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5.紛争・災害と開発
(1)紛争と開発

 日本は、2000年7月に発表した「『紛争と開発』に関する日本からの行動-アクション・フロム・ジャパン」において、紛争予防-緊急人道支援-復旧・復興支援-紛争再発防止と本格的な開発支援という一連の紛争のサイクルのあらゆる段階で被害の緩和に貢献するためODAによる包括的な支援を行っていくことを表明しています。
 また、第I部2章1節3-(4)で紹介したとおり、日本は、紛争に苦しむ国々に対し平和の定着と国づくりのための協力を強化し、国際協力の柱としています。これを踏まえ、日本は、紛争下の緊急人道支援、紛争終結を促進するための支援から、紛争後の「平和の定着」と「国づくり」まで、状況の推移に即した継ぎ目のない支援を行っています。これらの取組は、新しいODA大綱においても平和の構築として重点分野に位置づけられました。
 平和構築分野は、新たな援助需要として援助全体に占める割合が増加傾向にありますが、日本としては、その他の国・地域の開発、あるいは他の分野における開発をおろそかにするということではありません。限られたODA予算の中で、これらをどのように両立した形で適切な援助を実施していくかが極めて重要な課題となっています。
 2002年度の本分野における日本の支援は、第I部2章1節3-(4)-(ロ)で紹介したアフガニスタンやスリランカに加え、紛争や騒乱からの復興を果たしつつあるカンボジアや東ティモールへの国づくり、インドネシアのアチェ及びフィリピンのミンダナオへの和平促進のための支援などがあげられます。
 カンボジアでは、長年の紛争による負の遺産として多量の小型武器が一般社会に残存しているという問題があります。日本は、貧困削減を中心にカンボジアの国づくりを積極的に支援してきていますが、これに加え、2002年度には、地域住民からの小型武器の自発的供出に対し、その対価として地域住民の希望に沿ったインフラ整備(道路、井戸、橋、学校等の修理・建設)を供与するとともに、同国政府による小型武器の管理・登録のためのシステム作りを行う事業である「カンボジアにおける平和構築と包括的小型武器対策プログラム」を紛争予防・平和構築無償により支援しています。
 東ティモールは、長年の苦難を乗り越え2002年5月に独立を達成しました。アジアの新生国である同国の安定は、アジア地域全体の安定にも非常に重要であり、日本は、同国の開発と自立に向けた国づくりを支援しています。2002年5月の独立直前にディリで開催された第6回東ティモール支援国会合において、日本は今後3年間で6,000万ドルを上限とする支援を行うことを表明し、復興開発を中心に着実に実施しています。
 インドネシアのアチェ地域では、2002年12月9日、インドネシア政府と独立アチェ運動(GAM)との間で「敵対行為の停止」に関する合意が成立しました。日本は、これに先駆け、同年12月3日に「アチェにおける和平・復興に関する準備会合」を東京にて開催し、平和的解決への強い期待と和平達成後の同地域への復興・開発支援を積極的に行う用意があることを表明しました。日本がイニシアティブを発揮して開催された本件会合は、紛争当事者間の和平合意に向けた努力を後押しする上で大きな役割を果たしました。また、2003年1月に行われた第12回インドネシア支援国会合では、日本はアチェにおける和平プロセスを促進・支援するため総額620万ドルの資金協力のほか、技術協力を実施する旨表明しました。このうち、2002年度に日本は、アチェに対し食糧援助及び敵対行為停止モニタリング監督支援を行うとともに草の根・人間の安全保障無償による支援等を行っています。

カンボジアの小型武器廃棄式典で武器が焼却される様子
カンボジアの小型武器廃棄式典で武器が焼却される様子

コラムIII-5 イスラエル・パレスチナ双方遺族による和解のためのワークショップ支援

図表III-14 対人地雷問題に関連する支援実績の割合

対人地雷問題に関連する支援実績の割合


 しかしながら、その後、アチェにおける敵対行為の停止の枠組みは崩れ、インドネシア政府はアチェ地域について2003年5月に非常軍政事態宣言を発しました。以来、同地域においては、インドネシア治安当局とGAMとの衝突が増加するなど同地域の和平プロセスは停滞状況にあります。紛争の活発化に伴い、外国の援助関係者のアチェへのアクセスも制限されているため、住民に対する支援も届きにくい状況が続いていますが、日本としては、インドネシアの領土の一体性の下でのアチェ問題の平和的解決を引き続き支持しており、これに向けた必要なあらゆる側面支援を行う考えです。
 フィリピンのミンダナオ地域は、1970年代以降、様々な反政府勢力により紛争が続き、貧困問題が深刻化するとともに、テロの温床となっています。そのことが、フィリピン全体の投資先としてのイメージの悪化を招くなど、フィリピン全体の経済発展の妨げとなっています。
 このような状況に対し、フィリピン政府は、2001年6月、ミンダナオ地域に拠点を置くモロ・イスラム解放戦線(MNLF)との「和平に関する合意」に署名しましたが、2003年2月以降、軍事衝突が激化するなど未だ最終的な和平に至っていません。また、依然として過激派組織アブ・サヤフ・グループ等の関与が疑われる武装蜂起やテロ事件が発生しており、同国政府は、掃討作戦を展開しています。
 日本は、2002年12月のアロヨ大統領訪日に際し、ミンダナオ地域の貧困の脱却と和平交渉や平和の定着に貢献するため「平和と安定のためのミンダナオ支援パッケージ」に基づき、中長期的な視野に立って持続的な支援を行っていくとの方針を発表しました。このパッケージの下、日本は、2002年度に円借款により、「ムスリム・ミンダナオ自治地域平和開発社会基金事業」や「中部ミンダナオ道路整備事業」への資金供与を決定したほか、ムスリム・ミンダナオ自治地域の知事及び幹部行政官20名を招へいし、日本の協力の方向性について協議するとともに、日本の地方行政を紹介するなどの支援を実施しました。
 最後に、日本の地雷対策支援について説明します。カンボジアやアフガニスタンのような長年の紛争に苦しんだ地域を中心として埋設されている地雷は、子どもや一般市民などの非戦闘員に対しても無差別な被害を与え、人道上極めて大きな問題であるとともに、復興と開発への大きな障害となっています。
 日本は、1998年に「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱し、世界の地雷除去・犠牲者支援のため98年よりむこう5年間を目途に100億円程度の支援を行う旨表明し、2002年10月末で支援総額は100億円を超えています。日本は、今後とも世界からの地雷廃絶を訴えていくとともに、対人地雷対策支援を引き続き実施していきます。
 また、2002年8月よりは、対人地雷のみを処理する車両や地雷探知機については、武器輸出三原則等の武器の定義に当たらないとして、その輸出に際し許可を必要としないこととしています。



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