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(7)債務問題への取組
 開発途上国の持続的成長を妨げる大きな問題のひとつに、債務問題があります。債務として受け入れた資金を有効に利用し、将来的に成長が実現するなど、返済能力が確保される限りにおいては、債務は問題になりません。しかし、返済能力が乏しく過剰に債務を抱える場合には、開発途上国の持続的成長の阻害要因となる可能性があります。多くの開発途上国は開発資金を確保するために対外借入を行ってきましたが、1970年代のオイル・ショックや一次産品価格の下落を背景に、国際収支が悪化し、自国の経済状況に照らし、維持できないほどの債務を抱えることになった国が多数生じました。
 債務の問題は、債務国自身が主体的に債務の管理を行いつつ、改革努力などを通じて自ら解決しなければならない問題です。しかし、過大な債務が開発途上国の発展の足かせになってしまうことも避けなければなりません。日本としては、債務国自身の努力により中長期的な成長が達成され、債務返済能力が回復することが必要であるとの立場を基本としながら、国際的な枠組みの中で債務問題に取り組んでいきます。
 具体的には、日本は、パリクラブにおける債務救済措置に協力しています。パリクラブにおける債務救済の方法は、従来は債務の繰延(リスケジューリング)(注1)で対応することが一般的でしたが、1980年代後半以降、債務免除措置もとられるようになりました。また、従来、国際金融機関の債務は救済の対象とされていませんでしたが、1996年のリヨン・サミットの際に「HIPCイニシアティブ」(注2)が合意され、国際金融機関や商業債権者も包含し、HIPC諸国の債務を持続可能なレベルまで低減することを目的とした債務免除措置がとられるようになりました。
 2004年のシーアイランド・サミットで発出された「最貧国の債務持続性」(注3)声明では、主要先進国がHIPCイニシアティブの完全な実施と、最貧国の債務持続性確保に取り組んでいくことを再確認しました。
 また、G8は、2005年イギリスで開催された6月の財務大臣会合及び7月のグレンイーグルズ・サミットにおいて、HIPC諸国が国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)、国際開発協会(IDA:International Development Association)及びアフリカ開発基金(AfDF:African Development Fund)に対して抱える債務を100%削減するとの提案に合意しました。
 最貧国の債務問題について、日本は、拡大HIPCイニシアティブの適用が決定されている29か国に対して、G7各国が貢献した債務救済措置(債務免除方式)(約259億ドル)の約5分の1にあたる約54億ドルの貢献をしています。これは、同イニシアティブにおける最大級の貢献です。日本は、今後とも同イニシアティブを迅速かつ着実に実施に移していきます。
 日本は従来、債務救済のために無償資金協力(債務救済無償)を実施し、円借款債務の救済を行ってきましたが、債務問題のより早期の解決、債務国の負担の軽減、ODAの透明性及び効率性の観点から、2003年度より、旧来の債務救済無償の対象国に対しては、円借款債務の免除という形で債務救済を実施することとしました。2005年度には、日本は拡大HIPCイニシアティブに基づき、4か国に対して合計約1,395億円(マダガスカル約175億円、ホンジュラス約465億円、ザンビア約740億円、ルワンダ約15億円)の円借款債務を免除しました。また、付保商業債権(注4)についても債務免除の実施を開始しました(ボリビア約74億円)。これにより、2005年度の公的債務免除の総額は約1,469億円となり、2003年度から開始した債務の免除は総額約6,038億円に上りました。日本としては、債務免除が債務国の貧困削減を含む社会経済開発に資するよう国際社会と協調して貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)のもとでモニタリングを行うこととしています。
 HIPC以外の低所得国や中所得国(以下「非HIPC諸国」)についても、重い債務を負っている国があり、これらの負担が中長期的な安定的発展の足かせとならないように適切に対応していく必要があります。非HIPC諸国が抱える債務問題については、エビアン・アプローチ(注5)のもと、非HIPC諸国を対象に、従来以上に債務国の債務持続性に焦点を当て、各債務国の状況に見合った措置が個別に検討されています。非HIPC諸国に対し、パリクラブの合意に基づき、日本は、2005年5月にセルビア・モンテネグロ、同9月にドミニカ共和国、キルギス、同11月にイラク、同12月にガボン、さらに2006年2月にナイジェリア、同3月にケニアに対して債務救済を行いました。
 さらに日本を含むパリクラブ債権国は、2004年12月のスマトラ島沖大規模地震・インド洋津波の被災国に対して、復興支援を十分に行うことができるよう、債務支払いの猶予を実施するなど各国の状況に応じた債務の問題の解決に協力しています。その結果、日本は2005年10月にインドネシア、同12月にスリランカとの間で債務の支払猶予に関する合意を締結しました。


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