外務大臣会見記録 (平成16年5月25日(火)09:28~ 於:院内控室)
閣議
(外務大臣)今日の閣議では、総理の訪朝についてのご報告を致しました。内容はご存知の通りです。申し上げることはそれだけです。
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拉致問題
(問)曽我ひとみさんと、ご家族の方が第三の土地で面会ということですが、現段階では、そのことでは北朝鮮側との調整はどの段階ですか。
(外務大臣)北朝鮮側と具体的に調整をするよりも前の段階に行うことがたくさんありますので、その取り組みを行っているということです。まず、曽我さんのご意見も聞きながら場所を決めていかないといけません。それは、ジェンキンスさんの立場がありますから、その観点から見てどこが適切かという発想を持って色々調べないといけないので、それを行っています。実はそういう観点で見ると、場所はそれほど多くなく、どこでもいいということではないので、そういうことを行いながら、曽我さんのご意見も聞いて、その上で、北朝鮮側と折衝をするということになります。
(問)現時点でいつごろまでにその面会を実現したいと考えていますか。
(外務大臣)相手があること、相手があるという意味は、北朝鮮側及び北朝鮮にいるジェンキンスさんご一家ということもあります。また、それをホストしてくれる国と両方ありますので、そういった調整が必要なので、こちらだけのペースで物事を決めるわけにはいかない。ただ、我々としては、一日も早くというふうに思っています。会談が平壌で終わった時点で事務当局同士でできるだけ早くやりましょうということをその場で話をしていますので、今、取り組みを進めているという状況です。
(問)会談で金総書記が安否不明の方について、「白紙に戻す」というふうな言い方をされたとおもうんですが、日本政府の見解としては、10人の安否について、「死亡」というのは、向こうが嘘だということを認めたという認識でよろしいんでしょうか。
(外務大臣)そうはっきり言えるかどうかということは、今の調査の結果を見ないと分からないということです。もちろん、我々は、確実な情報が無い限り、そういうことではないという前提で物事を考えるということですが、今の時点で、今までの答えと違う答えが出てくると北朝鮮側が言ったということではないと思います。要するに、今までのは文字通り白紙に戻して、再度やりますということです。
(問)しかし、人の生死を白紙に戻すといことは、どう考えてもおかしいことだと思うのですが。
(外務大臣)それは、こちら側が今まで、この前発表したことについて150項目の質問を出したり、おかしいではないですかということを色々言っているわけですから、そういったことへの調査も含めて、やり直しますということです。
(問)その場では、その150項目についての言及というのは一切無かったのでしょうか。
(外務大臣)申し上げていることというのは、今まで記者会見で発表を色々させて頂いたことに尽きるということです。何れにしても白紙に戻して改めてただちに、早期に、できるだけ早く結果を出すということです。
(問)山崎副長官がテレビ番組でやっていましたけど、会談に際して、総理が出迎える形で金総書記を待っていたという、こういうのは、総理がご訪問されるスタイルとしては極めて奇異に感じる。それが国内でも反発をよんでいると思うのですけれども、これは向こうと最初からそういう段取りだということは外務省は知っていたんでしょうか。
(外務大臣)我々はそういう認識では全然ありません。総理がいらっしゃるところに、先方が来たということです。総理の宿舎に金正日国防委員長が訪れた。ですから、まったく逆なんです。通常ならば、例えば私が韓国に行けば、私が韓国の外交通商部長のところに行き、先方は私のホテルにはおいでにならない。ですから、今回のは、総理の宿舎に先方がおいでになられた、そういうことなんです。認識は全然逆なのです。
(問)国交正常化交渉の再開についてですが、現時点で政府として、正常化交渉再開の前提はなんでしょうか。
(外務大臣)今、政府のよって立っている考え方というのは、去年でしたでしょうか、拉致の専門幹事会での合意ということで、それは何かというと、五人の家族の方の帰国を経て、国交正常化交渉の開始をします、という合意になっているわけです。安否が不明の方々、その他のこと、今後新しく拉致と認定される方もいるかもしれませんが、そういう方については、正常化の話合いの中で真相究明をきちんとやっていくというのが、この前の拉致の幹事会の合意であったと思います。
(問)ということは、ジェンキンスさんが訪日するまでに正常化交渉を再開するということですか。
(外務大臣)五人の家族の方の帰国を経てというのが、この前の拉致専門幹事会の合意であったということです。
(問)五人の家族というのは。
(外務大臣)五人の方の家族。
(問)ということは、8人なんですね。
(外務大臣)そういうことです。
