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ColumnII-7 開発コミットメント指標とそれに関する日本の反論

 2003年4月、ワシントンのシンクタンクが、途上国開発に対する先進国の取組を6つの分野(援助、貿易、投資、移民受入、平和維持活動、環境)について指標化し、ランク付けする論文を米国の「フォーリン・ポリシー」誌に発表しました。このなかで日本は、総合点で先進21か国中最下位とされました。
 先進国の開発政策の効果を測定し、比較する手法については、様々な方法が試みられているものの、手法が確立されたとは言えない状況にあります。しかし、著名なシンクタンクによるランキングが権威ある外交専門誌に掲載された以上、誤解の広がりを防ぐためにも、日本としては問題点を指摘する必要がありました。そこで、外務省は、同ランキングにおいて用いられた指標の問題点を指摘しつつ、同誌に反論文を発表しました。
 主な反論のポイントは、次の通りです。
 ・評価の対象項目の選択基準が不明確
 評価対象としての上記の6分野には、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)でも議論の対象となっていないものが含まれており、逆に途上国開発にとって重要な技術移転、平和の定着やエイズなどの地球規模の問題に対する貢献は、評価の対象項目に含まれていない。
 さらに、6分野はすべて同じでウェートで単純に合算されているが、それぞれが開発に与える効果は同一ではない。
 ・各分野ごとの評価方法にも疑問
 評価において、各国の多様性が無視されているが、どの国も異なるアプローチをとり、比較優位に基づいて途上国の開発に取り組んでいる。ところが、本評価では、貧困国への無償援助は高く評価される一方で、途上国への貸し付けに対する評価は低く、円借款が不利な扱いを受けている。
 しかし実際には、円借款は、低利で長期の開発資金を提供し、アジアをはじめ途上国の自助努力を支え、その経済発展に大きく貢献してきた。また、援助額から過去の借款の利払い額を差し引く計算方法は、DACなどでも一般的ではなく、合理的な根拠がない。したがって、同論文が採用した援助の評価手法には疑問をもたざるをえない。
 近年、日本のODA予算は厳しい経済・財政状況のなか、削減が続いています。日本政府の担当者は、ODA改革によって援助の効率化を進めながら、貧困の削減、平和の定着、人間の安全保障などの課題に戦略的に取り組んでいこうと考えています。もとより、自らが行う援助について、自省しながらたゆまぬ改革を進めることは大切ですが、同時に、このような日本の努力が正しく評価されるよう広報に努めるとともに、国際的な開発論議にも積極的に参加していくつもりです。



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