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(6)防災と災害復興
地震、津波、洪水・土砂災害、干ばつなどの災害は世界各国に様々な形で毎年のように発生しており、大規模な災害では、多くの人命や財産が奪われるだけでなく、経済や社会システム全体が長期にわたって深刻な影響を受けることがあります。特に、開発途上国の多くは、災害に対して脆弱であり、災害により極めて深刻な被害を受けます。また、一般に貧困層が大きな被害を受けて災害難民となることが多く、衛生状態の悪化や食料不足などの二次的被害が長期化することが大きな問題となっています。
日本は、自らの過去の災害経験から培われた優れた技術や経験を活用して、災害分野における国際協力を主導しています。2004年12月に発生したインドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波災害は、周辺国において未曾有の人的、物質的被害をもたらしました。日本は、アジアの一員として、資金、知見、人的貢献の3点で最大限の支援を実施することとして、緊急援助物資の供与、国際緊急援助隊の派遣、5億ドルの無償支援などを行うとともに、被災地域の復興計画策定やコミュニティ支援のための人材を派遣しています。(同災害については、第II部第2章第1節3を参照して下さい)。2005年1月には、兵庫県神戸市において、日本のリーダーシップにより、168の国連加盟国、78の国連・国際機関など4,000人を超える参加者を得て、国連防災世界会議が開催されました。この機会に、日本はODAによる災害分野の協力に関する基本方針や具体的取組を定めた「防災協力イニシアティブ」を発表し、制度構築、人づくり、経済社会基盤整備などを通じて、開発途上国における「災害に強い社会づくり」への自助努力を引き続き積極的に支援していくことを表明しました。また、2005年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議においては、小泉総理大臣が、防災・災害復興対策のためにアジア・アフリカ地域を中心として今後5年間で25億ドル以上の支援を行うことを表明し、日本の役割に対する国際社会の期待はますます高まっています。
2004年度の防災関連の資金協力の実績は、無償資金協力約374億円(注)、円借款約351億円(円借款全体に占める割合約5.4%)の、合わせて約726億円となっており、これは国際的に最高水準の協力となっています。これを災害形態別でみると、地震・津波関係の割合が最も高く39%を占めており、次いで土砂災害33%、暴風・洪水17%などとなっています。地域別では、アジアの割合が87%と最も高く、次いでアフリカ、中東がそれぞれ6%となっています。また、国際緊急援助の実績としては、国際緊急援助隊の派遣が15件、延べ1,924名、緊急援助物資供与が29件であり、総額約15億3,500万円相当の支援を行いました。
災害分野における協力では、経済社会基盤整備などのハード面での取組に加えて、人材育成などのソフト面での取組にも力を入れています。2004年度は、防災分野で48名の専門家派遣及び633名の研修員受入を行いました。具体的な案件例としては、カザフスタンなどの中央アジアと、グルジアなどのコーカサス地域の行政官を対象とした防災行政研修を実施しました。これらの地域では、地すべり、土石流などの災害が繰り返し発生し、各国の開発を阻害する要因のひとつとなっています。また、これらの災害は、しばしば国境を越えて発生するため、広域的な土砂災害対策や情報共有が必要です。しかしながら、旧ソ連からの独立後は独立国家共同体(CIS:Commonwealth of Independent States)内での人的交流や情報交換の機会が減少し、人材育成も進んでいません。そこでJICAは、2004年にアジア防災センターと連携して、これら地域の行政官を対象に、防災行政研修をロシア語で実施し、この研修の中で日本の土砂災害対策技術を紹介することで、災害発生時に活躍できる人材の育成に協力しました。
図表II-20 防災と災害復興分野の援助実績

column II-12 インドネシアで続けられる「SABO(砂防)」分野の協力