(問)8人の方はまだ帰ってきていない。それが前提なんですね。
(外務大臣)今直ちに正常化交渉を始めましょう、いつ始めましょうという話が動いているわけではありません。なにか決まっているということは全然ありません。
(問)確認したいんですが、8人の方が帰ってこないと、正常化交渉再開にならないという前提は変わらないと。
(外務大臣)というのが、今の専門幹事会での合意ですから、それに則って考えていきます。
(問)人道支援について、日朝会談の前まではまだ決まっていないとおっしゃっていましたが、結果的にこういう形で支援を決めたわけで、一部には、取引をしたのではないかとの批判もありますが、その点についてはどういう風な説明を。
(外務大臣)人道支援について取引をしたということでは全くない、これは明快に否定をさせていただきます。龍川でも支援いたしましたし、現に国際機関からのアピールも出ているわけです。そういったことに日本として応えていくということも、日本の一つの責任、役割の一つであるということは間違いないところです。そういった総合的な観点から、総理はお話になられたということです。
(問)食糧支援の予算規模はどれくらいを想定していますか。
(外務大臣)国際機関の報告の中身によります。どのようなもので送るかによります。国際機関経由ですから。例えば今までですと、小麦、とうもろこしといったようなもの、それで送るのか、豆で送るのか、何で送るのか、色んなことによって変わってきますから、25万トンといっても、ある物であれば他の物の半分とか、それぐらいの金額の差は出てきます。どこかの新聞に数百億というのが出ているのを見たような気がしますが、そこまではとてもいきません。
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大臣の訪韓
(問)29日に訪韓なさるのですか。一部報道がありますが。
(外務大臣)一部報道で出ていました。国会の承認、承諾がいただければ、そういう方向で今考えています。調整中です。
(問)会談の目的というのはどういったことになるのでしょうか。
(外務大臣)これは、日本と韓国の間柄ですから、特に六者会合もあります、総理の訪朝もありました、そういった色々な動きがある中で、緊密に連携をしていくことは重要であるということが一つです。また、盧武鉉大統領の一連の韓国における手続きが、終了したという段階だということです。
(問)大統領ともお会いなりますか。
(外務大臣)今、色々調整をしていると思います。発表できる時になれば。発表するのも先方と合意の上で発表する必要がありますから。
(問)日程は日帰りですか、一泊ですか。
(外務大臣)それも今調整中です。多分、一泊という方向じゃないかと思いますが、はっきりと決まったところで、発表します。
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外務大臣会見記録 (平成16年5月21日(金)09:40~ 於:会見室)
閣議(コモロ新政府との関係)
(外務大臣)今朝の閣議において、コモロと日本との友好協力関係を強化していきたいという口上書がコモロから届いたことを受け、わが国から両国の友好関係継続を表明した口上書を出すことにしたことを報告しました。コモロというのはマダガスカルの北にある3つの島からなる国ですが、99年4月に当時の軍の参謀長がクーデターを起こし、新政権が出来、今まで日本として推移を見てきたということが経緯としてあります。
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台湾情勢(陳水扁総統の就任演説、台湾のWHO参加問題)
(問)台湾の陳水扁総統は就任演説で、独立の機会は新憲法作りから除外すると述べましたが、アメリカと日本のマスコミはその言い方を評価しました。大陸の新華社は、なお陳水扁氏が正真正銘の台湾独立分子であり、危険な政治家であると断言しました。日本政府は陳水扁総統の演説についてどのように考えていますか。中国側の評論についてどのようなコメントがありますか。また日本はWHOへの台湾のオブザーバー参加について初めて賛成票を投じましたが却下されました。このことについて川口大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
(外務大臣)一番基本的なことからお答えしますと、中国のこの件についての報道について何かわが国としてコメントする立場にはないということです。
