外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外交政策 人権・人道
人権・人道

第4条

 (a)緊急事態を想定した法令には、基本的人権を制約する規定は何らおかれていない、また、(b)我が国においては、緊急事態が発生した場合には、必要に応じ、憲法及び本規約に従った措置が講ぜられることになるであろうことは、第3回報告で述べたとおりである。

第5条

 (a)我が国は、いかなる意味においても、本規約において認められる権利及び自由を破壊し、又は、本規約に規定する範囲を越えてこれらを制限するように本規約の規定を解釈することはなく、また、(b)我が国において、本規約が言及していないことを口実としてその権利を侵すことはできないことは、第3回報告で述べたとおりである。

第6条

死刑問題

(a)死刑の適用の状況

 我が国においては、死刑の定めのある罪を第3回報告で述べた17罪に限定し(別添3参照。但し、刑法改正による条文の記述平易化に伴い、「船車覆没致死罪」は「汽車転覆等致死罪」と、「往来危険による船車覆没致死罪」は「往来危険による汽車転覆等致死罪」と呼ばれるようになったが、構成要件は変更していない。)、うち外患誘致を除く他のすべての罪については死刑以外に無期又は有期の懲役刑又は禁錮刑を選択刑として規定し、重大な犯罪の罪種の中でも特に重大なもの(殺人又は人の生命を害する重大な危険のある故意の行為)についてのみ死刑が適用されるような法制が採られている上、具体的な事件に対する適用においても「犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には死刑の選択も許される」との最高裁第2小法廷判決(1983年7月8日)の趣旨等を踏まえて、死刑の適用は極めて厳格かつ慎重に行われている。現に、1991年から1995年までの5年間に死刑が適用され判決が確定した者は、合計23名であり、いずれも残虐な殺人事件や強盗殺人事件に限られ、人の殺害を伴わない事案はない。また、現状においては、極度に凶悪な犯罪を犯した者に対し、死刑の適用を存置すべきであるとするのが現在の我が国国民の大多数の意見であり、これは、世論調査(最近の調査は1994年9月実施)によって裏付けられている。

(b)死刑確定者の処遇

(i)死刑確定者の収容の根拠、処遇一般、恩赦の適用

 第3回報告で述べたとおり。

(ii)死刑確定者の外部交通

 死刑確定者の接見及び通信については、その拘禁目的に照らして、拘禁施設の長が個々具体的に許可・不許可を決するとするのが監獄法の趣旨であるところ (監獄法第45条1項及び第46条1項)、死刑確定者は来るべき死刑の執行を待つという言わば極限的な立場に置かれている被収容者であって、その身柄の確実な保全が強く要請されており、また、拘禁の性質上、極めて大きな精神的不安と苦悩のうちにあるであろうことは言うまでもなく、拘禁施設としては、できる限り死刑確定者の心情の安定が得られるよう配慮する必要があり、したがって、このような観点からの制限を受けることはやむを得ないところであるが、このような場合を除き、実務運用上、家族、弁護士等との接見及び通信を許可する取扱いとしている。
 なお、以上のような死刑確定者の外部交通の取扱いについては、我が国の民事裁判においても、合理的で適法なものであるとされており(例えば、東京地裁1996年3月15日判決等。)、他方、一般的取扱いとしては、これを違法なものとする裁判例は見当たらないところである。

(c)死刑執行の家族に対する告知

 監獄法第74条及び同施行規則第178条は、死刑の執行後、死刑の執行を受けた者の親族に対し、その死亡の事実を通報し、その親族等が死体又は遺骨の引渡しを求める場合はこれを交付するものと定めているが、それ以外には、死刑確定者の家族等に対する通知に関し法令上の規定は何ら存しないところ、死刑の執行日については、事前に家族を始めとして外部の者には知らせない取扱いとしている。これは、死刑確定者の家族等に対し、死刑執行の日時を事前に通知することにより、通知を受けた家族に対し無用な精神的苦痛を与えること、仮に通知を受けた家族との面会が行われた場合、当該死刑確定者の心情に及ぼす影響が大きく平穏な心情を保ち難いと考えられること等の理由によるものである。
 なお、家族との間において事前の調整が必要になると思われる遺産相続、献体等については、あらかじめ平素から死刑確定者本人の意思確認を行うとともに、家族との事前の面会等の機会において十分調整するよう指導しており、この点からも、執行直前に家族に知らせる必要は特段生じないものである。

