-
(2)売春をめぐる諸状況
1)性を売り物にする風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)について
-
我が国では、1980年代前半、性を売り物とする新しい形態の営業が次々と出現し、善良の風俗及び少年の健全な育成に多大の悪影響を与えるようになった。このため、1984年に風俗営業取締法(現、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を改正して性を売り物とする5種類の営業(統計資料56参照)を風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)と定義し、届出制を導入するとともに、従前からの営業禁止区域等の規制に加え、18歳未満の者等に関する各種行為及び客引きを禁止し、広告、宣伝及び営業時間の制限等の規定を設けるなど規制を大幅に強化した。また、無店舗型の性を売り物とする営業が増加し、かつ、多様化している現状に鑑み、1998年4月、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗営業に対する規制の新設を含む風営適正化法の一部改正が行われた。
さらに、パソコンの普及等科学技術の進歩に伴う最近の風俗環境等をめぐる状況の変化に対応して、1996年に政令を改正し、アダルトショップで販売される専ら性的好奇心をそそる物品に、CD-ROM等の電磁的方法による記録に係る記録媒体を追加した。
最近5年間の風俗関連営業(風営適正化法改正後の店舗型性風俗特殊営業)の営業所数は、統計資料56のとおりである。
また、風俗関連営業(風営適正化法改正後の性風俗特殊営業)として法で規制されているもの以外で、いわゆる性を売り物としている営業のうち、専ら売春を目的とした営業については、売春防止法等の規定を活用して徹底した取締りを行っている。
-
2)多様化する売春形態
-
売春事犯の形態は、その主流をなしているデートクラブ等に係る派遣型売春をはじめとして、個室付浴場での売春、いわゆるピンクバー等における売春等の各種接客業を仮装した売春、さらには外国人女性等が飲食店等に稼働しながら行う売春や娼婦など多様なものがみられる。
-
3)売春に従事した女性に対する保護
(i) 婦人保護施設等について
-
売春防止法の第4章では、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子(要保護女子)の保護更生に関する事項を規定している。
具体的には、売春防止法第34条に基づく婦人相談所、同第35条に基づく婦人相談員及び同第36条に基づく婦人保護施設がある。
この婦人保護事業においては、昨今の社会経済状況等の変化を踏まえ要保護女子の範囲について、売春経歴を有する女子のほか、家庭関係の破綻、生活の困窮、性被害等社会生活を営むうえで困難な問題を有しているなどの女子が、将来売春を行うことがないよう、その未然防止の見地から保護、援助している。
婦人相談所では、相談者に対し、婦人保護施設への入所、就職、家庭への送還、福祉事務所への移送等の指導・援助を講じており、要保護女子について、附属する一時保護所における一時的な保護を実施している。
婦人相談員は全47都道府県や市に設置され、婦人相談所と同様に指導・援助を行っている。
婦人保護施設は、全国に52ヶ所設置されており、入所者に対し、職業訓練等のサービスを提供している。また保護された女子は、就職・自営、帰宅・帰郷、結婚、他機関・施設への移送等の理由により退所している。
-
(ii) 少女被害者の保護
-
心身ともに未熟な少女が売春に従事することは、少女の人権の侵害につながるばかりでなく、少女に大きな精神的打撃を与え、その後の健やかな成長に悪影響を及ぼすおそれがあることから、警察・法務省では、その精神的打撃を軽減し、早期の立ち直りを図るため、専門の職員がカウンセリングの実施等により継続的な支援を行う体制の整備を図っている。
-
(iii) 外国人女性の保護
-
1996年中、我が国が退去強制手続を執った不法就労外国人女性のうち、売春に従事していた者の数は484人である。
不法就労外国人問題については我が国及び周辺諸国の経済情勢等から、今後もなお売春に従事する外国人を含め不法就労外国人の流入が継続すると思われるところ、これら外国人の人権に配慮しつつ、その定着化を防止し減少を図っていくとの基本方針の下に所要の体制を整備しつつ、厳正な入国審査の実施、関係機関との連携による悪質事案を中心とした摘発の強化、国内・国外に対する広報活動の強化等の対策を推進している。
また、売春行為が有する反道徳性や反社会性、風俗・社会・公衆衛生上の影響にかんがみ、その防止に努めるほか、売春を強要されている等の人権侵害事実が判明したときは所要の措置が執られるよう関係機関に通報するなど、その人権の保護に配慮を行っている。
なお、このような状況により危機に陥った女性を緊急に一時保護する目的で、民間の女性団体が設立したシェルターがあり、外国人女性も多く利用している。
(日本キリスト教矯風会が開設している「女性の家HELP」など)
-
4)売春対策審議会の男女共同参画審議会への発展的統合
-
1997年3月に成立、同年4月より施行された、男女共同参画審議会設置法に基づき設置された男女共同参画審議会は、従前の売春対策審議会を発展的に統合したものであり、男女共同参画審議会においては、売買春その他の女性に対する暴力に関する事項について、男女共同参画社会の実現という幅広い観点から調査審議を行っているところである。