外務大臣会見記録 (平成16年12月30日(木)14:05~ 於:本省正面玄関)
スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害
(問)今日、緊急対策本部会合が1時間ほど行われたようですが、どのような話があったのでしょうか。
(外務大臣)一つはこれまでの被害の状況、就中、邦人の安否状況、何がどこまで確認できたかということを検証しました。現状では、5人のご遺体(の確認)というところまでですが、更にスリ・ランカの8名の方々については、これから御家族が確認するというところです。今後どのようになっていくのか予断を許さないので、現地に大使館員を派遣して、最大限の努力をしようということです。特にプーケットについては、タイ大使館から22名を派遣し、しっかりとした対応を行っているところです。また、我が方として当面なし得る出来る限りの緊急支援をしようということで、インドを除く4カ国には、インドからは要請がないので、緊急援助隊医療チームを派遣し、活動が始まっているところもあります。その他、緊急の無償援助、物資の援助等、大至急作業を行っており、先般発表したとおり、最大限3000万ドルの支援を行うことを決めています。しかし、だんだん被害が拡大してくるといいますか、実情が明らかになるにつれて、これで足りるのかどうか分かりません。恐らく、年明け以降、色々な国際機関からの支援要請・アピール、あるいは各国政府からの要望も出てくると思いますので、その辺りを見ながら、更に必要な追加というものがあるのではないかと思われので、弾力的に対応していきたいと考えています。ただ、外務省限りでは対応できないこともありますので、1月4日に内閣全体で取り組む緊急の会合をこれから内閣にお願いしようと思っています。
(問)スリ・ランカの8名の方ですが、御家族との対面、ご遺体確認の目処、どの程度時間がかかりそうですか。
(外務大臣)私もそこまで詳しく承知していませんが、既に御家族は現地、コロンボ空港には到着したということですので、現場に行って頂くか、あるいはご遺体がコロンボ市内にあるのであれば、大至急御確認頂くということと思います。
(問)ブッシュ米国大統領が日、米、豪、インド4カ国で連携して支援を行っていこうという枠組みを提唱していますが、日本としてどういう対応をお考えですか。
(外務大臣)昨日、昼、私はパウエル国務長官と電話で話を行い、そのような考え、まず日米で協力したい、更に関係する国々で、至急に動けまた能力のある国々と急ぎコア・グループを立ち上げたいという話があったので、それに賛成するということを伝えました。実際に日本も自衛艦を派遣している、米国、豪、インドも、インドは被災した国ですがスマトラ方面には船を出して援助・活動の両方を行うということです。一つは、軍隊に至急被災状況の把握、様々な活動を行う調整(の必要)があるのであろうと思います。更に、様々な現場において要求されている色々な対応について、重複したり、抜け落ちることがあってはいけないので、調整をしていこうということです。そうした調整は大切なことと思います。国連もこういう時に機能を発揮してもらえるはずであり、早晩、国連も加わった形でやっていくのであろうと思います。当初、実働可能な4カ国が動き始めるのは意義があると思っています。
(問)日本としてはどのような分野から力を入れていきたいとお考えですか。
(外務大臣)日本がというよりは、緊急的に今出来ることというのは、やはり医療チームということで、出しました。とても全体のニーズには足りないのかも知れませんが、それでもとりあえず医療チームということです。そして、順を追って、様々なことが考えられると思います。次は、疫病、感染症が発生しないようにといった防疫体制も必要となるでしょうし、また、仮設住宅の提供、或いは水を提供していくといったことも必要となってくると思います。更に少し時間が経つと、大がかりな復興ということが出てくるでしょうし、更にその先には、恐らくこうした大規模な災害、特に津波の早期警戒体制というものを構築する、一朝一夕に出来るものではありませんが、そうしたことも行っていく。ある意味では災害を頻繁に受けている日本としてこれまでの知識、経験の積み重ねがありますので、様々な形で日本としても貢献が出来るであろうと、また努力をしていかなければいけないと思っています。そのような意味で、1月18日から、阪神・淡路大震災から10年ということで、国連世界防災会議を日本のイニシアチブで開くことになっています。そのような場においても、今述べたような話について大いに議論を行い、方向付けをしていきたいと思っています。
(問)(タイにおいて)遺体の処理の仕方が土葬に変わったということですが、行方不明者の家族感情がいろいろあると思いますが、日本政府としてはどのようにお考えですか。
(外務大臣)御家族の考えは尊重しないといけないと思いますが、基本的には先方政府の考え方を尊重しなければ、他に方法がないのであろうと思います。特に、詳しい状況はよく分かりませんが、相当ご遺体が傷ついていたり、或いは気温も相当高いといったことから、保存をするということが難しいという実態もあるのかなと推測されます。従って、火葬がよいのか、土葬がよいのか、私にはよく分かりませんが、イスラムの国では火葬はなく土葬ということ、そのようなことを種々考え、恐らくタイ政府は土葬ということに決めたのであろうと思います。また、スリ・ランカ政府も同様と聞いています。基本的にその国々の政府の判断に委ねるしかありませんが、我が方としてはぜひ個人個人をしっかりと識別できるような様々な工夫をお願いをしてあります。歯形を採ったり、写真を撮ったり、遺品をきちんと管理したり、或いは一人一人についてコードをつけて識別できるようにする等々、また、最終的にはDNA鑑定もできるようなことを念頭に置きながらのお願いをしているところで、これは相当程度先方政府も配慮してもらえると聞いております。
(問)4日の臨時閣議について。
(外務大臣)「閣議」とは言っておりません。4日に閣議の予定はないのですが、まず関係する省庁の然るべき方々に集まって頂くということをお願いしようかなと思っております。
(問)その会合では以前に大臣が言及されていた予備費、追加の予算措置というのは。
(外務大臣)そこまで具体的な数字が出てくるかどうか、まだわかりません。今後、特にいろいろな国際機関からアピールが出てくるのはもうちょっと時間がかかるかも知れません。その辺を見極めながら予備費ということもあるかも知れませんが、今から予め予備費が絶対必要だという状況であるかどうかは、もう少し様子を見てみないとわからないかなと思っています。
(問)いずれにしても肉眼でのご遺体の身元確認がなかなか難しいと...
