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3.中央アジア・コーカサス地域
 日本の中央アジア・コーカサス地域に対する2005年の二国間ODAは、約1億7,257万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は1.6%です。
 日本は、旧ソ連崩壊後の新たな国際情勢下、中央アジア及びコーカサス地域の地政学的な重要性を考慮し、これら諸国の民主化及び市場経済導入の努力を積極的に支援していくことを目的として、人材育成のための技術協力やインフラ整備、経済改革に伴う困難を緩和するための資金協力を中心とした援助を行っています。
 特に、中央アジアは、旧ソ連の崩壊に伴う独立から15年が経過し、各国の政治、経済面における多様化が進展するとともに、特に経済面ではエネルギー資源の有無により経済格差が増大する傾向にあります。また、米国同時多発テロの発生に伴い、テロの温床化を回避するためには貧困削減に向けた開発支援が重要であると再認識されており、中央アジア各国は、基本的に国際社会のテロとの闘いに協力し、また、アフガニスタン復興を支援する姿勢を示しています。
 中央アジア・コーカサス地域の諸国は、計画経済体制から市場経済体制への移行期にある国であり、人材育成や制度づくりといったソフト面での協力が重要です。日本は、2005年度末までにこれら8か国から約603名の研修員を受け入れています。また、経済運営、法制度整備支援、通信、金融、環境、運輸インフラ、保健医療分野などの専門家派遣、防災、物流、エネルギーといった分野での開発調査などを通じ、同地域の人材育成と制度づくりを支援しています。また、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスには人づくり支援の拠点として「人材開発センター(日本センター)」を開設しており、これらセンターには日本から専門家を派遣し、日本的経験に基づくビジネスコースや日本語コースを実施するなど、同地域の市場経済化に対応する人材育成に貢献しています。
 さらに、日本として、中長期的な視点をもって、同地域に対する積極的外交を志向する中で、2004年8月に川口外務大臣(当時)が中央アジア4か国を歴訪した際、従来からの「二国間関係の増進・緊密化」に加え、「中央アジア全体との対話と協力の構築」を二本柱とする日本の新たな対中央アジア政策を打ち出し、カザフスタンにおいて中央アジア各国と日本による外相会合を開催して、「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げ、中央アジア各国もこれを歓迎、支持しました。同会合では、中央アジア諸国が一つのまとまりをもって、今後さらに発展していくためには、麻薬、テロ、環境、エネルギー、水、輸送、貿易・投資などの地域的課題の解決のために地域内協力を推進することが重要であることについて確認されるとともに、日本はこうした努力を支持、支援する旨表明しました。また、2006年6月に東京で開催された第2回外相会合では、麻生外務大臣の議長の下、「中央アジア+日本」対話の「行動計画」が採択され、今後[1]政治対話、[2]地域内協力、[3]ビジネス振興、[4]知的対話、[5]文化交流・人的交流(観光を含む)の5分野を柱として協力を進めること、特に地域内協力を促進する種々の案件にODAを活用しつつ取り組んでいく事で一致しました。また、第2回外相会合にはアフガニスタン外相がゲスト参加し、広域的な協力の重要性について認識が共有されました。
 コーカサス地域については、複雑な民族構成を背景として、ナゴルノ・カラバフ問題など多くの不安定要因を抱えており、同地域の安定化は日本を含む国際社会全体にとって意義があります。またカスピ海のアゼルバイジャン沿岸には、未開発のものとしては世界最大級の油田があり、同油田から地中海に抜ける石油パイプラインのルート上に南コーカサス地域があることから、同地域の安定的な経済発展は国際的なエネルギー安全確保のためにも重要です。エネルギー分野については、2005年3月(アルメニア)及び同年5月(アゼルバイジャン)に火力発電所を建設するための円借款による協力を行い、今後予想される深刻な電力需給不足の緩和のために支援しています。他方、2003年の「バラ革命」により民主化が進展したグルジアに対しては、グルジア支援国会合(2004年6月、於:ブラッセル)において同国を引き続き支援することを表明し、2006年3月には経済構造改善のために資金供与による支援を行いました。また、コーカサス地域は、所得向上のための雇用創設及び公共サービスの改善が共通の課題となっており、中小企業振興、保健・医療及び水分野に対して専門家の派遣や研修等を通じた支援を行っています。

図表II―28 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績

図表II―28 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績



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