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第10条法的側面
前回報告からの変更点として、警察留置場においても、本規約等の国際規則をも登載した六法全書の整備が進み、被留置者はいつでもそれを閲覧することができるようになった。
刑事拘禁施設における家族、弁護人との接見交通権
第3回報告のとおり、接見交通権は、憲法第34条前段及び刑事訴訟法第39条第1項において認められているものであり、現実の捜査においても被疑者・弁護人(及び弁護人になろうとするもの)の権利として十分に尊重されている。しかしながら、この接見交通の権利といえども、絶対的なものではなく、憲法の精神と抵触しない限りにおいては、制限を受ける。
弁護人との接見が制限される場合としては、刑事訴訟法第39条第3項に基づく接見指定権の行使によるもの、及び被疑者を勾留している施設の管理上の必要に基づくものとがある。
- (a)刑事訴訟法第39条第3項に基づく接見指定権の行使
「検察官、検察事務官及び司法警察職員は、捜査のため必要があるときは、 公訴の提起前に限り、第1項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。」とする同法第39条第3項の規定に基づき、捜査のために必要がある場合に、検察官等が、接見の申出に対し、接見の日時等を指定するものである。ただし、同項は、更に「その指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」とも定めている。
この規定は、被疑者の防御権と捜査とのバランスを考えて設けられたものであり、最高裁判所は、1978年7月10日の判決において、捜査機関による接見等の日時等の指定は、必要やむを得ない例外的措置であり、弁護人等から被疑者との接見の申出があったときは、原則として何時でも接見の機会を与えなければならず、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要がある等捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防御のため弁護人等と打ち合わせることのできるような措置を取るべきである旨判示し、さらに、1991年5月10日及び同月31日の両判決において、上記にいう捜査の中断による支障が顕著な場合には、捜査機関が、弁護人等の接見等の申出を受けた時に、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせているというような場合だけでなく、間近い時に右取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の必要とする接見等を認めたのでは、右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合も含むものと解すべきである旨判示している。
さらに、実際の運用においては、被疑者の防御権を不当に制限しないよう十分配慮がなされている。
すなわち、検察官による接見指定の実務においては、検察官は、接見指定を行う可能性のある事件について、あらかじめ施設の長に対し、接見指定を行うことがある旨の通知書を発することとしているが、多くの場合は、弁護人は電話等により検察官との間で接見の日時等の協議を行い、適正に接見が行われているほか、当該通知のあった事件について、弁護人が直接施設に赴いて被疑者との接見を求めたときでも、係官は検察官に連絡を取り、検察官が接見指定の要否を上記の最高裁判例の趣旨に従って判断し、接見指定を行わないか、あるいは接見時間のみについて指定を行う場合は、弁護人と被疑者を直ちに接見させる取扱いとしている。
なお、検察官等による接見日時等の指定については、その処分の適法性について、被疑者側から裁判所に対する不服申立が可能である。
- (b)施設管理上の必要
施設管理上の必要性について、前回報告で述べたとおり、例えば、監獄が、緊急の必要性のない深夜の接見を拒否するような場合であり、施設の人的及び物的条件が有限である以上、当然に認められる制約で、やむを得ないものである。