(外務大臣)時々刻々と難しい状況になってきていると聞いております。
(問)身元確認の全体像が見えるのが長期化するということになるのでしょうか。
(外務大臣)時間がかかるのかなという感触はありますが、正直言って分かりかねます。具体的にどのくらいの時間がかかるのかということを断定的に申し上げることは難しいのですが、ご遺体の数も相当多いようであり、最終的に安否をすべて確認し切るというのは一定の時間が必要なのかなとは思われます。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月28日(火)14:00~ 於:会見室)
スマトラ沖大地震およびインド洋津波被害に対するわが国の支援
(外務大臣)日本国政府の決定ということで、今回の地震及び津波被害に対し、当面の緊急対処及び復興ということで、必要に応じて3,000万ドル程度の支援を行うことで関係省庁を含めて合意をみたところです。先程申し上げましたとおり、既に5,000万円相当の緊急支援援助、それからインドネシアに150万ドルの無償資金協力、スリランカには101万ドル、モルディブには51万ドル、この3カ国合わせまして約300万ドルです。こうした緊急の無償資金協力を行います。それから世界食糧計画(WFP)には既に供与した米のうち2,400トン、これが5,300万円相当です。従って3,000万ドルのうち既に具体化したものが約400万ドル相当あります。このほかに赤十字だとかいろんな国連の援助機関、あるいは人道支援機関等から、これこれの支援を要請するという緊急アピールが相次いで出てくるという話が来ています。まだ具体的な数字はきていません。それらにも今申し上げた3,000万ドルのうちから対応していきたいと思います。更には被災国からもより具体的な要請が追加的に出てくるのではないかということも十二分に予想され、そうした要請にも弾力的・積極的に対応していきたいと考えています。
なお、その一環として、これは防衛庁の方からより具体的な発表が近々あろうかと思いますが、現在インド洋に派遣しています自衛鑑に搭載されているヘリコプターがあります。その自衛鑑が今ちょうどシンガポールの港で給油中ですが、タイ国政府から捜索援助活動のためにヘリコプターを何とかしてもらいたいという要請がありまして、ちょうどシンガポールにいるので活用できるのではないかと、これは国際緊急援助隊法に基づく新たな任務を、この自衛隊の艦船というかヘリコプターに付与するという形で、防衛庁と今協議を始めて、出来るだけ早く決めて捜索のための自衛隊のヘリコプターの活用ということも考えたいと思っています。
申すまでもないことですが、今、外務省本省・出先を含めて全力で安否不明の方々の確認、あるいは既に所在がはっきりした邦人の皆様の保護のために全力で活動しているところであります。引き続きそれらの活動をやっていきたい。現時点では、朝申し上げたとおり、2人の方と多分そうではないかという7名の方以外に亡くなられたという確認はできていませんが、随時分かり次第発表していきたいと思っています。亡くなられた方には心からのご冥福を捧げる次第であります。
(問)ヘリコプターは何機ということですか。
(外務大臣)実際に使えるものが何機くらいになるのかはまだ防衛庁と話し合いの最中であり、そこまでまだ詰まっていません。その辺の詳細については多分防衛庁から発表があるのではないかと思います。
(問)3000万ドルという金額に決まった理由は何ですか。
(外務大臣)一つは、我が方で持っている無償資金協力で緊急に出せるものには限度がありまして、年度末も近づいていることもあり、既にそのうち支出された部分も相当あるわけですが、当面その中のやりくりで何とか使えそうなものであるというのが一つあります。もう一つは、諸外国の協力状態というものを見ながら、やはり今回アジアで起きた大災害であることを考えた時に、やはり遜色のないものにしなければならないと考えて、この金額にとりあえずさせてもらいました。別にこれを上限とするものではありません。更に今後必要があれば、更に財政当局とも話し合いをすることもあろうかと思いますが、とりあえずは外務省の枠の中でやれる最大限のものがここまでだということです。
(問)これを超える金額になった場合に、朝の会見で仰ったように予備費の支出も考えられますか。
(外務大臣)そういうことも必要に応じて考えなければならないと思いますが、今の時点ではとりあえずこれで対応できるのではないかと思っています。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月28日(火)10:36~ 於:本省会見室)
閣議等
(外務大臣)まず、閣議のご報告から申し上げます。数カ国の大使の接受の話がありました。
それから我が省の人事が内閣で決定されております。内容はもう既に発表されたとおりです。それから閣議の中で私の方から2つ話をしました。第一はイラクに対する緊急無償資金協力です。これについては、イラク全土を対象にして救急車や警察用のバス、あるいはオートバイを供与します。それからムサンナー県に対して診療所への医療器材の供与を行います。それから、サマーワ市のゴミ処理機材の供与等、総額約100億円の支援実施を決定しました。当面の支援ということで既に15億ドルの支援を決めておりますが、これで現在まで実施してきた分を全部積み上げますと約14億ドルの支援実施決定をしたことになります。
それから第二に、ジャパン・プラットホームをご存じの方もいらっしゃるかと思います。これはNPO法人で、16のNPO、NGOで構成される団体です。これに対し10億円の拠出をすることにしました。これは今回の地震及び津波対策にも勿論活用できますが、それ以外にも、一般的に災害における難民や被災民を支援するために資金拠出を行うものです。
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スマトラ沖大地震およびインド洋津波被害
(外務大臣)閣僚懇談会で今回の地震及び津波被害について私の方から報告しました。正式にこの災害を何と命名するのかまだはっきり決めていませんが、外務省ではスマトラ沖大規模地震、または大地震と命名しようかといっています。現在確認が取れているところでは、タイで邦人女性1人と子供1人の死亡が確認されています。それからスリランカにおいてもまだ最終確認ではありませんが、7人の日本人のご遺体ではないかということで、今確認のため家族の方々が現地に向かっているという状況です。今次災害では世界的に大変な被害が出ており、2万人あるいはそれを超える方々が死亡したのではないかと見られております。スリランカが1万2000人以上、インドが6000人以上、インドネシアが4500人前後、タイが1000人前後、更にアフリカにも被害が出ているということで、大変厳しい、悲惨な被害が発生しています。なお、我が方で各旅行会社等で確認したところでは、パッケージ旅行参加者だけで見ると、1296人の参加者がおり、そのうち1277人の無事を確認出来ているところです。19人がまだ未確認です。まだはっきりとはわかりませんが、そのうちタイの女性1人とスリランカの7人の方々は、この19名の数の中に入っているのではないかと思いますが、今最終確認中です。それから、在留邦人、海外で働いておられる方々がそれらの地域にたくさんおられるわけで、これらの方々の安否については、今、鋭意確認中ですが、必ずしも全貌がまだ分かっているわけではありません。我が方としては渡航自粛を今呼び掛けているところです。
それから日本としての対応ですが、こうした被災各国への支援について最大限の努力をするということです。関係諸国には小泉総理あるいは私からからお見舞いのメッセージを発出しています。それから既にスリランカに約20人の国際緊急援助隊・医療チームが到着しています。それからインドネシアには、どういう援助をすれば良いかということで、2人のJICAチームを既に派遣済みです。タイについても、国際緊急援助隊の派遣要請があるので早急に答えるべく今準備を始めています。こうした国際緊急援助隊、調査チームの派遣という人を通じての援助が一つにあります。
それから緊急援助物資の供与ということで、テントや、毛布、発電機等々をモルディブに約970万円相当、スリランカに約1470万円相当、インドネシアに約2600万円相当の物資供与を行います。ご承知の方もおられると思いますが、世界3カ所に日本は緊急物資の備蓄をしています。シンガポール、マイアミ、それからロンドンですが、今回はシンガポールに備蓄しているものを活用して直ちに現地へ送るということをやっています。
先程申し上げました、ジャパン・プラットホームをはじめとするNGOの皆さん方にも協力をしてもらおうということで、ちょうど10億円の資金拠出を決めていたので、当面それを活用してもらおうと思っています。既にインドネシア、スリランカ、インド等にこのジャパン・プラットホームの方々が活動をする、あるいは既に派遣中と聞いています。
それから、後は資金的な協力ですが、緊急無償資金協力ということで、インドネシア、スリランカ、モルディブ等について今日中には金額を含めて発表するということで、今、関係省庁と詰めを行っているところです。
更にマルチの支援策というものもあります。例えば世界食糧計画(WFP)につきましては、食糧援助として提供している米のうち、2400トン、約5300万円相当を緊急食糧として提供したいという要請がありましたのでそれを了承したところです。これから先、赤十字でありますとか、国連の諸機関から具体的なアピールが来ると思いますので、これに対しても迅速に出来るようにしたい。無償資金協力として外務省が持っている枠がありますが、それでもなおかつ足りないという場合には、財務省にも話をして国全体の予備費の活用も含めて対応したいということで谷垣財務大臣には閣議の席でお願いしました。ご相談することも有りうべしということでお話をしました。
