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2.先進各国のODAへの積極的取組

 1990年代後半に入り人間を開発の中心に置き、貧困層の貧窮化を阻止することが国際的に共有される目標となりました。この背景には、主として先述のように各国の長年の努力にも関わらず貧困問題が解決されず、グローバル化の進展によりますます深刻化しているとの事実があります。特に、1980年代においては、世界銀行・国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の主導により、多くの途上国で市場経済メカニズムに依拠する構造調整政策(注1)を通じた開発手法が採用されましたが、多くの途上国で構造調整政策が順調に進まなかったのみならず、貧困の状況が悪化したことは、そうした開発手法の転換を迫るものでした。その反省から1990年代は貧困に対する関心が高まり、1995年の「世界社会開発サミット」では、人間中心の社会開発を目指し、世界の絶対的貧困を半減させるという目標が提示されました。続く1996年にはDAC新開発戦略*1において国際開発目標(IDGs:International Development Goals)が採択され、そこでも2015年までに極端な貧困人口の割合を半減させるといった目標が掲げられました。この流れは、2000年に開催された国連ミレニアム・サミットにも引き継がれ、IDGsを発展的に統合したミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)がまとめられました。このMDGsは国際社会から幅広く支持されており、その実現に向けた取組が強化されています。
 特に、2002年3月にメキシコのモンテレイで開催された開発資金国際会議では、貧困削減、持続的な経済成長、持続可能な開発の促進が世界共通の目標として再確認され、MDGs達成に向けて先進国と途上国が協力して取り組んでいくことが確認されました。1990年代に多くの国で見られた「援助疲れ(注2)」の現象から一転、米国の同時多発テロが前年に起ったこともあり、「貧困がテロの温床になり得る」といった認識から、会議の前及び会議の際に米国、EU(:European Union)諸国、そしてカナダ等はODAの増額を発表しました。また、英国の国際開発省(DFID:Department for International Development)やドイツの経済協力開発省(BMZ)などにおいても貧困削減を重点援助課題とする動きが活発化してきました。日本も従来からODAを通じて貧困問題に対する取組を行っていましたが、このような国際的な流れを踏まえ、その取組を更に明確化することが必要となってきました。

テールデゾーム女性職業訓練及びストリート・チルドレン識字・情操教育学校用機材供与計画(コートジボワール・草の根・人間の安全保障無償)
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