column II-12 インドネシアで続けられる「SABO(砂防)」分野の協力
インドネシアは、日本と同じく、世界でも有数の火山国です。肥沃な火山灰土壌が農業に適していることから、火山を取り巻く地域には古くから村落が作られ、農業が営まれてきました。そうした自然の恵みがある一方で、火山灰土地域には、地盤が弱いため、地すべりが頻発するという問題もあります。雨期には多量の降雨により、火山泥流・土石流災害がたびたび発生しており、住民の生命と生活は常に土砂災害の危険にさらされていると言っても過言ではありません。
日本は土砂災害についての豊富な知見を活かし、35年も前から、インドネシアに対する砂防分野での協力を行っています。具体的には、火山噴出物や地すべり、泥流、土石流などの危険から地域住民の生命と生活を守るために、技術者を育成したり、災害対策の技術を指導したり、必要な対策を施したりしてきました。「SABO(砂防)」という日本語は、土砂災害対策を示す用語として、国際会議などにおいて既に広く使用されて国際語となっていますが、こうしたインドネシアでの協力により、「SABO」はインドネシアでも着実に浸透しつつあります。
現在実施中の「火山地域総合防災プロジェクト」では、中央政府と地方政府の連携を深め、行政機関と住民が一体となって、土砂災害に強い地域作りを進めています。また、人材育成の一環として、ガジャマダ国立大学に総合防災講座(修士課程)を新設し、防災技術者の育成にも力を入れています。現在、砂防の長期専門家として日本から派遣されている専門家は、「総合防災講座の卒業生が砂防に関する知識を有し、彼らが自らの職場の土砂災害対策の課題に取り組むこと、彼らのような防災技術者を地方に送り出すことによりインドネシアの砂防のすそ野が広がること、ひいてはインドネシアの土砂災害軽減につながること」を目指して仕事に取り組んでいます。
このような長年にわたる砂防分野での取組を踏まえ、インドネシア政府は2005年8月、ジョグジャカルタ特別州、ガジャマダ大学、JICAと共催で、「土砂災害の総合防災に関する国際会議」を開催しました。この国際会議では、各国の砂防分野の専門家や行政官、NGO関係者などが一堂に会し、これまでの砂防分野での協力の成果を再確認し、土砂災害に関する課題と今後の戦略について議論しました。こうして、参加者が土砂災害に関する知識と情報を共有し、世界の今後の砂防技術の向上に寄与しました。

自治体職員との意見交換風景 (写真提供:国土交通省)