それから更に、もう少し先の話ですが、この緊急対応というわけではありませんが、日本も地震国として、これまで色々な知識・経験を積み重ねており、このようないろいろな学術的といいますか、早期警戒警報を発出するシステムを構築しています。特に、太平洋側では、多分チリ地震の反省も込めて、一定のシステムが国際的にできあがっていますがインド洋には全くそういうシステムがないということもあります。そんなこともあり、1月18日から国連防災世界会議が神戸で開かれます。ちょうど1月17日が阪神淡路大震災10周年ということで、それに関する事業が行われます。それにひき続いて18日から22日まで神戸でこの国連の会議が開かれますが、その場でもこうした国際的な早期警戒システムの構築といったことをテーマとして取り上げてはどうかということで準備を始めています。この点については、閣議の場でも北川国土交通大臣からこれを是非議題にしたいという前向きの発言もあり、関係省庁とも協力をしながら、少し長い目で見た協力ということになりますが、そのようなことも考えていきたいということです。また、今まで領事局長を長とした対策本部でしたが、被害の大きさに鑑みて、私を長とした対策本部に格上げをして、今朝9時30分から会議を開いたところです。一応、役所としては今日が仕事納めですが、関係方面はとても納められる状態にはありませんので、引き続き、きちんとした対応が出来るように省全体で取り組んで行きたいと考えているところです。
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パレスチナ自治政府長官選挙に対するわが国政府選挙監視団の派遣
(外務大臣)1月9日日曜日に、パレスチナ自治政府長官選挙が挙行されますが、外務省は、パレスチナ自治政府からの要請があり、河井外務大臣政務官を団長として23人から成る我が国政府選挙監視団を1月7日から11日の日程で現地に派遣します。中東和平プロセスがスムーズに行くかどうか、その大事な第一歩ですので、こういった形で日本も選挙監視に協力しようということです。なお、既にわが国は106万ドルの資金協力も発表して先方に渡っています。こうしたお金を通じての協力、人を通じての協力という形で中東和平にも日本として積極的に関わりを持っていきたいと思っています。私自身も1月中旬以降現地を訪れて、新しく選出されるであろう、された直後の自治政府の主要な方々ともお目にかかって、日本としての今後の考え方、取り組み、また先方の取り組み等について率直な意見交換をしてこようと思っています。
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スマトラ沖大地震およびインド洋津波被害
(問)地震の支援について、今お話のあった緊急無償資金協力ですが、昨日オーストラリア政府が円換算で1億円相当の協力を表明していますが、日本は今の段階ではどのくらいの規模になりますか。
(外務大臣)今、金額については最終的な詰めをやっていますので、今日中にはこの金額を発表できると思います。
(問)緊急援助物資ですが、今日付で送られるということでよろしいですか。
(外務大臣)日付は、ちょっと正確にはわかりません。
(問)昨日から今日にかけて吉野一等書記官のご長男を含め2人の死亡が確認されたということですが、これについて改めて大臣から。
(外務大臣)大変痛ましい結果になってしまい、心からお悔やみを申し上げます。実はまだ外務省は吉野さん本人の安否も確認していないという状況です。奥様はお元気でおられるわけですから、その安否の確認を急いでいるところです。いずれにしても、このお二人の方々、更にはスリランカの7人の方たち、まだこれも確認中ですが、出来るだけ早く確認したいと思っています。いずれにしても心からのお悔やみを申し上げます。
(問)スリランカの7人は、ご家族以外の日本人の方がその方々は日本人らしいとの確証を得るようなものがあったのでしょうか。
(外務大臣)現地の方で一定の、そういう確認が出来たということもあるのですが、最終確認を行うためにその7人のご家族がスリランカに向かって出発中であるということなので、ご家族の最終確認を待ってからにしたいと思っております。なお、12人の内の7人ですから残り5人についてはまだ安否はわからないということです。
(問)今朝の対策本部ではどういう指示を出されたのですか。
(外務大臣)出来るだけスピーディに色々な対応を決めていこうということで、内容は先程既に申し上げたとおりです。国際機関等との連携も、先方の要請を待って、というのではなくて、こちらの方から積極的に先方と接触をとりながら対応を決めていこうとしています。それから、先程申し上げた通り年末年始は休みということにはなっていますが、とても休んでいられる状態ではないので、私自身も明日以降適宜出勤しまして、これらの対応がどういう風に進んでいくのかしっかり見届け、また指示も出したいと思っております。
(問)この地震被害の全容について、大臣自身のご感想としては大体これまで見ているような状況の中で把握できていますか。それともまだかなり不明な部分が。
(外務大臣)旅行会社のパッケージ旅行経由で行っている方々の安否というのはある程度わかっていますが、まだわからないこともあります。それ以外に先程の大使館員のようにグループではなく、個人で行っている方々も少なからずいらっしゃると思います。それらの方々の動きというか安否というものはなかなか掴みづらいものがあります。ご家族から問い合わせが外務省に来たり、旅行会社に来たりしていますので、そういう方々のリストを作りながら1人ずつどうなっているのかを確認をする作業を、現地大使館と本省と連絡を取りながら一生懸命やっている、というのが現在の姿です。従って、この辺は少々時間がかかるのかなという感じがしていますが、大車輪で作業を進めたいと思っております。
(問)閣議、閣僚懇談で総理から指示、または発言はありましたでしょうか。
(外務大臣)今日総理からは、最後に1年間を締めくくるにあたって、来年1年もまたしっかり頑張っていこうというご挨拶がありました。
(問)震災に関しては。
(外務大臣)震災に関しては、しっかり取り組むようにとのお話がありました。
(問)予備費の活用について谷垣財務大臣の方からは何かお話はあったのでしょうか。
(外務大臣)まだこちらの方もはっきりとしたお願いをする段階には至っていないので、極めて抽象的なお願いになっています。具体化したところでご相談に応じますとの谷垣大臣からのお話でした。実際お願いしなくても済むかも知れません。この辺はまだよくわかりません。
(問)先程支援の要請がなくても積極的にやっていくとのお話がありましたが、支援要請がない国に対しても支援・協力は行うのでしょうか。
(外務大臣)現状では一応支援要請のあったところを先行してやっていますが、例えば、過去の経験ではインドはあまり他国に支援の要請をしないということがあるようです。しかしながら、今回の事故の大きさもあり、必要なことはやりますよということで、現地大使館から先方政府にニーズの照会をする、こちらからアプローチをするという姿勢で今臨んでいるところです。
(問)支援にあたって、アチェやスリランカでは、政府と反政府勢力とでは要請が違うのですが、それについてはどのようにされますか。
(外務大臣)それは基本的には政府を通じてということにならざるを得ないと思います。
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李登輝前総統の訪日
(問)李登輝前総統が来日されたのですが、政府としてのコメントと、日本に滞在している間はどのように対応していくのでしょうか。
(外務大臣)特段の対応を政府として考えていません。一民間人として観光旅行にお見えになった方ですから、政府が特にどうこう言うことはありません。静かに観光旅行を続けられるものと思っております。
(問)外務省の方から誰か同行していますか。
(外務大臣)いいえ、何もしておりません。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月27日(月)10:00~ 於:接見室前)
(問)昨日インドネシア沖で発生した大地震から一日が経ちました。大臣の率直な感想をお聞かせ下さい。
(外務大臣)事態の全貌がわかるにつれて、大変な大災害であったということが良くわかってまいりました。被災をされた方々、人命を落とされた方々、また被害を受けた国々に対して心からのお見舞いを申し上げたいと思います。今、全容の解明、あるいは邦人の安否等の確認に全力を挙げているという状態でありまして、現地の大使館を始めとして、本省からも応援に駆けつけることにしています。
(問)邦人の安否について様々な情報が錯綜していますが、日本政府として具体的にどのような対応をされるつもりですか。
(外務大臣)旅行会社を通じての把握ということもあります。勿論現地の大使館員を夫々被害が大きかったような場所に派遣をして、その実情把握に努めるということに努力をしているところでございます。先ず、全力を挙げて安否確認に努めたいと思っています。また、本省の方にも今どんどん電話の問い合わせが入ってきておりまして、旅行会社経由ではなくて個人で行っておられる方もいらっしゃるので、誰が何処にいるのかを先ず把握すること、それから現地で旅行者ではなく働いておられる在留邦人の方々もいらっしゃるので、プーケットあたりには5 00人前後いられるということですので、そのような方々が今どうなっているかということも併せて確認中です。それから今緊急援助隊が約20名、本日10時50分の飛行機でスリランカに向けて出発しつつあるところであります。
(問)外務省の職員の方で行方不明になっていられるとか。
(外務大臣)タイの大使館の書記官が家族ともども行方不明ということで、その安否も確認中であります。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月24日(金)17:10~ 於:接見室前)
(外務大臣)北朝鮮関係について本日4時から官房長官が発表されたと思います。また、精査した結果は6時から、外務省の担当の方から皆さんの方に説明をするということになっておりますので、更に皆さん方から何かあればどうぞご質問を。
(問)この調査結果は、北朝鮮にとっては厳しい内容になったと思うのですけれども大臣の受け止めをお願いします。
(外務大臣)かなり限られた時間の中で最大限の作業をしたと思っております。その結果は、彼らの主張を裏付ける信頼に足るものは皆無に近いほど見あたらなかったということです。従いまして、遺骨が偽物であったということを含めて不誠実な対応をしてきたと、強い憤りを今感じているところです。日朝平壌宣言の精神にもとる行為であるということで強く抗議をしなければならないと考えております。また同時にこれは細田長官から申し上げたように、彼らに更に真相究明、もちろんその中には生存しておられる方々の帰国ということを含めてでありますけれど、そのことを強く求めていくことが大切だと思っています。