陳水扁総統の就任演説については、わが国の立場として従来から一貫して、台湾を巡る問題が当事者の話し合いによって平和的に解決されることを望んでいると述べてきているわけです。陳水扁総統が今から4年前の2000年の就任演説で、「4つのノー、1つのない」ということを言われたわけで、今回もこの原則と約束は変わっていない、今後4年間変わらないと言われたということ、台湾海峡の現状が一方的に変更されることのないことを共同で確保し、「三通(通商、通航、通信)」を含む文化、経済貿易往来を推進してこそ、両岸の人民の福祉と国際社会の期待に合致すると言われたことに注目しています。日本の立場は先程申し上げたとおりで、中台双方の間で地域の平和と安定を重視し、対話が再開されることを強く希望しているということです。日本の立場はずっと申し上げていることですが、今後とも引き続き日中共同声明に基づき、台湾との関係を非政府間の実務的な関係であるということを維持していく方針が変わることはないということです。それが2つ目です。
3つ目のWHOについての質問ですが、去年も一度申し上げたことですが、この問題が関係国間で十分に議論され、関係者が満足する形で台湾がWHOに何らかの形でオブザーバー参加することが望ましいということが日本の立場であり、それを総会の中で話し合うために議題に追加することに賛成したという立場です。繰り返しませんが、日本の台湾についての立場は、先程申し上げた日中共同声明に則ってということには変わりありません。
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日朝関係
(問)明日、いよいよ小泉首相が訪朝されますが、改めてそれに向けての期待と今の立場は如何でしょうか。
(外務大臣)大変大きな使命を担っていらっしゃると思います。北東アジア地域の平和と安定のために日本として持てる力を使っていくことは、日本のためにも、この地域の国々のためにも、世界のためにも非常に重要なことなので、総理がそのために決断されて行かれることを私は心から応援すると共に、是非良い成果を出して頂きたいと思っています。金正日総書記と直接話をすることが出来る世界のリーダーは本当に数が少ないわけです。中国とか、ロシアとか、世界のリーダーで訪朝した人は本当に数える程しかいません。ごく最近ではメガワティ大統領もお会いになっていますが、最近のところではそれぐらいで、日本のように国際社会で発言権も持ち、米国と同盟関係にもあり、世界の中で大きな役割を担っている国のリーダーが金正日総書記と直接お話になって、いろいろな問題について話し合われることには大きな意味があると思います。総理が言われているように、日朝平壌宣言の確認をする、即ち日本にとっては拉致問題という非常に重要な問題があるわけですし、平壌宣言に書かれている核、ミサイル、そういった別な意味で安全にかかわる問題もあるわけで、平壌宣言に則ってそういう話をして頂いて、先程申し上げた北東アジア地域の平和と安定に繋げて頂けるという意味で非常に大事であります。
(問)2点お伺いしたいのですが、何れも日朝関係ですが、1つはこれまで政府が堅持してきた無条件かつ即時帰国、これを日朝首脳会談を通じても基本理念は貫き通すのかどうか、貫き通す必要があるのか、それが一点。もう一点が、今の核の話ですが、六者会合では日本は米韓両国と共にCVID(完全、検証可能かつ不可逆的な形で核廃棄を行うこと)、完全核放棄を提唱したわけですが、このCVIDの方針は今回の会談でも取り上げるおつもりでしょうか。
(外務大臣)これは両国の首脳がまさに明日、話をすることですから、今の時点でこういうことを日本は言うとか、それを先取りする形で何か申し上げる立場にはないということが基本的なことだと思います。お二人のリーダーがそれぞれのリーダーの立場でとことん話をしていくことが大事だと思います。その上で申し上げますと、家族の帰国を、先程述べられたような形で実現するということは非常に大事であることは、ずっと今まで政府として話しをしてきているわけです。8人の帰国が何よりも大事と申し上げていいと思います。そういったことは言ってきており、わが国のその点についての考え方を先方にずっと伝えてきていますし、それを伝えて、北朝鮮側がわが国の期待に応えることが重要であると思います。核の問題について言えば、CVIDをわが国として六者会合の場でずっと言ってきて、この立場は一貫しているということです。両首脳がお互いに心を開き合って話して頂くことですから、私の立場としてそれを何らかの形で先取りするような発言をすることは決して適切ではないと思います。
(問)そうすると、今の1つ目の無条件の一括帰国については、基本方針を維持するか、あるいは変えるかについては、全て今回総理にフリーハンドがあると理解出来るのでしょうか。
(外務大臣)8人の無条件の帰国はわが国としてずっと言ってきているわけです。それがわが国の主張であるわけです。それは北朝鮮側としてそのように応えてくるということをわが国としては強く今までも働き掛けていましたし、今後とも強く働き掛けるということです。
(問)ということは、今回総理の訪朝に際してもその方針は変わらないということでよろしいですか。
(外務大臣)基本的に変わっていません。
(問)8人の無条件帰国は基本的な方針で変わらないということですが、今回の日朝首脳会談の結果として国際機関を通じた人道支援などが合意になった時、それは無条件帰国というところで矛盾が出てくるのではないか、その原則と違いが出てくるのではないか、ある種、拉致被害者家族の帰国に対する取引と受け取られかねないのではないかと思うのですが、そういったことはどのようにお考えですか。
