column II-11 チュニジアの太陽光で自家発電を
サハラ砂漠に近いチュニジア南部の農村地域では、年間降雨量が100~200mmと極端に少なく(ちなみに東京は約1,500mm)、生活用水を地下水に頼る他ありません。日本はこの地域に対する給水事業として、これまで井戸の整備などを行ってきました。地域住民の飲料水と、主要産業の一つである畜産業を営むために必要とされる大量の水は、井戸を掘るだけではなく、井戸から水を汲み上げるための電動ポンプを備え付けることで、安定的に確保されるようになります。また、水質の面からは、チュニジア南部の地下水は塩分濃度が高く、人が飲めるようにするために脱塩作業を行わなければなりません。こうした課題に対応するためには、十分な電力の供給が必要です。
しかしながら、ほぼ全世帯が電化されている同国の都市部と比べ、南部の農村地域には、集落から遠く離れたところに井戸が散在しているものの、こういった所には電線が整備されていません。このため、ほとんどすべての井戸について個別に、ディーゼル発電装置が設置されているのが現状です。この装置を動かすためには燃料が必要ですが、地域の人々はポリタンクを車に積み、何十キロも離れた街まで、舗装されていない道路を走って買いに行かなければなりません。また、ディーゼル発電機は十分にメンテナンスしないと故障しやすく、地域住民たちにとって、修理費が大きな負担となってきました。
こうした問題に対処するため、日照時間が長いというチュニジアの地理的特性を生かし、日本は円借款を通じ、ディーゼル発電に代わって太陽光発電を導入するための支援を行っています。日本は、世界の太陽電池生産シェア第1位となっており、太陽光発電に関して先進的な技術を持っています。太陽光は化石燃料を消費しない再生可能エネルギーであり、また、太陽光発電ではディーゼル発電の際のような大気汚染も発生しません。さらに、ディーゼル発電のものに比べてメンテナンスが容易であることが特徴です。これまでは、ディーゼル発電装置の修理のため、砂にタイヤを取られながら車を運転して数百kmも走って街まで行かなければなりませんでしたが、太陽光発電装置は1基につき年2回の点検で済むようになります。
チュニジアの豊かな太陽光を利用した電力が、地域の人々の負担を減らしながら、安定的な水ときれいな空気の確保に貢献することが期待されています。

チュニジア南部の井戸に設置されているディーゼル発電装置
(写真提供:JBIC)

水を飲む家畜 (写真提供:JBIC)