なお、監獄法施行規則第122条は、接見は行刑施設の執務時間内に限るものとし、施設管理上の必要に基づく弁護人接見の制限を認めている。しかし、休日においても、緊急の必要性がある場合、弁護人接見の訴訟手続上果たす重要な役割にかんがみ、一定の条件で接見を認めることとしている。これは、前回の本報告書提出の後、法務省と日本弁護士連合会との間で協議を遂げて、このような取扱いをすることとなったものである。
また、警察留置場においては、被留置人と弁護人等との接見交通権の重要性に鑑み、日曜日、休日その他留置場の執務時間外においても、できるだけこれに応じるようにしており、この問題についての弁護人等とのトラブルは最近ほとんどなくなっている。矯正施設における処遇状況
- (a)受刑者の処遇
我が国の行刑は、受刑者の矯正及び社会復帰を目的としている。具体的には次のとおりの処遇が活発に行われており、受刑者が出所後一定期間内に再犯を犯し、処罰される割合は、徐々に低くなっている(出所後5年以内の間に再収容された者の割合は、1984年に出所した者の場合、50.6%であったのが、1986年、1988年に出所した者の場合は、それぞれ47.4%、45.3%と徐々に低くなっており、出所後3年以内の間に再収容された者の割合は、1984年に出所した者の場合、44.8%であったのが、1986年、1988年、1990年に出所した者の場合は、それぞれ41.9%、38.9%、38.0%と徐々に低くなっている。)。
- (i)刑務作業
刑務作業は、受刑者の矯正及び社会復帰を図るための重要な矯正プログラムの一つである。これは、受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより、その心身の健康を保持し、勤労精神を養成し、規律ある生活態度並びに共同生活における自己の役割及び責任の自覚を助長するとともに、職業的知識及び技能を付与することにより社会復帰を促進することを目的としている。
特に刑務作業の一態様としての職業訓練は、受刑者に対し免許や資格を取得させることを目的としており、その種目は、溶接、建設機械、理容、美容、コンピュータープログラマー養成を目的とした情報処理等約40種目に及んでいる。
この職業訓練の結果、労働省指定のガス溶接技能講習終了者、厚生大臣指定の理容師、通産省指定の情報処理技術者等の免許又は資格が取得されており、受刑者の社会復帰に大いに役立っている。ちなみに、1994年度の免許又は資格の取得者は2,339人に達している。
刑務作業は一般の民間企業とほぼ同様の作業時間、作業環境、作業方法等で実施されており、「週休2日制度」をとるほか、その作業時間は1日8時間、週40時間と定められている。これは日本の中堅企業とほぼ同じ条件である。また、所内では、一般の民間企業を対象とした労働省の定める労働安全衛生法に準じた「刑務作業安全衛生管理要綱」により、各種の刑務作業上の事故防止策がとられており、災害率は民間工場に比べて低いものとなっている。受刑者は、作業時間中、雑談を禁止されるが、これも作業上の安全を確保するために必要な措置である。なお、作業上必要な会話は許可されているほか、休憩時間中は会話は禁止されていない。
刑務作業が過酷な条件のもとで行われているものではないことは、所定の作業に服する義務のない禁錮刑を言い渡された受刑者の約90パーセントが、自らの希望で懲役受刑者と同様の作業を行っていることからも明らかである。
- (ii)生活指導
受刑者に健全な心身を培い、遵法精神を養わせ、健全な社会生活を送るための知識や生活態度等を身につけさせるために、暴力団組織からの離脱指導、薬物関係受刑者に対する薬害教育等の生活指導を行っている。
- (a)暴力団組織からの離脱指導
暴力団関係受刑者を更生させるためには、暴力団組織から離脱させることが不可欠である。施設では、入所時から出所時に至るまでの全期間を通じて、関係組織から離脱するための個別相談及び指導並びにこれに伴う就職あっ旋援助を積極的に行っている。
- (b)薬物関係受刑者に対する薬害教育
覚せい剤等の薬物関係受刑者に対して、薬物が及ぼす身体的・社会的害悪を認識させ、遵法意識を喚起させる指導を行っている。例えば、密売事犯者と自己使用者に区分したグループを編成し、講話、集団討議、カウンセリング等の処遇技法を用い、指導効果を高めるようにしている。
- (iii)教科教育
受刑者の中には、義務教育を修了していない者あるいは修了していても学力が不十分な者も少なくない。これらの者に対しては基礎的な教科の補修教育を行っている。