(問)今後の対応について、細田官房長官は、先程の記者会見で北朝鮮側から誠意ある対応がなければ厳しい対応を取らなければならないということをおっしゃったようですけれども、町村大臣は具体的にどのようなことをお考えですか。
(外務大臣)まず彼らが私どものそうした考え方について見極めることが大切だと考えております。不誠実な対応が続くようであれば、細田官房長官が言われたような厳しい対応というもので私どもも考えないといけない。その中には選択肢として当然経済制裁も含まれるということでありますけれども、別に経済制裁ありきということで考えているわけではありません。
(問)具体的には北朝鮮側にいつこの内容をお伝えになるのですか。それとももうお伝えしているのですか。
(外務大臣)今日、細田長官の発表を直ちに北京の日本大使館の方に連絡を致します。そして大使館の方から北京にいる北朝鮮の大使館の方に連絡をすることにしております。ただ鑑定結果の内容は電送になじまないものですから、これは別途何らかの方法で大使館に持って行くことになりますが、今週末か来週早々になるかと思います。
(問)北朝鮮側への回答期限を切らない形で速やかな対応を求めるという表現になっていますが、大体いつ頃までなら速やかな対応と考えるのか、いつ頃までだと待てないのかを目安を教えてください。
(外務大臣)いつと言えば、逆に向こうがその間何もしなくても済んでしまうわけです。従って、私共はあえて期限を切らなかったということで、それが大体いつかと言ってしまえば、期限を切ったことと同じことになるでしょう。それは私の方から言わない方がいいのだろうと思っています。常識の範囲というものがあるだろうと私は思います。
(問)今まで何度も日朝で協議を行っているわけですが、そのたびに誠意ある回答は見られていません。そうした状況の中で、今回期限を切らずに北朝鮮にある意味で更なる猶予を与えるわけですが、そこまでやらなければいけない理由というのは何なのでしょうか。
(外務大臣)これはまさに日朝平壌宣言に基づいて、誠実な対応をするという前提で物事が進んできているわけです。一方で、現実に今まで対応がない。彼らは対応したつもりなのでしょうが、それはこちらとして全く認められなかった。一番確実な物証であろうと思われた遺骨すら、私どものDNA鑑定でそれが違った。それを相手に突きつけるということは、大変大きなことです。言葉のやり取りとは違いますから。これだけ確実な証拠というものを相手に突きつけて、「さあどうするんですか」ということを迫ることは今までの交渉とはまた違った意味が出てくると私は思っています。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月24日(金)10:47~ 於:本省会見室)
閣議等
(外務大臣)今日は10時の閣議の前に、9時25分から安全保障会議があり、来年度の防衛計画の具体的な予算、部隊編成、武器の調達などの話でした。9時40分からは行政改革推進本部があり、また新たな思いでやっていこうということでした。閣議では特に外務省の案件はありませんでした。その後、少子化対策関係閣僚会議がありましたが、私から特に報告することはありません。
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日朝関係
(問)北朝鮮関連で、11月の実務者協議から持ち帰った横田めぐみさんのものとされた遺骨について別人だと判明しましたが、判明した後に北朝鮮側が労働新聞などで遺骨の返還を要求すると言っているようですが、それに対して政府、外務省としてはどのような対応をされますか。
(外務大臣)そのことも含めて今日の夕方、官房長官の会見等でお話いたします。
(問)昨日、北朝鮮側が遺骨の返還を要求しているのは、横田めぐみさんの夫であるということを伝えているようですが、それによって何か日本政府の対応が変わる可能性はありますか。もしくはご感想は何かありますか。
(外務大臣)感想はありません。今後どうするかは、午後お話しいたします。
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愛知万博と李登輝前総統の訪日
(問)3月から9月まで愛知万博が開かれますが、日本政府は台湾の観光客に対してビザ免除の措置を取ります。そうすると、李登輝氏が自由に日本に入国する可能性もありますが、この問題について、今の日中関係に鑑み、日本政府はどのような措置を取るのでしょうか。
(外務大臣)仮定の話を今から考えるのは止めましょう。3月から考えればよいことですから。今ここでそのことについてお答えする必要はないと思います。
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北方領土問題
(問)昨日、プーチン大統領が年末の記者会見で、領土問題については日本が求めている四島返還ではなく、二島返還することで最終決着を図りたいという意向を改めて示しましたが、これに対して日本政府の立場はいかがでしょうか。
(外務大臣)これから日露間でこの問題について真剣に討議をしていくわけです。それはかねてからのロシア側のスタンスをお話になったことであろうと思いますから、それについてそうだとかいや違うとか、あまり今から直接の話し合いをする前に、マスコミの皆様方に、あるいは対外的に、あれこれコメントをして事態を複雑にするのは避けた方がいいのではないかと思っていますので、敢えてコメントは致しません。我が方の基本的スタンスは従前通りです。
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在日米軍基地再編
(問)米軍再編についてですが、先日まで来日していた国防総省のローレス副次官が、日米間の最終合意については来年1月から10カ月間程度かけて、来年秋頃を目処に考えているという意向を示しているようですが、当初の話では来年春過ぎとか5月とかいう話もあったと思うのですが、今の日米間の進捗状況というのは遅れているという状況なのでしょうか。
(外務大臣)春過ぎに全て決着をさせようといった記憶は私にはありません。また、国防省の高官が来て我が方の事務当局と話をして、いついつまでにという話はありません。ローレス氏と額賀氏達との間でどういう話が出たか、またそれが正確なものであるかどうかを含めて確認はしていません。従って、現状において日米間で10月頃という合意があるわけではありません。ただ、だらだらと、延々と議論をしていいという話でもないと思いますが、別にいついつと(期限を)切って話をすることに合意があるわけではありません。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月22日(水)17:00~ 於:本省会見室)
平成17年度外務省予算
(外務大臣)来年度予算の大臣折衝を終えたところですので報告いたします。最後に大臣折衝で残ったのはIC旅券の導入です。必要な予算は10億5100万円。今までゼロ査定でやってきたわけですが、最終的には全面的にその金額で復活することができました。旅券の偽造や変造が非常に多いわけですが、これはテロ対策ということを考えるとどうしても必要だということです。国際機関において、こういうものを皆で作ろうではないか、導入しようではないかという申し合わせができています。特に米国などは来年の10月半ば以降は、新規発行の旅券はIC旅券でないと査証免除をしないということを既に決めています。そういうこともあり、日本も対応できるようにということにしました。旅券は今までのものと同じですが、中に厚めの紙が一枚入り、そこにICが埋め込まれているわけです。それを機械の上にのせると、必要な顔写真やデータが出てきます。なお、既に発行して持っている人については、切り替えなくてもかまいません。切り替えてもいいのですが、切り替えるためには1人1万数千円払わなければなりません。これはやはり国際的なテロ対策といったことから必要な予算だろうと思います。結果的に外務省の予算7072億円を前年と比べると残念ながら▲1.9%で微減となりましたが、全体予算が厳しく査定される中でこの程度の減少にとどめることができ、まあまあかなと思っています。ODA予算も外務省分は▲2.4%ですが、補正予算がODAで155億円ついていますので、実質的には横ばいに、むしろ微増ということになります。これでODA予算がこれ以上減り続けるということは止まったということになります。外務省の外交活動を展開するために必要な足腰予算、実施予算というのでしょうか、例えば大使館員の在外勤務手当というのはどんどん減って来ているので、これでは必要な外交活動に支障を来すという声もあります。そこで、今年は若干の円高傾向も加味しながら、実質横ばいを確保することができたと思っています。予算が減るから省員のモラルがすぐ低下するわけではありませんが、外務省職員も人間ですから、あまり給与が減り続けるといささかモラルも低下するかもしれない、そういうことがないように、今回の予算で手当てすることができたと思っています。厳しい予算ではありましたが、財務省等の理解を得て、今回の予算をいい形で仕上げることができたと思います。
(問)来年は、WTOにしても国連のミレニアム総会にしてもサミットにしても、日本のODAというものの期待感が改めて問われることになりますが、そういう意味で今回の額は十分確保できたと思いますか、それとも本音ではもう一押し欲しかったと思いますか。
(外務大臣)欲を言えば切りがなく、欲しいと言えば欲しいところはあります。しかし、必要なものについては必要な分だけは確保できた。「多々ますます弁ず」ということはあると思いますが、全体が厳しい中、一応これでいいのではないかと思います。勿論、個々の国際機関の代表の方が来ると、「こんなに減らされた。来年は頼みますよ。」という予算陳情もいくつかの国際機関の事務局長から受けたりもしています。例えば、JICAの理事長にはがんばっていただいていますが、JICA予算も0.7%減ですから、実質的には横ばいで確保できました。必要なところには大体予算確保できたのではないかと思っています。
(問)閣議前後の時間を利用して、谷垣財務大臣と何度も意見を交わされたと思うのですが。
(外務大臣)閣議の時、また、本会議の席が谷垣大臣の隣なので地の利を得て、かなりしつこく食い下がりました。「町村さんは見掛けによらずしつこいんだね」と嫌みを言われたので、「見掛け通りしつこいんだ」と述べておきました。両副大臣、3大臣政務官も再三足を運び非常にがんばっていただきました。外交部会の幹部の皆様始め、いろいろな形で財務省に働き掛けて頂いた成果だと思っています。
