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column II-13 少年たちの更生に向けて



 ケニア共和国は、1990年代後半に発生した干ばつにより、経済の基盤となる農業が大打撃を受けて以来、近年まで経済の低迷が続いてきました。こうした中、多くの人々が職を求めて地方から都市へと流入しましたが、都市部の社会資本の整備や雇用が追いつかず、都市における貧困層が増加し、スラム地区の拡大が進んでいます。また、HIV/エイズで親を亡くした孤児が急増しており、ストリートチルドレンの増加に拍車をかけています。ケニアでは、こうした状況を背景として、窃盗などの少年犯罪が大きな社会問題となっています。
 ケニア政府は、ストリートチルドレンのための「路上生活児童救済プログラム」などを実施し、少年の福祉の向上に意欲的に取り組んでいます。一方で、非行・犯罪児童を取り扱う少年司法制度については、非行・犯罪児童と孤児など保護を必要とする少年とが同一の施設に収容されていること、施設への収容期間が長期に及んでいること、社会復帰のための受け皿が不十分であることなど、問題が山積しています。また、非行・犯罪児童の更生を援助する機関の人員不足も深刻です。
 そこで日本はケニアの少年司法制度整備のため、UNAFEIより、JICAを通じ毎年数名の専門家を現地に派遣し、少年の一時監護所や更生学校の実態調査と改善、児童の資質や問題性に適した指導方法について助言を行うなどの支援を行っています。また、少年が施設から家庭や地域社会に問題なく復帰できるよう、各地域担当の児童専門官に対し、社会復帰後の対応などについて助言を行うとともに、非行・犯罪児童の処遇を行う諸機関の協力体制の構築に向けた支援を行っています。
 これらの活動の一つの成果として、ケニア政府によって2002年に施設内・社会内処遇に関する「全国規準」が策定され、違法行為を犯した少年と福祉的措置の対象とすべき少年とを区分して収容し、その上で個々の少年の問題性に対応した処遇を行うようになりました。また、一人ひとりの子どもの人間性を大切にしようという考え方が徐々に施設職員の間に浸透しています。例えば、一時監獄所や更生学校における制服のデザインについて言えば、以前のものは、すべて暗い緑色に定められていましたが、現在ではできるだけ一般の子どもたちと変わらないように配慮することになりました。デザインの選定そのものも施設に一任された結果、今ではむしろ、普通の学校の制服よりもおしゃれになったとさえ言われています。施設の作業場では、白い丸襟のチェック柄のワンピース姿の女の子が、クッションづくりなどの学科活動に熱心に取り組んでいる姿を目にすることができます。

ケニア,キスム少年監護所の少年達
ケニア,キスム少年監護所の少年達


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