近年、開発援助における成果重視の風潮が国際的に高まっています。長年にわたり支援を続けているにもかかわらず、目に見える効果が現れていないのではないかという停滞感による「援助疲れ」を経験した国際社会では、1999年の世界銀行・国際通貨基金(IMF(注212))総会での貧困削減戦略文書(PRSP(注213))の策定合意、2001年に国連によりとりまとめられたミレニアム開発目標(MDGs)などといった成果を重視した援助の形が模索されるようになりました。国際社会が共通の目標を設定し、その達成のために様々な援助主体が協調して援助を実施する動きはさらに加速化しています。
PRSPとは、一定の援助資金を前提とした上で、貧困削減を目的とし、支援国や国際機関との緊密な対話に基づいて途上国自らが策定する具体的な行動計画です。PRSPには、具体的な成果目標、行動指針や手法が盛り込まれています。
MDGsは、貧困削減という万人が共有できるテーマの下、測定可能な国際的な共通の開発目標を提示することで、援助に対する意識と動機付けを高めることに貢献しました。また、援助の世界に成果重視の考え方を定着させたといえます。それまで、一般的な援助の目標として使われてきた尺度は、援助総額や国民総所得(GNI)の何%を援助に振り向けるかといった、「投入」に関する議論であり、どれだけ途上国の所得が増えたか、また、どこまで識字率が上がったかという援助の成果については、専門家以外の人に議論されることはあまりありませんでした。それに比べ、MDGsは、援助の成果に焦点を当て、「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」、「2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」などといった8つの分かりやすい指標を立てることで援助が達成すべき成果を明確化しました。2008年9月に国連が公表した最新のMDGs報告書(注214)では、極度の貧困を2015年までに半減させるという目標は、世界全体で見れば達成の可能性があるものの、サブ・サハラ・アフリカでの達成の望みが薄いことなどが指摘されています。また、2008年度の動きとして、同年9月、国連は、MDGsハイレベル会合を開催し、MDGsの進捗状況を再検討し、今後の取組について議論しました。2015年までのMDGsの達成のため、日本を含む国際社会は様々な努力を行っています。