということで自衛隊の方々に、まだいくつかの問題点はあるようですが、インドネシアが中心になると思いますが、医療あるいは輸送といった面で自衛隊の人的能力も活用していきたい、もちろん併せて民間の方々、あるいは自治体のご協力も得ながら日本の総合力でそうした支援展開をしていく必要があろうかと思っているところです。そういう意味で地震・津波対策は当面の緊急課題です。
しかしこの一年を考えてみると、その他にもいろいろな数多くの課題があります。項目を挙げるだけでも、順不同ですが、国連改革の一年という大変重要な、60周年という節目の年になるわけであり、国連ができて60年目にして初めてその改革ができるかという年に、日本も常任理事国入りを目指し全力を挙げていきたいと考えています。ただそう簡単に実現できる話でもないだろうと思いながらも、高いハードルをしっかりと越える外交努力をしていきたいと考えます。二国間の関係で申し上げるならば、1月13日に出発してロシアに参りますが、プーチン大統領訪日を前提としながら領土問題の確定、更には平和条約の締結といったことに本格的に取り組む一年にしたいと考えます。またイラク、更には中東問題ということも大きな課題です。中東についてはモスクワに行った後、私自身新しく選ばれるパレスチナ自治政府の首脳とも会って、中東和平に日本がどういった貢献ができるかということにも取り組んでいきたいと考えています。イラクは引き続き政治プロセスの成功に向けて様々な協力、努力をしていきたいと思っています。その他、日本外交の基調である日米関係については、トランスフォーメーションの問題を前進させていかなければいけないだろうと思います。その際に沖縄の問題というものを常に頭の重要な部分に置きながら、その過重な負担の軽減に努力していきたいと思っています。また日米間には牛肉輸入問題も引き続きあるということは忘れてはならないと思います。日中、日韓もそれぞれいろいろな意味で節目の年です。そうした近隣諸国とのよりよい関係を築くための様々な努力を行わなければなりませんし、またASEANを中心としたFTA交渉にも全力を挙げる一年でならなければならないと思っています。
そういった様々な課題に取り組むために、先程9時半前後ですが、新しい事務次官以下に辞令を交付し、新体制の下でこれらに取り組んでいきたいと思っています。私自身も全力を挙げて、先頭を切って頑張っていきたいと思っていますので、国民の皆様方、また記者の皆様方にもいろいろご協力を賜れればと思っていますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
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スマトラ沖地震・インド洋津波被害及びASEAN主催緊急首脳会議
(問)インドネシアでの首脳会議出席のため各国要人、例えば米国パウエル長官などが現地入りしているが、こうした方々とお会いになるのですか。
(外務大臣)今アポイント取り付けの作業を行っているところです。パウエル長官には多分会える時間がとれそうだということです。他の方々についてはまだ十分日程調整ができていません。インドネシアの外相とは会います。
(問)国際会議で表明するのは先程述べられた5億ドルの支援および自衛隊の派遣が全てと理解していいのでしょうか。
(外務大臣)今日午前中に関係省庁の局長クラスが集まって二橋副長官の下でその会議を開催しています。更に幅広くいろいろなこと、当面やること、あるいは若干時間がかかってもやれること、更にその先など色々な段階があると思いますが、当面は緊急対応ということになりますが、しばらくすると、復興への対応、崩れた港湾をどうするのかといった復興需要、復興ニーズというのがあるかと思います。それにどう応えていくのか、様々な段階で色々な対応が可能であろうと思います。関係省庁からどういう知恵を出してもらえるかということもあります。もちろんその前提として、国際機関からのいろいろなニーズが既に発表されつつあります。また、相手国政府からも、水が必要だとか食糧が必要だとかいう話が出ていますので、それらについてどこまでどう対応していくのか、食糧が現地になければ日本から運ばなければいけない部分もあるでしょうし、日本のお金で現地の食糧を買って被災地に届けるということもあります。あるいは周辺国から食糧を買って届けるという、食糧一つとっても色々な方法があると思います。ニーズに見合ったわが国としての支援というものを展開することが大切だと思っています。
(問)680人という連絡のつかない人は、昨日の呼びかけによって減ったのでしょうか。
(外務大臣)まだこの時間ですから、その後どう変わったかということは聞いていませんが、皆様の協力を得て、安否情報を外務省にも連絡頂きたいとお願いしたところです。引き続きこちらからも連絡を取るし、ご家族からの連絡をお待ちしているという状態です。是非皆様方のご協力を戴きたいと期待しています。
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日朝関係
(問)北朝鮮政策について、昨年暮れに北朝鮮外務省スポークスマンの日朝政府間協議の意義が失われたとの発言で、今後、経済制裁を含めてどのように対応していくのでしょうか。
