33.特に麻薬、アルコールの濫用及び自殺のような、新しく生じている健康に関する問題についての情報を提供ありたい。これらの現象を予防し、減少させるため、どのような施策やプログラムが採用されたか。
(回答)
1.薬物乱用
1997年に覚せい剤事犯で補導した犯罪少年は1,596人、大麻事犯で補導した犯罪少年は103人、シンナー等有機溶剤の乱用で補導した犯罪少年は4,157人で、シンナー等有機溶剤の乱用は減少傾向にあるが、覚せい剤の乱用が増加傾向にある。覚せい剤事犯で補導した犯罪少年のうち、特に中・高校生の数の増加が目立っており、1997年の補導人員は262人で、1996年から2年連続して過去最悪を記録した。
このため、警察では、薬物乱用少年の早期発見補導と薬物の供給源となっている密売事犯の取り締まりを徹底するほか、少年に薬物乱用の危険性・有害性についての正しい認識を持たせるため、警察職員を学校に派遣して、薬物乱用防止教室を積極的に開催するとともに、パンフレット・テレビ等の各種媒体を活用した広報に努めている。
更に、薬物の再乱用防止対策をより効果的に実施するため、モデル県を指定し、エリアを設けて、警察、児童相談所、医療機関、保健所、教育委員会等関係機関の実務担当者からなる薬物乱用防止活動支援チームを結成し、それぞれの機関・団体が持つノウハウを活用しながら、個別の薬物乱用少年に対するフォローアップ、薬物乱用防止教室等への講師の派遣、指導者に対する研修会の開催等の活動を行うフォローアップ・モデル事業を実施している。
厚生省では、青少年の薬物乱用防止のためには、厳正な取締りと共に、薬物に対する正しい知識や、薬物乱用の恐ろしさについて教育する予防啓発活動が重要と認識しており、「不正大麻・けし撲滅運動(1960年より実施。本年は5月1日から6月30日まで)」、「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動(1993年より実施。本年は6月20日から7月19日まで)」、「麻薬・覚せい剤禍撲滅運動(1963年より実施。本年は10月1日から11月30日まで)」を、関係機関と協力しながら全国的に展開している。なお、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの主催で行われた「『ダメ。ゼッタイ。』国連支援募金」には、1997年に約1億7百万円の募金が寄せられ、そのうち5千万円が国連を通じ、開発途上国で薬物乱用防止活動に従事しているNGO(非政府機関)の活動資金として寄付された。
文部省では、児童生徒における薬物乱用、喫煙及び飲酒問題については、児童の健康に重大な影響を及ぼす問題としても憂慮しており、特に1997年に覚せい剤の乱用により補導された中学生が対前年度比で2倍に増したなどの事実を極めて深刻に認識している。
このため、中学校、高等学校においては、教科「保健体育」において薬物乱用防止に関する指導を行っており、小学校においても、教科「体育」や特別活動において、薬物乱用防止について指導することができるとされている。また、生徒用教材及び教師用指導資料の作成・配布、薬物乱用防止に関する指導を担当する教員を対象とした研修会の開催、警察職員や麻薬取締官OB等の専門家を活用した「薬物乱用防止教室」の開催等の施策を実施している。
更に、1998年から「薬物乱用防止教育支援体制整備・活用モデル推進事業」や「健康教育総合推進モデル事業」等の施策を実施することとしている。
2.飲酒
未成年者の飲酒に関する規制は、報告書パラ47のとおりである。
警察では、飲酒している少年を発見した場合には、補導して注意、助言を行っているほか、少年が飲用することを知りながら酒類を販売供与した事案については、未成年者飲酒禁止法や風俗営業法等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づき取締まりを行っている。
また、酒類販売業者等に対し、少年の健全育成に配慮した販売等をするよう働きかけを行っているほか、未成年者の飲酒防止について、関係機関・団体と連携して広報啓発活動を推進している。
未成年の飲酒問題は、アルコールによる健康障害のみならず交通事故や非行等様々な問題と関連があり、大きな社会問題であると認識しており、未成年者の飲酒の心身に及ぼす危険性について、関係省庁で広く普及・啓発活動を続けてきたところである。
厚生省では、全国の中・高校生の飲酒実態及び日常生活習慣等の関連要因を明らかにし、未成年者の飲酒対策に必要な基礎資料を得ることを目的として、1997年12月、「未成年者の飲酒行動に関する全国調査」を実施したところである。
文部省の指導の下で、中学校・高等学校においては、教科「保健体育」において飲酒防止に関する指導を行っており、また、小学校においても、教科「体育」や特別活動において、飲酒防止について指導することができるとされている。更に、生徒用教材及び教師用指導資料の作成・配布等の施策を実施している。
3.自殺
我が国では、昨今、児童生徒のいじめ問題が深刻化しており、いじめが関係したと考えられる自殺が発生するなど憂慮すべき状況にある。この問題は、児童生徒の人権にも関わる重大な問題であり、文部省では、「弱い者をいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識に立ち、学校においてその解決のため真剣に取り組むよう都道府県教育委員会等を指導している。また、児童一人一人を大切にし、個性を生かす教育の推進、教員の資質能力の向上、学校外の高度な専門家の学校への配置を進めるなど、教育相談体制の整備、家庭、学校、地域社会の連携の推進という観点から各種施策を推進しているほか、教育活動の全体を通じて、生命及び人権尊重の精神の指導の徹底を図っている。また、警察では、自殺のおそれのある少年を発見した場合に保護を行っているほか、少年相談活動を通じて、悩みや困りごとを持つ少年や保護者等に必要な助言を行っている。
なお、1997年に自殺した少年は469人(うち男331人、女138人)で、自殺の原因として多いのは、学校問題(117人、24.9%)、家庭問題(64人、13.6%)、病苦等(36人、7.7%)となっている。