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第8章 2000年への移行期
日付変更中及びその後の世界の出来事について継続して一般の人々に情報を提供するべく、IYCCは、各国政府が一般の人々に対して自国の状況を報告する目的で使用するためのグローバル・スタータス・ウォッチ(GSW)を開設した。「イベント・マネジメント」はIYCCの本来の設立条件あるいは計画に含まれるものではないが、1999年が進むにつれてそうしたメカニズムの必要なことが明らかになった。そこで1999年6月の国連の会議で各国調整官は、IYCCが(GSW)を開設することで合意した。
GSWには次の3つの目的があった。
- 正確な国ごとのインフラ状況を一般の人々に知らせること。
- 特定の障害があったときにそれについての背景を知らせ、それによりの一般の人々の信頼を維持すること。
- 国際社会から各国政府が受ける照会の件数を減らすこと。
2000年への移行期に先立ち、またその後1週間、各国調整官が各重要部門の現状を示す情報の提供を行った。ウェブベースの標準報告テンプレートに基づいて、調整官にインフラ状況について3つのレベルから1つを選択してもらった。通常予想される状況であれば緑色、通常レベルと比べて機能が低下したインフラまたはサービスについては琥珀色/黄色、通常レベルと比べて大幅に低下したインフラまたはサービスについては赤色という具合である。
さらに、各国調整官には、何らかの問題があったときそれがY2K絡みであるかY2K絡みでないかあるいは不明であるかを選択するとともに、何らかのサービスの削減が折り込み済み(例えば一時的な危機管理対策としての空港閉鎖あるいはフライト間隔の拡大)であったかどうかについて特記してもらった。「備考」欄を設け、機能低下、講じた措置、予想される解決時間などについての詳細を各国に追記してもらった。
各国調整官には、セキュリティーのしっかりしたGSWインプットページにログオンするための独自のIDとパスワードを提供した。セキュリティーのあるサイトにおいて、各国調整官には、新しいレポートを提出してもらうとともに、以前に提出されたレポートや他国の調整官から提出されたレポートを見ることができた。インターネットにログオンできない国々については、ファックスまたは電話によって情報を分かち合ってもらった。
誰もがアクセスできるGSWのウェブページは付属書Lにおさめてある。グローバルステータスチャートから国名をクリックすることによって各国の個別のレポートの詳細を見られるようにした。誰もが最も正確な情報に確実にアクセスできるようにするために、これらのページは定期的に更新した。
この一般向けサイトのホストは、ニューヨークとサンディエゴの、ミラーサイトを持つサーバー2社であった。さらに欧州委員会が、ベルギーにあるそのオフィスでGSWのミラーサイトをたち上げた。南米の地域コーディネータもチリのミラーサイトをたち上げた。
各国調整官が1999年9月9日にGSWのシステムをテストした上で、1回目の全体テストは1999年11月、2回目の全体テストは1999年12月に行われた。国際状況監視ウェブページが公開されたのは1999年12月27日であり、2000年3月までアクセスできる予定になっている。
GSWは、2000年への移行期の正確なY2K問題情報を迅速に得るための重要な情報源であった。GSWチーム及びそのシステムは、ミレニアム切替りの前、最中及びその後の8日間、1日に24時間稼動した。そのオーディエンス及びユーザーは、マスメディア、企業、行政府、各国調整官及び一般の人々であった。こうしたユーザーから得られた反響から判断すると、GSWは期待以上の成果をあげ、その3つの目標を迅速に達成した。
GSWは、世界の人口の95%を代表する159ヵ国について正確で信頼性のある部門状況の情報を提供した。
2000年への移行の前の週に、各国調整官には、正規に予定され事前計画の立てられている銀行閉店、空港閉鎖及び/またはその他事前計画のあるサービス停止についてレポートを提出してもらった。IYCCミレニアム切替り対策チームは切替りの前に各国調整官と連絡を取ってこうした情報を要請するとともに、2000年への移行後の報告を促した。
2000年への移行そのものに関してはニュージーランド(グリニッジ標準時+13)を筆頭に、それぞれの現地時間の0時からおよそ1時間後にそれぞれの部門状況情報を提供し合った。ニュージーランドは新年を迎える最初の主要国としてその役割を真剣に受け止めた。2000年への移行期の社会の信頼を確保するための広範なアウトリーチ・プログラムの一部として、ニュージーランドは専用のミレニアム切替りウェブサイトを開発するとともに、ニュージーランドY2K問題チームのデービッド・ヘンリーが自らワシントンを訪れてGSWにおけるニュージーランドの役割を調整した。オーストラリアもGSWをすることに特別な努力を払った。
