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第1節 MDGs達成に対する日本の考え方
日本は、MDGsを援助政策の重要な柱の一つとして位置づけています。日本の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)政策の基本文書である政府開発援助大綱(以下、ODA大綱)では貧困削減を重点課題と位置付け、そして2005年2月に新しく策定された政府開発援助に関する中期政策(以下、新ODA中期政策)では、MDGsの達成に向けて積極的に貢献すると明記しています。日本のODA政策の枠組みを形成するODA大綱、新ODA中期政策の方針に従い、日本はMDGsの達成に向けさらなる取組を進めています。
(1)オーナーシップとパートナーシップ
開発途上国の発展のためには、人材育成、投資環境整備、政治的安定、民主化の促進などの包括的な取組が要求されます。これらの取組を実行するには、開発途上国政府が中心となり、市民社会、民間セクターを巻き込みながら、自らの開発戦略を策定し、その実現に向け財政・資金面での措置を講ずる必要があります。日本は、国内の安定的な制度・政策環境の整備、人材育成、良い統治(グッド・ガバナンス)、健全なマクロ経済政策運営、国内資金の動員などといった開発途上国のオーナーシップが、MDGsの達成に向けた鍵になると考えています。そして開発途上国のオーナーシップを支えるのが、二国間のドナー、そして、国際機関や非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)も含めた国際社会におけるパートナーシップです。オーナーシップとパートナーシップの原則は、MDGsの前身となったIDGsに取り入れられ、今では、MDGsの特徴として引き継がれています。
日本がオーナーシップを重視する背景には、第二次世界大戦後、米国、世界銀行や国連児童基金(UNICEF:United Nations Children's Fund)といった国際機関、また、国際NGOであるCARE(Cooperative for Assistance and Relief Everywhere)*1など、国際社会の支援を受けながら、自らの努力により戦後復興を実現させた経験があります。
また、日本が東アジアに対して行った支援においては、日本の考えの押しつけにならないよう、被援助国の要請に応じて、適切な支援を実施してきました。さらに、日本が実施した政策、人材育成、体制整備といった面での支援が被援助国のオーナーシップ強化につながり、このような被援助国のオーナーシップ強化が東アジアの経済発展に大きな役割を果たしました。こうしたことからも日本はMDGs達成のために開発途上国のオーナーシップを重視しています。

国際NGOのCAREから送られてきた物資。戦後日本の復興は国際社会の支援に支えられた。
日本が開発途上国のオーナーシップと国際社会のパートナーシップに貢献した例として、アフリカ開発会議*2(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)が挙げられます。日本の推進するTICADプロセスが契機の一つとなり、2001年にアフリカ開発のための新パートナーシップ*3(NEPAD:New Partnership for Africa's Development)が成立し、2002年にはアフリカ連合*4(AU:African Union)が発足するなど、アフリカのオーナーシップ強化に貢献しています。
その他、開発途上国のオーナーシップとパートナーシップの具体例として、南南協力があります。南南協力とは、比較的開発の進んでいる開発途上国が、開発が進んでいない開発途上国に対して実施している援助のことです。南南協力は、自然、文化、社会事情などの諸条件、経済の発展段階など、開発の様々な条件が類似している開発途上国間で行われることから、被援助国により適合した技術をより円滑に移転することが可能となります。日本は、開発途上国同士のオーナーシップとパートナーシップを促進し、効果的・効率的に開発途上国の発展を実現させるため、積極的に南南協力を支援しています。
column I-1 「人間の安全保障」と貧困削減への新たな取組~国際協力機構(JICA)緒方貞子理事長

南南協力として、ガーナで農業指導にあたるフィリピンの専門家(写真提供:JICA)