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序論 児童は、人として尊ばれる
児童は、社会の一員として重んぜられる
児童は、よい環境の中で育てられる1.これは、我が国が、国民の世論と運動の盛り上がりを背景に、1951年に制定、宣言した児童憲章の基本綱領で謳われているものであり、今日に至るまで、児童の基本的人権を認め、その福祉の保障と増進を誓った重要な基本的理念として、多くの国民の間で認識されてきた。そして、1994年4月22日、児童の権利に関する条約を批准したことを契機に、児童の人権に対する関心は一層高まり、児童の人権の尊重と保護の精神は、従来にも増して、より多くの国民の間に理解されてきている。
2.我が国の憲法は、基本的人権の尊重を重要な柱としており、第97条においては、基本的人権を「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」としている。この基本的人権には、(i)身体の自由、表現の自由、思想・良心の自由、信教の自由等のいわゆる自由権的権利、(ii)教育を受ける権利、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利等のいわゆる社会的権利等が含まれている。
3.児童についても、その基本的人権は憲法の下で保障されているが、とりわけ、児童については、その心身にわたる福祉の増進を図るため、児童福祉法が1947年に制定された。同法第1条は、「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」と規定している。この規定は、親、保護者、教師も含めた社会の構成者たるすべての国民が、それぞれの立場において児童の最善の利益を考え、児童の健全育成に責任を負っていることを明らかにするとともに、児童も一人の人間として尊重され、かかる意味でいかなる差別もなく平等に基本的人権を享有することを確認しているものである。また、同法第2条では、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と定め、児童の福祉に対する国及び地方公共団体の責任を明らかにしている。更に、同法第3条では「前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」と規定し、第1条及び第2条の児童福祉の原理が、児童福祉法だけでなく、児童に関するすべての法令の施行に際し、尊重されなければならないことを明らかにしている。このような、児童福祉法に定められている児童に対する施策の基本原則は、この条約の精神とも合致するものであり、我が国は、かかる原則の下に、福祉や教育等に関するさまざまな施策の充実を図っている。
4.福祉の面では、児童福祉法に基づき、児童相談所や養護施設及び保育所等の児童福祉施設の充実が図られ、児童の保護、家庭への支援等が行われている他、母性、乳幼児の健康の保持、増進を図ることを目的とした母子保健法の下に、妊産婦、乳幼児の保健指導、三歳児などへの健康診査、栄養摂取の援助、未熟児の養育医療、母子健康手帳の交付など、母子の健康及び保健サービスが実施されている。また、児童の養育への支援として、児童手当法等に基づいた給付を行うことにより、児童の福祉の増進を図っている。なお、近年においては、少子化の進行や女性の社会進出など、児童を取り巻く環境が変化しており、これらの変化に対応した施策の充実が必要であるが、政府としては、いつの時代にあっても児童の最善の利益を考慮に入れ、児童の福祉の増進に努めている。
5.教育は、児童の能力を伸長し、社会に適応する能力を持った人間を育てる大切な活動である。政府は、教育基本法及び学校教育法の下に、教育の普及に鋭意努めてきたところであり、義務教育課程での就学率はほぼ100%に達している。教育基本法では、個人の尊厳を重んじる教育の普及を謳っており、その理念に基づき、「個性重視の原則」を基本原則として掲げ、児童の人権に十分配慮し、一人一人の個性を大切にした教育、指導を行っている。
6.また、児童が自ら考え、主体的に判断し、行動することができる心身ともに健全な人間として育つためには、学校における教育のみならず、学校外において生活体験や活動体験を豊富に経験することが重要である。このため、我が国では、1992年度より、学校週5日制を導入した。これは、児童の生活リズムにゆとりを与え、家庭や地域で児童により豊かな生活体験や活動体験を提供する契機となっている。また、我が国の児童福祉法では、児童に健全な遊びを与え、その健康を増進し、又は情操を豊かにすることを目的とした児童厚生施設について規定(第40条)しており、その充実を図っている。
7.児童は、心身ともに成長段階にあり、人権を享有するに当たっては、特別な保護が必要であり、特に、児童を有害な環境から保護することは極めて重要である。この点については、刑法、児童福祉法、労働基準法等により、あらゆる形態の搾取、虐待等から児童を保護するための適当な措置を講じているが、政府としては、これら関係法令による取り締まり等の他にも、家庭、学校、地域社会の緊密な連携の下に、広報啓発活動及び有害環境の浄化活動を推進するとともに、児童の補導活動、相談活動を行う等国民的課題として積極的に取り組んでいる。
8.また、非行のある児童に対しては、できるだけ早く保護し、適切な指導を行うとともに、そのための環境にも配慮することが必要である。このような考えに基づき、少年法及び児童福祉法等関連法令の下に、少年事件等の処理体制、矯正処遇、環境調整も含めた更生保護及び不良児童の教護の充実強化を図り、非行の再発を防ぐとともに、社会への円滑な復帰の実現を支援している。
9.国際協力については、我が国は、政府開発援助大綱(ODA大綱)において、ODAの効果的実施のための方策の一つとして児童等社会的弱者にも十分配慮するよう掲げている。このような考えの下、二国間援助により学校の校舎建設や母子保健、小児病院プロジェクト等への協力を行っているほか、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)等の国際機関を通じた資金協力等も行い、世界の児童の人権の尊重と保護を目指した国際協力を積極的に実施している。
10.児童の権利に関する条約は、すべての児童の権利保護を具体的に実現していくための重要な原則を謳ったものである。我が国は、この条約の批准以来、この条約の効果的実現のために現行法制の下、さまざまな施策の充実のため努力を払ってきた。しかし、実際には、家族等人間関係の希薄化、有害な情報の氾濫など現代社会の抱える荒廃した一面による影響を受けて、児童の虐待や少年非行、いじめ等の事態が深刻化するなど、児童を取り巻く環境には新たな課題も生じている。
11.すべての児童がその人格の完全なかつ調和のとれた環境の中で育つため、政府としては、その環境づくりに向けて引き続き効果的かつ総合的な施策の充実を図っていく必要がある。また、これまで、民間団体等も自主的にこの条約の効果的な実現に向けて取り組みを行っており、こうした活動も評価されるものである。したがって、この条約の効果的な実現のためには、政府のみならず、家庭、自治体、学校、警察、民間団体等社会全体が一体となって相互に連携を図りながら、児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の人権の尊重及び保護に向けて取り組んでいくことが肝要であり、更には、国民一人一人がこの条約に対する理解を深め、その実現に向け努力していくことが不可欠である。
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