旧来の援助協調は、案件単位での援助国間の連携や調整に重きが置かれていました。しかし、近年の開発援助に関する国際的潮流では、支援相手国の主体性(オーナーシップ)を重視し、途上国自身の開発計画や優先課題を援助国・機関が共同で支援し、その国の開発目標の達成に共に取り組むという考え方が主流となっています。
MDGsや、国別のPRSPなどの共通の開発目標の達成のためには、援助量のみならず、質的にも効果的な援助を行う必要があります。援助を国家の開発に有効利用していくためには、途上国政府自身が自助努力の意識を持って援助を有効活用していくことが最重要です。一方、援助主体が増加したために、途上国政府に過度の負担がかかっていることなどから、援助側には、途上国の開発戦略の優先順位に沿って、可能な限り協調した形で援助を行い、途上国の負担を少なくすることが求められています。こうした点を含め、援助効果向上に対する意識は年々高まっており、2005年にはパリにおいて、「援助効果向上に関するパリ宣言(パリ宣言)」が採択されました。この宣言では、援助の質を向上するために必要な取組について、援助効果向上の5原則(①自助努力、②途上国の制度・政策への協調、③援助の調和化、④援助成果主義、⑤相互説明責任)、援助のモニタリング指標、および援助側と途上国側政府それぞれが守るべき56の約束事項がとりまとめられました。2008年度の動向として、同年9月、第3回援助国効果向上に関するハイレベル・フォーラムがガーナのアクラで開催されました(アクラ・ハイレベル・フォーラム)。この会合では、パリ宣言に基づく取組の中間評価を行い、2010年までの行動計画(AAA:Accra Agenda for Action)が採択されました。途上国別に様々な状況がある中で、必ずしもすべての国に同じ原則を適用することは困難ですが、日本は援助を巡る新しい環境に対応して援助の実施方法を改善しつつ、援助効果向上に関する国際的な取組に貢献しています。
また、開発途上国の現場では、保健や教育などの分野ごとに援助協調のためのグループが形成され、それぞれの分野別の開発戦略に沿って、複数の援助国が参加したプログラム形式の支援が実施されることがよくあります。このような動きに対して、日本も例えば、バングラデシュにおける教育やタンザニアでの農業分野の協力など、18か国、40分野でこうしたプログラムに参加しています。
このような援助協調の取組が活発化する中、日本は、2006年度以降、ウガンダ、エチオピア、ガーナ、スーダン、モザンビークなど、特に援助協調の盛んなアフリカ諸国の在外公館に経済協力調整員を配置し、他国政府や援助実施機関、NGOなどと連携強化のための情報収集、意見交換、対外発信などの業務を行っています。2007年度には、ザンビア、マダガスカル、セネガル、ケニアへの派遣も開始しました。