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人権・人道

II 規約の各条に関する逐条報告

 規約の各条に関する報告については、第1回、第2回及び第3回報告で述べたとおりであるが、その後の変更点及び補足的説明は次のとおり。

第1条

アパルトヘイト政策

 我が国は、これまで一貫してアパルトヘイトの撤廃を求めてきたが、南アフリカ共和国では1990年以降アパルトヘイトの完全撤廃に向けた国内改革が進展し、1994年4月に南アフリカの歴史上初めて黒人を含む全人種参加の下で総選挙が実施され、アパルトヘイト政策に終止符が打たれたことを歓迎するものである。
 南アフリカ共和国の国内改革の進展を踏まえ、我が国は1991年6月に人的交流規制の緩和、同年10月に経済規制措置の緩和を実施。更に1992年1月外交関係を再開し、1994年1月には残存経済規制を撤廃した。
 我が国は、南アフリカ共和国が和解の精神と対話により平和的に新体制へ移行した成功例であり、また、その安定と発展はアフリカ全体の発展にとり重要であるとの観点から、責任ある国際社会の一員として同国に対する支援を強化することとし、1994年7月に2年間で総額13億ドル(政府開発援助3億ドル、日本輸出入銀行の融資5億ドル、貿易・海外投資保険のクレジットライン設定5億ドル)の対南ア支援策を発表した。右は現在執行中であるが、今後とも同国の国づくりを積極的に支援していく所存である。

第2条

外国人問題

(a)在日韓国・朝鮮人
(i)外国人登録法上の指紋押なつ

 外国人登録法による指紋押なつ制度は、人物の同一人性を確認する上で極めて確実な手段として 「在留外国人の居住関係及び身分関係を明確にする」という外国人登録制度の基本目的のために登録の正確性を維持するとともに登録証明書の不正使用や偽造を防止することとしたものであるが、「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定」に基づく日本政府と韓国政府との間の協議の決着の際に両国の外務大臣が署名した覚書において、指紋押なつに代わる手段をできるだけ早期に開発し、これによって在日韓国人三世以下の子孫(同協定第2条で規定) はもとより、在日韓国人のー・二世についても指紋押なつを行わないこととする旨が盛り込まれた。
 以上のような経緯を踏まえ、指紋押なつに代わる手段を中心に制度改正について検討を進めてきた結果、日本社会において長年にわたり生活し、日本への定住性を深めた永住者 (出入国管理及び難民認定法に規定する「永住者」の在留資格をもって在留する者) 及び特別永住者(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に規定する「特別永住者」。いわゆる「在日韓国・朝鮮人」 はこれに当たる。)については、鮮明な写真、署名及び一定の家族事項の登録という複合的手段をもって指紋押なつに代え得るとの結論に達したため、これらの外国人については指紋押なつを廃止し、上記手段によりこれに代えることを主な内容とする外国人登録法の一部改正が行われた。同改正法は、1992年6月1日に公布され、1993年1月8日から施行されている。

(ii) 外国人登録証明書の携帯義務

 外国人は、日本国民とは異なり、日本国内に在留するためには、日本国政府の許可を必要とし、かつ在留できる期間及び在留活動について制限を受ける立場にある。外国人登録証明書の携帯制度は、そのような日本国民とは基本的に異なる地位にある外国人の身分関係及び居住関係を現場において即時に確認する手段を確保するために設けられているものであり、また、その実効性を担保するために、義務違反に対しては罰則 (20万円以下の罰金) が定められている。ただし、同罰則規定により司法警察員から検察官に事件送致された人員は過去3年間 (1992年から1994年まで) は、いずれも20人未満で推移しており、外国人の在留状況を考慮した常識的かつ弾力的な運用がなされている。
 なお、外国人登録証明書の携帯制度の在り方も含めて、外国人登録制度の抜本的な見直しについて現在日本政府において検討が行われているところである。

(iii) 韓国・朝鮮人学校児童・生徒に対する各種定期乗車券の割引

 JR(旅客鉄道会社グループ、旧国有鉄道)の通学定期制度については、学校教育法の規定に基づく学校種別に従い、大学生に対する基本運賃を定めるとともに、小・中・高校生については、更に割引を行っていたが、教育法上の専修学校・各種学校については、JRが指定した学校の生徒について大学生と同額の運賃が適用されてきた。
 この適用に関し、将来的には、他の民間鉄道と同様の大人と小児の区分だけの通学定期制度に改めることを基本としているが、その時期が明確でないことから、これまでの要望を踏まえ、専修学校・各種学校について暫定的な措置を検討するようJRに対して要請を行った。
 これを受け、1994年4月からは、専修学校・各種学校の小・中・高校生に相当するとJRが判断した課程の生徒等について、それぞれ小・中・高校生を対象とした通学定期運賃の割引適用が行われることとなり、その結果、各種学校としてJRが指定した韓国・朝鮮人学校の通学定期制度についても改善がなされたところである。