(問)改めて聞きますが、今回の予算折衝で一番重点を置いたのはどこですか。
(外務大臣)先ほど述べたように、ODAと定員を含む外交の実施体制の強化の二つです。
(問)2カ所はある程度。
(外務大臣)めりはりですから、組めなかった予算もあるわけですが、全体的にはこういう仕上がりでよかったと思います。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月21日(火)10:55~ 於:本省会見室)
今後の経済連携協定の推進についての基本方針
平成17年度予算
(外務大臣)閣議では特に外務省の案件はありませんでした。閣議の後、経済連携促進関係閣僚会議が開かれ、今後の経済連携協定(EPA)の推進に関する基本方針を外務省から説明し、了解を頂きました。改めて説明するまでもないと思いますが、WTOを中心とする多角的な自由貿易体制の補完としてのEPAというのが基本的な位置づけです。これによって日本の対外経済関係の発展にも、また日本の経済的利益の確保にも資するものとなります。また併せて、日本及び先方の構造改革にも資するという多目的な意義があるということです。次に東アジア共同体の構築ですが、これは昨年シンガポールで小泉総理が発表した基本方針に則って、いろいろな国々からの要望があるようですが、当面は今進めているフィリピン、マレーシア、韓国、タイそれにASE AN全体、更にこれにインドネシア等が続くのではないかと思いますが、こうした国々を中心に行うことを考えています。それ以外の地域についてどのようなところを優先するかということについては、閣僚会議で了解された「交渉相手国・地域の決定に関する基準」というものを勘案しながら、このようなことを考えていけばどうだろうかということです。なお、「基本方針」に言及されているとおり、EPAばかりが手段ではなくて、投資協定を結んだり、相互承認の協定を結んだり、あるいは投資環境を整備していくなど、いろいろな方法もあるということです。また、これは大変な作業になるわけですが、できるだけスピーディーに且つ効率的に進めていくための工夫をする必要があるということ、あるいは、そうは言っても人が足りないという場合も、外務省もそうですが各省で見受けられますので、その際には人の手当、定員上の措置なども今予算でまさに折衝しているわけですが、そういった確保をしていくこと、民間の専門家の一層の活用も考えようということでした。このように、今日は各大臣からそれぞれこの方針に賛成しながら一層進めていこうという大変前向きな発言が相次いだと受けとめています。最後に小泉総理から、政府一体でスピード感を持ってやっていこうという締めがありました。以上が「今後の経済連携協定の推進についての基本方針」に関する関係閣僚会議の報告です。
予算ですが、既にいろいろ説明を受けているかと思いますが、大体いい姿になってきているかなと思います。最終大臣折衝では、テロ対策のIC旅券について10億円ほどの予算がまだ残りそうなことから、これを大臣折衝で、また、定員の問題がまだ残っていますので、これを官房長折衝でやってもらおうと思っています。補正予算と合わせて考えると、ODAがこれで概ね下げ止まり、底打ち感と皆様は使っているようですが、外務省のODA予算は、▲2.4%ですが、補正予算で155億円がついていますので、これを足し合わせれば前年対比で若干のプラスになり、一応ODA予算もしっかりと確保できたということが言えるのだろうと思います。更に、外交実施体制の強化ということで必要な活動予算、あるいは人件費等々が、例の不祥事以来大分削られていますので、一般的にこういう経費はどんどん削られる傾向にあるのですが、そうした外交活動に必要な経費の確保ということを、私も随分谷垣大臣にお願いして、必要な予算は大体確保できてきたかなと思っているところです。
(問)予算に関してですが、補助金を見ていると削減されており、そういうところが外務省は弱いのではないでしょうか。あるいは、冷たいのではのではないかという意見もあるようですが。
(外務大臣)例えばJICAの予算について言えば、微減ではありますがほぼ横ばい程度確保できました。文化交流を担っている国際交流基金も若干の減ではありますが、このようなところはできるだけ確保していこうということでやっています。ただ全体として見ると、裁量的経費は▲2%という大枠がかかっているわけです。削減という国全体の方針がかかっていますから、弱者であろうと強者であろうとそれは削減になります。国土交通省はそういう意味では強者かもしれませんが、北海道開発予算は4.7%減です。そういうことを考えると、先程言及したように、ODAは実質横ばいを確保できていますから、外務省の予算が弱々しくどんどん減っていくということではないのではなかろうかと私は思っています。
(問)政府全体のODAについてはどうでしょうか。
(外務大臣)政府全体では、昨年が▲4.8%、今年は▲3.8%ということですから、下げ幅は小さくなったということです。これに加えて先程の補正もあります。あるいは円高というものを加味すると、ドルベースではそんなに減ったということにはならない。若干減ではありますが、なんとなく歯止めがかかってきたかなという受け止め方をしています。
(問)経済連携協定の基本方針ですが、農林水産分野や労働力の問題で原案にあった表現が削除されているようなのですが、この辺りはどうでしょうか。
(外務大臣)「交渉相手国・地域の決定に関する基準」の中で、農林水産分野については、食糧安全保障の視点や、構造改革の努力に悪影響を及ぼさない範囲でどんどんやりましょうということが書いてあります。その専門的・技術的労働者の受入れについても、経済社会の活性化や国際化に資するかということが書いてありますので、後退をしたとかそういう受け止めではなく、農林水産大臣も法務大臣も厚生労働大臣ももちろん現在やっている国の施策というものがありますから、それと全く背馳する形でどんどんやっていくというわけには行かないかもしれませんが、しかしできるだけ両立するように努力していこうと各担当閣僚から前向きな発言がありましたので、まるで180度違う方向を向いて進んでいるということではありません。政府は同じ方向を向いて進んで行くということであると思います。
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国連改革と日本の貢献
(問)国連の関係ですが、逢沢副大臣がニューヨークでアナン事務総長と会って、総理の親書を渡しながら、国連改革を要請されたようです。その中で、イラク、スーダン、中東などへの貢献について言及されたようですが、例えば、スーダンについてはどのような形で貢献されるのでしょうか。
(外務大臣)先般、逢沢副大臣がモロッコに行く途中でスーダンに立ち寄っているわけです。どういうニーズがあるか、どういうことをこれから日本が行えばよいかということについて、実情を聞いたりしてきています。この辺も実は補正予算の中で、予算を確保できるかなと思ったのですが、ご承知のとおり補正予算というものは今年の3月までに支出しなければならないということになるわけで、そこまでの固まったニーズということになっていません。したがって、来年度の当初予算の中で、どういうことを行い得るか、先方ともよく煮詰めながら、あるいは国連とも相談しながら、スーダンに必要な資金的協力、あるいは人を通ずる協力をしていきたいと思っています。
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日朝関係
(問)日朝の関係ですが、いずれ鑑定結果が出たら、北朝鮮側に伝えると思いますが、その際、外務省の担当者を派遣する考えはあるのでしょうか。
(外務大臣)まだ決めていません。今後相談してどのような形でやっていくかを相談していきますが、まだ全く何も決めていません。
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町村外務大臣の海外出張
(問)大臣ご自身の出張についてですが、先週、大臣の講演の中で、1月の中旬頃までにロシアを訪問されて、その後中東という話をされていましたけれども、それも含めて年明け、大臣としてはどのようにお考えですか。
(外務大臣)どういう日程になるかを、先方の日程もあるため、打ち合わせ中です。当方としても早く決まればいいなと思っていますが、相手のこともあります。現状では決まってはいませんが、方向は今発言されたようなことで、最初にインドネシアの方向に行き、次にモスクワの方に行き、パレスチナの方へ行ってという流れは大体頭にありますが、その通りになるかは相手との調整もあるので未定です。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月17日(金)10:30~ 於:官邸エントランス・ホール)
閣議
(外務大臣)閣議では外務省の関係は特にありませんでした。閣僚懇談会でもありません。
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北京日本人学校への脱北者と思われる人々の駆け込み
(問)今朝方、北京の日本人学校に駆け込みがあったようですが、その状況なり把握されていることを教えてください。
(外務大臣)今朝、夜明け前頃に日本人学校に7名の脱北者と思われる人達が来たということです。現地大使館は至急対策本部を立ち上げ、急いで担当者を派遣し、早朝バスで大使館の方にそれらの方々を移送し、今、日本大使館の中にいるという状況です。いろいろ状況を聞いたりしているわけですが、脱北者とおぼしき方々ではないかということで、詳しく事情を聴取しいるところです。まだ詳細はわかっていません。
(問)行き先の希望など本人達は具体的な希望を述べているのですか。
(外務大臣)まだそういう情報は、東京には伝わってきていません。
(問)政府として今後の対応はどうなるのでしょうか。
(外務大臣)どういう方々であるか、どういう希望があるのかということをよく聴取して対応していきたいと思います。
(問)今回の事柄について、中国側には連絡されているのでしょうか。
(外務大臣)もし脱北者だとすると今回が初めてのケースではありませんので、通常と同じオペレーションで行っています。
(問)性別の内訳は。
(外務大臣)男性が2人、女性が4人、女の子と思われる幼児が1人ということです。
(問)7人の健康状態は。
(外務大臣)そういう詳しい話はまだわかりません。
(問)日本人か日本人に類する方がいらっしゃるというする情報はありますか。
(外務大臣)詳しい情報はありません。
