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本編 > 第III部 > 第2章 > 第1節 > 2.経済・社会インフラへの支援 > (1)運輸インフラ


2.経済・社会インフラへの支援

 日本は、途上国の持続可能な貧困削減を実現するためには、社会開発とともに持続的経済成長の確保が不可欠と考えています。また、戦後復興を遂げた日本では、インフラ整備を通じた産業の発展を図ることが国づくりの基本であった時代があり、この経験をアジア地域でも再現しようとするアプローチが日本の援助の原点でもありました。このような考え方から、日本は、経済基盤整備、法制度整備、人材育成といった経済分野への支援を通じて貿易・投資を促進させることや、民間セクターの育成及び技術移転の促進を通じ、被援助国の経済成長を支援することを重視しています。日本は、このような経済成長促進策を図りつつ、経済成長の成果が貧困地域や貧困層へ波及するような方策も併せて考慮しながら経済・社会インフラ整備を実施してきています。
 経済・社会インフラ支援には、港湾や道路などの運輸をはじめとして、通信、エネルギー、河川・潅漑施設や都市・農村の生活環境等の整備があげられますが、エネルギーについては第III部2章1節4-(4)で、また、河川及び潅漑整備については第III部2章1節1-(4)の「水と衛生」の部分で説明しています。ここでは、運輸インフラ、通信インフラ、都市・農村の生活環境の整備などについて説明します。

(1)運輸インフラ

 運輸インフラは、道路、鉄道、港湾、空港等の大規模かつ長期的な経済効果が見込まれるものが多いことから、日本の支援は資金協力では有償資金協力(円借款)の割合が高くなっており、2002年度の運輸分野の実績は、円借款が1,237億円(円借款に占める割合は45%)、無償資金協力が約270億円(一般プロジェクト無償全体に占める割合は26.9%)となっています。
 既に第I部2章1節4-(1)でも紹介したメコン地域開発では、2002年度に供与を決定したラオスに対する「国道9号線改修計画(無償資金協力)」の支援をはじめとして、これまでにもインドシナ地域の経済発展のために同地域を横断する「東西回廊」または「第二東西回廊」の様々なインフラ整備(道路、橋梁、港湾、トンネル等)を実施してきています。これらの支援では、プロジェクトの早い段階から外務省、国土交通省などの関係省庁が連携しつつ、プロジェクト形成調査、開発調査、専門家派遣などが進められており、日本の経験や技術を生かした効果の高いプロジェクトが実施されています。また、日本の支援により2002年に完成したカンボジアのメコン架橋は、日本語の「きずな」橋という名前がつけられており、域内の経済連携強化を体現しているのみならず、域内の絆とともに日本とメコン地域との絆を深化するシンボルになっているとも言えるでしょう。

きずな橋(カンボジア)
きずな橋(カンボジア)


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