4. 平和構築

国際社会では、依然として民族・宗教・歴史などの違いによる対立を原因とした地域・国内紛争が問題となっています。紛争は、多数の難民や国内避難民を発生させ、人道問題や人権を侵害する問題を引き起こします。そして、長年にわたる開発の努力の成果を損ない、大きな経済的損失をもたらします。そのため、紛争の予防、再発の防止や、持続的な平和の定着のため、開発の基礎を築くことを念頭に置いた「平和構築」のための取組が国際社会全体の課題となっています。たとえば、2005年に設立された国連平和構築委員会などの場において、紛争の解決から復旧、復興および国づくりに至るまでの一貫した援助に関する議論が行われています。

日アフガニスタン政策協議にて、来日したハキミ・アフガニスタン外務副大臣と会談する伴野豊外務副大臣

日アフガニスタン政策協議にて、来日したハキミ・アフガニスタン外務副大臣と会談する伴野豊外務副大臣

< 日本の取組 >

日本は、紛争下における難民の支援や食糧支援、和平(政治)プロセスに向けた選挙の支援などを行っています。紛争の終結後は、平和が定着するように、元兵士の武装解除、動員解除および社会復帰(DDR)(注54)への取組を支援します。そして治安部門を再建させ、国内の安定・治安の確保のための支援を行っています。また、難民や国内避難民の帰還、再定住への取組、基礎インフラ(経済社会基盤)の復旧など、その国の復興のための支援を行っています。さらに、平和が定着し、次の紛争が起こらないようにするため、その国の行政・司法・警察の機能を強化し、経済インフラや制度整備を支援し、保健や教育といった社会分野での取組を進めています。このような支援を継ぎ目なく行うために、国際機関を通じた支援と、無償資金協力、技術協力や円借款という二国間の支援を組み合わせて対応しています。

ODAによる平和構築支援

ODAによる平和構築支援

平和構築分野での人材育成

平和構築の現場で求められるものは、多様化し複雑になってきています。これらに対応するため、日本は2007年度から、現場で活躍できる日本やアジアの文民専門家を育成する「平和構築人材育成事業」を実施しています。この事業は、平和構築の現場で必要とされる実践的な知識および技術を習得する国内研修、平和構築の現場にある国際機関などの現地事務所で実際の業務に当たる海外実務研修、ならびに修了生がキャリアを築くための支援を柱としています。これまでに約160名の日本人およびその他のアジア人が研修コースに参加しました。その研修員の多くが、南スーダンや東ティモールなどの平和構築の現場で活躍しています。

●スーダン

「カッサラ州基本行政サービス向上による復興支援プロジェクト」
技術協力プロジェクト(2011年5月~実施中)

スーダン東部に位置するカッサラ州は、2006年の東部スーダン和平合意まで紛争を経験した地域です。スーダンは、40年以上の長期にわたり流入しているエリトリア難民をはじめ多くの国内外からの避難民を受け入れてきました。そのような中、増加する給水、農業、母子保健、職業訓練分野の行政サービスの需要に対して、行政機関によるサービスの供給が追いつかない事態に直面しています。そこで日本は、カッサラ州政府の要請を踏まえ、これらの分野における行政機関の能力向上を支援し、住民の生活環境の改善を通じた平和の定着を力強く後押ししています。

農業流通の円滑化をめざすワークショップ(写真提供:JICA)

農業流通の円滑化をめざすワークショップ(写真提供:JICA)


注54 : 元兵士の武装解除、動員解除および社会復帰 DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration


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