(外務大臣)人道支援はついこの前も行いましたし、今までも国際機関を通じて行ってきているわけです。過去において国際機関を通じないで行ったものもありますが。人道支援というのはまさにそういう人道支援をするようなニーズがあるかどうか、国際機関がどのように対応するか、そういうことによって決まっていくわけで、今回の訪朝との関係で言えば、今のところ具体的に決まっているということではないということです。
(問)22日に総理と一緒に8人がお帰りになるというのが現在目指していらっしゃる方針という理解でよろしいのでしょうか。
(外務大臣)我々としては、ずっと言ってきているように、8人が帰ってくることが重要だと思っています。従ってそれを目指しているということです。
(問)時期については如何ですか。
(外務大臣)細かいことについて、まさに訪朝の前日に私の口から細かいことを申し上げることではないと思います。総理も昨日の国会で、何か言えば、ではその次にこれはどうかという質問が出て、これから話をするわけですから全部お答えすることはできないわけで、それはまさにこれからのことです。
(問)日本政府の考えとして、先程もコメ支援のような人道支援ということがあっても、無条件ということは変わらないと。コメ支援をやってもそれは無条件と。
(外務大臣)人道支援の話がいろいろ出ていますが、何か今具体的に決まっているということではありません。今は、そういうことを前提にして今回の訪朝をお話しするという状況ではないと思います。
(問)ということは明日、首脳会談及びその後の記者会見などで支援について何らかの政府の方針が出るということはないということですか。
(外務大臣)あるとかないとか、昨日の総理の国会答弁もありましたが、お聞きになりたいお気持ちはよく分かりますが、一つ一つ、これはある、これはないということを今申し上げるのは、まさに相手があっての話ですから、それを総理が明日訪朝なさろうとしている前の日に私の口からこういうことが政府の方針であるということを申し上げたら、まさに話し合いにならなくなるのではないでしょうか。
(問)明日、拉致問題とかで前進を図られる公算、そこら辺のところはどういうお考えですか。
(外務大臣)視界ゼロということではないということでしょうが、何か具体的に今申し上げられるようなことが決まっているということではありません。
(問)それはやはり北朝鮮という相手が交渉の場でどういうことを言い出すか分からないという。
(外務大臣)いろいろな意味で申し上げているわけですが、基本的には、総理が訪朝してお話になられることを今の時点で見通しはこうだとかああだとかということではないということです。
(問)8人の無条件帰国に関連して、ジェンキンスさんの取り扱い、現状は如何でしょうか。昨日、べーカー大使がやはり難しいという認識も示していらっしゃいますが、それは一旦お帰りになってから継続して協議を続けていくのか、どういうふうな話し合い、お話しできるところだけ聞かせて頂けませんか。
(外務大臣)お話しできことがあれば申し上げますが、お話しできることはないので申し上げられないということです。ジェンキンスさんは拉致された人の家族であるということです。従って、わが国政府としてはベストを尽くしていくということです。
(問)明日の大臣の御予定はどのような。
(外務大臣)皆ここに集まって、オペレーションルームで会議を行っていくということになると思います。どこかの時点で、状況について適宜指示をしたり、総理がお帰りになった後、官邸と相談しながらいろいろな行動をとっていくことになると思います。
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外務大臣会見記録 (平成16年5月18日(火)09:25~ 於:院内控室)
閣議
(外務大臣)今日の閣議ではG8外相会合の報告をいたしました。内容としてはイラクの問題、大中東構想、中東和平、平和支援活動、イラン、アフガニスタン、北朝鮮と様々あった訳で、これらについて報告をいたしました。
もう一つ、会合の前後に日英、日米そして日露のバイ(二国間)の会談をいたしましたので、それについても報告をしました。
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北朝鮮
(問)北朝鮮に対する食糧支援について、再開の見通しと方向性について聞かせてください。
(外務大臣)瀧川(リョンチョン)の時には医薬品の支援をした訳で、今度総理が行った後にどうするのか、というご質問であれば、それは北朝鮮がどのように対応するかということにもより、また、国際社会が全体として北朝鮮への支援についてどのようなことを考えるかというようなことにもよるということだと思います。
今の時点で何かはっきり決まっているということではありません。
