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ColumnII-6 ベトナムにおける援助協調への取組

 ベトナムにおいては、次のように「国際社会に向かっての発信・関与」と「より一層効果的・効率的援助を目指しての援助のやり方の改善」の双方を視野に入れて、援助協調に積極的に対応してきています。
 PRSPへの積極的関与
 PRSPは、援助協調のベースとなる重要な文書です。ベトナムにおいては、2002年5月に「包括的貧困削減成長戦略」(CPRGS)という文書としてPRSPが成立しましたが、日本は、JBICの調査研究などによって、この策定過程に積極的に関与するとともに、大規模インフラの役割に着目してCPRGSを拡大するためのイニシアティブをとりました。この日本の提案に沿う形で、大規模インフラの役割を記述したCPRGSの追加章が2003年11月に完成し、同年12月の対ベトナム支援国会合においてベトナム側から追加章の完成が報告されました(II部2章2節1参照)
 他の援助国・国際機関との協力・協調の積極的展開
 援助協調へ的確に対応するためには、他の援助国・国際機関との密接な協力・協調を行うことが不可欠です。日本は、世界銀行の提唱した「包括的開発枠組(CDF)」の下で形成されたパートナーシップグループ(貧困タスクフォース、運輸セクター、中小企業・民間セクター育成、ホーチミン市のODA計画・実施能力強化についての各グループ等)への積極的参加を通じて援助協調に大きく貢献してきています。また、個別の援助国・国際機関との関係では、世界銀行やアジア開発銀行との協力・協調に加え、英国(DFID:国際開発省)との協力・協調に力を入れてきています。英国は、援助アプローチなどの面で日本と対極に立つ援助国であると思われてきましたが、実際に対話を行ってみると共通点も多いことが分かりました。そこで、ベトナムにおける日英それぞれの現地チームは、貧困削減と経済成長、大規模インフラの役割、援助効果向上などの双方の関心事項について意見のすり合わせを行うとともに、具体的な協力の推進を図り、双方にとって有益な成果を挙げました。2003年4月に、東京で日英援助政策協議が行われた際には、ベトナムにおける日英の現地チームは、こうした協力関係について「共同の討議サマリー」という文書を作成した上で、双方の代表者による共同プレゼンテーションを行い、関係者の間で大きな反響を呼びました。この協力関係を更に強固なものとするため、2003年10月には、日本の外務省経済協力局長とDFID次官がベトナムへの共同訪問を行い、日英間の協力が、双方の得意分野の相違から相互補完が可能なこと、双方の立場の強化につながること、援助全体の協調体制の強化につながることなどの意義が両国の間で確認されました。日英のパートナーシップは、「対極に立つと思われていた援助国間の協力」として、ベトナム政府、関係援助国、機関のみならず、OECD-DAC等の国際的フォーラムにおいても高く評価され、注目されています。
 援助効果向上への積極的取組
 援助効果向上は、援助協調における最もホットな話題の1つです。ベトナムにおいて、日本は、次の通り多角的な取組を行うことによって、援助効果の向上に努めています。
 ・JBICの世界銀行、アジア開発銀行などの国際金融機関との手続きの調和化(II部2章2節5-(2)-(ハ)参照
 ・贈与型援助の援助効果向上のためのベトナム政府との協議
 ・開発援助を被援助国の開発計画に沿ったものとするための「政策マトリクス」策定の提案
 ・ベトナム政府の調和化行動計画の策定への協力
 ・ODAマネージメント向上のための能力構築に向けた協力
 ・国際的な討議の推進(2002年1月、10月にハノイにおいてワークショップを関係機関と共催)


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