新藤外務大臣政務官演説
ズヴェズダ造船所での式典における新藤政務官のスピーチ
2003年6月7日
極東ロシアにおける退役原潜の解体は、ロシアと日本海を挟んだ隣国である日本にとって、優先的に解決すべき問題です。日露非核化協力委員会が設立されてから10年が過ぎましたが、残念なことに、日露の協力によって解体された原潜は、未だに1隻もありません。このような状況の中、昨年の11月私のウラジオストク訪問を契機に、日露双方の関係者の熱意が実り、ヴィクターIII級原潜解体プロジェクト実施の目処がついたことを大変うれしく思います。
尊敬するベテルニコフ沿海地方副知事、フョードロフ太平洋艦隊司令官、ガリャーチェフ・ロシア外務省ウラジオストク代表、カラショフ・ボリショイカーメニ市長、シュリガン・ズヴェズダ造船所長、ルイセンコ・ダリラオ社長、私は、昨年の訪問時、帰国を控えた最後の晩、皆さんと今後の協力の在り方について本音で激論を戦わせました。その結果、日露双方が非核化事業の実施に熱意を持っていることや、事業を加速するためには、日露の関係者が一つのチームとなって取り組む必要を確認し合いました。そしてその後、最後の21杯めの「ウラー」(注:ロシア語で「万歳」)は、「我々のチームのために!」という私の音頭で締めくくったことを思い出します。今回ウラジオストクを再訪し、仲間となった「チーム」の人たちと笑顔で再会できたことが何よりも私の喜びとするところです。我々のチームの熱意で、1隻目の原潜を解体する目処はつきました。しかし、極東ロシアには、まだ、40隻の退役原潜が解体を待っています。私は、これら原潜解体にも引き続き積極的に取り組んでいくことが重要だと考えています。
私は、小泉総理にお願いして、この退役原潜解体プロジェクトを「希望の星」と名付けていただきました。名前の由来は、解体作業が行われる、このズヴェズダ造船所です。このズヴェズダ造船所を希望の星として輝かせたい、そしてこの退役原潜解体プロジェクトが、日露の友情と協調の証にしたいという願いを込めた命名です。日露の共同プロジェクトで、名前が付いたのは、「希望の星」が初めてです。
2002年のカナナスキス・サミットでは、G8グローバル・パートナーシップが打ち出されました。このパートナーシップは、ロシアにおける原潜解体や化学兵器処理等、軍縮、不拡散、環境といったグローバルな性格の問題に、G8の国々が力を合わせて取り組もうというものです。先日終わったばかりのエヴィアン・サミットにおいても、このパートナーシップの進展が歓迎されました。この「希望の星」もこのグローバル・パートナーシップの一環と位置づけられるものです。世界が「希望の星」の進展を注視しています。
この「希望の星」は、新生ロシアの誕生により、極東ロシアと日本との間に開かれた、新たな協力の地平を示すものです。私は、この「希望の星」プロジェクトが、太平洋石油パイプライン・プロジェクトやサハリン・プロジェクトと共に、ロシア極東地域、更にはロシア全体と日本との協力関係を促進する要となってくれることを期待します。今回の訪問においても、ダリキン沿海地方知事、コプィロフ・ウラジオストク市長、カラショフ・ボリショイカーメニ市長等この地域の有力な方々とお会いして、今後の協力関係の発展のための会談を行いました。
先月末には、サントペテルブルグで日露首脳会談が開催され、「希望の星」プロジェクトが両首脳間でも日露協力の好例として取り上げられました。プーチン大統領は、この進展を歓迎すると述べられました。また、今月末には、日本国外務大臣として川口大臣がはじめてウラジオストクを訪問し、フリステンコ副首相との間で貿易・経済に関する会合を行います。その際に、「希望の星」プロジェクトの現場であるここズヴェズダ造船所の視察を大変楽しみにしています。
最後に、新たな日露非核化協力の象徴であるヴィクターIII級原潜解体作業の槌音が、この夏にも、ズヴェズダ造船所で響き始めることを祈って私の挨拶とさせていただきます。
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