日本の外交政策のみならず、社会や文化といった一般事情に対する諸外国国民の理解を深め、良好な対日認識を形成する観点から、外務省は海外における日本に対するイメージや関心の対象を調査・分析して、各国別の広報戦略を策定し、効果的な情報発信に努めている。
2009年には、政府高官、国会議員、国際機関の長等、各国及び国際世論の形成に大きな影響力を有するオピニオン・リーダーを日本に招待し、日本の政府関係者や有識者との意見交換等を通じて、日本の政策や実情の紹介に役立てたほか、5月に北海道で開催された第5回PIF首脳会議(太平洋・島サミット)に合わせて、海外のテレビチームを招待し、太平洋島嶼(しょ)国に対する日本の協力等に関する番組の制作を支援した。また、諸外国において、在外公館の館員や日本から派遣した有識者が、日本の政治・経済・科学技術等の幅広い分野に関する講演を行うことにより、対日理解の促進を図った。
さらに、日本の外交政策や一般事情について幅広く紹介する印刷物資料や視聴覚資料を作成するとともに、インターネットを活用した海外への情報発信にも力を入れている(注1)。
2009年は、新政権発足を契機に、日本関連報道が増加した。特に政権交代の意義や、外交面では気候変動問題や東アジア共同体構想、日米関係等について日本の政策が世界各国で大きく報じられた。世界的な核軍縮の機運の高まりに伴い日本の関連政策にも注目が集まったほか、第5回太平洋・島サミットや天皇皇后両陛下のカナダ及び米国ハワイ州御訪問に関する海外報道も多数見られた。外務省としても、G8ラクイラ・サミット、国連気候変動首脳会合(於:ニューヨーク(米国))、COP15などの機会をとらえ、地球温暖化問題への日本の取組について対外発信を行うなど、重点的な外交政策に沿った戦略的発信を行った。
日本の外交政策に対する国際社会の理解や支持を得るためには、海外メディアを通じた戦略的かつ効果的な対外発信が必要不可欠である。総理大臣や外務大臣の外国訪問等の重要な機会には、記者会見やインタビュー、海外紙への寄稿等を実施し、日本政府の立場や考え方について正確かつ積極的な対外発信を行った。事実誤認に基づく報道に対しては速やかに反論することにより正しい対日理解を促進したほか、海外メディア記者に対してきめ細かな情報提供や取材協力を行った。また、海外のジャーナリストを招待し、対日理解の深化及びそれに基づく客観的な報道を促した。
観光立国の実現に向け、日本政府は2003年から官民一体となってビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を行ってきた。2009年12月には、国土交通大臣を本部長とする「観光立国推進本部」が設置され、政府一丸となった一層の取り組みを推進していくこととしている。外務省は、観光庁を始めとする関係省庁、地方自治体等と協力しつつ、在外公館を活用して日本の魅力を発信する活動に取り組んでおり、特に日本紹介ビデオやパンフレット、インターネットによる情報発信等を通じて、外国人旅行者の訪日促進に積極的に取り組んでいる(注2)。さらに、政府全体として国際会議の開催・誘致推進に取り組んでおり、外務省では、在外公館による働きかけなどを通じて積極的に誘致活動を支援している。
(注1)「外務省ホームページ(英語版)」(http://www.mofa.go.jp/)は、日本の外交政策に関する情報を、また「Web Japan」(英語、一部多言語)(http://web-japan.org/)では日本の一般事情を発信している。また、多くの在外公館でも独自のホームページを開設して、現地に密着した情報を現地の言語や英語で発信している。
(注2)具体的には米国、韓国、中国、シンガポール、タイ、カナダ、オーストラリア、欧州等、12の重点市場国・地域において、在外公館長を会長とするVJC現地推進会を計18か所立ち上げて、外国人旅行者の訪日促進に向けた連携・情報共有を図っている。また、在外公館施設を利用したプロモーション、セミナーや講演会の実施、海外における観光展や見本市等への出展、観光パンフレットの配布やビデオ上映等を通じて、日本の魅力のアピールに努めている。