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(2)防災と災害復興
日本は、数多くの自然災害を経験しており、災害予防、災害復興の両面においても日本の知見と技術を生かした援助を実施しています。そのため、関係省庁をはじめとする連携体制を整備しています。2002年度には、有償、無償資金協力を合わせて413億円(注)の資金を供与しました。
図表III-15 災害分野の援助実績

事前の対策による被害の最小化を図ることを目的とする防災対策では、台風、洪水、土砂崩れ、地震、火山噴火などの自然災害に対する脆弱性を排除するため、幅広い支援を行っています。また、日本は、台風や地震など災害が頻発する脆弱な国土において培った高い技術や豊富な経験を基に、特色ある貢献を行っています。防災対策における2002年度の実績は、無償資金協力としてバングラデシュにおける大規模洪水により流失した橋梁を架け替える「地方道路橋整備計画」、過去10年間で最悪の干ばつに見舞われ、1,300万人が深刻な飢餓に直面しているマラウイ、ザンビアなど南部アフリカへの食糧支援、などの協力を行っています。技術協力による防災分野の人材育成では、中南米の防災関連人材の育成として、日本の防災システムの紹介や各国の防災問題の把握等を目的とした研修員受入を阪神淡路大震災の経験を有する兵庫県の協力も得つつ実施しています。また、開発途上の地震国から研究者や技術者を招いて地震学・地震工学の研修を行う「国際地震工学研修」を国土交通省及び独立行政法人建築研究所とJICAが協力して実施しており、これまでに40年以上の実績を有しています。この研修を終了した研修生の多くは、自国の地震学・地震工学の分野で活躍しており、日本と世界の地震多発地域を結ぶ人的ネットワークの一員となり、大地震発生時の情報収集などにおいて重要な役割を果たしています。その他にも、アジア地域の災害対応能力の向上を目的としてアジア各国政府、アジア防災センター、国連人道問題調整事務所(OCHA)神戸オフィスと共同防災プロジェクトを実施しています。この関連で、パプアニューギニアに対しては、過去の津波の教訓を活かした住民啓発を実施しており、その後の津波被害では1名の死者も出さずに済むなど大きな成果をあげています。2002年度は、バングラデシュの「早期警報システム研修プロジェクト」及びラオスの「メディア関係者防災研修プロジェクト」の2件を実施しました。
災害復興に関しては、日本は海外における大規模な災害に迅速に対応するため、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(注)の下、医療関係者、救助、災害復旧の専門家を含む人員を速やかに派遣する国際緊急援助体制を整備しています。2002年度の支援実績は、緊急援助隊派遣が2件(専門家派遣、合計11名)、物資供与が22件であり、総額約2億9,700万円となっています。また、被援助国からは、日本の緊急援助活動に関して数々の謝意表明を頂いています。(援助実績及び謝意表明の詳細は、資料編参照)。
また、被災国の効果的な復旧に貢献するため、日本は、被災国における緊急復興計画を策定するとともに緊急的ニーズのあるリハビリ事業を実施する緊急援助調査を開発調査の一環として整備しています。この調査により、現地のニーズに即した臨機応変かつ迅速な事業の実施が確保されるとして被援助国から大変高い評価を受けています。