23.児童虐待の発生に関する情報につき述べられたい。児童虐待防止のため、また虐待された児童の治療、心理的回復、社会的再統合のため、中央及び地方レベルにおいて特定のプログラムの開発が行われたか。また、この目的のため、いかなる資源が割り当てられたか。
児童が家庭、学校あるいは他の施設において虐待されることを防ぐためどのような特定の法的規定が存在するか。このような虐待に対し、児童自らが利用できる告訴手続が存在するか。児童虐待事件がこれまでに国レベルの裁判所で争われたことがあるか。
(回答)
1.児童虐待を防止するため、虐待とは何か、虐待の目安、発見した場合の対応方法について分かりやすく示した「子ども虐待の防止の手引き」を厚生省において作成し、保健所、警察署などの関係機関に配布している。
2.法務省の人権擁護機関は、被害にあった児童等からの「申告」、新聞・雑誌からの「情報」を端緒として人権侵犯事件として調査を開始し、その調査結果に基づいて、虐待を行った者に対して、子どもを独立した人格として尊重するよう啓発を行い、再び虐待を繰り返さないよう説諭(説示)しており、説諭しても虐待が止まないときは、児童相談所に通報し、一時保護等の適切な措置を講じるよう要請している。
なお、地域に密着した人権擁護委員の中から指名された「子どもの人権専門委員」は「子どもの人権相談所」、「子どもの人権110番」を開設し、法務局と連携の上、子どもの人権問題全般の解決に取り組んでいる。
3.児童福祉法により、保護者に監護させることが不適当と認める児童を発見した者には、児童相談所や福祉事務所への通告義務が課されている。
児童相談所では必要に応じ、親を指導したり、児童を施設に入所させることになっているが、保護者に児童を監護させることが著しく児童の福祉を害する場合であって、保護者の同意を得られない場合には、家庭裁判所の承認を得て乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設等への入所、里親委託等の措置をとることが法律上認められている。また、児童本人からも相談を受けている。
子どもを虐待していると思われる親がいる場合には、児童相談所は調査を行うことができ、必要に応じ立入調査を行うことも可能である。
現在、虐待する親に対する指導は、一般的な行政指導として行うことも、行政処分として行うことも法律上可能である。虐待を受けた児童に対しては、児童相談所での専門職員による調査・判定、これに基づく施設入所の措置あるいは心理療法やケースワーク等による在宅指導を行っているところである。
(1996年度、児童相談所における児童虐待に関する相談処理件数は4,102件となっている。)
また、警察では、少年相談などを通じ、虐待を受けた少年を発見した場合、虐待行為が犯罪に該当する場合は刑事事件として取り扱うほか、必要に応じて保護者に対して指導・助言を行ったり、児童相談所へ通告し、児童相談所長の委託を受けて一時保護を加えるなど、関係機関と連携を図りながら、虐待を受けた少年に対する適切な保護に努めている。
4.刑事訴訟法230条は、「犯罪により害を被った者は告訴をすることができる。」と規定しており、虐待の被害者である児童についても、告訴の訴訟能力を有すると認められる場合には告訴をすることができる。
ちなみに、判例は、強姦の被害者が告訴当時13歳11ヶ月であった事例につき、告訴の訴訟能力を有すると認めている。(1957年、最高裁)
(また、刑事訴訟法231条1項は、「被害者の法定代理人は、独立して告訴することができる。」と規定しており、虐待の被害者である児童の親権者等も独立して告訴することができる。)
児童虐待に関する判例としては、情緒障害児等の治療を目的とするヨット訓練において指導員が訓練生に加えた体罰を違法とした例(1994年7月、名古屋地裁)等がある。