第2章 信頼に応える日本

ベトナム「カイメップ・チーバイ国際港開発計画」工事の進ちょく状況を確認する日本人所長とベトナム人技術者(写真提供:佐藤浩治/JICA)

ベトナム「カイメップ・チーバイ国際港開発計画」工事の進ちょく状況を確認する日本人所長とベトナム人技術者(写真提供:佐藤浩治/JICA)

第1節 国際公約の誠実な履行

世界中から日本に対して示された信頼に応えるためにも、日本は、今回の震災を乗り越え、変わらぬ決意を持って国際社会の平和と安定のために積極的な役割を果たしていくこと、国際公約を誠実に実現していくことが必要です。

極度の貧困や飢餓を撲滅し、誰もが人間らしい尊厳を保ちながら生活できる世界を築くことは、国際社会の責務です。その取組を強化するためにまとめられたミレニアム開発目標(MDGs)は、具体的な数値目標と達成期限を定め、首脳レベルで達成を公約した初めての国際社会全体の開発目標です。(MDGsについては図版参照)2015年のMDGs達成期限に向け、国際社会は一層の努力を求められており、日本も積極的に貢献します。2010年9月のMDGs国連首脳会合で、菅総理大臣は「菅コミットメント」として、2011年からの5年間で保健分野において50億ドル、教育分野で35億ドルの支援を表明しました。さらに、2011年6月2、3日に東京でMDGsフォローアップ会合を開催し、MDGs達成に向けた真に効果的なアプローチについて、新興国や市民社会、民間セクターを含む多様な関係者と熱のこもった議論を行いました。同会合で菅総理大臣は、「菅コミットメント」をはじめとする既存の国際公約を誠実に実現していくことを表明しました。

MDGsの進み具合の遅れが指摘されるアフリカ地域に対しても日本は積極的に取り組んでいます。2008年に開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD(テイカッド) IV)において、日本はアフリカ向けODAについて、2003年から2007年の供与額平均値の約9億ドルを2012年までに倍増し、年間18億ドルとすることを公約しました。日本の対アフリカODAは2008年には17.5億ドル、2009年には16.8億ドルでしたが、2010年に20.5億ドルに達し、金額の上では2010年、この公約を達成したことになります。5月にセネガルで開催された第3回TICAD閣僚級フォローアップ会合でも、松本外務大臣より、大震災を乗り越えて、TICAD IVの包括的な公約を引き続き誠実に実現するという決意を表明し、アフリカ諸国から高い評価を得ました。(TICADについては図版参照

アフガニスタンおよびパキスタンの安定はテロ対策の鍵であり、両国および周辺地域だけでなく国際社会の平和と安定にとってきわめて重要な課題です。2009年11月、日本は、アフガニスタンを再びテロの温床としないため、2009年からおおむね5年間で最大約50億ドル程度までの規模の支援を決定し、<1>治安維持能力の向上、<2>元兵士の社会への再統合、<3>開発の3つの分野を柱として、これまで約17.8億ドルの支援を実施しました(注2)。震災後にアフガニスタン政府および国民から示された支援と連帯(注3)は、国際社会のみならず現地でも日本の支援が高く評価され、信頼を培ってきたことを表しています。

パキスタンについては、2009年11月に、同年4月のパキスタン支援国会合で約束した2年間で最大10億ドルの支援を迅速に実施する旨を表明し、エネルギー、インフラ等の分野をはじめ、2010年の洪水被害への支援も含めて、既に10億ドルを超える支援を実施しました。(アフガニスタン、パキスタンについてはこちらを参照

日本企業が多数活動するASEAN域内の貿易・投資環境の整備や連結性の強化は、日本経済を後押しする上でも重要です。また、2009年11月、日本は、初の日本・メコン地域諸国首脳会議を東京にて開催し、<1>総合的なメコン地域の発展、<2>環境・気候変動および脆弱性克服への対応、<3>協力・交流の拡大の3本柱での取組を強化することを表明しました。この取組を進めるために、以降3年間で合計5,000億円以上のODAを実施することを表明しており、着実に実施していきます。

アフガニスタンで医者の診断を受ける少女(写真提供:サイッド ジャン サバウーン/JICA)

アフガニスタンで医者の診断を受ける少女(写真提供:サイッド ジャン サバウーン/JICA)


注2 : 2009年1月~2011年12月の支援実績。2001年1月以降の支援総額は約32.5億ドル

注3 : 東日本大震災に対するアフガニスタンからの支援・お見舞い
・アフガニスタン政府、カンダハール市、カブール市は合計約125万ドルの義援金提供を表明。また、5月20日、ファティミ駐日本アフガニスタン大使は、茨城県つくば市に避難中の被災者を表敬訪問し、生活用品を寄贈した
・3月13日、カルザイ大統領をはじめ政府要人は、在アフガニスタン日本大使館を訪問して弔意表明の記帳を行い、日本からの支援への謝意を改めて述べた
・バーミヤンやゴール県チャグチャラン市等の地方でも住民が集会を開き、被災者へのお見舞いと日本との連帯を示した。UN-HABITAT(国連人間居住計画)事務所にも日本へのお見舞いと弔意を伝えてほしいとの多くの要望が寄せられた

MDGs ミレニアム開発目標 Millennium Development Goals

MDGs ミレニアム開発目標 Millennium Development Goals

ボリビアで母に寄り添う子どもたち(写真提供:久野真一/JICA)

ボリビアで母に寄り添う子どもたち(写真提供:久野真一/JICA)

シリアの村落地域の女子小学生たち(写真提供:高橋克彰)

シリアの村落地域の女子小学生たち(写真提供:高橋克彰)


<< 前頁   次頁 >>