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6.中南米
日本の中南米に対する2004年の二国間ODAは、約3億930万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は5.2%です。
中南米は、1990年代における民主化、経済改革を通じて、一部に不安定な国はあるものの、現在、政治面及び経済面ともに、おおむね安定的に推移しつつあります。特に1990年代から続く動きとして、南米大陸の南米南部共同市場(メルコスール)、アンデス共同体や、中米の中米統合機構(SICA:Sistema de la Integraci蕨 Centroamericana)、カリブ地域のカリブ共同体(カリコム)、さらに南米大陸全体にわたる南米共同体といった多国間の地域経済統合や数多くの二国間・地域間の自由貿易協定の締結があり、このような経済連携の強化を通じた経済発展や国内の構造改革を促す戦略がとられています。
一方で、急激な経済改革により、域内及び国内の経済格差が生じ、その結果として、一部の国では治安・貧困などの社会問題が悪化しています。ODA大綱では、中南米について域内及び国内の格差が生じていることに配慮しつつ、必要な協力を行うこととしています。格差の是正、貧困問題の緩和、さらには域内経済の安定的発展のためには、その基礎となる教育、保健医療分野などの基礎生活分野における取組が課題となっています。また、同地域は、熱帯雨林の減少や大都市における環境悪化、都市への人口集中によるスラム化など多様かつ深刻な環境問題及び社会問題を抱える地域でもあり、これらの分野に対する支援も引き続き実施していく予定です。2004年度は、環境分野ではキューバにおいて「森林資源の持続的管理計画調査」、アルゼンチンにおいては「産業公害防止プロジェクト」などの地球温暖化防止にも寄与する案件への協力を実施しました。貧困削減や、保健医療、防災の各分野においても、研修をはじめとする人材育成など、様々な支援を進めています。また、中南米諸国には、伝統的に日本と中南米との架け橋になっている多数の日本人移住者・日系人が存在しており、彼らを活用した技術協力なども行っています。
さらに日本は、中南米諸国における共通する問題に対して、従来の二国間援助の枠組みを活用しつつ、広く周辺地域にも裨益する広域プロジェクトを積極的に実施してきています。中米地域で共通する風土病であるシャーガス病根絶に対する取組は、2002年にグアテマラで実施以降、2004年にはエルサルバドル、ホンジュラスと対象を拡大して実施しています。また、地域の基礎的学習能力向上のために、2003年にホンジュラスで実施し高い評価を得ている「算数指導力向上プロジェクト」も、ニカラグア、エルサルバドル、ドミニカ共和国に対象の範囲を広げることとしています(算数指導力向上プロジェクトについては、第I部第2章第3節1も参照して下さい)。
また、カリブ共同体においては、防災分野の取組を強化するために専門家を派遣しているほか、2004年度に採択し、2005年度には、はじめての広域開発調査となる「カリブ地域における漁業・水産業に係る開発・管理マスタープラン調査」の実施を予定しています。
メルコスールや、アンデス共同体などとも、広域に裨益する案件を形成するために協議を重ね、メルコスールに対して「メルコスール域内産品流通のための包装技術向上支援調査」や「メルコスール観光振興プロジェクト」を実施しています。
このように、同様な問題・経済状況を抱えている中南米諸国に対して、既存の支援実績を活かした形でその効果を広く周辺地域にも波及させ、かつ中南米の地域統合を促進する観点から、案件の広域化を進めています。
2004年9月、小泉総理大臣はブラジル・メキシコを訪問した際、「日・中南米 新パートナーシップ構想」を表明しました。この構想は、中南米との「協力」及び「交流」の促進を2本の柱とし、このうち「協力」の促進については、資源開発への協力や中南米のインフラ統合への協力などを通じた経済関係の再活性化、経済発展と環境の両立といった問題を含む国際社会の諸課題への取組及び相互理解と人物交流の促進を中心として、中南米諸国と協力を進めていく方針を明らかにしています。今後とも、日本は、この構想を踏まえながら対中南米支援を積極的に推進していくこととしています。
図表II-31 中南米における日本の援助実績

column II-18 カリブ海に浮かぶ「リトル・トーキョー」