(問)ロサンゼルス・タイムズによれば、ラムズフェルド長官がジェンキンスさんへの特別な配慮と言いますか、脱走兵として訴追せずに済ますということに対して非常に反対していると書かれております。ラムズフェルド長官はイラクの虐待問題などもあり、必ずしもイメージが良くないところにこういう問題が持ち上がりますと、なぜあのような長官と一緒にイラクに自衛隊を派遣しなければいけないのかと、非常に感情的な反発が出てくるということが懸念されないでしょうか。
(外務大臣)私は、ロサンゼルス・タイムズの報道を見ておりません。 また、この問題は元々、イラクはイラクで、北朝鮮の話は北朝鮮の話であって、日本としてはそれを混同して考えることではないと思います。
ジェンキンスさんの話については、いろいろな機会に米国と話はしていますが、そのような中身について何か申し上げるということではありません。これはまさに米国が米国の立場に立って判断をしていく話であるということだと思います。これはラムスフェルド国防長官個人の話では全くない訳ですから。それはイラクにしても、北朝鮮にしてもということです。
(問)そうすると米国が理解を示して、ジェンキンスさんに対して何らかの処遇をしてくれるという可能性はあるということでしょうか。
(外務大臣)それは北朝鮮側が今度どのような対応をするか、ということはまだ判らない訳ですから、まずそういった状況を観ることが大事だと思います。ジェンキンスさんをどのように扱うかということは、一義的に米国がどのように判断するかということでもあり、その場合に北朝鮮がどうするかということです。
我が国としては勿論ジェンキンスさんを含めた形で8人が帰国をするということが大事である、ということはずっと北朝鮮に言ってきている訳ですから、我が国としてはそれを追求していくということに何ら変わりはありません。
(問)それではまず北朝鮮がジェンキンスさんを含めた8人を日本に返して、その後は日米の話し合いということになる訳ですね。
(外務大臣)ジェンキンスさんを含めた8人を日本に返してくれ、返すべきである、ということはずっと言ってきている訳です。始めから言ってきている訳です。従って、そこは全く変わっていないということです。ジェンキンスさんについて米国とどのような状況にあるかということは、今の段階で申し上げることでは全くないと思います。
(問)先程大臣の方で、ジェンキンスさんの処遇について北朝鮮がどのような対応をするか判らないので、とおっしゃったのですが、まだジェンキンスさんを返すいう話は来ていないということになるのでしょうか。
(外務大臣)これは総理が行かれて、いろいろ話をされる話であって、今の段階で日本として何か申し上げるというでは全くない、ということを申し上げている訳です。
(問)では総理が訪朝を決断する背景として、8人の帰国がある程度確約があるのではないという見方というのは必ずしも当てはまらないと。
(外務大臣)総理はずっと、日本と北朝鮮の関係を日朝平壌宣言に従って、そこで描かれた道筋に則って解決をしていくべきだ、ということに非常に強い熱意を持っておられる訳で、今度総理が(北朝鮮に)行かれるというご決断の背景にはその想いがおありになると私は思っております。
(問)不明とされる10人の方の安否についてですけれども、2月に平壌で日本側から合同委員会というものを提案したと思うのですけれども、その後ご家族の方から一部反発などありましたが、今もその提案は生きていると考えてよろしいのでしょうか。
(外務大臣)2月の日朝会談の時の話というのは、提案というよりは寧ろ一つのアイデアとして持ち出した、言ってみた、ということである訳です。安否の判らない10名の方の事実関係の確認というのは、これも我が国としてはずっと言ってきている訳ですから、これはやらなければいけないことだという風に思っています。
(問)その委員会という提案そのものは今回もされる可能性はあるのでしょうか。
(外務大臣)今回どういうような話になるかということについて、まだ首脳会談がなされていない訳ですから今の時点でこれはこうなりますとか、こうですとか、そういうことを申し上げる段階ではないということです。
(問)ジェンキンスさんなんですけれども、米国として何らかの配慮をしないという可能性もあると今の時点では思っていても良いのでしょうか。
(外務大臣)それについて何か申し上げることは全くありません。「ありません」という意味は申し上げる立場ではないといいますか、段階ではないということです。
(問)現在、協議中という風に考えて宜しいのでしょうか。
(外務大臣)いろいろな情報交換などは行っている、話をしている、とは最初に申し上げたとおりですが、申し上げられるのはそういうことであって、その結果どのように話が進展しているとか、していないとか、そういうことを言う段階ではなく、立場でもないということです。
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外務大臣会見記録 (平成16年5月11日(火)09:15~ 於:院内控室)
