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(5)薬 物

 近年、「黄金の三角地帯」(注1)をはじめとするアジア地域では、合成薬物問題の深刻化に加え、国際的薬物犯罪組織による密輸が巧妙化しており、薬物問題が日本へ及ぼす影響は計り知れません。このような状況に加え、人間の生存・生活・尊厳に対する脅威から個々人を守り、人間の自由と可能性を確保するため人間一人ひとりに注目するという「人間の安全保障」の視点からも、日本は国際社会における薬物問題を重視しています。
 薬物対策は、先進国及び途上国双方が優先すべき課題として取り組み、関係国際機関を含めた国際協力の下に対策を進めていくことが重要です。日本の取組としては、薬物関連の国際会議(注2)への積極的な関与や国連薬物統制計画(UNDCP)への資金拠出をはじめとする国際機関との協調を強化するとともに、二国間ODAにより薬物対策に関する途上国の努力を支援しています。
 2002年度の日本の薬物対策支援は、地域別に見ると、インドシナ地域への支援が大半を占めており、その他薬物問題を抱える中南米などが主な支援対象国・地域となっています。また、2002年度に実施した支援では、インドシナ地域に広く裨益するプロジェクトを実施していることも特徴の1つです。
 日本のODAによる薬物対策への協力は、薬物の需要と供給の削減、犯罪防止や取締り能力向上への支援を中心とした実効的な支援を行っています。
 需要削減への取組では、技術協力に加え、国際機関及びNGOが行う活動を通じて薬物関連の住民啓蒙教育や中毒者のリハビリ・職業訓練などの支援を実施しています。
 供給削減への取組は、けしや大麻栽培の背景に農村地域の貧困問題があることを考慮し、薬物の対価に頼ることなく生活できるよう農村開発に重点を置いています。具体的には、潅漑施設整備や代替作物栽培支援など麻薬生産地域の住民の生活向上に直結する協力を行っています。
 また、犯罪防止や取締り能力向上への支援としては、技術協力による薬物鑑定技術の移転、その他法整備支援などの人材育成を中心に行っています。
 2002年度の具体的な支援を紹介すると、タイにおける「薬物対策地域協力プロジェクト(技術協力プロジェクト 2002年~2005年)」では、同国の薬物統制委員会事務局(ONCB)に対して薬物製造拠点の特定に必要な薬物鑑定・分析技術の移転を行っています。このプロジェクトでは、タイを拠点として他のインドシナ諸国(ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオス)に対する技術移転を行っており、インドシナ地域における薬物対策に広く裨益するプロジェクトとして、今後の成果が期待されます。



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