義務教育未修了者は、施設内で就学義務猶予免除者の中学校卒業程度認定試験を受けることもできる。
- (iv)その他の教育的活動
その他、各施設において通信教育、部外協力者による指導、釈放前指導等を行っている。
- (a)部外協力者による指導
篤志面接委員等の民間の部外協力者が、受刑者各自が更生する上での問題点とその解決方法等について個別に助言・指導を行い、以後、必要に応じ継続して出所時まで指導に当たる方策である。これは人生経験が豊かで熱意ある民間の篤志家によって実施されるため、受刑者に感銘を与え、更生への意欲を高めるなど実効がある場合が多い。
- (b)釈放前指導等
受刑者の円滑な社会復帰のためには、施設内の生活と出所後の社会生活とのギャップをできるだけ少なくする必要がある。
それ故、釈放が近づいた受刑者に対し、ー定の期間、釈放準備のための集中的な処遇を行っている。具体的には、社会復帰後の就職に関する知識及び情報の付与、ー般社会における生活及び勤労の体験、保護観察制度その他更生保護に関する知識の付与、帰住及び生計の方途に関し必要な調整などを行っている。
この釈放前指導の内容の一部は、従前から、施設ごとにそれぞれの方法で行われていたものであるが、前回の本報告書審査の後、受刑者の社会復帰を目的とした処遇の重要性に鑑み、指導の期間を延長するとともに内容を一層充実させ、全国的に統一した基準で行うこととしたものである。
- (b)被収容者の生活
- (i)衣類・寝具
衣類・寝具は、受刑者には居室衣、作業衣、下着、蒲団、毛布、敷布等が貸与され、未決拘禁者は原則として自弁とされている。ただし、自弁できない場合には貸与されている。
- (ii)食事
食事については、すべての被収容者に、国から給与することを原則としているが、未決拘禁者については、本人が希望すれば外部から自費で食料を入手することができる。
給与される食事は、被収容者の性別、年齢、作業の内容等に応じ、健康及び体力を保つのに必要な熱量が確保されている。
被収容者の食料給与については、被収容者の健康保持のため重要なものであるので、従来からその内容の充実に努めて来たところであるが、食事内容の更なる改善を図るため、前回の本報告書審査以降、1995年に見直しを行い、肥満防止及び成人病予防の観点から、今後、段階的に主食の熱量を減ずる一方、副食の熱量を増加するとともに、栄養素(たんぱく質、ビタミン等)の標準量を改善して、食事内容の充実を図っている。
- (iii)居室
被収容者が収容される居室には、個室と共同室がある。共同室には通常6~8人が収容される。各居室には、生活に必要な食卓、学習用の小机、清掃用具等が備えられている。居室の窓は、被収容者が自然の光線によって本を読むことができるだけの大きさのものであり、かつ新鮮な空気を取り入れることができるようになっている。
- (iv)保健衛生及び医療
- (a)入浴
入浴は、1週間に2回(夏期は3回)実施されている。入浴の時間は、平均15分(女子は平均20分)である。夏期は、毎日の作業終了後、身体を拭く時間を設けている施設もある。
- (b)運動
運動は、健康保持上必要なものであるので、入浴日以外は最大限の保障がされている。天候が許す限り戸外運動が実施されるが、雨天時には室内運動も実施される。
- (c)健康診断
健康診断については、ー般社会と同様、定期健康診断、成人病対策等を積極的に実施している。
- (d)医療
医療について、行刑施設では、医師等医療専門職員が配置され、被収容者の医療に当たっている。一般の行刑施設において治療困難で専門的医療を施す必要がある者及び病状から長期的な療養が必要な者については、高度な医療機器や医療専門職員を集中的に整備、配置した医療重点施設又は医療刑務所(支所)に収容して十分な医療措置が受けられる体制をとっている。この医療刑務所の中には、 医療法の規定により病院の指定を受けている施設もある。さらに、人的・物的に施設内で適切な医療を施すことが困難な場合には、外部の専門医の診療を受けさせたり、外部の病院に入院させるなど被収容者に対する適切な医療に努めている。
なお、行刑施設における医師の数は、被収容者137人当たり1人となっており、十分な医師が確保されている。
- (v)規律及び秩序