閣議
(外務大臣)今日の閣議で特に私から発言はいたしませんでした。
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北朝鮮関連
(問)8人の家族が帰国ということになるのであれば、小泉総理が出迎えに行かれるのではないのかという報道がありますが、いかがでしょうか。
(外務大臣)いろいろな報道が紙面を飾っていますが、今の時点で何か決まっている、何か申し上げる事があるということではありません。
(問)8人の中にキム・ヘギョンさんが入っていませんが、キム・ヘギョンさんの扱いは。
(外務大臣)入っている、入っていないも含めて何か特に決まった事があるわけではないので、申し上げることはできないということです。
(問)明日から作業部会が始まりますが、改めて日本政府の方針についてお願いします。
(外務大臣)六者会談の席上でいくつか話がテーブルに載ったものの議論されなかったような事がいろいろとあると思いますので、ここでどういう案があるということが決まっているわけではないのですが、じっくりと議論をしてもらうことが大事だろうと思います。
(問)日本としては作業部会の中で拉致問題を取り上げる考えはありますでしょうか。
(外務大臣)それは取り上げ得ると思っています。
(問)8人の家族の中にはジェンキンスさんがいらっしゃいますが、米国の方ということで帰国での対応をいろいろと考えなければならない点があるのではと思いますが、現時点では米側との調整というのはどの程度進んでいるのでしょうか。
(外務大臣)確かにジェンキンスさんが米国人であるということは、他の人達と違いがあるわけですが、拉致被害者の家族であるということについては違いはないわけです。今何かが決まっているという状況で調整をしているという事ではありませんので、この問題について、特に今の段階で何かこういう事になっていますとか、こうですとか申し上げる段階ではないということです。
(問)調整も今のところ図られていないということでしょうか。
(外務大臣)いろいろな話というのは日本と米国の間でありますが、そのひとつひとつについて今申し上げる事ではないと思っております。
(問)今週中に日朝政府間協議があるという報道がありますが、見通しはいかがでしょうか。
(外務大臣)報道は承知しています。今の段階で何か見通しがあって、こうですと申し上げられるような状況ではありません。
(問)次回協議を行うよう呼び掛けを行っている状況ではありますか。
(外務大臣)政府間協議をやりましょうということは、北朝鮮に対してずっと日本は言ってきているわけです。引き続き話をしていこうという事ではあるわけです。ただ、いつとかそういう事を具体的に申し上げることはありません。
(問)状況としては北朝鮮からの返事待ちということでしょうか。
(外務大臣)返事待ちとも言えるかもしれません。
(問)それは前回の協議で日本側が何かしら提案をして、その返事をまっているというこでしょうか。
(外務大臣)二国間の話ですから、何が提案で何がというような、そういう整理された形で議論があるわけでもありません。お互いに議論を行なっているという状況だと考えて頂いた方がいいのではないでしょうか。
(問)北朝鮮列車事故の支援ですが、日本の追加支援というのはあるのでしょうか。
(外務大臣)それはあり得ます。前にも申し上げましたが、国連が詳細な調査を行っています。その成果を見た上で更に追加的な援助が必要ということであれば、支援しますというのは最初から申し上げているところです。
(問)それは医療物資に限ったもので、食料とういものではないのでしょうか。
(外務大臣)それは調査の結果次第ですが、医療物資が中心ではないでしょうか。ただ、何がということは、国連の調査の結果次第ですから決まっているわけではありません。今の時点では、支援しますということを決めているわけでもないし、状況を見ているということです。
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米軍の軍人、軍属に係る車両法違反
(問)米軍の軍人、軍属の車両が車両法に違反しているということを6年前政府が改善を約束しておいて、6年間放置しているという問題があるのですが、それについての大臣の見解をお願いします。
(外務大臣)これは米軍との間で現在話し合いをしているということです。できるだけ早く望むような結論が出るように努力しているということです。
(問)6年間経ったということは協議が途中で中断したままになっているということではないのですか。
(外務大臣)6年間どのようなペースで協議が行われてきたかという事については、今、頭の中に入ってませんので、この後聞いておきます。
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G8外相会合
(問)今週末G8外相会合がありますが、どのような話し合いをされたいとお考えでしょうか。