(iv)朝鮮人学校児童・生徒に対する暴行事件に対する対応

 1994年の春から夏にかけて、我が国において発生した、在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせや暴行事件等の事象に関し、法務省の人権擁護機関においては、在日朝鮮人児童・生徒が多数利用する通学路、利用交通機関等において、このような事件の防止を呼びかけるリーフレットの配布やポスターの掲示、外国人に対する差別や嫌がらせをなくすためのスローガンを掲げた街頭啓発活動を積極的に実施するとともに、これらの活動を通じて、在日朝鮮人児童・生徒に対し、嫌がらせ等を受けたときには、法務省の人権擁護機関に相談するよう呼びかけを行った。
 法務省の人権擁護機関においては、このような事象の発生を根絶するために、在日外国人の人権尊重の意識を国民の間に根付かせ、差別や偏見をなくすための取組を展開することとしている。

(b)外国人労働者(不法就労のケースを含む)
(i)外国人労働者の受入れ

 外国人労働者の受入れ問題については、第3回報告記載の政府の基本方針たる「第6次雇用対策基本計画」に従い、1989年に出入国管理及び難民認定法を改正して、専門的な技術、技能、知識等をもって我が国で就労しようとしている外国人については幅広く受け入れることができるように在留資格の整備を図った。
 また、その後の政府の基本方針として、1995年12月に閣議決定された「第8次雇用対策基本計画」においても示されているとおり、「我が国の経済社会の活性化や、国際化を図る観点から、専門的、技術的分野の労働者については可能な限り受け入れることとし、我が国経済、社会等の状況の変化に応じて在留資格に関する審査基準を見直す。一方、いわゆる単純労働者の受入れについては、雇用機会が不足している高年齢者等への圧迫、労働市場における新たな二重構造の発生、景気変動に伴う失業問題の発生、新たな社会的費用の負担等我が国経済社会に広範な影響が懸念されるとともに、送り出し国や外国人労働者本人にとっての影響も極めて大きいと予想されることから、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応する。」としている。

(ii)職業紹介体制等

 職業安定法においては、職業紹介、職業指導等について国籍を理由とする差別的取扱いを受けないことが規定されている(同法第3条)ので、我が国で就労可能な外国人についても、日本人と同様に職業紹介等を行うこととしている。ただし、求人・求職の内容が法令に違反するときは、その申込みを受理しないこととしており(同法第16条、第17条)、入管法上不法就労に当たるような職業紹介は行っていない。
 外国人労働者に対する職業紹介体制を強化するため、主要な公共職業安定所に1989年度から外国人労働者専門官を配置するとともに、1992年度から外国人雇用サービスコーナーを順次開設している。また、東京都に1993年度から外国人雇用サービスセンターを設置したところである。
 事業主に対する取組みとしては、1993年度に策定された外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善指導を進めている。

(iii)警察による取締り

 警察では、第3回報告記載の諸法令を適用して、ブローカー、暴力団関係者、悪質な事業主等を積極的に取り締まっている。また、関係行政機関との間で連絡会議を定期的に開催するなどして情報交換を行い、政府関係機関が密接に連携してその取締り等を行っている。他方、関係外国政府に対しても、情報を提供するなどして取締りを求めている。
 なお、出入国管理及び難民認定法に関する補足説明は以下のとおり。
 事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者(第73条の2第1項第1号)、外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者(同項第2号)、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした者(同項第3号)は処罰される。

(iv)我が国で単純労働に従事する意図を有する外国人

 第3回報告で述べたとおり、我が国で単純労働に従事する意図を有する外国人については、原則として入国を認めていない。なお、既に入国し入管法に違反して不法に就労している者については、その人権に配慮しつつ、原則として国外に強制退去することとしている。
 外国人不法就労者の問題については、国内の労働市場や賃金などの労働条件に影響を与えるなど、労働行政としても放置できない問題であり、政府としては、不法就労を防止するために、事業主に対する周知啓発、指導などを行っている。
 しかし、不法就労者数は、依然として高い水準で推移しており、特にここ数年間は外国人女性の不法就労者が増加している。就労内容別では、建設作業員及び工員等の第二次産業の業種が徐々に低下し、他の産業に不法就労者が流れ込んでいるものと思われるとともに、その就労期間が以前は1年未満であったものが全体の半数以上を占めていたが、近年では1年を超えるものが全体の70%を超え、不法就労の拡散化及び長期化という新たな問題が顕在化しつつある。また、これら不法就労者の入国・就労に関して、暴力団関係者及びブローカーの存在が依然として認められている。

