column II-14 DDR(武装解除、動員解除、社会復帰)の現場から~在アフガニスタン大使館井上DDR担当参事官
アフガニスタンに対する復興支援は、平和の構築という日本外交における新しい国際貢献の分野の代表例です。同国において、2004年10月の大統領選挙に続く2005年9月の議会選挙を自由かつ公平に実施する上で、また復興及びその後の経済社会開発を円滑に実施できる環境を創る上で、治安の回復は不可欠です。このため日本は、アフガニスタン各地に残存する旧国軍傘下の軍閥を解体し、武器を回収するとともに、除隊兵士を地域社会に復帰させるDDR支援に取り組んできました。
2003年10月に始まったDDRは、約6万3,000名の旧国軍兵士を武装解除し、約3万5,000丁の小火器、約9,000基の重火器を回収して2005年7月7日に終了しました。首都カブールではカルザイ大統領が出席して武装解除終了式典が開催され、「この貢献はアフガニスタンの歴史に書き止められなければならない。武器を返還することによって、除隊兵士には国家再建にさらに大きな役割を果たす機会が与えられる。DDRの成功のために協力してくれた国際社会、特に日本に対して謝意を表したい」と演説しました。DDRにおいて最も重要なことは、除隊兵士が再び武器を手にしたり、同国でいまだに横行する麻薬取引に手を染めることがないように、職業訓練などの社会復帰を支援して、着実に地域社会に復帰させることです。日本はこの社会復帰支援を2006年6月まで続ける予定です。
アフガニスタン北西部のマザリ・シャリフで出会った除隊兵士は、日本の支援で馬と荷車を購入して運送会社を始めました。西部のヘラートでは家業の雑貨商を再開した除隊兵士に、また北部のクンドゥースでは農業を営みながら息子と一緒に読み書きを習っている除隊兵士に、東部のジャララバードでは念願の服飾職人となるための職業訓練を受けている除隊兵士に会いました。さらに南部のカンダハールで会った元司令官は、訪日研修プログラムに参加し、大の親日家になっています。
アフガニスタンには旧国軍に属していない軍閥もあり、治安回復のための障害になっています。日本は、そうした軍閥の解体と武器の回収についても、国際社会の先頭に立ってアフガニスタン政府を支援する考えです。DDRは麻薬撲滅のような長期的な課題ではありませんが、アフガニスタンの治安改革の前提とされてきました。旧国軍の解体が成功裡に進み、DDR完了の見通しが立ったことにより、今後のアフガニスタンの治安回復と復興支援に大きな希望が生まれてきました。

運送会社を始めたマザリ・シャリフの除隊兵士
(写真提供:アフガニスタン新生計画)

DDR最後の兵士から武器の返還を受けるカルザイ大統領
(写真提供:アフガニスタン新生計画)