(問)日本人学校に度々脱北者と思われる方が敷地内に入ってくるということは、安全上の問題もあるのかなと思うのですが、それについてはどうお考えですか。
(外務大臣)日本人学校の安全性ですか。
(問)そうです。敷地内に部外者がどんどん入ってきてしまう実態についてどう思いますか。
(外務大臣)それを安全の問題と認識すべきかどうかよくわかりませんが、もし何かそういう問題があるようであれば調べてみたいと思いますが、特に何か大きな問題があるという報告は聞いていません。
(問)前回、29人の脱北者が駆け込んでいますが、今まだ大使館に残っている人達はどうしているのでしょうか。
(外務大臣)まだ若干残っているのではないでしょうか。かなりの方々は既に国外に出て、韓国に渡っているはずですが、まだ若干の方々について本当にこれらの方々が脱北者なのかどうなのかということは、主としてこれは中国政府の判断になるわけです。従って病弱な方々を先に出し、随時判明次第、国外に出て行くという形を取っています。正確な人数はわかりませんが、前回、かなり人数が多かったうちの若干名はまだ大使館にいるようです。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月14日(火)18:05~ 於:外務省大臣接見室)
閣議、犯罪対策閣僚会議
(外務大臣)閣議に関しては特にありません。その後の犯罪対策閣僚会議では、テロ対策、人身売買対策といったことについてしっかり対応していこうということであり、これには外務省も関係しています。特にテロ情報の収集ということについては、必ずしも十分ではないことから、さらに内容を充実、強化していく必要があるということを私から発言しました。また、犯罪対策閣僚会議において、人身売買の関係で、フィリピンの女性が芸能人という分類で8万人来ていること、その他の国と比べると飛躍的に多いということです。何故かというと、正確な数字はわかりませんが、かなりの程度いわゆるホステスのようにして働いているという実態があるようです。南野法務大臣もそのように発言していました。それ故、今の入国に関する仕組みを変えようということが話題になりました。これに対して、彼女たちの働く機会がなくなる、外貨送金の機会がなくなって困るという意見がフィリピンの一部にあり、それを受けた形で日本にも一部そのような意見があるといった発言もありましたが、結論は了承されたということです。
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アーミテージ国務副長官の北朝鮮に関する発言
(問)米国政府の高官が、北朝鮮に対しての経済制裁については慎重にした方がいいのではないかという言い方をされてますが、これについてどう受け取られますか。
(外務大臣)小池大臣がアーミテージ副長官に会われた際の話と思いますが、きちんとしたやり取りがどうであったか、正確なやり取りをまだ入手していませんので、皆さんの関心が非常に高まっている折ですから、ここで私が断片的な話をあえてコメントしない方がよいのではないかと思います。きちんと一連のやり取りを踏まえた後、必要あらばコメントします。
(問)北朝鮮の対応について、アーミテージ副長官は、北朝鮮はこれまで同じ過ちを繰り返し不誠実な対応だと、また今後もこの過ちというのは直らないのではないかという見方も示していますが、大臣はどう受け止めていますか。
(外務大臣)3回の実務者協議、特に3度目にはいろいろな資料、あるいは「遺骨」と称するようなものが出てきました。全貌については精査中であり、年内にはそれら資料のしっかりした分析を行い、その上で我が国としての対応ぶりを決めたいと思い、今、その最終的な資料の精査をする作業を、これは外務省だけではできませんので、他省庁の力も借りながら、その分析作業を急いでいるということです。
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IAEA事務局長の続投
(問)IAEA事務局長の続投について、米国政府は支持しない意向を示していますが、これについてどうお考えですか。
(外務大臣)承知していません。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月10日(金)10:30~ 於:本省会見室)
閣議(フィリピンにおける集中豪雨被害に対する支援)
閣僚懇談会
(外務大臣)今日は閣議の前に安保会議があり、新防衛大綱と中期防衛計画について安保会議の決定を見た上で、閣議で決定したところです。内容は省略致します。閣議では、私からフィリピン共和国における集中豪雨被害に対する緊急無償資金協力として、フィリピンのルソン島東部の集中豪雨被害が大変大きいことから、約35万ドルの緊急無償資金協力を行います。既に2800万円相当の緊急物資の供与を行っていますので、合わせて6700万円の緊急援助を実施することになります。
閣僚懇談会では、新しく改訂したイラク復興支援のパンフレットについて、もう少し字が大きい方がいいと述べた閣僚もいましたが、折しも昨日、基本計画の変更を行ったところであり、パンフレットにはイラク、復興支援活動、あるいはサマーワの状態等々、詳細に掲載されていますので、これを活用して今後大いにPRに努めていきたいと考えています。
また、閣僚懇談会の場で、横田めぐみさんの「遺骨」とされる骨が偽物であったということについて、政府としてもきちんと今後対応すべきであるという話があり、私からそれに対して、今、外務省の調査を鋭意行っているところであり、年内には何とかその調査結果を出して対応を考えたいという返事をいたしました。
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日朝関係
(問)「遺骨」に関し、閣僚懇談会で政府としてきちんと対応すべきだという話は複数の大臣から出たのですか。
(外務大臣)一人の大臣です。
(問)制裁の話も含めてですか。
(外務大臣)「制裁」という言葉は使われませんでした。
(問)与党の中で次回については、北朝鮮に抗議したことに対して回答期限を区切って考えた方がいいのではないかという声も上がっていますが、その辺りについてはどうでしょうか。
(外務大臣)いろいろな考えがあることは承知しています。最終的には今行われている調査結果を踏まえ判断したいということです。
(問)与野党内で経済制裁を求める声が強いところ、改めて伺いますが、経済制裁の発動について大臣はどうお考えですか。
(外務大臣)かねてより申し上げているように、選択肢の一つであるということです。
(問)昨日、サッカーのワールド・カップ予選の抽選で日本と北朝鮮が対戦することが決まりましたけれども、これについてのご感想と両国関係に与える見通しなどについてどう思われますか。
(外務大臣)一般論で言えば、スポーツを通じて各国との交流が深まるということは、スポーツの持つ効用としていいことだと思っています。北朝鮮とは国交がないので、当然、大使館も領事館もない状況の中で、渡航情報は「十分注意してください」というランクで、全く安全というよりは一段上ということになっています。それは何かと言いますと、もしパスポートなどを紛失した場合に対応の仕様がなくなるわけです。そういうところを十分注意してくださいという扱いになっています。中国経由で民間航空機が飛んでいるわけであり、サッカーの応援に行かれる方がいても不思議ではありませんが、そういうことだけは知った上で、スポーツの応援に行き、そこでもし市民の交流が行われるとしたら、それはそれで歓迎すべきことだと思っています。
(問)前回、実務者協議の開催地を変えたり、ランクを変えたりして行い、その結果、今回、横田めぐみさんの骨が別人のものだったということになったわけですが、今後の協議のあり方を見直される考えはありますか。
(外務大臣)それも含めて年内に外務省の調査、政府全体の調査がある程度目処がつくと思いますので、その際にいろいろ考えたいと思います。
(問)今回の北朝鮮側の対応について官房長官は「平壌宣言の精神に反する」というふうに発言されているのですが、この認識は大臣も共有されていますか。
(外務大臣)同じです。
(問)その「精神に反する」というのは、「平壌宣言に反する」ということと違うのでしょうか。同じなのでしょうか。
(外務大臣)「日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む」と書かれているわけです。誠実な対応とは思われないということですから。ただ、具体的に第何項に違反したかという意味で、平壌宣言違反だと言えるかどうかわかりませんが、少なくともお互いに国交正常化に向けて誠実に努力をしよう、お互いに努力をしようという精神には反しているということははっきり言えるのだろうと思います。
(問)目黒の祐天寺に、朝鮮半島出身の戦没者の遺骨が納められているのですが、北朝鮮の遺族の方が遺骨を日本に取りに来たいと日本側に申請したところ、遺族の入国は認められたのですが、朝鮮の「対外文化連絡協会(対文協)」の政府職員3人については入国が認められなかったということなのですが、このことはご存じですか。
(外務大臣)承知していません。
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新防衛大綱(中国への言及)
(問)防衛大綱に関してですが、中に中国脅威論の記述があると思いますが、今、外交的に中国といろいろ複雑な問題がある中で、先方が必要以上に反発するという懸念は、今回の大綱によって起きるとお考えになりますか。
(外務大臣)中国脅威論は強調していません。それは極めて正確性を欠く表現だと思います。北朝鮮と中国のことが書かれているのは事実です。北朝鮮については様々な懸念に言及していますが、中国については軍事費の増強等について注意を払う必要があるということであり、明らかに書き分けてあります。決して脅威論を採っているわけではありません。他方、大綱等にも先般の原潜の話も触れられていますから、当然そういう意味で注意を払わなければならないということです。
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在日米軍による下地島空港の利用
(問)フィリピンへの緊急無償資金協力に関する話ですが、沖縄の海兵隊がフィリピンへの物資輸送に下地島を使用したということで、地元が恒久的な軍事利用に繋がるという反発の声を強めているのですが、これについて、政府、外務省の見解は。
(外務大臣)海兵隊がでしょうか?