(v) 法務省の人権擁護機関が外国人の人権擁護のために講じている措置

 法務省の人権擁護機関では、外国人の基本的人権を尊重し、外国人に対する差別をなくすため、積極的に啓発活動を展開している。啓発活動重点目標として、1988年度から1990年度にかけては「社会の国際化と人権」、1991年度から1993年度にかけては「国際化時代にふさわしい人権意識を育てよう」を定めたほか、毎年人権デーを最終日とする一週間(12月4日から12月10日まで)に実施している「人権週間」の強調事項の一つとして、1988年以来「国際化時代にふさわしい人権意識を育てよう」を掲げ、全国的にこの問題に関する啓発活動に取り組んでいる。
 また、基本的人権の侵害が具体的に起こった場合には、人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じて在日外国人の人権の擁護を図るとともに、そのような事例の再発防止に努力している(人権相談及び人権侵犯事件の調査・処理の概要については、第Ⅰ部参照。)。
 外国人に対する人権相談については、1988年にまず東京法務局に相談所を開設し、その後、大阪法務局、名古屋法務局、広島法務局、福岡法務局、高松法務局及び神戸地方法務局においても開設している。

(vi)在留資格、外国人登録、家族の呼び寄せの手続きについて相談できる機関の概要

 第3回報告で述べたとおり、1990年7月に東京入国管理局内に、外国人及びその在日関係者のために、外国語を解する専従の専門相談員が、土曜・日曜・祝祭日を除く毎日、面接又は電話による入国・在留に関する諸手続等にいての問い合わせに応じる「外国人在留総合インフォメーション・センター」を開設した。
 同インフォメーション・センターは、現在東京入国管理局のほか、大阪入国管理局、名古屋入国管理局、福岡入国管理局及び東京入国管理局横浜支局にも開設している。
 また、このようなインフォメーション・センターが開設されていない地方入国管理局・支局・出張所においても、相談窓口が設けられており、同様の案内を行っている。

(c)社会保障

 我が国の社会保障制度は、1981年に「難民の地位に関する条約」に加入したこともあり、我が国に適法に滞在する外国人については、基本的には内外人平等の原則に立って適用されることとしている。

(i)公的医療保険、公的年金

 我が国において、一定の事業所で常用的雇用関係にある外国人については、我が国の国民同様、健康保険・厚生年金保険などの公的な職域医療保険・年金に加入することになる。また、それ以外の者であって我が国に住所を有すると認められる者については、国民健康保険・国民年金の適用対象となる。

(ii)生活保護

 生活保護は、生活に困窮する日本国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する制度である。但し、永住者等については予算措置として法を準用し、日本国民と同様の要件の下で同様の給付が行われている。

障害者施策

 我が国の障害者施策については、1981年の国際障害者年のテーマである「完全参加と平等」の実現を図るため、1982年に策定した「障害者対策に関する長期計画」を通じ近年その着実な推進を図ってきた。さらに、「国連・障害者の十年」以降の障害者施策の在り方について検討が行われ、1993年3月、リハビリテーションとノーマライゼーションの理念の下、2002年までの障害者施策の基本方針として「障害者対策に関する新長期計画」を策定した。さらに、このような障害者を取り巻く社会情勢の変化等に対応し、障害者の自立と社会参加を一層促進するため、1993年12月に「障害者基本法」が成立し、1994年より「障害者のために講じた施策の概況に関する報告書(障害者白書)」を国会に報告することとなった。
 1995年12月には、「障害者対策に関する新長期計画」の具体化を図るための重点施策実施計画として、「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」(1996年~2002年)を策定した。同プランは、数値目標を明記し、以下の7つの視点からその推進を図ることとしている。

(a)地域で共に生活するために
(b)社会的自立を促進するために
(c)バリアフリー化を促進するために
(d)生活の質の向上を目指して
(e)安全な暮らしを確保するために
(f)心のバリアを取り除くために
(g)我が国にふさわしい国際協力・国際交流を

人権諸条約の締結

(a)あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の締結

 本条約における人種差別の扇動や同思想の流布に関する処罰義務と表現の自由等憲法の保障する基本的人権との関係を如何に調整するかなどの困難な問題につき慎重に検討した結果、我が国は、1995年12月15日に、人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布等の処罰に関する規定(第4条(a)及び(b))の定める義務について留保を付した上で、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約に加入した。

(b)市民的及び政治的権利に関する国際規約選択議定書

 第3回報告のとおり、本議定書は、人権の国際的保障のための制度として注目すべき制度であると認識している。しかし、締結に関し、特に司法権の独立を侵すおそれがないかとの点も含め我が国司法制度との関係等慎重に検討すべき問題があるところ、引き続き関係省庁間で検討を行っているところである。

(c)拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の禁止に関する条約

 本条約については、我が国の法制上、拷問が厳に禁止されていることは周知のところであり、政府として残虐かつ非人道的な拷問を世界的に禁圧するとの本条約の趣旨は十分理解している。
 他方、現在、本条約の内容につき検討しているところであるが、その実効性等についてさらに慎重に検討する必要があると考えている。


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