(1)アフガニスタンおよびパキスタン支援
アフガニスタンとパキスタンにおいて不安定な情勢が続いていることは、両国やその周辺地域だけでなく世界全体の問題です。アフガニスタンを再びテロの温床としないため、日本をはじめとする国際社会は積極的に同国への支援を行っています。そして、アフガニスタンとの国境地域においてテロを排除するための作戦(掃討(そうとう)作戦)を実施するなどテロの撲滅に重要な役割を果たしているパキスタンの安定も、周辺地域や国際社会の平和と安定の鍵となっています。
< 日本の取組 >
●アフガニスタン
日本は、これまで一貫してアフガニスタンへの支援を実施しており、2001年10月以降の支援総額は約32億2,000万ドルにのぼります。2009年11月に日本は、「テロの脅威に対処するための新戦略」を発表し、今後のアフガニスタン情勢に応じて2009年からおおむね5年間で、最大約50億ドル程度までの規模の支援を決定しました(注55)。
具体的には、<1>警察支援などを通じた治安能力の向上を支援、<2>元タリバーンの末端兵士が社会復帰するための職業訓練および雇用機会創出等のための支援、<3>アフガニスタンの持続的で自立した発展のための識字をはじめとした教育、保健医療、農業・農村開発、エネルギー分野を含む基礎インフラ整備などの基礎生活分野などを柱に支援を実施しています。
日本のアフガニスタン支援の主な実績
「教師教育における特別支援教育強化プロジェクト」女子学校の基礎授業(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)
「結核対策プロジェクト」病院で新しい検査技術を学ぶ検査技師(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)
「道路維持管理システムの構築及び人材育成プロジェクト」日本が塗装用の機材を供与(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)
●パキスタン
2001年の米国同時多発テロ後に国際社会と協調してテロ対策を行うことを同国が表明して以来、日本は積極的な支援活動を行っています(注56)。2005年2月にはパキスタンに対する国別援助計画を策定し、インフラ、農業、生活環境などの分野において積極的に支援を行っています。また、2009年4月には、東京において日本政府と世界銀行とが共同でパキスタン支援国会合を開催し、日本は同国に対し2年間で最大10億ドルの支援を表明しました(注57)。さらに、2009年11月の「テロの脅威に対処するための新戦略」に基づき、パキスタンの持続的で安定した発展のために、経済成長やマクロ経済改革、住民の生活改善など貧困削減、ハイバル・パフトゥンハー州(旧北西辺境州)および連邦直轄部族地域の人々の生活の安定などを重点分野として支援しており、日本は10億ドルを超える支援を着実に実施しました(注58)。(パキスタンについてはこちらを参照)
注55 : これまでに約束をした総額約20億ドル程度の支援に替わるもの
注56 : パキスタンが核実験を行った1998年以降、日本は同国に対し援助縮小措置(緊急・人道性を有する援助、草の根無償を除く新規無償資金協力、および新規円借款の供与の停止)を取っていた
注57 : 経済・金融等を含めたマクロ経済の安定化を目的とした国際通貨基金(IMF)プログラムの実施が前提
注58 : 支援には、2010年度大洪水への支援も含む