被収容者の処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するために、行刑施設の規律及び秩序は厳正に維持されなければならない。国連の「被拘禁者処遇最低基準規則」も「規律及び秩序は厳正に維持されなければならない。」と規定している。もっとも、行刑施設の規律及び秩序は、無意味に厳しく維持するものであってはならないが、「確固として」、「揺るぎなく」維持しなければならないものと考えている。
- (a)身体検査
被収容者が出廷等で施設から出入りする際、受刑者が工場に出役又は工場から還房する際など、原則として、被収容者の身体及び衣類の検査が行われる。これは、過去に発生した数々の事例に照らして、被収容者の逃走、危険又は不正な物品の持ち込み・持出しなどの保安事故を未然に防止するために必要不可欠な措置であり、必要合理的な範囲で行われている。
一般的に、身体検査は、衣類の上から触手によって行われるが、受刑者が工場に出役又は工場から還房する際は、通常、居室衣と作業衣の着替えの際に、多くの場合、下着を着けさせたまま視認する形で行われる。
- (b)昼夜独居拘禁
昼夜独居拘禁は、他の受刑者と隔離する必要がある者の居室収容の一形態であり、監獄法令の定めるところに従い、受刑者の刑期、犯歴、所内における行状、性格、他の受刑者との関係、集団生活の適応の可否、施設内の保安状況等を総合的に勘案して必要性が認められる場合に採られる拘禁形態である。
昼夜独居拘禁者の居室は、通常の夜間独居拘禁者の居室と同じ構造である。その構造は、具体的には(b)被収容者の生活(iii) 居室で述べたとおりであり、前者の居室の構造が後者のそれに比べて、窓が小さい、机がないなど制限的なものになっていることはない。
昼夜独居拘禁に付された者は、運動、入浴、接見、診察その他やむを得ない理由がある場合を除いて、原則として一房の内で独居処遇を受ける。受刑者を昼夜独居拘禁に付す場合としては、具体的には、当該受刑者が著しく自己中心的で協調性がなく、他の受刑者と接触させておけば、当該受刑者に対する不快の念や恨みを持つ他の受刑者から危害を加えられる等して身体の安全の保護に困難を来たすおそれがある場合などである。いわゆる代用監獄について
- (a) 警察留置場制度
日本においては、ほとんどの警察署に警察留置場が設置されている。警察留置場には、刑事訴訟法に基づき逮捕された被疑者、刑事訴訟法の規定に基づき裁判官の発する勾留状に基づき勾留された未決拘禁者等が留置されている。警察に逮捕された年間約12万人の者が、警察留置場に留置されている。逮捕された者は、釈放される場合を除いて、検察官の勾留請求により裁判官の面前に連れていかれ、裁判官は、勾留するか否かを決定する。警察留置場に勾留される被疑者は、年間約9万人である。警察留置場に留置される期間は、平均約20日間である。
被疑者の勾留場所につき、日本では、刑事訴訟法によれば、被疑者の勾留の場所は、監獄とされている(同法第64条第1項等)。そして監獄法は、警察留置場を監獄(一般に未決の者を収容する施設は拘置所といわれている。)に代用することができると定めている(同法第1条第3項)。この警察の留置場を監獄に代えて用いることができる制度がいわゆる「代用監獄制度」と呼ばれている。被疑者の勾留の場所については、刑事訴訟法上、拘置所又は警察留置場のいずれを選択するかを定めている規定はなく、検察官の請求を受けて、裁判官が、個々の事件ごとに、諸般の事情を総合考慮して勾留場所を決定している(同法第64条第1項)。
本制度につき種々の意見があることは承知しているが、下記(b)及び(c)のとおり、本制度は極めて適切に運用されており、被留置者の人権は十全に保障されている。
- (b)警察留置場における生活
被留置者の警察留置場における生活については、以下に具体的に述べるとおりであるが、留置場の施設・設備についてはより快適な生活環境となるよう常に改善整備に努めているほか、被留置者の人権保障を一層充実させるため、食事の改善や外国人・女子等の特性に配慮した処遇を推進するなどの努力を続けている。また、留置場勤務員が被留置者の人権に十分配慮して職務を遂行するよう、勤務員の指導教養にも力を入れている。
- (i)留置場の構造及び設備
居室の構造は、被留置者のプライバシー保護に留意したものとなっている。居室の前面に不透明な仕切を設け、被留置者が看守席から常時監視されることのないようにしている。
