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2.南アジア地域
日本の南アジア地域に対する2005年の二国間ODAは、約5億6,166万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は5.4%です。
南アジア地域は、5億人以上の貧困層を抱える世界で最も貧しい地域の一つです。貧困、人口問題に加え、初等教育普及率の低さや保健医療の未整備、また、感染症問題なども深刻であり、MDGs達成を目指す上でもアフリカと並び最大の課題を抱える地域です。他方、同地域は、世界最大の民主主義国家であり、日本との間で民主主義、市場経済、法の支配といった価値観を共有するインドをはじめ、大きな潜在力を持つ国があり、その重要性は飛躍的に高まっています。また、インド、パキスタンにおける大量破壊兵器やミサイルの問題、及び、米国同時多発テロ事件以降の「テロとの闘い」の前線という役割からも、同地域は日本を含む国際社会にとって関心の高い地域の一つです。
一方、南アジア地域には、法による支配の確立、公共財政管理の向上、汚職の撲滅、行政の効率化・透明化などが課題とされている国があるため、今後の同地域の貧困を効果的に削減するためには、これらの国のガバナンスの向上を促し、援助のための適切な制度政策環境を確保することが重要です。
ODA大綱は、貧困削減を重点課題の一つとして掲げていることから、日本は、今後もこの地域の抱える貧困問題への対応を重視していくとともに、域内各国の経済自由化や経済面を中心とした地域協力などの地域の安定と発展に向けた望ましい動きを支援していくこととしています。
貧困削減と貧困層の生存の確保のための支援としては、特に、LDCであるバングラデシュ、ブータン、ネパールに対して、無償資金協力を中心に実施しており、技術協力との連携をはかりつつ、農業、居住環境、保健・医療などの基礎生活分野に重点を置いた協力を行っています。
また、民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための人材育成、経済・社会インフラ整備などへの支援も行っています。技術協力を通じた人材育成については、これまでスリランカ、バングラデシュ、ネパールを中心に支援を行ってきましたが、最近ではパキスタンに対する支援も拡大しています。2006年4月には約30年ぶりに青年海外協力隊員(日本語教師)がインドに派遣されました。
円借款や無償資金協力を通じては、貿易投資環境の整備に資する電力・運輸などの経済インフラの整備、教育・上下水道などの社会インフラの整備への支援を行っています。例えば、インドは2003年度から2005年度まで3年連続で日本の円借款の最大供与国となっています。円借款を通じ、西ベンガル州の深刻な電力不足を解消するための「プルリア揚水発電所建設計画(第三期)」、カルナタカ州のバンガロールにおいて深刻化している交通渋滞や大気汚染問題に対処し、産業の活性化と都市環境の改善を図るため地下鉄及び地上・高架鉄道を建設する「バンガロール高速輸送システム建設計画」、アンドラ・プラデシュ州のハイデラバード中心部にある湖周辺の生活環境の改善のため下水道施設等の整備を通じた、水質浄化事業等を実施する「フセイン・サガール湖流域改善計画」(コラムI-2を参照してください)などを実施しています。また、パキスタンに対しては、2005年8月、「チェナブ川下流潅漑用水路回収計画」及び「給電施設拡充計画」に対し、合計約164億円までの円借款を供与しました。さらに、2006年1月に緊急震災復興支援として、約112億円までの円借款を供与しました。
スリランカの北・東部支援については、2003年6月、「スリランカ復興開発に関する東京会議」が開催され、4年間で援助国・機関より総額累計45億ドルを超える支援の意思表明がなされました。日本も、和平の進展を十分見極めながら3年間で最大10億ドルまでの支援を行う用意があることを表明し、2005年度までに約7.5億ドルを供与しています。スリランカ和平では、2003年3月の第6回交渉(箱根)以降、和平交渉は開催されていませんが、日本は和平プロセスを後押しする観点から、約20年間にわたる紛争で疲弊した北・東部地域の住民の生活水準の向上のため、「ワウニア・キリノッチ送電線修復計画」や「コミュニティ・アプローチによるマナー県復旧の復興計画」などを実施しています。
図表II―27 南アジア地域における日本の援助実績

column II-11 インド ~ウッタル・プラデシュ州に導入された日本の「道の駅」~