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4.アフリカ(サブ・サハラ)
日本のアフリカに対する2005年の二国間ODAは、約11億3,734万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は10.8%です。
アフリカは、深刻な貧困、飢餓、紛争、HIV/エイズ、マラリアなどの感染症、累積債務などの課題が集中しており、MDGsの達成度が極めて低い地域です。日本はMDGsの達成のためには安定的な制度・政策環境の整備、人材育成、良い統治(グット・ガバナンス)、健全なマクロ経済政策運営、国内資金の動員などといった開発途上国の自助努力(オーナーシップ)が鍵になると考えています。そして、オーナーシップを支えるのが、二国間ドナー、国際機関やNGOも含めた国際社会におけるパートナーシップです。
日本はこれまで1993年にTICADI、1998年にTICADII、2003年にTICADIIIを開催し、アフリカ諸国のオーナーシップとそれを支援する国際社会のパートナーシップの重要性を提唱してきました。このような日本のアフリカ問題に対するイニシアティブは、アフリカ開発に対する国際社会の取組の強化へと繋がりました。また、G8サミットにおいても、日本が議長国であった2000年のG8九州・沖縄サミットでは南アフリカ、ナイジェリア、アルジェリアの大統領を東京に招待し、G8首脳との対話を実現させました。これをきっかけに、G8サミットにおけるアフリカ首脳との対話が毎回行われるようになりました。それ以降、アフリカ問題はG8サミットの主要議題の一つとなり、2002年のG8カナナスキス・サミットでは「G8アフリカ行動計画」が採択されるなど具体的な協力が拡大しています。また、2005年7月のG8グレンイーグルズ・サミットでは、アフリカの抱える問題が主要議題の一つとなり、それまでのG8のコミットメントやアフリカ自身の努力を基に、一連の新たなアフリカ支援策が合意されました。
アフリカの具体的取組としても、国際社会の援助に依存せず、自身の責任でアフリカの貧困削減、持続可能な成長と開発、世界経済への統合を目指しており、アフリカ主導で2001年に「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」が策定されました。また、アフリカ諸国・諸国民間の一層の統一性・連帯の達成やアフリカの政治的、経済・社会的統合の加速化等を目的として2002年、「アフリカ統一機構(OAU)」を発展改組した「アフリカ連合(AU)」が設立されました。
2003年9月に開催されたTICADIIIでは、小泉総理大臣(当時)が「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」、「平和の定着」を3本柱とする日本の対アフリカ支援方針を表明するとともに、HIV/エイズ対策を含む保健医療、教育、水や食糧支援などの基礎生活分野で、5年間に10億ドルの無償資金協力を実施する旨表明しました。同時に日本の対アフリカ支援において「人間の安全保障」の視点や、比較的開発の進んでいる開発途上国が開発の進んでいない開発途上国に対して援助を実施する「南南協力」を重視していくことも明らかにしました。2004年11月には、「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」を開催し、近年成長が著しいアジア・アフリカ間の貿易・投資の現状に着目して、貿易・投資の拡大を通じたアフリカ開発の具体的な方法などにつき議論を行いました(注)。
アフリカ側より、10年にわたるTICADプロセスの貢献を高く評価し、その継続を求める強い声が出されたことを背景に、小泉総理大臣(当時)は2005年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において、2008年にTICADIVを日本で開催すること及び今後3年間での対アフリカODAを倍増することを発表しました。さらに、2006年4月から5月にかけて、小泉総理大臣(当時)はエチオピア及びガーナを訪問し、エチオピアにあるAU本部においてアフリカ政策スピーチを行いました。平和の定着や保健分野などでのアフリカの努力を積極的に支えることとし、ダルフール問題の解決に向けた支援、小型武器対策支援、テロ対策支援、NEPAD支援、対アフリカ感染症行動計画等の支援を表明しました。
日本は、TICADプロセスを通じて、アフリカの経済成長に不可欠な農業開発、社会・経済インフラ整備、貿易・投資の促進、紛争地域における人道・復興支援などアフリカ諸国に対し様々な協力を行ってきています。MDGsとの関係においても、日本はMDGs制定に先んじてTICADII(1998年)の際に、水・教育・保健医療の分野で900億円の協力を表明し、TICADIII(2003年)までの5年間で、人間の安全保障の観点を重視しつつ、約460万人の人々に衛生的な水へのアクセスを、約260万人の子どもに教育へのアクセスを、約2億4,000万人の人々に保健医療サービスを提供しました。南南協力については、アフリカ域内の協力の拠点を活用して周辺国を対象とした第三国研修を実施しているほか、アジア諸国と協力して技術協力を実施する南南協力を推進しています。特に日本の経済協力によって成長を遂げたアジア諸国の経験をアフリカにおいて活用するアジア・アフリカ協力は、日本ならではの協力として高い評価を得ています。具体的には、ネリカ稲の開発・普及事業やアフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムなどを通じた民間貿易投資の促進など、特色のあるプロジェクトが実施されています。
さらに、2005年6月、日本とアフリカ開発銀行グループは、アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA for Africa)を発表しました。このEPSA for Africaは、投資環境整備、金融セクター強化、経済・社会インフラ整備、中小零細企業支援、貿易・直接投資促進を主要5分野として、アフリカの民間セクター開発を包括的に支援することを目的としています。そして、EPSA for Africaの第1号案件として、2006年3月にセネガルとマリを結ぶ国際幹線道路である「バマコ~ダカール間南回廊道路改良・交通促進計画」への円借款の供与を決定しました。本事業では、国際幹線道路建設及び当該道路に接続する農道整備等を実施し、輸送力増強及び沿線地域の基礎的社会サービスへのアクセス改善を図るとともに、経済の活性化、経済統合推進、沿線地域の貧困削減が期待されます。
また、アフリカにおいては、紛争が開発の大きな障害となることが多く、平和の定着に向けた支援が極めて重要であることから、2006年2月、日本は他のTICAD共催者と共に、エチオピアのアディスアベバにおいて閣僚級の「TICAD平和の定着会議」を開催し、紛争終結国に対する支援のあり方を議論するとともに、本分野における日本の新たなイニシアティブを発表し、その下での当面の貢献策として、スーダン、大湖地域、西アフリカを中心に同年3月までに総額約6,000万ドル相当の支援を実施することを発表しました。
なお、貧困地域や紛争後、復興から開発に移行しつつある地域や国において、選定される地域社会が抱える課題やニーズ(基礎的教育環境の改善、安全かつ衛生的な水の供給、保健・衛生環境の改善、食糧事情の改善 給食事業や栄養改善など)に応じて、必要とする協力を分野横断的に複数組み合わせて行うことで、地域社会全体の発展に貢献していくことを目指すべく、2005年2月、日本は「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ」を発表し、セネガル、ケニア、ルワンダ、シエラレオネといった国々で同イニシアティブに合致する支援を実施しています。
さらに、アフリカ地域には、世界でHIPCとして認定されている40か国のうち33か国が集中しており、日本はこれらの国々に対して債務削減問題でも、拡大HIPCイニシアティブの枠組みにおいて最大級の貢献を行っています(債務問題への取組については、第II部第2章第2節2.(7)を参照してください)。
図表II―29 アフリカにおける日本の援助実績


日本が支援したオナトラコム・バス公社を訪れた浜田外務大臣政務官(ルワンダ)