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第3節 国民参加型援助の推進
Point
1.NGOや地方公共団体等との連携強化のため、本邦や在外公館での定期協議会を実施。
2.人材の発掘・育成・活用のため、各種の施策を実施。また、小中学校における開発教育を充実。
3.情報公開・広報のため、メールマガジンを発行し、タウンミーティングを開催。
(1)NGOや地方公共団体等との連携
NGOを始めとした市民社会による援助活動は、途上国の地域社会や住民に密着したきめ細かい効果的な援助を可能とするだけでなく、緊急人道支援で迅速かつ柔軟な対応を可能とすることから国際社会においてますます重要となってきています。
政府としても、このようなNGO等による活動の利点とNGOの存在と役割の高まりを認識し、「開かれた外務省のための10の改革」において、NGOとの連携の強化が外務省の主要方針の一つとして掲げられました。そのほか、NGOとの関係強化は、一連の改革において常に主要な論点となっており、「第2次ODA改革懇談会」や「変える会」の提言においてもNGOとの連携の強化の必要性が謳われています。
このような動きを踏まえ、「ODA改革・15の具体策」と「外務省行動計画」の中では、NGOとの連携強化の具体策として、[1]現行のNGO・外務省定期協議会の機能強化、[2]在外公館とNGOとの定期協議(「ODA大使館」)の実施、[3]NGOの能力形成やその活動を支援するための日本NGO支援無償資金協力及び草の根技術協力の導入が挙げられました。
まず、このうちNGO・外務省定期協議会については、96年以来、基本的に年4回の頻度で実施してきましたが(その他、財務省は97年から、JICAは98年から、またJBICは2001年から同様の取組を実施)、今後協議の形態を全体会議に加え、ODA政策協議とNGO・外務省連携推進に関する2つの小委員会を設立し、全体会議を年2回、2つの小委員会を各3回開催することとしました。小委員会については、NGO・外務省連携推進小委員会第1回会合を11月に、またODA政策協議小委員会第1回会合を12月にそれぞれ開催しました。
ODA大使館については、わが国NGOが比較的多く活躍する開発途上国において、わが国大使館、JICAやJBICの海外事務所とNGOとの間で2002年度より開始し、これまでに、カンボジア、バングラデシュ、ケニアなど11か国において実施しました。
次にNGOの活動を支援するための資金協力形態としては、2002年度に、従来の国内外のNGO活動等を対象とした草の根無償資金協力のうちわが国NGOを対象とした部分とわが国NGOを対象としたNGO緊急活動支援無償資金協力の両制度を統合し、日本NGO支援無償資金協力(予算額20億円)を創設しました。この形態では、従来認められていなかったNGO本部経費も一部支援対象としたほか、全対象事業について外部監査を義務づけるなど、NGO側のより一層の説明責任も求めています。同資金協力により、2002年9月にジャパン・プラットフォームに対し6.1億円の拠出を行ったほか、現在NGOの各種開発協力事業に対し支援を実施中です。また、JICAにおいても、2002年度より、従来のJICA事業のうち、「小規模開発パートナー事業」、「開発パートナー事業」及び「開発福祉支援事業」を整理・統合し、「草の根技術協力」を創設し(予算額9.52億円)、NGO等に対する支援の強化に努めています。
囲みI-33.草の根技術協力
さらに、外務省としては、わが国NGOが欧米諸国のNGOに比べ依然組織や活動基盤が脆弱であることを踏まえ、99年度より「NGO活動環境整備支援事業」を開始し、NGOの組織・専門性の向上を図るための諸施策を実施しています。その主要な施策としては以下の3つがあります。
[1] NGO相談員制度
市民からのNGOに関する様々な質問や相談等に応じられるよう全国各地の主要なNGOに相談員を配置。(2002年度には28団体に29名を配置)
[2] NGO専門調査員制度
NGOの組織運営や会計、開発事業等に専門的知識・経験を有する人材を個々のNGOに派遣し、NGOの機能強化や専門性向上を図る。(2002年度は15団体に15名を派遣)
[3] NGO分野別研究会
ODAの重点分野である「保健・医療」、「教育」、「農業」の3分野で活動するNGOが研究会の実施を通じてその専門性を高めるよう支援。
図表I-30 NGOとのパートナーシップ

以上に加え2001年度より、NGOの能力向上支援のため、国内及び海外での短期研修を実施しており、2001年度の海外研修については、米国国際開発庁(USAID)や米国のNGOの協力の下、日本のNGO職員を米国に派遣したほか、2002年度についても英国で同様の研修を実施しています。
地方自治体が行う国際協力活動については、姉妹都市を通ずる海外との友好・提携関係や海外移住などを接点として、研修員の受入れ、専門家の派遣、青年交流など人的交流を中心としています。これらの活動とODAが結びつくことはきめ細かな援助を行っていく上で有益であり、国民がODAを身近なものとして経験する機会を提供しています。これまで「地方公共団体補助金制度」に基づき、自治体が行う技術研修員受入れと専門家派遣事業などに対し、政府は財政支援を行ってきました(2001年度は、46都道府県と3政令都市の事業に対し、約7.9億円の補助金を交付)。また、JICAにおいては、本年度より導入した草の根技術協力の一環として、地方自治体からの事業提案に基づく国際協力活動を支援することとしています。さらに、JICAと地方自治体等とのパイプ役として各都道府県に配置した国際協力推進員を拡充し(2002年度:47名)、JICAが実施する事業に関する広報や、地方自治体による国際協力事業との連携等の促進に努めています。
人物I-2.五月女(さおとめ)光弘NGO担当大使
また、円借款の実施機関であるJBICは、NGO、地方公共団体等に調査を依頼する「提案型案件形成調査」を2001年度に導入し、円借款事業の案件形成に国民の知見やアイデアを幅広く採り入れるように努めています。2002年度には、NGO、地方公共団体等を対象として、円借款事業の現地視察、途上国政府・NGOとの対話等を通じて円借款との連携可能性を探る機会を提供する「国民参加型援助促進セミナー」を導入し、国民参加の一層の促進に努めています。
さらに、2002年4月に策定した「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」では、事業への融資を決定する前に環境関連の情報を公開し、国民からの意見を積極的に反映することとしています。また、2002年7月より、通常より優遇された条件で円借款を供与し、調達条件を日本タイドとする「本邦技術活用条件」を導入して、わが国の民間部門が有する優れた知見・ノウハウ・技術の活用を図ることとしています。
図表I-31 地方公共団体等との関係