(d)B規約第2選択議定書

 第3回報告書で述べたとおり、死刑廃止の問題は、国民感情及びそれに基づく国内法制に直接関わるものであるので、本選択議定書の締結問題は慎重に検討することが必要である。

第7条

法執行機関による違法な暴行事件に対する厳正な対処状況及び再発防止策

 拷問等の禁止に関する法的枠組については、第3回報告で述べたとおりであり、捜査活動に関わる法執行官による被疑者等に対する暴行・陵虐行為等については、刑法第194条及び195条により刑事罰の対象となるほか、厳重な懲戒処分の対象となる。
 このような事件の発生は極めて稀ではある(1990年から1995年までに起訴された人員数は、1992年に2名、1993年に8名あったほかは、各年とも0である。)が、法執行官に対しては、任官後、その経験に応じて各種の研修を行い、法執行官としての識見を身につけさせ、人権感覚の一層のかん養を図るとともに、職務の遂行過程においても、上司の指導・監督により、若手職員の育成の充実を図ることによって、その発生防止に厳重な注意を払っている。

第8条

 奴隷的拘束及び犯罪による処罰を除いた苦役からの自由並びに児童の酷使の禁止等の法的枠組については、第3回報告で述べたとおり。
 なお、第3回報告書で述べた刑務作業の実施状況については、第10条に関する記述を参照されたい。

第9条

法的側面

(a)前回からの変更点

(i)精神保健法の改正

 精神病院に入院中の者については、第3回報告書で述べたとおり、1987年の法律改正により、都道府県知事は、精神病院の管理者から定期的に措置入院者及び医療保護入院者の病状等の報告を受け、それらの者の入院継続の適否について各都道府県に設置される精神保健審査会に審査を求め、その審査結果に基づいて退院を命じる等の措置を講じること、また、入院中の者やその保護者等から退院や処遇改善の請求が出された場合、当該請求について精神医療審査会に審査を求め、その審査結果に基づいて退院等必要な措置を採ることを命じることとされている。
 1994年において、本制度により退院した人数は以下のとおりである。
 (a)定期報告 措置入院で入院継続が不要な者  1人
       医療保護入院で入院継続が不適当な者  2人
 (b)退院請求 退院が適当な者  34人
 また、1995年には、「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改め、精神障害者の社会復帰等のための保健福祉施策を充実するための措置を講ずるとともに、精神保健指定医が5年ごとの研修を受けなかった場合には、当該研修を受けなかったことについてやむを得ない理由が存すると厚生大臣が認めたときを除き、その指定は効力を失うものとすること、措置入院、医療保護入院等を行う精神病院には、常勤の精神保健指定医を置かなければならないものとすること、医療保護入院の際の入院者に対する告知義務について、精神障害者の症状に照らして告知を延期できる旨の例外規定に、4週間の期間制限を設けること等、適正な精神医療の確保等のための措置を講じたところである。

(b)少年の保護事件に係る補償

 本条5の権利に関し、1992年9月1日に少年の保護事件に係る補償に関する法律が施行され、少年鑑別所や少年院に収容されるなど身体の自由を拘束された少年が、審判に付すべき事由が認められず不処分決定や保護処分取消決定等を受けたときには、その拘束が違法でなかった場合であっても、その拘束の日数に応じて1日当たり1万2,500円を限度として補償金が交付されることとされた(同法第4条第1項、刑事補償法第4条第1項)。

被疑者の身柄拘束

(a)身柄拘束期間

 我が国においては、被疑者の身柄拘束期間中に、勾留の基礎となっている当該被疑事実のみにとどまらず、これに関連する情状に関する事実についても捜査を遂げ、その結果、有罪の確信を持つことができ、かつ、公訴提起が相当と思料する者に対してのみ公訴を提起するという厳格な起訴基準に基づく運用がなされている。それ故、被疑者の身柄拘束中に行われる捜査は極めて綿密なものとならざるを得ず、してみると、第3回報告で述べた最大22日間ないし23日間という被疑者の身柄拘束期間は、捜査すなわち公益上の必要と被疑者の人権保障との適正なバランスを図ったものであり、合理的なものである。