(外務大臣)時間的には1日といっても終わり(の時間)も割に早いものですから、主として地域情勢の話が中心になるということで、今考えられているとうことです。地域情勢で言うと、これもいろいろありますが、大きなものとしてはイラク、北朝鮮、アフガニスタンそれから中東、パレスチナこの辺が大きなところで、あとは皆さん自由に議論を行うので、何か出てくる事はあるだろうと思います。主に地域情勢を皆で議論しましょうということです。アフリカ問題というのもあるかもしれません。
(問)大臣として特に問題提起されるような気持ちというのは。
(外務大臣)全てについて議論をしていきたいとは思っています。特に日本からのインプットを期待されているという意味では、北朝鮮というのはあるだろうと思います。また、イラクについてもアフガニスタンについても、我が国としては世界全体の地域情勢に関与して来ているわけですから、その立場から全てについて意見を言っていくということです。
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雅子妃殿下について
(問)体調を崩されている雅子様についてなんですが、皇太子殿下がその原因として雅子様の外交官としてのキャリアやそのことに基づいた人格を否定された動きがあったのではとおっしゃっていますが、大臣はそれについていかがでしょうか。
(外務大臣)それは新聞報道で見ましたが、直接にそれを見ていた訳ではないので、報道を読んだだけのコンテクストでコメントを申し上げることは差し控えさせていただきます。私としては雅子妃殿下は前から存じ上げているということもあり、一日も早く体調を回復して頂きたいと思っております。
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外務大臣会見記録 (平成16年5月7日(金)09:40~ 於:本省会見室)
閣議
(外務大臣)閣議では特に私の発言はありませんでしたので、特にお伝えすることはありません。
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G8外相会合
(外務大臣)米国が発表しましたので御承知と思いますが、G8の外相会議が5月14日にワシントンで行われます。国会の御了承を頂ければ私が出席したいと思っています。
(問)今回のG8外相の会議自体はどういった会合にしたいというか、日本側としてはどういった主張を繰り広げていきたいと思いますか。
(外務大臣)地域情勢について中心的に討議をしていきたいというのがホスト国である米国の意向のようです。従って、今世界を見渡した時に、いろいろな地域でいろいろな問題が起こっているので、我が国としてそれぞれの点について考えていること、これはそれぞれのケースについてここでも今までも話をしていますが、討議していくということだと思います。その中で、中東、イラクは一つ大きなテーマになると思いますし、北朝鮮というのも大きなテーマになるのではないかと思います。イラク、中東の問題について言えば、これはサミットに向けて中東全体の議論、パレスチナもイラクも、今いろいろなことが一つの潮の変わり目の状況が近くなってきているわけですから、特にイラクについてはイラク人のオーナーシップによる復興で、他の国々、国際社会はそれを支援することを明確に言及していく必要があると思います。またパレスチナ問題というのは中東和平のより深い根っこを持った問題で、これがロードマップに戻るような形で、入植地からの撤退も全てロードマップと整合性を持つような形で行われることが大事だと日本は考えているということです。北朝鮮の問題については平和的に解決をしていくこと、朝鮮半島の非核化というのは皆が考えていることですので、関係国が連携をしあって解決をしていくことが大事だと思います。アフリカ、アフガニスタン、様々な問があります。それぞれ日本が今までやってきていることをきちんと伝えていく、国際社会の連携が大事だということを訴えていきたいと思います。
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北朝鮮(日朝間協議、六者会合作業部会)
(問)先日の日朝の政府間協議ですが、この結果と大臣の評価というのを改めてお願いします。
(外務大臣)まだ大使館経由で今後も引き続き議論しようということになっているので、今の時点でこれが結果であります、こういう評価ですということを申し上げる段階ではないと思います。
(問)来週の12日から北朝鮮の核問題をめぐる作業部会が北京で実質的に始まるわけですが、今回の作業部会の位置づけ、また日本政府として強調したい点についてお伺いしたいのですが。