報告された情報を確認・検証するためにIYCCは2000年への移行期を通して部門組織と連絡を取り合った。必要な場合には各国調整官と直接連絡を取り、新たなレポートを要請したりあるいは報告事項の説明を求めた。2000年への移行から5日間、IYCCは101ヵ国の各国調整官またはその代理人と協議した。
GSWが成功したこと及び報告してくれた国々の比率が高かったことは、IYCCが築き培った各国調整官及び部門組織との強力な関係によるものであった。
第二にGSWは、社会の信頼を維持するために、いかなる部門問題及び/または小規模なY2Kによる不調についても事情説明情報を提供した。
各国は、Y2K問題との関係の有無に関わらずインフラの障害について世界中の他国と連絡し合った。小規模な不調があったときには、各国調整官にはその問題に関する事情、問題解決策、問題の深刻さ、及びシステムの正常復帰時期について情報提供してもらった。彼らにはこうした情報をレポートで詳細化し、あるいは口頭でIYCCミレニアム切替り対策チームに詳しく説明してもらった。IYCCはそれを受けて、こうした不調の例をメディアへの発表の形で公表した。
各国調整官には、それぞれの金融市場がいつ開いたか、また最初の営業日のY2K問題の成功についてもそれぞれのレポートで詳細情報を提供してもらった。
第三に一般の人々がGSWから最新の正確な情報を受けることができたため、各国の調整官に直接に接触する必要が減少した。
一般の人々は簡単にIYCCのGSWウェブページにアクセスし、すべての国々からの最新で正確な報告情報を受けることができた。IYCCとしてはサイトのローディング及び使用が確実に容易になるよう図った。ユーザーは、アルファベット順で国別にあるいは時間帯で時間順に分類されたGSWサマリーチャートに素早くアクセスすることができた。ユーザーはこれらのステータスチャートから国別のレポートにアクセスすることができた。さらにユーザーはメディア向けリリース、各国のY2K問題ホームページ及び一般的なY2K問題情報にもアクセスできた。2000年への移行期に、135ヵ国がホームページを開いていた。
1時間のうちに2000年への移行が起こるのは1ヵ国のことも40ヵ国のこともあるので、GSWの反応性は様々であった。アフリカや西ヨーロッパにおける2000年への移行に続く重大な期間の間、IYCCから一般向けウェブサイトへの最新情報の送付に数時間の遅れが出た。高い負荷と技術的問題のために、この一般向けウェブサイトは重要な期間のいくつかの部分で情報が古い状態になった。数ヵ国の調整官は時宜を得た情報が常時得られなかったことに失望を表明した。追加的なテストと訓練を行い、能率化された手順を用いこの重要期間のための資源の追加投入を行っていれば、これとは違った結果になったであろう。
各国の詳細な情報に関するページで「緑色」の選択が行われた後で、黄色や赤色の分類の方が良いとする言い回しが現れたときにも困難が生じた。これにより、ホームページに説明のための注記を加えたにも拘らず、IYCCと接触した一般の人々の一部に或る程度の混乱が生じた。不運にも週末にまたがりイベントが多数重なったところ、主要な国際ニュースサービスのリポーターのひとりがレポートを誤読して、ガンビアでの重大なライフライン停止を誤って引用した不正確なニュースを2000年1月1日に配布してしまった。IYCCのスタッフはこのリポーターと迅速に連絡を取った。このリポーターは直ちに訂正を発表していたが、他の主要な国際機関はこのニュースを採り上げた後であった。国際Y2K協力センターは2000年1月2日にガンビア・レポートの内容を明らかにするニュース・リリースを出した。
ウェブページには1999年12月31日から2000年1月3日までにおよそ75万件のアクセスがあった。GSWのミラーサイトをたち上げた欧州委員会及び南米Y2K問題フォーラムにはそれぞれ15万件と3万件のアクセスがあった。GSWには一般の人々から合わせて93万件のアクセスを受けたことになる。
全体としてGSWプロセスは、小さくてもその連絡関係を強化して実質的に活動する柔軟性のあるチームなら、150を超える国々から信頼できる情報を収集し、それを世界に向けて発信できるということを実証した。GSWはさらに、非政治的レベルにおける国際的コミュニケーションを確立し、各国政府との交渉に必然的に伴うことの多い官僚的形式主義を排して、世界的な重要性を持つ目標を達成する力を実地に示すことにも役立った。
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