居室内にはじゅうたん又は畳が敷かれている。旧設の留置場の床も全て畳かじゅうたんに取り替えられた。そして、畳等の上に直接座るという日本の生活習慣を勘案し、居室においてもこれと同様の生活習慣が保たれるようにしている。
被留置者は、単独収容することを原則としており、その適切な処遇を行うのに必要な面積が確保されるように基準が定められている。
被留置者の健康保持及び処遇向上のため、全国の留置場で、全自動洗濯機、洗濯物乾燥機、布団乾燥機、シャワー装置、冷蔵庫、エイズ等の感染症防止のためのガス滅菌器、手指消毒器等の整備を推進している。
- (ii)留置中の行動
他の被留置者の平穏に支障を及ぼしたり、拘禁目的に反しない限り、居室内での被留置者の行動は自由であり、就寝時間以外に自由に寝そべることも広く許されている。
- (iii)被留置者の健康保持
被留置者の健康保持のために、1日30分間、被留置者が希望する場合には1時間を超えて、広さ10平方メートル以上で日照及び通風のよい戸外に設けられた運動場で自由に運動できる時間が設けられている。
睡眠時間帯は居室の明りを減光して睡眠に支障がないように配慮している。
取調べの時間については、執務時間(通常午前8時30分から午後5時15分)中に行うよう努めており、執務時間外に取り調べなければならない事情がある場合でも、留置場の日課時限において定めた就寝時刻(通常午後9時頃)を過ぎてもなお取調べが続いている際には、留置部門から捜査部門に取調べの打ち切り要請を行うとともに、万一就寝時刻が遅れた場合には翌朝の起床時間を遅らせる等の補完措置をとり、十分な睡眠時間が確保されるようにしている。
月に2回、警察の嘱託医が被留置者の健康診断を行う。被留置者が負傷、病気の場合には、薬を投与したり、公費により速やかに医師の診療を受けさせる。特別な治療が必要な病人は、場外の病院に運ばれる。また、被留置者が医師を指定して自費による診療を希望すれば、通院することも可能である。警察留置場への勾留のために被留置者の健康が損なわれないように、全ての可能な措置が取られている。
食事は、1日3回出され、国民生活の実情等を勘案して十分なものであるように資格のある栄養士が定期的にチェックし、栄養のバランスのとれたものとなっており、拘置所での食事内容の改善に合わせ、さらなる栄養の充実に努めている。被留置者は、官給の食事以外の食事、パン、果物、菓子、乳製品等を外部から自己の負担で購入したり、差し入れを受けることもできる。
留置場内の通風、採光に配慮するとともに、冷暖房装置などにより24時間快適な温度が保たれるように配慮している。
- (iv)日用品等の自費購入等
食料品、衣類等の自費購入及び差し入れも認められる。
- (v)面会、信書の発受等
弁護人等との面会及び信書の発受は、原則として保障されている。家族等との面会及び信書の発受についても、裁判所が拘禁目的を達成するために行う制限を除き、原則として保障されている。
また、複数の弁護人や家族がゆったり被留置人と面会ができるよう面会室を拡張したり、弁護人の秘密交通権をより保障するために室外へ面会中の会話が漏れないための措置を施すなどの施設改善にも努めている。
- (vi)新聞、図書の閲覧等
被留置者は、無料で日刊新聞や備え付けの図書を閲覧することができるほか、食事時間等毎日一定の時間に、ニュース、音楽等のラジオ番組を聴取することができる。
- (vii)身体検査及び傷病等の調査
被留置者の留置開始時及び出入場時には、被留置者の安全確保と留置場の秩序維持を図るために必要な限度において、留置担当者が身体検査を実施し、被留置者が凶器や危険物を所持していないことを確認するとともに、被留置者の健康状態の聴取・確認を行い、疾病、傷病の申立があったとき、又は疾病、傷病の可能性があるときには、医師の診察を受けさせるなどの必要な措置を採る。
- (viii)外国人被留置者の処遇
外国人被留置者に対しても適切な処遇を行うため、文字、音声の両方により豊富な文例を提示できる「CD-ROMを使った最新式の翻訳機(14か国語(英語、北京語、広東語、タイ語、タガログ語、ウルドゥー語、スペイン語、ペルシャ語、ハングル、マレー語、ベンガル語、ロシア語、ベトナム語、ミャンマー語に対応)」の整備を進めている。また、食事、宗教活動等の面において、可能な限りそれぞれの習慣に従って処遇するように配慮している。
