(2)イラク
国際社会は、イラクが平和と安定を回復し、その状態が続くように、国づくりの支援を進めています。イラクが平和で民主的な国家として再建されることは、イラク国民や中東地域だけでなく日本を含む国際社会の平和と安定にとってきわめて重要です。イラクは、当面の復興ニーズに緊急に対応すべき局面から、現在は、中期的な視点から復興・開発に戦略的に取り組むべき局面に移行しています。
< 日本の取組 >
日本は、2003年10月のマドリッド復興支援国会合で総額約50億ドルの対イラク支援パッケージを表明しました。これはイラク国民の生活水準回復のための当面の支援として、15億ドルの無償資金協力、および中期的な復興支援に応えるための最大35億ドルの円借款からなります。それ以降、日本は無償資金協力で2010年度末時点で約16億7,000万ドルを供与し、それを着実に実施しています。また、様々な分野の研修事業を通じて、イラクの行政官や技術者に対する能力が向上するよう支援を行っています。円借款による支援については、2010年度末時点で、15案件計約32億8,000万ドルまでの使途を決定しました。また、2011年11月マーリキー首相訪日の際に行われた日・イラク首脳会議において、野田総理大臣は、石油、通信および保健の分野の新規4案件のために、約670億円(約7億5,000万ドル)の円借款の供与に必要な措置をとることを表明しました。これは2003年の約50億ドルの支援の公約を達成するとともに、新たな支援も伴うものです。日本は、現在実施中の協力事業が着実に進んでいくよう、きめ細かい支援を行っています。イラクの中期的な復興・開発戦略の中に日本の支援が効果的に組み込まれるよう、イラクおよび他の支援機関と一層緊密な連携を図っていく考えです。
債務問題については、2004年にパリクラブ*において各債権国(資金を貸し付けている国)が保有しているイラクに対する債権の総額約372億ドルのうち、80%を3段階で削減する合意が成立しました。これを受け債権国第1位である日本は、2005年11月に約76億ドルの債権を3段階に分けて合計80%削減する内容の交換公文(国際約束)を日本・イラク間で署名し、2008年12月の削減を最後に合計約67億ドルの債務を削減しました。
来日したマーリキー・イラク首相と会談する野田佳彦内閣総理大臣 (写真提供:内閣広報室)
用語解説
*パリクラブ
債務の返済が困難になった債務国に対し、二国間で債務の救済措置を取り決めるための非公式な債権国会合。日本を含む主要債権国19か国で構成され、原則として年10回、フランス経済産業雇用省(パリ)で開催される。