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6.政策の一貫性
途上国における開発政策を進めるには、先進国の援助額の拡大を追求するだけでは、必ずしも効果的な結果にはつながらず、先進国側の国内政策、すなわち、貿易政策や農業政策を含めて議論する必要がある、との認識が高まってきています。たとえば、先進国内の農業に対する補助金の総額は、援助の総額をはるかに上回っており、農業補助金が途上国の一次産品輸出を圧迫しているといった主張が途上国側からなされています。
OECDは、この問題に先進的に取り組んでおり、国際的な開発目標を達成するために、貿易、投資、農業、保健、教育、環境、開発協力といった分野間の相互の関係はどうあるべきかについて、分析作業に着手しました。また、米国のシンクタンクは、先進国の政策一貫性の現状を指標化する研究(開発コミットメント指標)を行っています。
日本は、開発を統合的な視点から捉えるべきであるとの考え方であり、例えば、新しいODA大綱の重点課題においては、ODAとOOFの連携強化による経済成長の促進が取り上げられています。これは政策一貫性の問題への取組の一環です。また、日本は、政策意思決定にあたり、常に関係各省間で十分な協議を行い、一貫した政策をとる努力を行ってきています。政策一貫性の問題への取組においては、農業問題、貿易や投資との連携のみならず、開発と安全保障などの関係も検討すべきであると考えています(II部2章1節2-(1)参照)。
こうした考えに基づき日本は、WTOなどにおける議論も踏まえ、前述の通り、一定のLDC産品の無税・無枠の拡大を行い、途上国の貿易機会の拡大に大きく寄与しています(II部2章2節3参照)。また、OECDにおいて投資と援助の相乗効果を高めるためのイニシアティブ(「開発のための投資」プロジェクト(II部2章2節3~参照))を主導するなど、政策一貫性の問題にも積極的に取り組んでいます。