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4.「重点地域」-何(どのような地域・国)に対してODAを行うのか-

 新しいODA大綱でも旧ODA大綱に引き続き重点地域をアジアとしています。その理由としては、[1]アジア地域は日本にとり、近隣諸国として歴史的にも密接な関係を有するのみならず、地政学上、安全保障上重要な地域であり、また経済的な相互依存関係が近年急速に強まっているなど、政治・経済・文化等様々な面で密接な関係にあること、[2]世界の中で特にめざましい成長を遂げた地域であり、その経済の発展と維持は世界経済の発展のために重要であること、[3]南アジアを中心に依然として世界最大の貧困人口を抱えている地域であること、などが挙げられます。ただし、アジアを重点地域と位置づけてはいるものの、同地域の経済社会状況の多様性、援助需要の変化に十分留意して戦略的に重点化を図るとしており、アジアに対して無条件に援助をしていくというわけではありません。
 また、アジアを重点地域にするということは、決してその他の地域に対する援助を軽視するということではありません。例えば、アフリカは、多くの後発開発途上国(LDC)が集中し、紛争やHIV/AIDSなど深刻な課題を抱えており、最も貧困が拡大している地域です。日本は、1993年より10年にわたりアフリカ開発会議(TICAD)プロセスを推進し、一貫して国際社会にアフリカ問題への取組の重要性を訴え続けており、2003年9月末にはTICADIIIを開催しました。これは日本の経済協力が決してアジア一辺倒ではないことの証左です。新しいODA大綱は、その他中東、中南米、大洋州に関してもそれぞれ記述を行っています。

(1)ASEAN諸国

 ASEAN諸国に対しては、日本の二国間ODAの約30%が実施されており、ASEAN諸国が受けとる二国間ODAの約60%が日本からのものとなっています。ASEANなどの東アジア地域については、近年、経済的相互依存関係が拡大・深化する中、統合を強化することにより地域競争力を高める努力を行っており、日本としては、同地域との経済連携の強化などを十分に考慮し、ODAを活用して、関係強化や域内格差の是正に努めています。

日・ASEAN特別首脳会議の様子(写真提供:内閣広報室)
日・ASEAN特別首脳会議の様子(写真提供:内閣広報室)

囲みI-6 メコン地域開発

 2003年12月11日及び12日の両日にわたり、東京において開催された日・ASEAN特別首脳会議は、ASEAN域外で初めて開催された首脳会議となり、日・ASEAN関係の成熟を内外に示す画期的な会議となりました。同会議では、日本がODA事業において引き続きASEAN諸国に優先度を与えていくとともに、日・ASEAN協力の3つの重点分野(ASEAN統合強化のための協力、投資促進を含むASEAN諸国の経済競争力強化のための協力、テロ・海賊及びその他の国境を越える問題を解決するための協力)を示し、これら3分野を推進する必要条件として、ODAをはじめとする様々なスキームを活用して7項目(政策・制度形成及び行政、産業/エネルギー、教育、地球規模問題への取組、コミュニティの能力向上、地域格差是正、情報通信技術)にわたる人材育成を推進することを発表しました。支援規模としては、今後3年間で15億ドル以上の協力を想定しており、また、同期間に約4万人規模の人的交流プログラムを予定しています。

コラムI-8 中国のSARS対策に対する支援

 ASEANは、開発が相対的に遅れている国の新規加盟(1995年のベトナム、1997年のラオス、ミャンマー、1999年のカンボジア)により10か国の構成となったことにより、加盟諸国間の経済的格差の是正が大きな課題として浮上しています。このため、新規加盟国のASEANへの統合を推進するためにASEAN統合イニシアティブ(IAI)の一層の推進が確認されるとともに、地域協力の一層の推進(メコン地域開発の推進や東ASEAN成長地域(BIMP-EAGA:Brunei Indonesia Malaysia Philippines- East ASEAN Growth Area)の再活性化に向けた積極的な取組)について話し合われました。メコン地域開発に対しては、経済協力と貿易・投資促進を統合する形で協力を拡充すること、今後3年間で約15億ドルの協力が見込まれることを表明しました。
 また、ASEAN諸国の中には既にOECD-DACのODA対象国から卒業した国(シンガポール、ブルネイ)や、比較的経済発展の進んだ国(タイ、マレーシア)もあり、経済発展に関する様々な経験・知識が蓄積されてきています。そのため、日シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP:Japan Singapore Partnership Program)に加えて新たに日タイ・パートナーシップ・プログラム・フェーズ2(JTPP2:Japan Thailand Partnership Program 2)や日・インドネシア・パートナーシップ・プログラム(JIPP:Japan Indonesia Partnership Program)が締結される等それら諸経験に基づいてASEAN域内・域外の双方にわたる積極的な南南協力を進めることが合意されています。


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