(外務大臣)これは従来と何ら変わることはありません。作業部会を開催しようということは、前回の六者会合で決まっていたわけで、今、それがようやく現実のものになりつつあるということです。日米韓はCVID(完全、検証可能かつ不可逆的な形で核廃棄を行うこと)が重要だと言っているわけで、それは引き続き重要であると思います。平和的に問題を解決していこうと先程も言いましたが、朝鮮半島の非核化については全員が一致していると考えています。特に新しい何かを言おうということはありません。
(問)それに関連してですが、北朝鮮の核問題をめぐってはウラン濃縮疑惑が一つの焦点になっています。ウラン濃縮疑惑をどのような形で事実認定していくのか、それについて証拠を開示すべきだとか、いろいろな議論があるのですが、この点どのようにして解決を進めたらいいと大臣はお考えですか。
(外務大臣)これは御指摘のように一つの争点でもあり、大きな難しい問題だと思います。例えば、情報開示するということによってこちらの手をさらすということもあるわけで、それを行うことによって先方が認めざるを得ないような状況になるという効果もあります。あるいは、それを知ってどこか別なところに動かしてしまうとか、いろいろな可能性があります。これは六者で話をしながら北朝鮮が濃縮を行っているのであればこれも含められるべきであるということは、中国もそのように考えていると思いますので、粘り強くやっていく、きちんとやっていくということだと思っています。これをやれば北朝鮮がこういうことを言うであろうとか、「頓服」というのはないと思います。
(問)その点に関してですが、ウラン濃縮疑惑と言ったらいいのでしょうか、北朝鮮はまだ認めませんが、日本の立場としてはウランの濃縮は北朝鮮はやっていると、黒であるという前提に立って解明を進めるのでしょうか。
(外務大臣)いろいろな情報を我が国としては得ていて、そういった情報をベースに我が国としては判断をしているということであり、これについて北朝鮮がきちんと対応するということが大事だということです。
(問)認識としては限りなく黒に近いという認識でいらっしゃいますでしょうか。
(外務大臣)行っている公算が大きいという情報には接しているということですが、我が国自らが直接的な情報を持っており、それで判断をしているという立場ではないということです。
(問)それに関連してですが、これまで政府として拉致問題については6カ国協議も含めて、もしくは政府間を通じてあらゆる機会を捉えて働き掛けるということだったと思いますが、総理の発言が拉致問題は二国間の問題だということで、事実上、別個のものとして扱うという印象も受けるのですが、それについてはどうでしょうか。
(外務大臣)考え方として、今言及されたように、拉致問題にどう対処していくかという考え方に変更はないということです。総理も述べられたように、六者会合というのは主として核の問題を話す場でもあり、そういう意味では拉致の問題は日朝間で主として取り上げられるべきテーマであるということは前から申し上げ、そのようにやってきているわけです。ただ、日本としてあらゆる機会を捉えてということを今までも申し上げていますが、拉致問題を解決していくということには変わりはありません。
(問)今回の作業部会でも当然言及されるということでしょうか。
(外務大臣)それは言及し得ると思います。
(問)先日の日朝政府間交渉ですが、その日程を事前に発表しないのは何故ですか。
(外務大臣)先方の要望とか、いろいろあったということだと思います。出来るだけ静かに議論をしていくということが大事と思います。先方の要望があったものと思います。
(問)前回については、前回というのは2月中旬の平壌の後に外務省の方から内容の説明があったのですが、今回これがほとんどないのはどういう理由でしょうか。
(外務大臣)そんなに大きな違いがあるのでしょうか。藪中アジア大洋州局長が現地で述べていましたが、原則論の応酬から、どうやって解決出来るかという観点からも話が率直に真剣に行われたということであり、引き続き大使館ルートで議論をしようということになっているわけです。協議中のことですから、今の時点でそれをこういうことであったと言うことは適切ではないというそれだけのことです。
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イラク(米軍によるイラク人捕虜虐待事件)
(問)イラクでの米兵によるイラク人の虐待ですが、日本の中でも嫌悪感と言いますか、イラク戦争そのものに対する見方を変えるような印象の変化があると思うのですが、日本政府として米側に対して懸念を伝えるとか、そういったことを何かお考えでいらっしゃいますか。
(外務大臣)そういうことを行うよう指示してあります。これは本当に非人道的なことであって、大変遺憾だと思います。ブッシュ大統領もこれについて謝罪をされたようですが、事実関係を出来るだけ早く解明して、再発防止と、関係者の処分を行うことが望ましいということを言っています。もちろん米国の軍人全部がこういうことを行うということでは全くないわけですが、遺憾だと思っています。
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