- (ix)女子被留置者の処遇
警察留置場における基本的な処遇条件に男女の差別はないが、女子被留置者の取り扱いに当たっては、その特性にも十分な配慮を行っている。
女子被留置者は、男子被留置者とは別の区画に収容され、互いに見えることがなく、かつ、運動や入出場の際も顔を合わせることのないように処遇している。女性の被留置者の身体検査及び入浴時の監視は、婦人警察官又は婦人職員によってのみ行われる。また、女子被留置者の処遇に当たっては、その身だしなみを整えるために必要な、化粧水、クリーム、整髪料等の化粧品やくし、ヘアーブラシを洗面所等で使用できるよう配意しているほか、使用済み生理用品を本人が直接廃棄するための屑かご等を設置することとしている。
さらに、女子被留置者の処遇全般について、できるだけ婦人警察官が行うことが望ましいため、女子専用留置場の設置を推進している。
- (xx)結論
以上のように、日本の留置場において行われている被留置者の処遇は、留置者の人権を十分に保障したものであり、国連の被拘禁者処遇最低基準規則の趣旨を満たしている。
- (c)捜査と留置の分離
被留置者の人権を保障するため、警察においては、被留置者の処遇を担当する部門と犯罪の捜査を担当する部門は厳格に分離されている。被留置者の処遇は、留置部門の職員の責任と判断によってのみ行われ、捜査官が警察留置場内に収容されている被疑者の処遇をコントロールしたり、これに影響力を行使することは不可能である。すなわち、被疑者の取調べは、留置場の外にある「取調室」、場合によっては、法務省の管轄下にある「取調室」で行われる。また、捜査員が留置場に入ることは禁止されている。
被留置者の処遇を担当する部門は、捜査を担当しない管理部門の課長の指揮下にあり、警察本部の留置管理課及び警察庁の留置管理官の監督を受ける。
以下は、捜査と留置を分離するために取られている具体的措置であるが、警察庁の留置管理官以下の職員が定期的に全国の留置場を巡回し、その徹底を図っている。また、万が一、警察官が以下の方針に反し不適正な取扱いを行った場合には、厳しい処分が科される。
- (i)留置開始時の告知
新たに収容した被留置者に対し、被留置者の処遇は、全て留置業務担当者が行う旨を留置開始時に告知する。
- (ii)留置場入出場のチェック等
捜査上の必要から被留置者を留置場から出場させる際には、捜査主任官がその必要性について個別に実質的なチェックを行った上で文書により留置主任官に要請し、留置主任官の承認により行うこととされており、捜査員が被留置者の処遇に関与するなどの不適切な取扱いがなされないよう、捜査と留置の両方の責任者がチェックを行う。出入場の時刻は、留置係が全ての被留置者について作成している出入簿に記録され、留置部門による厳格なチェックがなされている。この記録は、裁判官等の要求があれば公判廷に提出されうる。
- (iii)日課時限の確保
取調べ等の捜査活動によって、食事、睡眠等の日課時限に支障を及ぼすことのないよう、必要な場合には留置担当者から捜査主任官に対し取調べ等の打ち切り又は中断を要請し、日課時限の確保に努めている。
- (iv)食事の提供
食事は、被留置者の処遇の最も重要なものの一つであり、捜査員が取調室等で食事を摂らせることはない。
- (v)接見、差入れの取扱い
接見、差入れは留置業務であり、捜査員にその申し出がなされた場合にも、必ず留置担当者に引き継ぐこととされている。
- (vi)被留置者の身体検査、所持品検査及び所持品の保管
被留置者の身体検査、所持品検査及び所持品の保管は、留置主任官の責任においてなされることとされており、捜査員が検査に立ち会ったり、所持品を保管したりすることは許されない。
- (vii)検事調べ、医療等のための被留置者の護送
検事調べのために留置場から法務省の管轄下にある取調室へ被留置者の身柄を移したり、医療等のために留置場から医療施設へ被留置者の身柄を移したりする際の被留置者の護送は留置主任官の責任においてなされており、被留置者の戒護員には、原則として管理部門の者、少なくとも当該捜査に関係していない者を当てることとしている。
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