(問)フィリピンの台風被害で人道支援物資を運ぶために、例の事故を起こしたヘリが岩国から出て下地島に立ち寄って、フィリピンに行ったらしいのですが。
(外務大臣)私はその事実をよく承知していませんが、下地島に関する飛行場の利用形態については、既に地元との一定の約束事があります。その約束事に則って活用しているわけです。ほとんど活用されていないというのが実態のようですが。私も詳細を承知していませんので、いろいろ言及しない方がいいと思いますが、もし今質問されたことが事実だとすると、輸送の給油をしたということですか(質問者が肯定)、それが人道支援活動であるということであれば、軍事演習をしたわけではないでしょうから、そういう意味で少し性格は違うのかなという印象はあります。しかし、事実関係が定かではありませんので、不正確なことは言わない方がいいと思います。ただ、質問されていることが事実であるなら、そういう考え方はあるのかなと思います。
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教育の荒廃に関する武部幹事長発言
(問)昨日、自民党の武部幹事長が講演の中で、教育の荒廃に関して、「一度自衛隊に入ってサマーワみたいな所に行って活動したら、3ヶ月で瞬く間に人間性は変わると思う」と述べたのですが、サマーワに先日行ったばかりで安全確保が出来ていると言った直後にこういう発言をしたことについてどう思われますか。
(外務大臣)発言の詳細、あるいはどういうコンテキストで言われたか、ある一部分の言葉だけを取り上げて言うことは避けたいと思います。しばしば、ある一言だけを捉えられることがあり、元総理大臣のある一言の発言が大変致命的な批判を受けたことを思い出します。しかし全体のコンテキストの中で文脈まで見ないと、その一言だけを取り上げてそれがいいか悪いかということは、いかがなものかと思いますので、そのことについて私はコメント致しません。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月7日(月)10:50~ 於:官邸・エントランス・ホール)
閣議(パレスチナ自治政府長官選挙に対する緊急無償資金協力)
自衛隊派遣延長
(外務大臣)今日の閣議では、パレスチナ自治政府長官選挙支援のための無償資金協力、中央選挙委員会に対し69万ドル、国連開発計画(UNDP)に対し37万ドル、合計約106万ドルを供与することを決定いたしました。来年1月9日のパレスチナ自治政府長官選挙の成功に向けて、日本としても貢献をしていこうと話し合った結果です。次に、大野長官からサマーワ、クウェートに行かれた報告、中川大臣からタウンミーティングの報告、小池大臣からパレスチナ選挙を是非成功させようという話がありました。防衛庁長官の発言要旨は防衛庁からお聞きいただければと思いますが、現地の陸上自衛隊は大変志気高く、規律正しくしっかりとした活動を行っている、宿営地の安全対策も十分な配慮がなされていたとのことです。ハッサーニ・ムサンナー県知事、オランダ軍現地司令官と懇談し、治安の状況はむしろ従前よりもよくなっていること、自衛隊(の派遣)を是非今後とも延長していていただきたいという要請が改めてありました。サマーワの治安はイラクで最も安定している、ムサンナー県には雇用、水、電力等、多くのニーズが引き続き存在しているというような話が、オランダ軍司令官からあったということです。それを踏まえて、今、総理の所に私と防衛庁長官、細田長官の4人が集まり、改めて大野長官の報告を受けたところです。それに基づいて、閣議決定は今週中ですが、関係方面に説明、根回しに入ろうということが今日の結論になりました。
(問)閣議及び閣僚懇談会の中で、大臣から何か発言はありましたか。
(外務大臣)閣議ではパレスチナの話を私から行いました。
(問)サマーワについては。
(外務大臣)サマーワについては、特に私からは閣議あるいは閣僚懇では話していません。
(問)大臣としては、今回の大野長官の報告を受けて、派遣延長の条件は整ったとお考えですか。
(外務大臣)いろいろ考慮すべき要素があるわけですが、大野長官の現地での視察を踏まえ、私は派遣延長ということでいいのではないかと思っています。
(問)一部報道で、派遣延長を決定する日程が9日に前倒しされたとあるのですが。
(外務大臣)閣議の日程はまだ詳細には聞いていません。丁度、防衛大綱や中期防などいろいろ重なることから、閣議で多くの案件が重なるのもどうかという配慮も当然あるのだろうと思いますが、それは内閣の方で決めることだろうと思います。
(問)サマーワの治安情勢ですが、来年3月には今所管しているオランダ軍が撤退するということで、その後南部の方では英国の軍隊だと思うのですが、その辺の治安情勢が保たれるかどうか、あるいはオランダから英国に移す辺りの調整ですけれども、どのようにお考えですか。
(外務大臣)基本は、ご承知のように、英国の管轄地域ということになっています。これは米国も英国も力の空白は作らないということを、前々から基本方針として言及しているわけです。では具体的にオランダが3月中旬に撤退を始めて、実際に撤退完了するのは暫く時間がかかると思いますが、その後どこの部隊が何人、どういう形でということは必ずしもはっきりしていませんが、基本方針だけははっきりしていると思っています。
(問)オランダ軍が撤退することで、力の空白というか治安情勢が心配されるものというのは、大臣として。
(外務大臣)一つは地元の治安維持組織、警察ということなのでしょうが、それがかなり育ってきている、訓練も大分受けてきているということは、1年前とは明らかに異なった条件が生まれているということは言えると思います。
(問)先程、派遣延長について、今週中に関係方面に説明、根回しに入ろうということに言及されましたが、それはどなたの発言ですか。
(外務大臣)それは政府全体としてそういう活動に入ろうということです。
(問)総理からの指示ということではなく。
(外務大臣)総理の指示ということで良いと思います。内閣として与党を始め関係方面に説明するということですから。
(問)延長ということで説明が。
(外務大臣)そうです。
(問)大野長官の報告を踏まえて、延長でいいのではないかと思われたのは、特にどういう点について納得できたのですか。
(外務大臣)現地の治安情勢について、先方のムサンナー県知事、あるいはオランダ軍の現地司令官から、従前にもまして安定しているという話があったということが一つ大きなところです。また、人道復興支援活動を行っているわけですが、それに対するニーズが非常に大きいということ。これは基本的な要件ですから。そして、地元から大変強く継続を要請されているという地元の期待に応えること、即ちイラク国民の期待に応えるということも当然あろうかと思います。更にもう一つ、現場で見てきて、迫撃砲等の事件があったわけですが、残念ながら明確に誰ということが現在でも判明しているわけではありませんが、特に夜、そのようなものが飛んでくるそうですが、それに対する備えを大野長官の目で見てきて、これなら如何なる方向から飛んできても大丈夫であると判断されたということです。そこは一つの要素だと思います。
(問)延長決定の閣議前に、オランダ軍の後に入ると見られている英国当局や米国政府に改めてそういった方針を伝えるのですか。
(外務大臣)当面、関係国には事前にというか事後にというか、タイミングは別としても、当然連絡し、相談をすることになるだろうと思います。
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ICチップパスポート
(問)パスポートにICチップを組み込むという法案を通常国会に提出するという報道がありますが、これはこういう方向で検討しているということですか。
(外務大臣)詳細は承知しておりません。
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在日米軍の再編成
(問)在日米軍の件ですが、嘉手納基地の航空管制権を日本に返還する見通しというのは、いかがでしょうか。
(外務大臣)具体的、特定の案件については記憶にありません。前々から横田基地の管制権の話もありますが、そういったことを含めて全て再編成の協議の中で取り扱われるべき案件であろうと思っています。
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ジェンキンズ氏の動向
(問)拉致被害者の曽我ひとみさんとジェンキンズ氏が佐渡に家族で帰られますが。
(外務大臣)ようやく家族4人が平安のうちに暮らせるようになります。御家族にとってはまさに待ち望んだ状態がやっと実現したわけですから、心から歓迎し、喜びたいと思います。4人で幸せな日々を送っていただきたいと心から期待しています。長い長い厳しい生活が続いていたわけでしょうから。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月3日(金)9:20~ 於:参議院議員食堂)
閣議
台湾査証免除
(外務大臣)今朝の閣議では、平成17年度の予算編成の基本方針について閣議了解がありました。また、気候変動に関する国際連合枠組条約の関係で、小池大臣、高野副大臣、我が方は小野寺大臣政務官他がアルゼンチンを訪問するということです。アフガニスタンの大統領就任式ですが、逢沢副大臣が特派大使として参加をします。私からは先般のラオスにおける総理大臣のASEAN関連会議への出席報告をしました。北側国土交通大臣から愛知万博の期間中の台湾の方々への査証免除について進めていきたいという話があり、それについて私からも外務省としてもそれは重要であり協力をしていくこと、更に愛知万博の後についても、問題がなければ恒常的な査証免除を検討する。このため次の通常国会で必要な法改正を行っていく方針なので、関係省庁の協力をいただきたいというお願いをしました。「ビジット・ジャパン・キャンペーン」も今活発に行われていますが、今日本に一番多く観光客がどこから来ているかというと、韓国が140~1 50万人です。二番目が台湾です。その後、米国や中国などが続くのだろうと思いますが、そのような話の中で、総理から、姉妹都市がたくさんあると中には休眠中のところもあるだろうが、姉妹都市交流を活発化させるというようなことも考えてもらいたいとの話がありました。姉妹都市交流を担当している総務大臣からも同意する旨の発言がありました。