(b)在宅による捜査及び公訴提起、並びに保釈の状況

 検察官及び司法警察員は、捜査及び公訴の提起にあたり、身柄拘束の要否等を慎重に検討し、犯罪の軽重や罪証隠滅・逃亡のおそれの有無・程度等を考慮して、身柄拘束の必要がないと認めるときには、被疑者の身柄を拘束することなく、在宅のまま捜査を行い、あるいは、一旦逮捕・勾留した被疑者であっても、その後勾留の必要ないし勾留継続の必要がなくなったと認める場合には、被疑者を釈放し、公訴を提起している。
 1990年から1995年における自動車等による業務上(重)過失致死傷及び道路交通法等違反事件を除く既済となった被疑事件のうち、逮捕された者の占める割合は、約23から30パーセントにすぎない。また、上記既済被疑事件のうち、勾留中公判請求された者の占める割合は約10から14パーセントにとどまっている。
 勾留されている被告人については、保証金の納付等を条件として、被告人を現実の拘束状態から解放する保釈が認められている。保釈については、被告人、その弁護人、法定代理人、保佐人、又は一定の親族にその請求が認められているが、当該請求があったときは、被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき等一定の事由に該当する場合を除いては、保釈を許さなければならない(刑事訴訟法第89条)。また、保釈を許さなければならない場合に当たらないときでも、裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる(同法第90条)。1990年から1995年における第一審(地方裁判所)の公判事件終局総人員における身柄状況をみると、勾留率(終局総人員中に占める勾留総人員の割合)は約71から79パーセント、保釈率(勾留総人員中に占める保釈人員の割合)は約19から27パーセントの間をそれぞれ推移している。

(c)勾留執行停止制度・勾留理由開示制度

 本条4の権利に関し、勾留されている被疑者・被告人等からの請求がある場合には、裁判官は、公開の法廷で、勾留の理由を開示しなければならないとされているほか、裁判所は、適当と認めるときは、勾留の執行を停止することができ、勾留の理由又は必要がなくなったときは、被疑者・被告人等の請求により、又は職権で、勾留を取り消さなければならないものとされている。

(d)いわゆる別件逮捕・勾留

 同一被疑者に複数の犯罪容疑がある場合、逮捕・勾留中に逮捕・勾留の基礎となっている被疑事実以外の事実について被疑者をその任意に基づいて取り調べることは、一般に禁止されるところではなく、例えば、事件の全容を明らかにするために関連する他の事実の取調べが必要な場合や、余罪があって、その一事実ごとに新たに逮捕・勾留を繰り返すよりも逮捕・勾留の基礎となっている被疑事実と併せて余罪の数事実についても捜査を行うことの方がむしろ被疑者にとって有利な場合などには、逮捕・勾留の基礎となっている被疑事実以外の事実についても取調べが行われることがある。
 しかしながら、第3回報告で述べたとおり、逮捕・勾留の理由及び必要性は、いずれも一定の被疑事実について判断されるものであり、当該被疑事実について逮捕・勾留の理由及び必要性がないのに、他の被疑事実の捜査のために逮捕・勾留が行われるということはあり得ない。したがって、「専らある被疑事実Aの捜査のために他の被疑事実Bについて被疑者を逮捕・勾留する」といういわゆる別件逮捕・勾留も容認されておらず、仮に違法な別件逮捕・勾留が行われた場合には、その間に得られた自白を含む証拠を排除する等の判例理論が確立しており、証拠の面からも違法な別件逮捕・勾留を防止する手当がなされている。

(e)取調べの実態

 刑事訴訟法は、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができると規定しており(同法第198条第1項本文)、この規定に基づき被疑者に対する取調べが行われているが、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができることとされている(同項但書)。
 憲法は、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」として、黙秘権を保障している(同法第38条第1項)が、この規定の精神をよりよく実現するため、刑事訴訟法は、被疑者に供述拒否権を与え、取調べに際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない(同法第198条第2項)と規定している。
 取調べを行った場合、被疑者の供述を調書に録取することができるが、この調書は、被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤りがないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない(同条第3、4項)。被疑者が調書に誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができるが、被疑者が、これを拒絶した場合はこの限りではない(同条第5項)。署名及び押印のいずれもがない調書は、当事者の同意がない限り、証拠能力を有しない(同法第322条第1項、第326条)。
 また、取調べの方法として、強制、拷問、脅迫等を用いることはむろん許されないし、その他被疑者の供述の任意性に疑いを抱かしめるような取調べも許されない。強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白、その他任意にされたものでない疑いのある自白(同法第319条第1項)、又は任意になされたものでない疑いのある被告人に不利益な事実の承認を内容とする供述調書若しくは供述書は証拠とすることができないこととされており(同法第322条第1項)、取調べに係る手続の適正や被疑者・被告人の権利が証拠法の面からも保障されている。


BACK / FORWARD / 目次

外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省