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(2)「人間の安全保障」の視点
人間の安全保障は、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威から各個人を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために一人ひとりの視点を重視する、「保護」と「能力強化」に重点をおいた考え方です。具体的には、紛争、感染症のまん延、環境破壊、災害といった「恐怖」や、貧困、飢餓、教育・保健医療サービスの欠如などの「欠乏」といった脅威から個人を保護し、また、脅威に対処するために人々が自らのために選択・行動する能力を強化することを目指しています。
MDGsで特に対象とすべき貧困に苦しむ人々へ効果的に支援を行うためには、人間の安全保障の視点に基づき、個人が直面する様々な問題を包括的に把握して、その解決に向けて協力していくことが重要です。例えば、開発途上国では、生まれた子供1,000人のうち88人は、5歳の誕生日を迎えることなく死亡しています。また、慢性的な栄養不良に悩む人々は開発途上国の人口の17%にのぼります。(注)このような人間の生存に関わる脅威から個人を保護するとともに、現在置かれている状況を自力で改善し、尊厳を持って生活していけるような能力強化を支援することが人間の安全保障の視点には必要です。日本は、こうした人間の安全保障の視点に基づき、開発途上国の人々の「保護」と「能力強化」を重視した支援に努力しています。