外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外交政策 過去の記録
過去の記録



第9章 復旧のための枠組み


 1999年6月の国連の会議を受けて、国際的な注目は、とりわけ発展途上の諸国において可能性のあるY2K問題による深刻な障害に対応する枠組みをどのように創り上げるかに向けられるようになった。Y2K問題は、人道的援助と技術的援助の両方を必要とするような混乱を引き起こしかねなかった。

 通常の状況のもとでは、非常事態に対する多国間援助あるいは人道的救援をゆるやかに調整するのは国連である。国連人道援助調整事務局(OCHA)は、政府系及び非政府系双方の人道的救援組織がY2K問題に対する準備を確実に整えられるよう検討を始めた。これら組織の独自のシステムを確実に整備すること、進行中の救援または人道作戦の実施に対して考えられるインフラ障害の影響に備えること、さらにはY2K問題による障害への対応に並外れた努力が必要とされる場合に明確な手順を確実に整えることに焦点を合わせた、三本立ての戦略が立てられた。現地消息筋から知らせてくる40件を超える人道的非常事態について通常毎日一般向け最新情報を提供しているOCHAの救援ウェブは、2000年への移行期間中はカバー範囲を拡大するとともにジュネーブ及びニューヨークの国連作戦センターを接続することを計画し、人道的対応のための調整手段として役立つことになった。

 2000年への移行後の技術的問題に関しては、IYCCは、世界銀行、G8諸国及び援助提供の用意ができていた多数の国際援助組織と共同作業を行った。この援助は問題に応じて諸々の局面で提供されるが、潜在的に多数の資金源を巻き込むことになった。

 Y2K問題を原因とする混乱に対する技術的援助の第一線は各国政府ということになった。すでに述べたように、多くの国々はその近隣諸国を援助するために地域援助ネットワークにも参加した。多くの場合これらのネットワークは、連絡リスト及び手順をまとめあげてY2K問題が生じた場合の対応に備えていた。自国でも、また地域の援助を受けても解決しきれない問題と取り組むために、回付・評価のプロセスが確立された。

 深刻なY2K技術問題は一刻を争うものとなった。最初の対応は、迅速で且つ焦点を絞ったものにするとともに、問題の深刻さを評価し、その影響及び解決に要する努力の程度について迅速に結論を出すことができるものにするよう図られた。それに続くステップはこの最初の評価に依存することになったが、問題をより詳しく検討してその国に場合によって必要な再構成のための詳細な計画を提供するという、世界銀行、UNDPあるいはその他の技術専門機関が管理する診断・計画の任務を含むこともあり得た。1999年12月の終わりにIYCCはすべての各国Y2K調整官に枠組みの詳細及び援助の要請先を通知した。

 IYCCは、いくつかのチャネルを通じて援助要請を受け付ける回付センターを開設した。このチャネルとは、G8各国及びその他のドナー国、国連、各国Y2K調整官、IYCC部門別調整官(健康管理、通信及びエネルギー)及び世界銀行の指定連絡先等である。この回付センターは、入って来るすべての要請をログし、その発信元、連絡情報、問題の性格、そしてすでに行った対応があればその内容を文書化することになった。回付センターは1時間ごとに最新情報をIYCC及び専門のケース評価委員会に提供することになった。

 このケース評価委員会は、IYCC、世界銀行、IMF、インターアメリカン開発銀行、アジア開発銀行、国連のOCHA及びUNDPの代表者によって構成された。委員会は電話会議または通常会議の形で毎日打ち合わせることにした。メンバーは、GSW情報、要請者との補足的な話し合い、地域援助ネットワークとの連絡及びその他の援助提供者との接触に基づいて、それぞれの援助要請を認める用意があった。委員会はそれぞれの援助要請に対して次の3通りの方法のうちのいずれかによって対応しようとした。すなわち、迅速な評価のために要請をInfoDevに送るか、要請を別の組織(例えばUNDP)に回付するか、あるいは要請を採り上げないことに決めてこの決定を要請者に通知するという方法である。

 国際的な部門組織または他の団体に援助提供の用意があるときには、委員会は要請を先ずそれらの組織に振り向けることとした。これに含まれるのは、健康管理(UK/WHO)、航空(ICAO/IATA)、金融(ジョイント2000/グローバル2000)、電気通信(ITU)、海運(米国沿岸警備隊)及び原子力エネルギー(IAEA)であった。アジア諸国からの要請は通常、日本国政府からの500万ドル以下負担約束に基づいてUNDPに処理を回付することになった。行政サービス、エネルギー、鉄道及び食料/水の部門のアジア外部からの要請についてはInfoDevが最初の回付先となった。委員会の回付を受けてもらえる外部組織が無い場合には、委員会はその要請をInfoDevに振り向けて配慮を求めることができた。InfoDevの対応には、米国政府からの500万ドルの負担約束によって資金をまかなうこととなった。G8諸国及びその他のドナー国も、二国間またはIYCCとの調整によって技術的援助要請に対応することとなった。

 問題の深刻さまたは重要性から見て妥当と考えられるときには、InfoDevが、あらかじめ承認を受けて、問題の初期評価の際に各国Y2K調整官を援助するために地域に配属されている各部門の専門家を動員することになった。この援助が提供されるのは2000年への移行に続く数日間であり、およそ数日で行われ世界銀行の駐在特命派遣団との間で調整が行われることになった。この援助は、問題の予備的評価と、問題(の影響)軽減のための勧告を内容とするものとなった。実質的で長期の援助を要するほどの深刻さまたは重要性があると思われる問題については、調査団が、その地域/国に対して、再構成のための、そしてまたその国が世界銀行証券またはその他の資金源等より必要な資金を獲得することを手助けするための、詳細な計画を提示することになった。世界銀行は、特別融資窓口の開設を考慮したが、技術的援助の国家要請に資金手当てすることが必要であるなら、普段の手続きを迅速に用いることができると判断した。

 日付変更後も、この対応の枠組みは用いられなかった。IYCC回付センターは2000年1月1日に、或るアフリカの国に関して、政府財政システムの潜在的困難(現実のものではなかった)に関する要請を受け取った。委員会は2000年1月2日に電話で話し合い、この件についてこの国の調整官と協議することで合意した。この国の調整官は、この潜在的問題には通常の手続きで対処できると判断した。

 この枠組みが利用されなかったという事実は良いニュースであった。こうした備えは、潜在的なY2K問題による混乱が生じても、それは迅速且つ効果的に処理されるものだという信頼を築いた。例えば、IMFはその1999年9月の発表の中で、その特別融資便宜が利用されることはないであろうこと、但しこの便宜の開設は国際金融市場における信頼確立策として考えられたものでもあることを記した。

BACK / FORWORD / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省