(問)北側大臣は閣議で述べられたのですか。
(外務大臣)閣僚懇談会です。
(問)原則として今のところ台湾のことと考えていいのでしょうか。今、名前が出ました韓国などの扱いはどうなるのでしょうか。
(外務大臣)韓国の査証免除はまだですが、愛知万博中ということです。
(問)台湾とはなぜ恒常的に査証免除を行うのでしょうか。
(外務大臣)一つは観光です。加えて、いろいろな状況から比較的犯罪の発生が少ないとか、他の国の犯罪が多いということを言いたいわけではありませんが、比較的受け入れやすいところということだと思います。入管法では「外国政府」と書かれているので、台湾には特別立法が必要となります。今の入管法に「外国政府又は地域の権限ある機関」と書かれていればいいのですが、「外国政府」と書かれていることから、特別立法で台湾は別であると書かないと、政令か何かで指定できればいいのでしょうが、そのようにできないので特別立法が必要だということです。
(問)台湾に対して査証免除することで中国への影響についてはどうお考えですか。
(外務大臣)中国に対しては、こういうことを考えているという連絡はしてあります。
(問)確認ですが、台湾への査証免除は愛知万博に間に合うように対処するということですか。
(外務大臣)今、関係方面と調整中であり、まだ法案の提出形態についてかっちりと決まったわけではありませんが、通常の政府提出法案でいくと予算関連ではないので、4月になってしまいます。そうすると、愛知万博は3月25日に始まってしまうので間に合わないわけです。そこで通常国会の冒頭で、議員立法という形でできないかどうかということを、関係議員とも相談しています。これは各党、各会派の調整も必要なので、それらがまだ完全にできたわけではないと思いますが、概ね方向としてはいいのではないかという感じになっています。従って、これについてはまだ完全に調整できたわけではないということです。その後の恒常的な免除については、愛知万博が終わるまでに法案が通ればいいわけであり、これは通常の内閣提出法案という形になるのだと思います。議員立法の話は、外務大臣の立場で発言すると、外務大臣が議員立法を勧めているというおかしな話になってしまいますので、そういうことではなく、むしろこれは議員の方々からの要望もあることから、どう対応するかということでいろいろ考え、そういう方向で進んでいるということです。議会ですることを政府がコントロールしようという趣旨ではありませんので、誤解のないようにお願いします。
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皇室典範の改正
(問)皇室典範の改正を行い女帝を容認するということについての大臣のお考えはいかがですか。
(外務大臣)憲法改正の中身についてあまり閣僚の立場で発言することは、差し控えた方が良いのではないかなと思います。先般、デンマークの女王陛下が来訪されましたが、確かオランダも女王陛下を戴いており、もちろん英国もそうです。そういう国々が結構あるんだ、ということは外務大臣の立場としての印象はありますが、日本ではどうあるべきかということは、コメントは差し控えます。
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臨時国会を振り返って
(問)今日で臨時国会が終了しますけれども、本臨時国会を振り返っていかがですか。
(外務大臣)わが省の関係でいうならば、日本とメキシコの経済連携協定が非常にスムーズに衆参両議院で可決、成立したということは大変ありがたかったし、意義深かったと思っています。昨日、清和会の総会における中川国対委員長のこの国会を振り返っての発言を聞いていましが、国対委員長もこの日墨協定は非常に良かったと、あえてそういう発言もありましたので、私もそういう意味では同じ思いです。この間、国会審議が、イラク問題、北朝鮮問題、日中問題等々非常に活発な議論が連日に亘り行われたと思っています。そういう中ではありましたが、チリ、エジプト、また韓国等にも出張し、閣僚就任後2ヶ月余りでありますが、慌ただしいながらも非常に充実した国会期間中であったなと思っています。ただ、懸案は相変わらず山積しており、早速イラクの問題も決めなければなりません。また、来年に向けて日露交渉、米軍再編成問題等、差し迫った非常に大きな課題が次々あります。更には時期通常国会に向けて、あるいは通常国会の最中もまたわが方から数多くの条約、協定等の改正が出されると思いますので、そういった問題にもしっかり取り組んでいきたいと思っています。年内だけについて言っても、盧武鉉大統領が指宿を訪問され、これには私も同行することになっています。おそらく韓国の外務大臣もおみえになるだろうと思います。日韓のより強い結束を図ると共に、北朝鮮問題等々さらに率直な日韓首脳会談も行われると思います。有意義な日韓会談になればと思います。
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日中関係
(問)30日、ラオスで温家宝首相と小泉首相の会談があり、靖国問題もでましたが、この会談についてどのように評価されるますか。相変わらず平行線だったととらえるのか、それとも関係改善に向けて前進があったととらえるのか、どのように評価されますか。
(外務大臣)靖国だけについて言えば、一致したとか合意したとかということではないと思います。ただ、それぞれが思うところを率直に述べたという意味では、私はいつも言っていますが、意見の違いがあってもお互いに考えているところを率直に言い合う関係というのはいいことだと思っています。むしろ今まで日中間は、難しい問題があると二重三重にオブラートをかけたような物言いしかあまりなかったというような気がします。これは印象論であり、本当かどうか分かりません。過去の会談を全部精査したわけではありませんので、印象で言えばということです。そういう率直な意見交換がもしかしたら充分ではなかったかもしれないが、今回について言えば、胡錦濤国家主席、あるいは温家宝首相との間の会談は、特に靖国について一致をしたわけではありませんが、率直な意見交換ができたことは良かったのではないかなと思っています。もちろん他の一致点も多々あったわけですから、基本的には日中関係を改善をしていきたい、より良いものにしていきたいという両国首脳の基本線における一致があったわけですから、そういう意味でこの会談は結論としては有意義であったと私としては評価をしています。
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外務大臣会見記録 (平成16年12月1日(水)11:30~ 於:外務省中央玄関)
「ハイレベル委員会」報告書
(問)ハイレベル委員会の報告書が出ましたが感想を聞かせてください。
(外務大臣)十数名の委員の方々が一年余に渡って大変な努力をされ、立派なレポートをまとめていただいたことにまず感謝いたします。日本も来年1月から非常任理事国として活動が始まるわけですが、その直前にこのレポートが出され、これからアナン事務総長、あるいは関係各国の努力で、戦後60年経ったところでの国連改革は至上命題だと思っていますので、なんとか国連改革全体をしっかりと成功させたい。その中で特に我が方が関心を持っている、安全保障理事会の常任理事国、非常任理事国いずれの数も増やすという提言ですが、私は大変いい提案だと思っています。来年9月にミレニアム宣言に関する首脳会合があるわけですが、それに向けてしっかりとした前進ができるように努力していきたいと思います。また日本も既に常任理事国入りの決意を内外に明らかにしているわけですので、その活動もしっかりやっていきたいと思っています。
(問)全体として評価できるということですか。
(外務大臣)これからこの提言を実現するに当たっては、様々な議論が行われるであろうし、下手をすると議論はしたけれども何も結論が実行されないという恐れすらありますので、やはり我々としては国連が大切であり、国連の機能をより高めていくためにも是非実現をさせなければいけない、前に進めなければいけないと思っています。
(問)拒否権の部分はどのようにご覧になったでしょうか。
(外務大臣)今ある5カ国とその他の新しい常任理事国の間に差がつくということになっています。差はない方が私はいいと思います。原則論はそうだろうと思います。ただ現実論に立脚した時には、この5カ国の一つでも反対すれば国連の決定になりませんから、そこは現実との妥協をどうするかという問題であり、今後更に検討し、議論を深めていくテーマだと思っています。
(問)具体的にどのような働きかけをし、日本としてどういう活動を行っていくのでしょうか。
(外務大臣)幸い1月から非常任理事国となりましたので、これが一つの大きな活動拠点になるわけですが、同時に数多くの国々の理解を得なければなりません。まず、アジア地域での理解、そして世界全体の理解。既に50カ国以上が日本の常任理事国入りに賛同していただいています。これは大変ありがたいことであり、これらの国々の理解を更にもっと広めるような活発な外交活動を展開していこうと思い、外務省の中に作戦本部、選挙対策本部を作って活動していこうと思っています。
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