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ColumnIII-1 インドネシアにおける母子手帳の導入

 インドネシアの妊産婦死亡率と乳児死亡率は、近年減少の傾向にありますが、2002年においてもそれぞれ226人(対出生10万人)、42人(対出生1,000人)と依然高い状態が続いています(日本では、妊産婦死亡率が3人、乳児死亡率が9人)。安全な出産と子供の健やかな成長を守るためには、母子保健サービスの充実はなくてはならないものです。また、妊産婦の健康の改善、乳幼児死亡率の削減はミレニアム開発目標(MDGs)に盛り込まれています。
 日本はJICAを通じて1989年から「家族計画・母子保健プロジェクト」(~94年)を行い、中部ジャワ州をモデル地区として妊産婦・乳幼児に対する保健衛生の質の向上、それを支援するサービスの強化に力をいれてきました。そのプロジェクトの中でJICAの研修生として日本を訪れた州保健局の担当官(インドネシア人医師)の目にとまったのが日本の母子手帳でした。日本で有益に活用されている母子手帳をインドネシア国内で普及させることにより、お母さんと生まれてくる赤ちゃんが安全で健康な生活を送れるようにと考え、「インドネシア版母子手帳」の開発が進められることになったのです。
 中部ジャワ州で試験的に作られ配布された母子手帳は大変評判が良く、全国各地に広がっていきました。こうしたインドネシアでの動きを受けて日本は1998年に母子保健手帳活動を通じて母子保健サービスの改善を目指した「母と子の健康手帳プロジェクト」(~2003年)を開始しました。現在、健康手帳はインドネシアにある30余りの州のうち26州まで広がりを見せるとともに、今までにインドネシア保健省を通じて約222万冊もの健康手帳が配布されています。これらはそれぞれの地域の文化や習慣を考慮し州ごとに表紙を変えたり、なるべく難しい医療用語を使わずにイラストを多用して文字を読めないお母さんにもわかりやすいものにしたりするなどの工夫がなされており、好評を得ています。加えて、妊娠中のお母さんに健康手帳の使用を奨励する保健大臣令の発令(2004年予定)や開発援助を行う国際機関や他の援助国も手帳の印刷費を支援するなど、日本の経験、知見を活用した援助がインドネシアの内外から高い評価を得ています。
 インドネシアにおいて、母子健康手帳を全国各地に普及させることのできた裏には、数多くの日本人の専門家や青年海外協力隊が現地のインドネシア人と協力してきた地道な努力がありました。今後も日本は、インドネシアが自分達の力で母子健康手帳の配布を進め、母子保健の分野で状況を改善することができるよう支援を行っていきます。

日本人専門家によるモニタリングと母子手帳の説明(西スマトラ州)
日本人専門家によるモニタリングと母子手帳の説明(西スマトラ州)

母子手帳を持って妊産婦検診を待つ妊婦達(北スラベシ州)
母子手帳を持って妊産婦検診を待つ妊婦達(北スラベシ州)



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