外交政策の効果的な展開のためには、各国の政策決定層に対する直接的な働きかけに加えて、その支持基盤となる各国の一般国民層への情報発信や交流の促進を通じて、日本への関心を高め、良好な対日印象の形成に努めることが重要である。特に、近年では情報通信技術の発達や各国における民主主義の普及等を背景に、外交政策に対する世論の影響力が増大していることから、政府としては、海外広報を通じて、日本の外交政策や一般事情に関する諸外国国民の理解の増進を図るとともに、多面的な日本の魅力を積極的に発信し、文化交流を促進することで、各国国民の対日イメージや親近感の向上に努めている。
このような観点から、外務省は、海外での日本語普及、ポップカルチャーを始めとする現代日本文化の紹介、有識者層を対象とした外交政策等の発信を行っている。具体的には、国際交流基金を通じた日本語普及事業に加えて、1月に「日本文化発信プログラム」の下、草の根レベルで日本語教育や日本文化紹介活動に従事するボランティアを中・東欧4か国(ハンガリー・ポーランド・ブルガリア・ルーマニア)に派遣したことや、2月にはファッションの若手リーダーにポップカルチャー発信使(通称「カワイイ大使」)の名称を付与し、各国での日本文化紹介イベントなどに派遣したことなどが挙げられる。また、11月には、日本文化の発信拠点として、シンガポールにJCCを開設した。これらに加え、国際世論への影響力が強い海外のオピニオン・リーダーやジャーナリスト、将来各界で指導的立場に就くことが有力視されている人々等を日本に招待して、対日理解を深めてもらうとともに、日本の有識者による各種国際会議への参加を支援している。
外務省は、各国との間における外交上の節目となる年に「周年事業」を展開している。2009年はメコン諸国との間で「日メコン交流年2009」(注1)、ドナウ川沿岸国(オーストリア・ハンガリー・ルーマニア・ブルガリア)との間で「日本ドナウ交流年2009」(注2)として、集中的に交流事業を行った。また、開発途上国に対しては、文化無償資金協力を実施しているほか、国連教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))等と協力しつつ、文化遺産の保存修復や人材育成を積極的に支援したり、文化分野での国際協力の枠組みづくりや規範の策定に知的な貢献をしている。
(注1)「日メコン交流年2009」については第2章第1節3.「東南アジア」を参照。
(注2)「日本ドナウ交流年2009」については第2章第4節「欧州」を参照。