(外務大臣)スポークスマンの発言は、それはそれとして受け取らなければいけないと思いますが、日本国政府に対する回答、反応が直接あったわけではないと受け止めています。あくまでも一般に対する発言であり、より直接的な形での回答をこちらも引き続き求めていきますし、北朝鮮もそれに対して答えるべきであると思っています。スポークスマンの発言はそれとして受け止めますが、それにこちらがいちいち反応してどうこうということは必要はなかろうと思っています。
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外務大臣会見記録 (平成17年1月3日(月)14:53~ 於:本省正面玄関)
スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害
(問)今日、緊急対策本部会議が開かれたのですが、その時どのような話をされたのでしょうか。
(外務大臣)まず、安否不明の方々を含めて亡くなられた方の現状把握を行いました。21名の方々が亡くなられたということです。心からお悔やみを申し上げたいと思います。外務省に問い合わせをしてきている方々で、安否が確認できた方々とそうでない方とのギャップが、但し正確ではないですが、数百名おられます。その数百名が被害に遭われたということではないのですが、未確認といいますか、世界のどこかを旅行しているかもしれない、場合によればこの被災地にいたかもしれないという方々で今、数百名のまだ不明な方々がいます。それを一人一人確認する作業を行っていますが、なかなかこちらから確認しづらいところもあるので、国際放送や外務省のHPを通じて、できるだけ海外にいるご家族に連絡を取ってもらって、確認できたらまた外務省にも是非連絡頂きたいということを国際放送等も使って前広にお願いしていくことをまず確認したところです。
どういう復旧・人道支援のニーズがあるかということについても子細に検討しました。様々なニーズがあるようですし、それぞれの国の政府から、あるいは国際機関からのアピールも段々出始めています。その辺を見ながら日本としても最大限やっていこうということです。元旦の日に、小泉総理からは5億ドルの支援実施を発表しました。今のところ世界全体で20億ドル位の復興支援のための資金協力がなされることになっており、日本はそのうち約4分の1ということになるでしょうか。各国それぞれ最大限の支援をしようという国際社会の意図の表れだと思います。それらを踏まえながら、1月6日にインドネシアで1日会議が開かれることになりました。これはASEANが主催するものです。それには小泉総理および私が出席して、日本政府の取り組みについて明確に方針を述べたいと思っております。総理はその日にお帰りになりますが、私はその後タイに回って、特にプーケットの状況などを視察できればと思っています。
また、明日1月4日の午前中に、官邸の二橋副長官の下で、関係省庁の局長クラスが集まって、それぞれの省庁で、先程申し上げた色々なニーズを見ながら、それぞれの省庁がどういう対応ができるか、それには各自治体ももちろん含まれてくる、あるいは省庁ということだけではなくて、民間団体、赤十字であるとか、NGOであるとかそういった活動も幅広くいえば含まれるわけですが、急ぎ各省庁で緊急にできる人道復興支援とはどういうことがあるのか検討しようということにしています。その中には人的な支援という意味で、自衛隊の派遣も検討対象には上っているところです。
(問)プーケットを視察されるということですが、インドネシアの方ではどこか視察される予定はありますか。
(外務大臣)インドネシアでは、せっかく集まっているインドネシアの要人や各国の要人がいるものですから、むしろその人達と積極的に会おうということで、アチェのほうに行く時間は取れないということですのでそちらは失礼をしようかと思っています。
(問)今のところはタイのプーケット周辺だけと言うことですか。
(外務大臣)はい。
(問)先程数百名とおっしゃいましたが、もう少し具体的な数字としてはどれ位なのでしょうか。
(外務大臣)680名でしたか。確認がとれるまで段々数字が動いていきますから、現状はまだ700名弱でしょうか。
(問)その中で巻き込まれた可能性の高い方、そういうようなことについてはわかりますか。
(外務大臣)それはちょっと良く分かりません。もしかしたらヨーロッパを旅行している方もあるかも知れないですし、だからその6百数十名が全て、危険な津波なり地震なりの被害にあわれたという可能性が相当程度ある、という意味の未確認ということではないので、そこは誤解をしないでいただきたい。
(問)逆に言うと津波の被害にあわれたと考えられる方というのはその700名のうちのどの位でしょうか。
(外務大臣)そこをまだ結局1人1人確認するしか方法がないのです。
(問)今後の支援について自衛隊の派遣との話がありましたが、少し具体的にはどういったイメージをお持ちですか。
(外務大臣)医療・防疫チームということかなと思います。もう一つは輸送面があるのかも知れません。まだ可能性を検討している段階です。ちょうど私が外務省の政務次官をやっていた時に、中米カリブ海諸国をハリケーンが襲ったことがあって、確かホンジュラスだったと思いますが行ったことがあります。その時自衛隊の「ミニ診療所」といったようなものが出来て大変な活動をしていた経験があります。あのような形を取るのかな、といった感覚ですが、今防衛庁で一生懸命検討していると思っています。
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